(無題)

三陸旅行第3日目。
三陸海岸の南端を目指します。

3:50、起床。
眠いですが起きねばなりません。
今日の闘いは長いのです。


南気仙沼駅から4:59発JR気仙沼線BRT柳津行きに乗車。
JR気仙沼線の始発は東北一早いです。
BRT化して所要時間が延びたのに
鉄道時代と同じ終着時刻にしているとかでしょうか。
なお、このJR気仙沼線のBRTについても
今月一杯で鉄道事業としては廃止になります。


6:34、柳津駅に到着。
完全に鉄道復旧を諦めたからか、
駅名標から陸前横山
(気仙沼方面の隣駅)の名前は消され、
線路が敷かれていたスペースは
BRT乗り場から鉄道乗り場への
スロープに改修されています。


6:49発JR気仙沼線普通前谷地行きに乗り換え。


今日は残念ながら日の出は見えませんね。


前谷地駅で7:14発JR石巻線普通古川行きに乗り換え。
1日片道1本だけの貴重な陸羽東線直通列車です。
4年前にこの辺りを旅行した際は
古川駅で東北新幹線に乗り換えたので、
小牛田-古川間が未乗のまま残っていました。


古川駅で8:06発JR陸羽東線普通小牛田行きに乗り換え。
これで陸羽東線は完乗です。


小牛田駅で8:41発JR石巻線普通女川行きに乗り換え。
これも陸羽東線の車両ですね。


石巻駅から先が未乗区間です。
穏やかな万石浦を横目に走ります。
震災以降でこれだけ海岸のすれすれを走るというのは
三陸ではもうここだけではないでしょうか。
ここは入口の非常に狭い湾になっているので、
他に比べるとまだ津波の被害が少なかったそうです。
それでも、地盤沈下などによって
幾つかの駅が水没するなどの被害を受けましたが。


9:59、女川駅に到着。
これで宮城県のJR路線は完乗しました。


女川町は東日本大震災の津波によって
実に8割を超える建物が全壊するという、
壊滅的な被害を被りました。
女川駅も土台を残して消失。
7~9m嵩上げした約200m内陸側に移転して
5年前の平成27年に復旧を果たしました。


駅前はシーパルピア女川という、
飲食店や土産物屋が並ぶ歩行者天国になっています。


時間はまだ大分早いですが、
起きたのがあまりにも早過ぎたので
もう昼食を食べます。
あと、今を逃すと昼食抜きになりそうなので。
シーパルピア女川の端にあるお店の女川丼です。
写真よりもネタが多い。
開店直後で魚が特に新鮮なのか、
どのネタも実に美味しいです。
海鮮丼は朝早くに食べるべきものなのかも知れない。


女川町の中心部は文字通り壊滅したので
震災前の建物は殆ど残存していないのですが、
唯一震災遺構として残されているのがこちら。
何の建物だったのか分かるでしょうか。


実はこれ、嘗ての女川交番です。
地震の揺れにより地盤が液状化したところに
14.8mもの高さの津波が襲来し、
基礎から横転させられてしまったのだそうです。
古い木造住宅ならまだしも、
頑丈な交番さえ耐えられないというのは、
津波の力が如何に凄まじいものかを思い知らされます。


さて、八戸からスタートした三陸海岸の旅も
いよいよ終わりを迎えようとしています。
11:00発潮プランニング金華山行きに乗船。
1週間にこの1本しかない定期便です。
僕は事前予約して行ったのですが、
当日飛び乗りの乗客が多かったらしく、
「新型コロナがあるから混雑を避けたいってのに
予約無しで来るたぁ良い度胸じゃねェか」
とガイドのお爺さんが怒っていました。


何はともあれ、遂に辿り着きました!
11:38、金華山に到着。
八戸の鮫角から600kmにも及ぶ三陸海岸の最南端です。
3日間を費やして三陸海岸を制覇しました。


この金華山は人口がたったの5人。
10km2以上の面積がありながら
何故それだけしか住んでいないのかと言えば、
この島全体が黄金山神社の境内になっているからです。
奈良の大仏建立に際して、
日本で初めて金の見付かったのが
ここ金華山だったことから創祀され、
「3年連続で参拝すると一生お金に困らない」という
特に金運にご利益のある神社です。
…船の中の案内放送で知りました。


足腰の悪い参拝者の為に
神社がマイクロバスを出してくれますが、
輸送能力が船の定員に全く見合っていないので
基本的には徒歩で拝殿まで向かうことになります。


ここもギリギリ三陸海岸の一部というだけあって
島は四方がかなりの急斜面になっており、
参道も結構な急坂です。


石段ならぬ芝段を登って拝殿へ。


境内には鹿が沢山います。
神の遣いとして保護されているとか。
対岸の牡鹿半島から泳ぎ着いたのでしょうか。


参拝の前にまずはお清めです。
ただ、洗うのは手ではありません。
この銭洗所で洗うのは…


お金です。
お金にこびり付いた不浄を洗い落とし、
種銭として財布に入れておくことでお金を引き寄せるのだとか。
中には紙幣を洗う人も居るそうですが、
僕は小銭だけにしておきました。


