大東諸島旅行 第2日目

リベンジです。

思えば1年3ヶ月前のあの日
院試の筆記試験と面接試験の合間を縫って
P会離島班で挑戦した大東島渡航は、
台風の神懸かり的停滞により敢えなく阻まれ、
変更した行き先の与那国島と波照間島も
非常に良かった事は間違いないのですが、
未練を残す結果となってしまいました。
そして、蟠りを抱えたまま時は過ぎ、
今、手元には手に入れたものの使う機会を逸して
使用期限が今月末に迫った日航の株主優待券が。
更に、来週月曜日のロシア語初級が休講となり、
火曜日は金曜授業に振り替えとなって午前が空き、
先月の台風で船の運航予定が絶妙にずれて、
これはもう神がお膳立てしたとしか思えぬ好機。
全てはこの為の布石だったのだ!


9:35発RAC861便に搭乗。
台風は来ていないし、これは余裕だろ
と思ったら、雨の為条件付き運航とか言い出しました。
ただの雨で引き返すとか某キップ研のOHかよ…
雨どころか曇りでも視界不良と称して
条件付き運航になる事があるそうですが。


1時間ほど太平洋の上を飛んで小さな島が見えてきました。
…と思ったら通り過ぎ、
今度は別の島が近付いてきた
かと思ったらまた引き返し、
北大東島と南大東島の間を行ったり来たりしながら
徐々に高度を下げていきます。
やっぱり那覇に引き返しますとか言い出しそうで怖いな…


11:09、南大東空港に到着。
やったぜ。
足掛け1年半、遂にこの地に辿り着きました!
沖縄本島から東へ約360km。
正に絶海の孤島と呼ぶに相応しい島です。
台風情報で良く目にしますね。
迎えに来ていた宿の人に送ってもらい、
島を効率的に回るべく自動車を借ります。


サトウキビ畑の中を走ります。
生憎の雨天か…
まあ、宿の人曰わく、南大東島の上空まで来て
結局着陸出来ずにとんぼ返りする事が屡々あるらしいので、
上陸出来ただけでも良しとしなければなりませんね。


まずやって来たのは西港にある港湾事務所。
南大東島から出る時は船を使うので、
電話予約していた乗船券を買います。


大東海運のスケジュール。
先月末は2週間も欠航しています。
これが大東島の難しさなのです。
それだけだと青ヶ島やトカラ列島も同じですが、
あちらは船の曜日がほぼ決まっており、
正確なスケジュールも2ヶ月前には決まりますが、
今回の船のスケジュールが決定したのは先週です。
しかも、大東海運は曜日が全く定まっていません。
乗せる気あるんですかね…


続いてやって来たのは集落中心部。
こんな場所にもある郵便局は偉い。
驚いた事にATMがありました。
意外と好待遇ですね。


何やら広場が賑わっていたので見てみたら、
第28回産業まつりなる祭りがやっていました。
何だか不思議な名前だな…
とは言っても、屋台が立ち並ぶ普通のお祭り…


かと思いきや、屋台で売られていたのは
まさかのポンプや農薬撒布機。
5万円や10万円の機械を祭りで買うのか…
何気に1割くらい値引いています。


こちらは南大東島地方気象台のブース。
台風の時には日本中がお世話になっています。
大きな風船が展示されていますが、
これは上空の気温や湿度を測定する為のもの。


このラジオゾンデと呼ばれる機器を
水素ガスを詰めた風船に吊して飛ばし、
飛んだ先で色々測るのです。
このラジオゾンデ観測自体は
全国16ヶ所の気象台で行われていますが、
ここ南大東島地方気象台は娯楽が無くて暇だからか
事前に連絡すれば飛ばす様子を見学させてくれます。


すぐ横には静態保存された機関車が。
鉄道が無い事で有名な沖縄県なのに何故機関車が?


実は、南大東島は戦後の沖縄県で唯一鉄道があり、
シュガートレインと呼ばれる
サトウキビ運搬列車が昭和58年まで走っていました。


そう、南大東島は製糖の島。
昔から存在こそ知られていたものの、
20世紀に入るまで無人島だった南大東島は
大日本製糖によって開拓、植民地化され、
島の行政を完全に支配された「社有島」だった為、
島民は何と戸籍を持つ事すら出来なかったとか。
その苛酷な支配は想像を絶するものだったそうです。
(※現在稼働している大東糖業は別の会社です!)


