(無題)

カムチャッカ旅行第2日目。
たとえ地が果てようとも、
その先には大いなる海が続いています。
まだまだ移動は終わりません。


7:00、起床。
うーむ、果たしてこの天気はどうなんだろうか。
風や波は殆どありませんが、問題は霧です。
ぼんやりと対岸が見えているから
視程3海里くらいはありそうだけど…
朝食を食べ、10:00にやってくるガイドさんを待ちます。
今日はフェリーに乗るのです。

5分前にガイドさんが到着。
中南米と違って時間に正確なロシア。
が、ここでガイドさんが言うには
「島から来るフェリーの到着が遅れていて、
本来午前11時の予定だった出発時刻は夜になる」
とのこと。
半日遅延するのか…
しかも、そもそも島からのフェリーは
時刻表上では昨日の内に着いているはず…
しかし、このフェリーは1日単位どころか
1週間単位で遅延することもザラにあるそうなので、
半日で済むのなら御の字でしょう。
普段の旅行なら1時間遅延したら崩れるような
カツカツの行程を組んでいるところですが、
今回に限っては3日間も予備日を取ってあるので
これくらいはどうってことありません。
僕の本気度を感じていただけるかと思います。
14時に到着時刻の詳細が分かるということなので
兎にも角にもそれまでは待つしかありません。


思いがけず時間が空いてしまったので、
ちょっとПетропавловск-Камчатский
(ペトロパブロフスク=カムチャツキー)を散策。
Площадь Ленина(レーニン広場)から
昨日と同じく海岸沿いを歩きます。


暫く歩くと綺麗な階段がありました。


Никольская Сопка(ニコルスカヤ丘)という公園のようですね。
つい最近整備されたのか真新しいです。


岬の先の方に向かってみます。


細い尾根を一歩外れると断崖絶壁。
どうやってこんな地形が生まれたのか気になるところです。


暫く歩くと門が閉ざされていました。
岬の先端には軍事施設でもあるのでしょうか。
単に灯台かな?


海岸からはもっと近付けそうでしたが、
何やらレーダーらしきものが回っていて
あまり近付くと拘束されそうだったので自重しました。


改めて岬の尾根にある公園に上がります。
屋台村みたいなものまでありますね。
コーヒーや軽食を売っています。


展望台らしきものも整備されていますが…


これは一体何を見て欲しいんだろうか。
木?


インスタ映えスポットらしきものまでありました。
嘗ての閉鎖都市も観光客をアテにしていく時代か…


1945年という文言と献花…
これはもしや…
Памятник Воинам Советской Армии –
Освободителям Курильских Островов
(ソ連軍クリル諸島解放記念碑)でした。
日本人としては複雑な気分ですね…


港からズドンッ!と爆発音が聞こえたので
一体何事かと思って見に行ってみると
大きな豪華客船が停まっているではありませんか。
入港時の空砲の音だったのか。
しかし、こんな場所にやってくるとは物好きな。
と思って船体を良く見てみたら…
飛鳥II!?
横浜港でさえ見たことのない飛鳥IIを
まさかここで初めて見ることになろうとは…


地元の人にとっても物珍しいらしく、
皆スマホを取り出して写真撮影しています。
その所為か、街行く人達には
「君もあの豪華客船で来たのかい?」
と訊かれました。
そんなお金無いです…
これ以降、飛鳥IIから下船してきたと思しき
日本人観光客が至る所で見られるようになりました。
なお、日本人観光客かどうかひと目で見分ける方法は
「小雨で傘を差しているか否か」です。


ここにも日本料理屋がありました。
その名もКиото(京都)。
何故か京の字が左右反転していますね。


見ていると結構地元の人が入っていくので、
気になって入ってみました。
店内の雰囲気は若干シックな感じです。
味の方はどうなんだろう…


蟹汁。
かき玉汁にカニかまぼこを入れた感じです。
てっきり、塩水にカニかまぼこを突っ込んだような
ゲテモノが出てくるのかと思っていましたが、
ちゃんと海鮮で取った出汁の味がします。
インスタントかも知れませんが、
Петропавловск-Камчатскийで
これだけの味が食べられるなら十分価値はあります。


アラスカロール。
中身はサーモンの燻製とキュウリとクリームチーズ。
やっぱりここでもクリームチーズは入るんですね。
Якутск(ヤクーツク)の寿司バーのネタは
海綿に着色したんじゃないかという感じでしたが、
そこは流石に港町。
サーモンもちゃんとしたものでした。
ただ、やはりクリームチーズの分量が多過ぎて
殆どクリームチーズの味しかしませんでしたが。
1週間半振りにお米を食べたな…


スーパーマーケット。
市場のように小さなお店が幾つも入っています。


イクラ1kg1,500р。
安い。
但し、当然のことながら醤油漬けではないので
日本のイクラとは大分違います。

15時半になってガイドさんから連絡が入りましたが、
島からの船の到着は21時になるとのこと。
その為、21時に改めて港に確認を取り、
正確な出発時刻を聞き出すそうです。
この分だと明朝出発になるんじゃないか…?


