アラビア旅行 第3日目


6:07、起床。
目が覚めてしまいましたが、
午前中は休息の予定です。
昨日の日記を付けたりしつつ過ごします。


お昼になったら昼食を食べに外へ。
徒歩3分ならまあ大丈夫かと出てきてしまったけど、
相も変わらず強烈な熱気…


気温計は45℃を示しています。
撮れ高的には美味しいけど生理的には勘弁して欲しい。
急いで食堂に駆け込みます。


マグロを含んでいる何かとスープ。
メニューがほぼアラビア語単記だったので、
具体的に何と呼ばれる料理なのかは分かりません…
カレーっぽいスパイシーな炒め物です。
スープに至ってはまんまカレーの味でした。
何料理の店か分からずに入店してしまったけど、
まさかインド料理屋だったりする?
いや、店名は「黄金の隼」って意味らしいし、
如何にも金色と鷹狩りが大好きなアラブっぽいけど…
ちなみに、食後のミルクティーが凄く美味しかったです。


食堂から直接UberでIthra(イスラ)こと
King Abdulaziz Center for World Culture
(キング・アブドゥルアジズ世界文化センター)へ。
昼間は観光出来ないんじゃなかったの?
と言われそうですが、ここは屋内施設なので。


幾つかの施設が集まった複合文化センターなのですが、
まずはEnergy Exhibit(エネルギー展示館)へ。


サウジアラビアの国営石油会社
Saudi Aramco(サウジアラムコ)が運営する科学館です。
Saudi Aramcoと言えば世界一の時価総額でも有名ですね。
サウジアラビアをサウジアラビアたらしめる存在
と言っても過言ではありません。


そんな訳で、展示は勿論石油関連ばかりです。
石油マニアには堪りませんね。
Houston Museum of Natural Science
(ヒューストン自然科学博物館、2021/9/11)の
Wiess Energy Hall(ワイス・エネルギー・ホール)を思い出します。


Wiess Energy Hallとの違いとしては、
Energy Exhibitにはゲームがとても多いことが挙げられます。
王道の(?)石油掘削ゲームに始まり…


パイプライン輸送、精製、海上輸送を分担する
6人協力型のゲーム(ぼっちでもNPCと遊べます)、


地下の3Dモデルを探索して
新しい油井の位置を決定するゲームなど、
子供達を将来の社員として囲い込もうとしている様子が窺えます。
ちなみに、このスーパーマリオ64の
やみにとけるどうくつみたいな3Dモデルですが、
実際の現場でも本当に使われているものだそうです。


社員紹介のコーナーに
社員教育をゲーム化するという人が居たので、
この方が数々のゲーム展示を担当しているのでしょうか。


もっと直接的なリクルーティング活動として
「君が(Saudi Aramcoの)何の職に向いているかチェックしよう!」
という適正診断もあります。
Wiess Energy Hallにもほぼ同じ展示があったのですが、
エネルギー会社は適正診断が好きなのでしょうか?


ちなみに、この適正診断無駄にキャラメイクが出来るのですが、
女の子を選ぶと髪型ではなくヒジャブを選ばされます。
流石サウジアラビア。


お次は独特なデザインの本館へ。
図書館、博物館、美術館、映画館などが入っています。
この奇抜なデザイン、中東繋がりで
イラク出身のZaha Hadid(ザハ・ハディド)のものかと思いましたが、
ノルウェーのSnøhetta(スノヘッタ)という会社によるものだそうです。


ギャラリーにはアラブらしく、
Masjid al-Haram(マスジド・ハラーム)や
Al-Masjid an-Nabawi(預言者のモスク)などを題材にした
絵画が幾つも飾られています。


まずは2階以上にある図書館へ。


開館から5年目だそうですが、
巨大な図書館はまだまだ余裕があります。
正直スカスカに見えてしまうような…


最も広いスペースを占有しているのは宗教の書籍。
流石はサウジアラビアですね。


キリスト教と同じくイスラム教も創造論があり、
それ故「進化」があるということでポケモンさえ
2001年にHaram(禁忌)であるとのFatwa(宗教見解)が出され、
サウジアラビアやアラブ首長国連邦では
一時期国全体で禁止されたりもしていました。
そういう訳で、自然科学の棚はどうなっているのだろうかと心配でしたが、
普通にビッグバン理論の本も置いてありました。
ただ、アラビア語の本だと挿絵や数式を見る限り
ビッグバン理論について言及しているものは見当たりませんでしたが。


このIthraの蔵書数は約31.5万冊[1]だそうで、
半田市立図書館(39.3万冊[2])未満だとか。
そう考えると日本って恵まれた環境なんだな…


お次は地下の美術館エリアへ。
ここからは有料になります。


新進気鋭のアラブ人芸術家達の最新の作品が展示されています。
日本では中々お目に掛かれないのではないでしょうか。
…日本で美術館に行くことが滅多に無いので良く分かりませんが。


流石はサウジアラビアと言うべきか、
砂漠を感じさせるベージュ系の色彩が多いです。


更にサウジアラビアっぽいのがこの漆黒のオブジェ。
一体何で作られているのかというと…


石炭です。
炭柱といって、炭鉱を掘る際に坑道が崩れないよう
柱の形で残しておく炭層を持ってきたものだそうです。
いや、化石燃料だからついサウジアラビアっぽいと思ってしまったけど、
別に石炭はサウジアラビアでは採れないか。
実はポケモン×工芸展(2023/6/9)でも「かげうち」という名の
漆を使った似た形の漆黒のオブジェがあったのですが、
こちらは差し詰めステルスロックでしょうか?