現在製糖を担っている大東糖業も屋台を出していました。
お、黒糖が置いてある。
お土産に手頃だし買おうかな。
と、値段を訊いてみたら何と無料との事。
気前良いな!
大東糖業に限らず、旧東集落の人達が出していた屋台では
マグロの刺身が無料で振る舞われていました。
本土の常識を覆す祭りですね。
島外の人間が貰って良いのかと一瞬逡巡しましたか、
結局ちゃっかり貰う事にしました。


青年団の屋台で大東そばを買って昼食。
マグロの刺身は無料で貰ったものです。
マグロのカマの塩焼きも無料で配っていたとか。
年に一度のお祭りに偶々当たるなんて幸運だな…
しかも、元々は先月にやる予定だったものが
台風でずれにずれて今日になったらしいし。
今回は何もかもツいています。
これも偏に普段の心掛けが良いからですね…間違いない。


このお祭りでは納涼の盆踊りもやるそうです。
納涼(11月)
横断幕に「ボロジノフェア」と書かれていますが、
この「ボロジノ」というのは南大東島の別名。
やけにスラブっぽい名前なのは
この島を「発見」したロシア艦船
Бородино号に由来しているからです。
ロシアとは似ても似つかない島ですが。


いつの間にか雨も止んでいたので散策再開です。


非常に分かり難い道の先にあった
大池のオヒルギ群落地。
本来ヒルギは汽水域に生える植物なので
内陸部に群生しているのは非常に珍しいです。


その大池までの道のりが険しい…
細い木道にはこれでもかというほどに
草木が覆い被さっています。


雨露に濡れた木々をかき分けて何とか辿り着きました。
あまり良く見えませんが。
この大池は日本最大規模のカルスト湖沼群なんだとか。
こんな小さな島なのに日本最大規模というギャップ。


今度はバリバリ岩なる名所に向かいます。
ローマ字表記の”Baribariiwa”が何かシュール。
英訳なら”Cracking rocks”…だろうか。


バリバリ岩へも草木に覆われた遊歩道を歩きます。
人の手が入る前の南大東島は
至る所こんな感じだったんだろうな…


ありました!
これがバリバリ岩です。
フィリピン海プレートの動きによって
南大東島が裂かれている様子なのだとか。
このまま行くと南大東島が真っ二つに分かれたりするのかな?


昨日今日で出来たものではないので、
岩からは木々が生えています。
大石林山のソテツと言い、沖縄の植物はタフ過ぎる。


歩みを進めていくと怪しげな穴が現れました。
相当に狭いけど、
これは遊歩道なのか否か…


一応階段らしきものが整備されていますね。
巨岩が落ちてきそうで怖いですが。


階段を降りると先程よりも
遥かに巨大な岩の裂け目の中に出ました。
これぞ正に大地の裂け目。


歩けるのはここまでのようです。
この岩は今正に裂けている最中なのかな?


あまり時間が豊富にある訳ではないので
足早にこの場を去ります。
階段が急で11月だと言うのに汗が出てくるな…


南大東漁港。
岩盤を掘り込んだ大規模なもので、
沖縄本島からのフェリーが接岸する港より遥かに立派です。
ここは南大東島で唯一接岸可能な港。
しかし、大きさの都合上フェリーは入港出来ません。
つまり、フェリーは南大東島に接岸出来ないのです。
じゃあどうやって乗船・下船するのかは後に明らかになるとして、
何故小さな漁船だけでなく
フェリーも接岸出来るようにしなかったのかというと、
元々はフェリーも入れる大きさの予定だったのに、
この港の工事が長引きに長引いている内に
フェリーが大きくなって入れなくなったからだとか。
何故フェリーの大きさを港に合わせなかったのか。


元々は南大東島の海の玄関口になる予定だった名残で、
港の入口には「おじゃりやれ南大東島」(ようこそ南大東島へ)
とペイントされています。


ちなみに、無修正の南大東島の海岸はこんな感じ。
これはR-18Gですね。
サンゴ礁由来の石灰岩で刺々しいです。
最初の人はどうやって上陸したんだろう…


お次は南大東島の目玉、星野洞へ。
ここは石灰岩質の南大東島の地下に無数にある鍾乳洞の一つで、
星野さんの畑の下にあるから星野洞だとか。
普段は鍵が掛けられているので、
宿の人に頼んで予約してもらいました。
予約したとしても、午前と午後の2時間ずつしか営業しないので注意。


いざ入洞。
上りはまさかの電動スロープがあります。
鍾乳洞でありながらバリアフリー化!?
と思いましたが、
スロープを下り切った先にすぐ階段がありました。


完全バリアフリー化はならなかったものの、
タブレット端末を利用した音声ガイドが完備されているなど
意外にもハイテクな鍾乳洞です。
財源が気になってしまう。


天井から垂れ下がる無数のつらら石と
床面からそそり立つ石筍、
そしてそれらが繋がった石柱が
まるでトリモチを剥がした時のような…
…もう少し壮大な喩えを思い付きたかった。


このつらら石は何と斜めに伸びています。
地殻変動で岩盤が落ちてきて
ここで止まったのではないかとの事。
このまま成長を続ければ、
将来はくの字型の鍾乳石になるかも。


立ち並ぶ立派な石柱。
宛ら古代遺跡です。


ペラペラの鍾乳石。
その名も「カーテン」だそうです。
傾斜した岩盤に出来るのだとか。
音声解説が
「タコスみたいに何かを挟んで食べたくなりませんか?」
とかボケをかましてきて反応に困る。


