新天地を求めて

令和6年も今日で終わりです。
旭丘高の友人達と初日の出を拝むようになって早10年目。
所帯を持つメンバーも増えてきましたが、
それでもこの企画はしぶとく続いています。
じわじわと西進して前々回(2023/1/1)四国に上陸しましたが、今回は…


初めてアプローチに新幹線を用いて岡山県に突入です!
アプローチの別で初日の出を区分すると、
始発列車を使っていた第1期(平成24〜25年)、
大学の友人と行った番外編(平成26年)を挟んで
近鉄の終夜運転と徒歩に頼っていた第2期(平成27〜28年)、
近鉄の終夜運転×松阪レンタカーの第3期(平成29年〜令和2年)、
名駅レンタカー×前夜泊の第4期(令和3〜6年)、
そして今回新時代である新幹線アプローチの第5期に至りました。
新幹線だと必然的にレンタカーと前夜泊もセットになります。
お金に幾許かの余裕が生まれた社会人らしさを反映していますね。


岡山駅前でレンタカーを借りて岡山ブルーラインへ。
いつもの太平洋とは違った穏やかな瀬戸内海が美しい。


道の駅一本松展望園で昼食。
瀬戸内海らしく牡蠣メニューもありましたが、
今後牡蠣を食べる機会がかなりありそうなことを見越して
何故か推されていたオムライスにしました。


食後はYR(常滑民)たっての希望で
併設されていた謎児童公園へ。
在りし日の半田市交通公園を思い出す。


JR山陽新幹線(60kgレール)とJR宇野線(50kgレール)と
JR吉備線(30kgレール)のレール比較とかいう
余りにもマニアック過ぎる遊具(?)がありました。
鉄オタ向けにするには鉄道から遠くない?(最寄駅から8km)


展望台からちょっと面白いものも見えたので、
時間もあることですし寄り道してみます。


これが何か分かるでしょうか?
堤防…なのはその通りですが、どういう用途の堤防かという話です。
正解は塩田用の締切堤防。
この錦海湾には500haの干潟が広がっており、
それを利用して昭和30年代に日本最大級の塩田が造成されていました。
一時は日本国内で塩をだぶつかせるほど製塩していたとか。


その広大な塩田跡地には現在、
国内2位の規模を擁する瀬戸内Kirei太陽光発電所が置かれています。
その出力235MW。
…と言うととんでもない出力のようにも見えますが、
ここまでしてやっと古い火力発電所1機分くらいなんですよね
(廃止された昭和41年運転開始の武豊火力発電所1号機が220MW)。
Googleマップの口コミを見ると
「きれいな、瀬戸内に、こんな自然破壊は、許せません」
みたいな人が大量発生していますが、
なら火力発電所を容認するのか?という。
ちなみに、原発なら1機でこの5倍(1GW)くらいがデフォルトです。


社会問題で頭に血を上らせる厄介おじさんにならないよう、
発電所の批評はそこそこにして真の目的地に向かいます。
水路の隣に車を停めて堤防を歩いていくと…


ありました!
旧・鹿忍グリーンファーム跡、通称水没ペンション村です!
まるで水面にペンションが浮いているかのような不可思議な光景は
一体どのようにして生まれたのか?


ここも嘗ては錦海湾と同じく塩田がありましたが、
錦海湾に巨大塩田が出来たことによりこちらの塩田は一足先に廃止され、
その跡地利用として当時流行っていた別荘地開発が
昭和50年代にかけて行われました。
塩田に海水を引き入れる為に地盤が海水面よりも一段低くなっていたので、
現役当時はポンプで排水して姿を保っていました。


しかし、バブル崩壊辺りでペンション村は放棄され、
平成20年頃から排水ポンプが機能しなくなったのか水が溜まり始め、
今では外の海面と同じ高さまで水に沈んでしまっています。


別荘地らしくゴルフ練習場らしき残骸も。
何もかも水没しているところにポストアポカリプス感があります。
錦海湾のメガソーラーも放棄されたらこんな風になるのだろうか。


馴染みのある構造物が無くて
どれくらいの丈まで水没しているかが良く分かりません。
水面スレスレの位置に扉のような物が見えるから、
案外そんなに水深は深くないのか?
とも思いましたが、後ほど頑張ってネットの海から
水没前の写真を数枚サルベージして確認したところ、
ペンションは高床式に近い構造になっているらしく、
あの扉は2階に相当する位置に付けられているようです。
なので、確実に溺れる深さがあります。

ここからは完全に想像の話ですが、
現役当時から水没に対するリスクは少なからず意識されていて、
万が一就寝中に高潮やポンプの故障が原因で海水が流入しても
溺れないよう居住スペースは海水面より高い2階以上にして、
1階はガレージか何かに充てていた、
というところではないでしょうか。


