安倍奥ドライブ

今日は久し振りに静岡県へドライブすることにしました。


最早定番となっている和田島の茶屋と清水の寿司屋で
静岡県の味を堪能します。
これがあるから東名高速沿道住みは止められない。


しかし、行ったことのある場所ばかりなぞっても仕方無いので、
名前を聞いて気になっていた場所へも行ってみます。
安倍川を遡上して安倍奥と呼ばれる地区へ。
流石土砂崩れが多いですね。


安倍奥も含めてオクシズと呼ばれる静岡県北部は嘗て林業が盛んで、
川を越えて山から山へと移動する為に
無数の吊橋が架けられた地域でもあります。
この細野橋もその一つ。


踏板は木である上に板3枚分しか幅がありません。
踏み出す度にギシギシと音を立てて揺れます。


幸い、川面からの高さは大したことないので
そこまで極端に怖い訳ではありません。
とはいえ10m程度あるので落ちたら骨折くらいはするでしょうが。


渡りきった先には民家と茶畑が。
ここの住民が対岸の渡集落の中心部と行き来する為に
架けられた吊橋のようですね。
そもそも、「渡(ど)」という一風変わった地名も
安倍川を「渡る」ことから来ているそうです。
下流には大河内橋という2車線の立派な車道橋もありますが、
そちらを経由すると2km以上遠回りになるので
細野橋は今も尚現役なのでしょう。
ちなみに、橋の袂には連絡先として個人の携帯電話番号が記されており、
この橋の維持管理が行政ではなく地元住民が主体となって
行われている様子を窺わせます。


細野橋も中々のスリルでしたが、ここは南アルプスを擁するオクシズ。
勿論細野橋よりも更に過激な吊橋が山程存在します。
その大半は廃林道の先にあったりして
おいそれとは辿り着けない位置にあるのですが、
その中ではまだ比較的アクセス容易な立地にある吊橋を見付けたので
挑戦してみることにします。
安倍川と藤代川の合流地点に架かる藤代橋を渡って山奥へ。


一旦停まると最早坂道発進出来ないのではないかというくらい、
細くて急勾配の静岡市道藤代1号線を走って、というか登って、
山間の藤代集落にやって来ました。
結構な隘路でも突っ込むことで有名なストリートビュー撮影車すら
藤代橋手前で引き返しているという秘境です。
ちょっと雨が降ったらすぐに道が崩れて孤立しそうだけど、
それでもまだ住民が居るっぽいのが凄いな…


わさび田や茶畑もあります。
これで生計を立てるという規模ではありませんが。
ちなみに、日本で最初に山葵栽培を始めたのは
ここから一つ山を越えた南隣の沢筋にある有東木集落だそうです。
そちらへ続く道ものっけから凄い急登でしたが。


最果ての藤代集落を過ぎて更に先、
未舗装で湧水が流れる林道ヤギクボ線の起点に車を停めて
ここからは徒歩でアプローチします。


うーん、どう見てもS2000でアプローチする場所ではないよな…
納車以来こんな道ばかり走らせてしまっている気がする。
まあ、車庫で眠らせられるよりは走り倒される方がきっと本望でしょう。


とか何とか言っている内に辿り着きました、藤代奥の吊橋です!
通称っぽい名前ですが、銘板など無いので正式名称は不明です。


踏板は細野橋と違って鋼鉄製です。
なら細野橋より頑丈で怖くないのでは?
と思うかも知れませんが…


高さがさっきの比ではありません。
落ちたら助からないであろう高さです。


でもって踏板は細野橋の3分の2程度しかないこの細さ。
ベコベコ凹むわ揺れるわで恐怖を演出してきます。
これ多分工事現場の仮設足場だよな…


しかし、何よりも恐怖心を煽ってくるのはこの立地でしょう。
細く頼りない山道を延々走らない限り辿り着けない隔絶された場所、
何があってもまず助けを呼べないであろうこのロケーションこそが
この藤代奥の吊橋の真骨頂です。


嘗てオクシズの地に居た山師や猟師達は
そんな孤独をものともせず、
無数の吊橋を渡って山から山へと縦横無尽に駆け巡ったのでしょうか。


何とか吊橋を渡りきりました。
対岸に民家や畑の類は無く、植樹林だけが広がっています。
やはり林業用の吊橋のようですね。
しかし、手入れだけしている内は良いとしても、
いざ伐採して運び出すとなったらどうするのかな?
重い木材を担いでこの吊橋を渡るとは思えないし、
まさか流送するのだろうか…


渡った以上は往復しなければならないのが定め。
良く見ると傾いているのを何とか認識しないようにして
足早に戻ります。


藤代奥の吊橋は無事に往復出来たので、
車を擦らないように市道も引き返します。


そのまま安倍奥の一番奥、梅ヶ島まで走ってきました。
この辺りはこれと言った山も無く
椹島(2023/9/16)などと違って登山口としての存在感も薄いので、
何があるのか全くイメージが湧いていなかった場所です。
梅ヶ島温泉という温泉街になっているので、
一般知名度は林業と登山の椹島よりよっぽど高いのかも知れませんが。


静岡県道29号はここで途切れていますが、
一応林道は峠を越えて山梨県の身延(2017/8/23)まで続いています。
オクシズの林道の御多分に漏れず大体通行止めになっていますが。


梅ヶ島温泉の源泉はこの滝、
その名もズバリ湯滝の周辺に集中しており、
数字の書かれた立札がそこかしこに突き刺されています。


ちなみにこんな分布をしているそうです。
滝の水で薄まってしまわないのかな?


数ある源泉の中でも特に有名なのが上図6にあたる岩風呂で、
ここは源泉というか滝の脇の岸壁に穿たれた洞窟に
そのまま温泉が溜まっています。
野生味溢れる洞窟風呂なのですが、
残念ながら普段は施錠されていて立ち入り出来ません。
年に2回だけ開放されるという噂もありますが…


基本的に立入禁止にも関わらず梅ヶ島温泉の象徴ではあるようで、
梅ヶ島温泉の宣伝ではちょくちょくその姿が使われています。
入ってみたいな…


しかし、今日は大人しく温泉宿の日帰り入浴で我慢します。
強アルカリ性でとろりとした泉質でした。
お肌がすべすべになりそう。


朝に寄ってきた和田島だけでなく
この梅ヶ島でも紅茶を作っているそうなので、
お風呂上がりの一服に寄ってみます。
そう言えば、どちらも「島」なんですね。
陸の孤島のようなニュアンスでしょうか。


ロッキングチェアに腰掛けながら紅茶を頂きます。
高山(2024/8/15)でも感じたけど、ロッキングチェアって良いな…


宝石のように透き通った紅茶。
和紅茶らしく渋味の少ないスッキリとした味でした。


こちらでは4時間程のコースで
紅茶作りも体験出来るのだそうです。
茶葉の発酵ってそんなにすぐ出来るんですね。


この後は静岡県道29号と新東名高速道路をえっちらおっちら走って
松田へと帰りました。

 

脚注
※「流送」
   木材を川に流して下流へ運ぶこと。

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