6:00、起床。
さて、まさか鬼怒川まで来て鬼怒川温泉だけ入って帰るなんて
そんな後期高齢者みたいな真似はしません。
鬼怒川温泉に宿泊したのにはそれなりの理由があります。
鬼怒川温泉駅バス停から
7:35発日光市営バス鬼怒川温泉女夫渕線女夫渕行きに乗車。
幸せの黄色いバスというポップな名前と
年季の入った色褪せた黄色のコントラストが尚の事哀愁を誘います。
本当はもっと普通のバスが充当されるはずなのですが、
そのバスが故障してしまったので
代車としてこの幸せの黄色いバスに白羽の矢が立ったそうです。
が、このバス色褪せた見た目通りオンボロで、全然馬力が出ません。
上り一本調子で700m以上標高を上げないといけないのに、
こんなバスで大丈夫なのか…?
駄目でした。
何と6kmも走らない内に龍王峡の坂道でエンストというかエンコし、
全くエンジンがかからなくなってしまいました。
どの辺りが幸せのバスなんだ…
まあ、携帯電話の繋がらない場所で故障するよりは幸せか…
代車の代車が来るまで30〜40分待ってくれと言われたので、
ちょっと龍王峡を歩いてみます。
冬の龍王峡。
当然のことながら秋(2014/11/3)とは全く様相が違いますね。
乗客は僕を含めて2人、それに運転手1人の3人しか
あの「幸せの黄色いバス」には乗っていなかったので、
青柳車庫までタクシーで行くことになりました。
青柳車庫前バス停で予備のバスに乗り換え。
かなり遅れてしまった…
鬼怒川温泉駅周辺は殆ど雪が残っていませんでしたが、
青柳車庫から先はガッツリ積もっています。
果たして、奥地はどのレベルになっているのか。
遅れを取り戻そうとしているのか、
運転手さんはこの凍て付いた山道を攻めていきます。
それで事故ったら遅延では済まなくなるのでどうか程々に…
10:07、約1時間の遅れで女夫渕バス停に到着。
このバス停で降りたとなればすることは一つしかありません。
11年前のあの日(2014/11/4)、
「奥鬼怒温泉郷にある4軒の旅館の内、
2軒は送迎が無いので遊歩道を2時間程歩かねばなりません。
21世紀の今でもこんな場所があるんだな…」
と言っていたその温泉宿を目指します!
しかし、宿の公式サイトで片道1.5〜2時間(積雪時+0.5〜1時間)、
YAMAPのコースタイムで片道2時間と案内される距離があるのに
(片道4.7kmあるのでそれでも山道にしては速いペースですが)、
バスが遅延した所為で帰りの終バスまで5時間ちょっとしかありません。
温泉に入るとなると中々際どいので
バス路線の途中にある川俣温泉辺りでお茶を濁そうかとも考えましたが…
英語のtravel(旅)とフランス語のtravail(仕事)は
どちらも語源が同じラテン語のtripalium(拷問器具)!
即ち、苦難を乗り越えなければそれは旅とは言えない!
という訳で、可能な限りペースを上げて奥鬼怒温泉郷を目指します。
まずは鉄階段を含む急登からスタート。
尾根筋に出ると林道に合流する分岐が現れます。
林道は距離が1km長くなる代わりに
車が通行可能なレベルにまで除雪されているので、
冬期は林道を歩くよう勧めている案内もありますが…
階段ですれ違った人にラッセルは全く必要無いと聞いたので、
雪による大幅遅れは無いだろうと踏んで登山道を進みます。
折角急登で登ったのにあっと言う間に下ってしまうのか…
下り切って鬼怒の中将乙姫橋で鬼怒川を渡ります。
鬼怒川左岸に渡った後は殆ど勾配がありませんね。
まあ、この積雪でガッツリ急登だったら
アイゼンどころかピッケルも必要になってくるからな…
温泉水でも混じっているのか珍妙な色をした氷柱。
色合い的に綺麗というよりは汚らしいという形容がしっくり来るような…
隣にはもっと澄んだ色の氷瀑もあるようで、
上の奥鬼怒温泉郷から来た団体が観瀑していました。
ちょっと気にはなりますが
今は温泉に浸かることの方が優先度が高いので、
復路で時間に余裕があれば改めて寄ることにします。
おや、この箇所…
写真では何処も彼処も白くて分かり難いですが、
地面に1m前後の大きさの大きな雪玉が散らばっています。
どうも落石に雪が覆い被さっているようですね。
ということは、ここは落石地帯…
この辺りから急激に落石が増えます。
雪だと路面にどのくらい落石が散らばっているか見えないから
危険度を視覚的に判断し難いな…
最終的にゴルジェとなって二進も三進も行かなくなり、
立派な鉄橋2本で無理矢理迂回していました。
結構お金の掛かっている遊歩道ですね。
一瞬のゴルジュを過ぎると今度は急に開けて雪原になりました。
どうなんだ…?そろそろ温泉は現れてくれるのか…?
