西遊記 第5日目


6:16、起床。
何やら集団が大通りを練り歩いています。
十字架を持っている様子を見るに、日曜礼拝の何かでしょうか?
若干怖いので通り過ぎるのを待ってから外出します。


通りにあるパン屋で朝食。
元ポルトガル領らしくPastel de Nata(エッグタルト)もありました。


さて、今日はIlha de Santiago(サンティアゴ島)を巡ります。
アフリカかつ島となると公共交通機関は望むべくも無く、
それでいて結構な大きさがある
(面積は991km2で知多半島の3倍弱)ので、
レンタカーを借りて運転することにします。
この為にちゃんと国際運転免許証を取得して来ました。

…が、実はここで問題があります。
日本で発行した国際運転免許証は
カーボベルデで効力があるかどうかが良く分からないのです。
国際運転免許証はジュネーブ交通条約に基づくものと
ウィーン交通条約に基づくものの2種類あり、
互換性は無くお互いに独立したものとして扱われます。
日本は前者しか締結していないので、
逆にウィーン交通条約しか締結していない国では
日本発行の国際運転免許証は無効ということになります。
それで、カーボベルデは正にその
ウィーン交通条約しか締結していない国なのです。

但し、条約は締結していなくても
二国間の取り決めがあればOKな場合もあり、
実際ドイツはそういう例になっています。
しかし、カーボベルデは訪問する日本人が少な過ぎて
ネット上でもレンタカーについて言及している日本人が居ません。
果たして、車は運転出来るのかどうなのか…


出来ました。
何も問題視されることなく、
日本の国際運転免許証を提示して普通に車を借りられました。
法規上問題無いというよりは、
運用がガバガバで誰も気にしていないという雰囲気ですが…
この辺り、無免許で原付を貸してくれたツバル(2020/2/4)を彷彿とさせます。
アフリカというよりは島国ならではの雰囲気ですね。
車は四駆のヒョンデ コナでした。
人生で初めて運転する韓国車です。


まずは真新しいUniversidade de Cabo Verde(カーボベルデ大学)へ。
いや、ここを目的地として来た訳ではなくて
道沿いにあったので停まってみただけですが。
カーボベルデ最難関の大学だそうです。


Universidade de Cabo Verdeが
Praia(プライア)市街地の縁になっていて、
そこを過ぎると無人の荒野のような景色が広がっています。
しかし、滅茶苦茶道路状況が良いな…
日本の島でもここまで道路が整備された島は見たことがありません。


しかし、そんな快走路を以ってしても尚、
島の反対側に出ようとするとかなりの時間が掛かります。
1,000km2近い面積は伊達ではありません。


そして、火山島なので起伏が激しいです。
基本的にあらゆる道が峠道という感じです。
運転していて楽しいですね。


地図で何やら面白そうなスポットを見付けたので
Assomada(アソマダ)の街から脇道に入って下っていきます。
何処まで自動車で行けるのか良く分かりませんが…


急坂をある程度下ったところで
転回・駐車可能なスペースがあったので、
ここに車を停めて歩くことにします。
島とはいえここはアフリカ。
この周辺の治安が良いのか定かではないので足早に済ませます。


道沿いの斜面は全て開拓されており、
石垣で固められたキャベツ畑などが広がっています。


お目当てのものが見えてきました。


Mafumeira、日本ではカポックやパンヤノキと呼ばれる巨木です。


Park Poilão(ポイラン公園)という公園になっており、
子供達が遊んでいたり、おばちゃんがバーベキューに興じたりしています。
地域住民憩いの場なんですね。


丸々とした太い幹と根っこなのかと思いきや、
湯葉のように薄い根っこです。
昔から地域の拠り所として親しまれてきたのでしょうか。
日本なら御神木として神社が建てられそうですね。


御神木に旅の安全を祈ったらドライブ再開です。
近くを歩いていた人が
「上の大通りまで乗せてくれないか?」
と頼んできましたが、
まだカーボベルデの治安を信じ切れていないので断りました。


炎天下の斜面を歩いて喉が渇いたので、
ガソリンスタンドで水を買います。
米国を始めとした海外諸国でコンビニの代わりになるのがガソスタですが、
カーボベルデでもちゃんとその役割があるんですね。


水分を十分に補給したら、
カラカラに乾き切った北部へと向かいます。


Ilha de Santiagoの中心都市であるPraiaから
最も離れた位置にある北部の街、
Tarrafal(タラファル)にやって来ました。
まともな公共交通機関が無い中で
こういう離れた街まで地元の人達がどう移動しているかというと、
Aluguer(アルゲール、「ハイヤー」の意)と呼ばれる、
ピックアップトラックの荷台に幌を付けた
乗合タクシーのようなものを使っています。
これに乗るのも一興かとは思いましたが、
如何せん余所者には経路も運賃も時刻表も何も分からないので…


丁度お昼時になっていたので食堂に入ります。
Serra Grelhado(カツオのグリル)と
Salmão Grelhado(サーモンのグリル)を注文。
Thieboudienne(チェブジェン)っぽいご飯も付いていて美味しい!
地元でも人気のお店らしく、
周りの卓ではサッカークラブが打ち上げをしていました。


昼食を終えたら海を求めてリゾートホテルへ。
元ポルトガル領だっただけあって地中海風の造りになっていて
ここがアフリカであることを忘れさせます。
何なら我々は摘み出されそう。


