幌尻岳 第2日目(書きかけ)

4:00、起床。
結局昨日新冠ルートで入山したグループは我々以外に現れませんでした。
先週新冠ポロシリ山岳会から来ていたメールには、
登山道の上でエゾシカの死体を引き摺っていったヒグマが現れたので
他の登山者と連れ立っていくように、
との勧告があったのですが、
どうしようもないので今日は我々のみでアタックします。


5:45、出発。
公式見解としては新冠ポロシリ山荘の裏が登山口扱いだそうです。
丸一日掛けて入山すら出来ていなかったのか…


小さな沢の渡渉が出て来ました。
斜里岳然り、北海道の山と言えば渡渉ですね。
丁度渡渉が出て来たところで、
幌尻岳に延びる3つの一般登山道について語らせて下さい。
そもそも、我々は何故こんなにも辛い新冠コースを選んだのか?


幌尻岳の一般コース3つの概念図が上図になりますが、
全てのコースが川沿いに造られた林道を延長する形で設定されており、
それらの林道は全て奥新冠発電所で使う水を引っ張ってくる
取水設備を建設する為に引かれていることが見て取れます。
北海道電力が取水設備のかなり手前でゲートを閉じている所為で
長い長い林道歩きを強いられている幌尻岳ですが、
一方で幌尻岳は北海道電力が居るからこそ
辛うじて一般人でも登れる山になっているのもまた事実なのです。
北電さんありがとう。

…と北電に対して媚を売ったところで、
これら3コースについての解説に移ります。
まず、これらの中で最も一般的なノーマルルートが額平川コース
(別名、振内コースとも呼ばれる)です。
このコースは地元の平取町がシャトルバスを出していたり、
途中に有人の山小屋があったりして比較的支援体制が整っています。
一方で、非常に明確なデメリットも存在していて、
それが悪天候に対する弱さです。
額平川コースは数十回にも及ぶ渡渉があり、
水量によっては股まで濡れる深さの箇所もあるということで
ちょっとでも雨が降って水勢が増すとすぐ通行禁止になります。
実際、昨日のシャトルバスは全便運休していました。
北海道まで来て登山口さえ行けない可能性が高いのは怖い、
ということでこのコースは無しになりました。

それと比較しての話になりますが、
実は今歩いている新冠コースはこう見えて一番悪天候耐性が高いのです。
ただの取水設備と巨大アーチダムでは
建設する際に走るトラックの数が桁違いで、
工事用道路たる林道もそれだけ高規格に造られています
(昨日はあんな倒木撤去作業を強いられましたが)。
かつ、新冠川で最も嶮岨だった部分をダム湖が覆い隠しているので
致命的な渡渉は殆どありません。
根性さえあるのならかなり登頂成功率の高いコースと言えます。

残りのチロロ林道コースについても述べておくと、
このコースは山小屋が一切無い代わりに
その裏返しとして予約の類が必要無いので、
半年以上前から予約しないといけない他2コースと違って
日程を柔軟に決めやすい利点があります。
どのコースを選んでもそれぞれ大きな難があるので、
そこはやはり日本百名山最難関といったところです。


さて、登山に戻ります。
おお、盛大に抉れているなぁ…
ここは登山道もろとも崩れてしまったらしく、
大きく高巻きする道が付けられています。


ここはもう巻道も付けられず、
崩れた土砂の斜面を無理矢理トラバースしています。


この斜面を横切ると幌尻沢(新冠川の支流)が
二股に分かれる地点に出ます。
左が幌尻沢本流、右は名も無き支流です。


そして、ここが新冠コースで唯一とされる渡渉地点です。
ここまで遡上してなお滔々と水が流れています。
これで悪天候に強いコースを名乗っているのか…


登山靴の中を濡らさずに渡れる水位ではなさそうなので、
靴と靴下を脱いで裸足で渡渉します。
痛いほどに水が冷たい!


渡渉を終えるとここまでなるかった登山道が豹変して、
いきなり気の触れたような急登が始まります。
ここまでは18.4km歩いて上げた標高は550m。
一方、ここから山頂までは2.4kmで標高差は1,090m。
つまり平均勾配は15倍超で脅威の45.4%、
あの大無間山を超える急登です。


最早2本の脚だけで登るのは困難な程で、
両手で笹を鷲掴みしながら攀じ登ります。


倒木もデカ過ぎんだろ…
登山地図によると「倒木処理完了」だそうですが、
樹皮を剥いでツルツルになったからヨシ!
ということなのでしょうか。


無我夢中で登っていると段々森が薄くなってきました。
まだ幌尻岳本体を拝むには至っていませんが。
驚いたことに20km歩いてきて尚、姿すら見えないんだよな…


今は亡き新冠営林署昭和38年から平成7年まで存在。
ここは高山帯であると示す標識を取り付けていました。
高山帯だから何なんだ。


こちらはもう少し有益な情報を教えてくれる看板。
ここが中間点だそうです。
流石に新冠ポロシリ山荘から山頂までの中間点だとは思いますが、
まだ中間かぁ…
3分の2くらい来ていて欲しかったなぁ…


幌尻沢源流部の水場に到着。
エゾシカの死体を引き摺っていったヒグマが現れたのが
まさにこの水場らしいので、
緊張感が走ります。


幸いヒグマは影も見せることはありませんでした。
遥か遠方の眼下にはコーヒー牛乳のような色合いの
幌尻湖が見えますね。


森林限界を越えたので急にスッキリしましたね。
この辺りはお花畑と呼ばれているようです。
いつ咲くのかは知りませんが。

To be continued.

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