完全に負の遺産と化した鹿忍グリーンファームを後にしてもう一つ、
瀬戸内の負の遺産を見に行きます。
「人間回復の橋」こと邑久長島大橋を渡って長島に渡ると…


長島愛生園、全国に13ある国立ハンセン病療養所の一つです。
ハンセン病は発症すると非常に特徴的な外観を呈する為、
感染力が非常に弱いにも関わらず忌避の対象とされて
法律上平成8年まで半永久的な強制収容が認められていました。


今では特効薬も開発され治る病気となったハンセン病ですが、
あまりにも長期間社会から隔離されてしまった為に
今更追い出されても行く場所の無い患者も多く、
平成30年時点で164名の入所者が暮らしているそうです。


長島には資料館や史跡がありますが、
コロナ禍以降予約無しでの訪問は出来なくなっているようです。


長島の近くに初日の出遥拝候補地として考えていた場所があるので、
そちらの方も寄ってみます。
これまた細い上に急勾配の道だな…
対向車が来たらと思うと恐ろしい。


辿り着いたのは夕立受山園地です。
山頂で雨乞いをしたところ夕立が降ったことから
この一風変わった名前が付いたのだとか。


日生諸島の島々と牡蠣の養殖筏が綺麗に見えます。
初日の出とは相性の悪そうな名前ですが、
面白そうな眺めが期待出来そうですね。


案内看板によると木造の展望台よりも先に
まだ見晴らしポイントがあるらしいので、
視察がてら行ってみます。


うへぇ…
かなり藪漕ぎチックな道だな…
おちょぼ岩(2019/1/1)を思い出す。


おっ、ここか!


断崖に突き出した岩場の見晴らしスポット。
南東方向に開けているので初日の出にもうってつけですね。
暗い中藪漕ぎしないといけないのは面倒ですが。


良く見ると、手前から2番目の島には
山肌に張り付くようにして建つ家が
集落を形成するでもなくてんでんばらばらに散らばっています。
他ではあまり見ない珍しいタイプの島ですね。
あそこが我々の今回の遥拝地です。


新幹線まで使ったから余裕綽々だろうと構えていたら、
寄り道し過ぎて時間がギリギリになってきたので急いで戻ります。
いつまで経っても大人の余裕が生まれないのは何故なのか。


スーパーマーケットで買い出しを済ませて
日生港にやって来ました。
ヤバい、船が出るまで後10分も無い!


待合室や乗船券売り場が見当たらないけど、
取り敢えず船に乗り込めば良いのか…?
国道が海ギリギリを通っていて全く余白の無い土地の使い方です。


間に合った!
16:40発大生汽船のりなはーれに乗船。


木目調のえらくお洒落な船内。
JR九州みを感じると思ったらやっぱり水戸岡瑛二監修なんですね。


潮風に吹かれまくる甲板まで木が基調になっているんですが、
耐久性は大丈夫なんですかね…?
まあ、木造船もあるくらいだしちゃんと防水処理すれば良いのか?


穏やかな瀬戸内海を滑るように進みます。
波は全然無いのですが、風は思ったより強いですね。


家々が張り付く例の島が見えて来ました。


16:55、鴻島に上陸。


オーナーが夫婦で迎えに来ていたので、
2台の軽自動車に分乗して宿に向かいます。


これはまた小島らしい無理矢理な道…
転げ落ちそうな急勾配とヘアピンカーブで
山を登っていきます。


山の上にあるこのペンションが今回のお宿。
鴻島は鹿忍グリーンファームと同じくらいの時期に別荘開発が進み、
その後一時期は放棄されて空き家だらけになっていたのですが、
景観の良さに目を付けた三和開発コンサルタントという会社が
廃別荘を改築して低価格で売り出したところ移住者が激増。
「日本のエーゲ海」とも呼ばれ俄かに活気付いています。


急斜面に建っている物件が多いだけあって確かに眺めは抜群です。
正直一軒欲しくなっている自分が居る。
せめて阪神勤務なら…


鴻島は不動産会社によって開発が進められたということもあって
島内を縦横無尽に走る車道の多くが私道なのか、
Googleマップは勿論、地理院地図ですら頼りになりません。
初日の出を拝めそうな地点の目星はあるのですが、
ちゃんとアプローチ出来るかが不安なので
今日の内にkuniとロケハンしておきます。


案の定地図に無い道がある…
部外者を撹乱しようとしているのかな。


登山口を発見したのでここから歩きます。
まだ軽トラなら走れそうな林道っぽい道。


で、登山道になって…


おっ、開けた!


鴻の鳥山(標高147.2m)登頂です!
木が切り払われていて眺めが良いです。


令和6年の残照。


夕焼けがあちらの方角ということは、
日の出はこちらの方角のようですね。
この分なら地形的にはちゃんと拝めそうで一安心です。
ペンションに戻ります。


今年最後の晩餐は手作りブリ鍋です。
魚は3柵分の刺身含めて全部僕が切りました(料理出来るアピール)
ウシュアイア(2016/3/7)を思い出す。
皆で自炊という夜も楽しくて良いですね。

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