1階下がるとMasjid(モスク)やQuran(クルアーン)など
イスラム教についての展示室があります。
ここはやはり一番力を入れているようで、
特に僕のような外国人観光客に対しては
係員が付きっ切りで案内をしてくれます。
勉強になるので是非お願いしましょう。
良くMasjidで見る特徴的なあのドームは
音響を意識してのものだったのか…


こちらはSalat(礼拝)を行う際の
時刻とQibla(方角)を知る為の道具とその手法を記した本。
もしかして、イスラム教が礼拝の時に方角に拘るのって
目印の無い砂漠で遭難しないように
方角を知る術を広く普及させる為だったりしたのかな?


サウジアラビアが遂に外国人観光客を受け入れたとはいえ、
最後の砦として未だMakkah(メッカ)はムスリム以外立入禁止ですが、
ここではMasjid al Haram(マスジド・ハラーム)の内部を
VRで体験することも出来ます。
外からKa’ba(カアバ神殿)を映した映像は良く見ますが、
Ka’ba側から外を眺めることも出来るというのは新鮮ですね。
ビル建設用のクレーンが何本も立っているのが見えました。
客室からKa’baが見えるのが売りの高層ホテルを建てているのだとか。
そういうのは大丈夫なんだ…


もう一層下がると科学館になります。
進化論とは相容れないとされるイスラム教の下で、
科学館は一体どんな姿になるのか。


思ったより普通に進化論とかも扱っています。
ただ、コーナー毎にQuranの一節が引用されていて、
「Quranの解釈と矛盾するものではない」
と主張しているように見えます。
本当にQuranは原理なんですね。


最下層はSaudi Aramcoの資料館。
サウジアラビアで初めて石油を掘り当てた
Dammam No.7(ダンマーム7号油井)の
当時のボーリング結果などが展示されています。


こちらには1940年代、
Saudi AramcoがまだArabian American Oil Company
(Aramco、アラビアン・アメリカン・オイル・カンパニー)だった頃の
啓発ポスターが並べられています。
こういう一昔前のポスター大好き。
Portal 2に出てくるポスターとか一つ一つ凝視していました。


AramcoはStandard Oil Company of California
(スタンダード・オイル・オブ・カリフォルニア)、
現在のChevron(シェブロン)の子会社なので、
啓発ポスターも米国っぽさがあります。
ちなみに、このポスターの言わんとしていることは
「丘の頂点では道路の右側を通行しよう!」
だそうです。
寧ろそれ以外では右側通行しなくて良いのか。


一方、この労災対策ポスターでは
「事故は予定を台無しにしてしまう」
という文言の背景絵として、Ka’baが描かれています。
この辺りはアラブっぽさがありますね。


地下の有料エリアを堪能して地上に戻ってくると
俄に人が増えていました。
やっぱり夜になってから皆動き出すんですね。


たっぷり半日楽しめる文化施設でした。
…ところで、この建物の形って何を表現しているんですかね?
角度によっては男根にしか見えない気が。


夕食はイラク料理屋へ。
コロンビアでベネズエラ料理を食べた(2023/5/6)のと同じく、
本場へ行くのは政情的に無理ですし、
日本でお目に掛かれるような料理屋ではないので、
サウジアラビアならではと言っても良いでしょう。


Champagne(シャンパン)で乾杯。
敬虔なイスラム教の国なのにお酒?
と思うかも知れませんが、
これはSaudi Champagne(サウジ・シャンパン)とも呼ばれる
ノンアルコールカクテルです。
ミントや様々な果物を入れたリンゴサイダー?
爽やかで暑気払いにピッタリです。


こちらがイラク料理。
左手前がMoutabal(ムタバル)という
ゴマの風味香るナスのペースト。
見た目はHommos(フムス)っぽくも見えますが、
Hommosと違って酸味はありません。

左奥の四角いお皿に乗っているのはTepsi(テプシ)。
ナス、ズッキーニ、ジャガイモなどの薄切りを
トマトソースで煮込んだカポナータ的な料理で、
これが本当に美味しい。
海外で食べた料理の中で一二を争うくらい美味しいです。

右手前のメインディッシュがDolma(ドルマ)。
ピーマンやジャガイモをくり抜いて
マトンの香るお米が詰められていました。
このお米、かなりもっちりしていてお腹に溜まります。
何ならこれ一皿でも余裕で満腹になったな…

 

参考文献
[1] Library | Ithra
[2] 半田市 – 図書館概要令和5年度

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