ペースを上げ過ぎてシャリバテ気味にもなってきたけど…
おおっ!
遂に来た!奥鬼怒温泉郷だ!
しかし、ここは一番手前の八丁の湯。
残念ながら日帰り入浴を受け入れていません。
あと、ここなら送迎があるしな…
目指している日光澤温泉は一番奥なのでまだ1.5kmくらいあります。
ここからは林道歩きです。
この山奥に似つかわしくないほど巨大な加仁湯。
11年前(2014/11/3-4)に泊まったのはここだったな…
林道に出ればあとはすぐかと思っていたけど、
地味に長いな…
お腹も空いたし…
行動食を食べてしまうか…?
いや、でもそろそろ宿が現れそうな気がするし…
おおっ、これは!
辿り着きました!!日光澤温泉です!
女夫渕バス停から1時間40分でした。
慣れない雪道でペースを上げまくったから
温まりたいというよりも汗を流したい。
それでは中に入るぞと扉を開けようとしたら、
中から扉が開けられて可愛らしい柴犬が顔を覗かせました。
看板犬のサンボだそうです。
丁度これから女将さんと散歩に出るのだとか。
女将さんが気を利かせて被写体になるようサンボに促してくれましたが、
そこは柴犬なので中々画角に収まってくれません。
まさか、こんな地で柴犬に出会えるとは…
このサンボ目当てに今度はちゃんと泊まりたくなりました。
前回の加仁湯には居なかったので知らなかったのですが、
奥鬼怒温泉郷の多くの宿には看板犬が居るそうです。
山奥の温泉宿に日本犬は合いますね。
中でも母親とその子の兄弟の3匹の看板犬が居た日光澤温泉は
特に看板犬が宿の代名詞になっていて、
宿のオリジナル手拭いやTシャツにもその姿が描かれています
(母親のチャングは一昨年に亡くなってしまったそうです)。
母親とその兄弟で3匹の柴犬という構成が
(母親が既に亡くなったことまで含めて)うちの愛犬達と全く同じで、
親近感を抱いてついグッズを買ってしまいました。
では、お待ち兼ねの温泉です。
日帰り入浴客は混浴の露天風呂にのみ浸かれます。
貸切状態でした。
雪山を歩いて辿り着いた露天風呂とか最高過ぎる…
鏡が無いので確認は出来ませんが、
この数年で一番良い笑顔になっている確信があります。
ちなみに、露天風呂は2つあって
濁り湯と透明湯の両方を楽しめます。
いや〜極楽極楽…
お風呂から上がるとサンボも散歩から戻ってきていました。
1泊していったらどうだ
みたいな眼で見つめてきますが、
帰らないと明日の行程に大きく響くのでこの辺りでお暇を…
余裕を持ってバスの時刻2時間前に出発します。
行きでは素通りしていた氷瀑。
こちらは澄んでいて綺麗ですね。
夏期は普通の滝になっているのでしょうか?
だとしたらこの遊歩道は沢を渡っているのか?
いつの間にか空が晴れていますね。
雪山だと彩度があるのは青空くらいのものだな…
最後の急登を乗り越えれば…
女夫渕バス停到着です!
バスの時刻の40分も前に着いてしまった。
まあ、終バスだし余裕はあった方が良いか。
周囲を散策しながら待ちます。
山間部に似つかわしくない萌えキャラの工事看板。
手に持っているのはパラボラアンテナ?
調べても情報が出てこないけど通信工事のキャラなのか?
奥鬼怒温泉郷から宅急便の車が下りてきました。
交通困難地指定じゃなくてちゃんと郵便物も届くんだ…
運送業者の皆様には頭が上がりません。
そうこうしていたらバスが来たので帰ります。
15:25発日光市営バス鬼怒川温泉女夫渕線鬼怒川温泉行きに乗車。
打ち上げは温泉街のトンカツ屋で。
肉本来の旨味や甘味を感じられる美味しいトンカツでした。
いやー、冬山というのも良いものですね。
今日のあれを冬山扱いして良いのかは分からないけど。
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