深く青く透き通った大西洋。
このホテルは美しい海を活かしたビーチリゾート…


だと思うのですが、
海へ続く階段が崩落していて水辺まで降りられません。
泳いでいる人も居るのですが、
宿泊者しか海へのアクセスを得られないのでしょうか。


排他的高級ホテルは後にして
貧乏有色人種の我々は地元の人々で賑わうビーチを目指します。


こちらがTarrafal民に人気のビーチ、
Praia do Tarrafal(プライア・ド・タラファル)です。
Praiaなの?Tarrafalなの?と思う方も居るかも知れませんが、
“Praia”はポルトガル語で「浜」を意味する単語なので
これは「タラファル・ビーチ」ということです。
泳ぐ人あり、日光浴する人あり、ビーチバレーする人あり、
皆思い思いに海を楽しんでいます。
我々?
服も脱がずにスニーカーで砂浜を彷徨っている不審者です。


ここまで来たからには島の最北端を目指そうと思います。
地図を見るにPonta Moreira(モレイラ岬)というのが
Ilha de Santiagoの最北端らしいので、
そこに向かって走っていきます。
かなりの快走路ですね。


何か…方角が違うような…
道も未舗装になってしまったし…
どうやら北西のPonta Preta(プレタ岬)に向かってしまったようです。
引き返します。
しかし、分岐なんてあったかな…


これか!
看板には確かにPonta Moreiraの名が刻まれています。
もう分岐地点からしてヤバいです。
これを本当に車道と呼んで良いのか?
しかし、まだ岬までは4km弱もあるので
ここから歩くのは流石にキツいです。


タイヤがパンクしたり車が故障したりすることの無いよう、
細心の注意を払いながら荒野の奥へと続く轍を辿ります。
まさか人生初のオフロード運転がカーボベルデになるとは…


カワセミの仲間だというハイガシラショウビンがいました。
オフロードバードウォッチング。


SUVのCM撮影みたいになってきました。
この写真、ヒュンダイに持って行ったら幾らかで買ってくれないかな。


パンクが怖いので路面に転がっている石を退けながら進みます。
何かあってもまず間違いなく助けは呼べないからな…


道がいよいよ荒れてきたので、車を停めて後は歩きます。
岬まで後1kmのところまでは車でアプローチ出来ました。


遮る物が何も無いので非常に風が強いです。
時折何処かの集落から歩いてきた山羊や
小鳥が飛んでいる他に生き物の姿は見当たりません。
完全無人地帯のこの景色の中に
ツアーでもない日本人観光客の我々が居ることに強い違和感を覚える。


轍の先に唯一人の営みを感じられる存在である
白亜の灯台が顔を覗かせています。
あれこそが目指しているPonta Moreiraです。
あそこ目指して歩を進めていきます。
昼でも尚旅人を導く灯台。


ちなみに、さっき間違えて走っていた道は
あの黒い砂浜に続いているようです。
プライベートビーチですね。
車であそこまで行けるのか分かりませんが。


道標が立っていました。
“FARROL 20. MN”(とううだい 20. MN)と書かれています。
灯台(farol)の綴りが間違っているし、MNって何?
距離の単位っぽいけど20mは近過ぎるし、
綴り的には一番それっぽいMilha Náutica(海里)だと
20海里≒37kmになってあまりにも遠過ぎるし…
(実際には灯台まで直線距離で520mの地点)


最後に茨の藪漕ぎを抜けると…


遂に対峙することが出来ました!


Farol Ponta Moreira(モレイラ岬灯台)です!


長年の潮風に晒されてボロボロになりながらも尚、
Ilha de Santiagoの最北端を孤独に守る姿。
何処か涙を誘いますね。
…何やら外階段があるな。


試しに昇ってみたら扉の下半分が欠損していました。
屈めば何とか入れそうな…


入れたものの、灯台に必要な設備は何も残っていません。
それにしても狭いな…
大西洋の只中にある孤島で
こんな小さな部屋に収まる程度の照明設備で足りたのでしょうか?


そもそも、この小さな窓からしか外に光を出せないというのは
灯台として相当に機能を制限されていないか?
ポルトガルの灯台に明るくはありませんが、
どうも腑に落ちないところが多いような…


それはそれとして、Ilha de Santiagoの真の最北端を目指します。


何処までも青い大西洋。
この先陸地はアメリカ大陸まで無い…
と言いたいところですが、こちらは西ではなく北なので
割とすぐIlha de São Nicolau(サン・ニコラウ島)をかすめます。
それを抜けると次はアイスランド(2017/7/31-8/3)ですが。


最北端は十分満喫出来たので戻ります。
復路もパンクしないよう慎重に…


折角なので、Ilha de Santiagoを一周する形になるよう
北東岸沿いを走って戻ります。
何と舗装が石畳になっていますね。
この辺りは元・ポルトガル領らしさを感じます。

日がとっぷりと暮れてからPraiaに帰着。
主人は
「返却は今日中ならいつでも良いよ、WhatsAppで連絡して」
とは言っていたものの、
オフロードを走りまくって殆ど新車だった車体は砂だらけだし、
流石に怒られるのでは…
と戦々恐々でしたが、快く受け入れてくれました。
カーボベルデ人は優しい。


夜は地元の人達が集うケバブ屋へ。
近くでまだ開いている店がここしかありませんでした。
マジで地元民しか居なくて日本人の我々は滅茶苦茶浮きます。


Shawarma Especial(シャワルマ・エスペシアル)を注文。
ギリシャのΠίτα Γύρος(ギロピタ)を思い起こさせる感じで
とても美味しかったです。
カーボベルデ、良いですね。

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