更に時間が余ってしまったので、
Вулканариум(火山館)に来てみました。
昨日宿への道すがら見掛けて気になっていたのです。
入館料は550рでした。


自然科学についてはガチなロシア。
狭いながらも充実した展示です。


展示されている火山岩はどれも触ることができます。
日本なら有り得ないですね。
火山岩なんかそこら中でどれだけでも取れるから
幾らでも触って良いぞという心意気でしょうか。


Камчаткаの先住民族についての展示もありました。
この人ちょっと吉田沙保里に似てる気が。

Вулканариумを見終えたら一旦宿に戻り、
お昼寝してからКомсомольская Площадь
(コムソモーリスカヤ広場)へ夕食と買い出しに。
昼寝し過ぎて20時過ぎになり、
開いている店が少なくなってしまったので、
昨日と同じШаурма(シャウルマ)屋になりました。
夕食を食べている最中にガイドさんから連絡があり、
23時に船が出航する手筈になったとのこと。
今日出るの!?
慌てて宿に戻って荷造りをし、
迎えに来たガイドさんの車に乗って港へ。


Морской Вокзал、直訳すれば海の駅、
即ちフェリーターミナルにやって来ました。
飛鳥IIが停まっていた昼間とは違い、
冷たい夜の雨に濡れる港は静かです。


つい最近新築したのか、ターミナルは非常に綺麗です。
もっとボロボロのものを想像していたけど。
ただ、流石に写真には撮っていませんが、
周りには軍人が大勢居ます。
当然、アジア人は僕一人だけなのでとても目立ちます。
ロシア人はあまりジロジロ見てきたりはしませんが。


待合所に掲げられていた地図。
Петропавловск-Камчатскийで
広大なユーラシア大陸は一先ず終わっていますが、
地理的にはその先にはКурильские острова、
即ち千島列島が遥か北海道まで連なっています。
その南端に位置する北方領土は
日本とロシアの間で絶賛係争中であり、
渡航しようものなら即刻外務省のブラックリスト入りですが、
実はある一島だけは誰でも合法的に上陸できるのです。


とは言え、その合法的な手続きが
尋常じゃないくらい面倒臭い。
というのも、Курильские островаは
その全域がПограничная Зона
(国境地帯)に指定されており、
その地に足を踏み入れるには
空バウチャーではなく正式な招聘状でビザを取り、
ロシア人のガイドを要請した上で
ロシア国境警備隊に対して入域を申請し、
1ヶ月弱待って入域許可証を取らねばならないのです。
これは日本人だからというわけではなく、
ロシア人であっても許可が要るとのこと。
この煩雑さは流石旧ソ連といったところか。

でもって、許可が取れたとしても予定を立てるのがまた難しい。
唯一の交通機関である船便は
夏期(6~9月)が週2便、
冬期(10~1月前半、3~5月)が週1便、
厳冬期(1月後半~2月)は完全運休という有様で、
運航日はСахалинская область(サハリン州)の
ロシア語でしか書かれていない公式ホームページの奥底にある
pdf形式の時刻表を確認しないと分からないのです。
乗船券がネット予約できることだけはせめてもの救いですが。

更に、無事上述の事前準備を済ませられたとしても、
船の遅延や運休は当たり前。
時刻表(最早意味があるのか分かりませんが)では
片道20時間となっていましたが、
島からのフェリーは実に27時間を要したそうです。
直線距離で300kmちょっと、
実経路にしたって400kmに満たないはずなのに
どうやったら27時間も掛かるんだ…


数々の困難を乗り越え、Гипанис号(ギパニス号)に乗船。
夜行フェリーとは思えない小ささの船です。
だからこそ遅延や運休が多いのでしょうが。


船室はこんな感じ。
二段ベッド、ソファ、クローゼットに洗面器まであり、
狭いながらも設備は整っています。


船内には食堂がありますが、
朝食以外の食事代は乗船券の料金に含まれていません。
昼食夕食ともスープが100р、メインが150р、
紅茶25р、コーヒー35р、ジュース30рなので、
ルーブルの現金は忘れないようにしましょう。
ところで、ここに書かれている時刻って
ペトロパブロフスク=カムチャツキー時間(UTC+12.0h)なのか、
目的地の島の現地時間であるサハリン時間(UTC+11.0h)なのか
一体どっちなのだろう。


23時半に出港。
これから出征でもするのかというくらい
勇ましい音楽が流れました。
流石ロシア…?


Петропавловск-Камчатскийを離れると
暫く電波が通じなくなってしまうからか、
雨が降っているにも関わらず
大勢の乗客が甲板に出て携帯電話を弄っています。
この点は世界共通だな…
遂に乗ることができたこの船に興奮しきりですが、
はしゃぎ過ぎて体調を崩したら笑えないので、
街の灯が見えなくなった辺りで船室に戻って寝ました。

脚注
※「pdf形式の時刻表」
   2019年版は以下のページで確認可能。
   Администрация г.Северо-Курильск – Расписание движения парохода
※「ネット予約」
   以下のサイトで購入可能(要会員登録)。
   RFBUS.RU

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