洞窟の奥に貯蔵された泡盛。
石垣島鍾乳洞にもありましたね。
島の子供達が高校進学を機に泡盛を置き、
成人式で戻って来た際に飲むのだそうです。


中々見応えのある鍾乳洞でした。
ここまであまり島らしくない景色ばかり見てきたので、
今度は島らしく海を見に行きます。


海水浴が可能な塩屋プール。
上述の通り、南大東島には砂浜など存在せず、
泳ぐどころか裸足で歩く事すら不可能な海岸ばかりなので、
岩礁をダイナマイトで掘り込んだプールが造られたのです。
水は海から勝手に流れ込んでくるというワイルドな供給法。


プールに至るまでの道も簡単に浸水するので、
満潮や高潮で帰れなくならないように気を付けましょう。
なお、海水浴可能な海水プールはここの他にもう一つ、
海軍棒プールというのが島の丁度反対側にあります。


今度は島を一望出来る日の丸展望台へ。
戦時中は電波探知機部隊の陣地だったとか。


おお、南大東島が一望の下に!
こうして見るとサトウキビ畑だらけで
民家は殆どありませんね。
流石は製糖から歴史が始まった島。


そして、鉄オタとしてやはり見ておきたいのがこれ。
シュガートレインの廃線跡です。
今ではもうほぼ自然に還っており、
農道との交差部などごく一部にレールを残すのみとなっています。
痕跡を見付け出すのは一苦労だな…と思っていたのですが、
村の観光地図にレールの残っている箇所が網羅されていました。
鉄オタにも優しい。


こちらは航空オタク受けしそうな旧・南大東空港。
20年前に廃止されたにも関わらず、
今もこんなに立派な姿で残されているのは
撤去費用が捻出出来ないから…


ではなく、現在はラム酒の酒造会社が使っているから。
島で採れるサトウキビを使ったラム酒は
南大東島の定番土産です。


建物内はこんな感じ。
琉球エアーコミューターや南西航空
(現・日本トランスオーシャン航空)のパネルや、
座席表なんかもそのまま残されており、
ターミナルビル時代の名残を色濃く残しています。
航空オタクの人は是非。
駆け足で島を巡ってギリギリになってしまったので、
急いで港へ向かいます。


さあ、鉄オタ、航空オタクときて
このフェリーは船舶オタク垂涎の的です。
南大東島のハイライトと言っても過言ではありません。
一体何が凄いのか?


何とこの船、クレーンで吊るされたカゴに乗って乗船するのです!
上述の通り、小型の漁船以外は接岸出来ない南大東島。
岸壁から直接乗り移る事が不可能な為、
このような形を取っています。
未だに定期船が接岸不可能な島など
日本広しと雖もここ大東諸島だけ。
これを目当てにわざわざ日程の読めない
フェリーを使う旅行客も多いのです。
僕みたいに。
思ったより揺れは少ないですが、
それでも海の上を渡る瞬間は
ちょっとヒヤッとしますね…
16:00発大東海運だいとうに乗船。


船内はこんな感じ。
平成23年に就航したばかりなので真新しいです。
島の観光情報や民謡なんかも書かれています。


ちなみに、初代だいとうは
現在フィリピンに渡って余生を過ごしているとか。
フィリピンも面白い島が沢山ありそうだな…


接岸出来ない以上岩壁に近付き過ぎても駄目なので、
普通のフェリーとは違って
沖合にも繋留用のロープが伸びています。
しかし、沖合に投げたところで何に繋ぎ止めるのかな?


あ、ブイが浮かべてあるのか。
こちらはモーターボートがやってきて外していました。


このモーターボートもクレーンで船ごと上げ下げします。
これは青ヶ島なんかでもそうですね。


さらば、南大東島よ…!


一眠りしたら港に着いていました。
ここも接岸出来ないので、
一対のロープを沖合に繋ぎます。


出港時と同じく港湾組合の人が
小型モーターボートでやってきてブイに括り付けます。
今日は比較的凪いでいるからまだ良いけど、
荒天時はとんでもない難度なんだろうな…
すぐ欠航する理由が良く分かりますね。


小雨がパラついているので
上陸用のカゴは屋根付きです。
わざわざ付けたり外したりしているんだろうか。


17:00、北大東島西港に上陸。
南大東島の相棒、北大東島です。
南大東島の半分以下、611人しか住んでいない
南大東島より更に鄙びた島です。


港ではまず真っ先に巨大な廃墟がお出迎え。
燐鉱石貯蔵庫の跡です。
主に製糖で栄えた南大東島とは違い、
北大東島は燐鉱業の採掘で栄えた島。
60年以上前に閉山した今では見る影もありません。


燐鉱石はここから搬出したり、
岸壁近くに浮いた艀に
直接落とし入れたりしたそうです。


フィルターを使ってちょっと禍々しくしてみた写真。
まるで打ち棄てられた島ですね。
だが、それが良い。


とまあ散々な言い様をしてしまいましたが、
今でもこの島は元気です。
商店の品揃えも想像以上に充実しています。
そして、工事関係者で賑わう宿。
秘島あるあるですね。
今夜は工事関係者向けの4畳半の部屋で寝ます。

コメント