そして、これが金華山黄金山神社の拝殿。
これまで雨がぱらつく天気だったのに
ここへ来て日が射してきました。
僕の経済状況の未来が明るいことを暗示してくれているのでしょうか。


参拝を終えたので金華山ですることの9割は終わったのですが、
まだちょっと時間があるので
金華山本体にも登ってみます。


参道にしては中々ワイルドな道だな…
足を滑らせないよう慎重に進みます。


上がってくるほど道が穏やかになってきました。
島がお椀型をしているのでしょうか。


水資源に乏しい金華山で
水不足の解消を祈願して建立された水神社。
ここで時間切れになってしまったので港に戻ります。
定期船は1週間に1便しかないので逃したら大変です。


三陸海岸の最南端ということでやってきたので
出来ればこの金華山の最南端にも行ってみたいところですが、
そちらへの道はかなりの悪路な上、
日帰りではまず間に合いません。
稀に土曜日に船の出ることがあるので、
その際に宿坊に泊まって目指すしかない
かなり到達難易度の高い岬です。
行ってみたいなぁ…


13:30発潮プランニング女川行きに乗船。


遠目にも分かる巨大な防波堤を備えた女川原子力発電所。
東日本大震災の際はすんでのところで持ち堪えました。


14:09、女川港に到着。


いつの間にか晴れていますね。
女川駅の駅舎の中には女川温泉が入っており
女川町の新たな観光地として人気を馳せていますが、
残念ながら今回は時間がありません。


14:55発JR石巻線普通小牛田行きに乗車。
鈍行で北松戸まで帰ろうとするとこれが最終列車です。


万石浦を脇目に走ります。


15:21、石巻駅に到着。
4年振りの石巻です。
全然変わっていませんね。


えっ、石巻に三越があるの!?
驚くほど小さい百貨店です。
というか、洋服しか扱っていないように見えます。
百貨店とは一体。


前回行った田代島が猫の島だったからか、
石巻のご当地マンホールは
ネコ系のポケモンに溢れています。


15:54発JR仙石線快速仙台行きに乗り換え。


仙台駅で16:55発JR常磐線普通原ノ町行きに乗り換え。
仙台は例の如く素通りです。


5年前はまだ復旧していなかった浜吉田-相馬も
4年前の12/10に復旧しました。
立派な高架になっています。


そう、今月は三陸鉄道だけではなく
JR常磐線も9年もの長きに渡る不通が解消され、
先週3/14に全線開通を果たしたのです。
これは乗り通さないわけにはいきません。


原ノ町駅で18:37発JR常磐線普通いわき行きに乗り換え。


常磐線では全線復旧に伴って交通系ICカードの適用範囲が拡大され、
初めて仙台エリアと首都圏エリアが接することになりました。
例によってエリアを跨ぐ移動では利用出来ず、
しかも東海エリアと接している東海道本線や御殿場線と違い、
何故か1駅だけ緩衝地帯が設けられた為、
現在、常磐線の全80駅の中で唯一交通系ICカードの使えない桃内駅。
何と可哀想な…


でも、駅前がこんな有様なので
そもそも利用者が居ないのでしょうか。
ただ、列車交換したりするので運行上は重要な駅です。


駅舎内には空間線量計が設置されていました。
IC対応改札機は無いのに線量計は設置するのか…


浪江駅でも長時間停車。
ここからが最後の復旧区間です。


現在では沿岸部の避難指示が解除された浪江町ですが、
未だに人の気配はありません。


浪江駅の駅舎内にはポケモンのフィギュアが飾られていました。
ポケモン作者所縁の地なのだそうです。


19:12、双葉駅に到着。


誰も居ない真新しい駅舎。
閑散としています。


何と西口は何処にも出られません。
そう、この双葉駅は帰還困難区域に囲まれているのです。
双葉町は福島第一原子力発電所の事故以降
9年間に渡って町の全域に避難指示が出されていましたが、
常磐線の復旧に伴って駅周辺と
北東部の極一部だけ避難指示が解除されました。
が、駅西側はまだ一切解除されていない為、
現状では何処にも出られない出口という珍妙な状態になっています。


東口はロータリーが整備されており、
こちらが現在外界に通じる唯一の道です。


案内地図がブルースクリーンになっている…
未完成感が凄いですね。
正直、無理に全線復旧と駅の再開を合わせずに
もう少し復興が進んでから再開しても良かったのでは。


駅前に商店があったので
もう新しくお店が出来たのかと思ったら、
9年前から放置されているものでした。
この辺りは津波が来たわけではないので
建物はかなり綺麗な形で残されています。


帰還困難区域の指定が外れたのは
駅周辺では駅前のこの道路1本だけで、
周辺の建物や脇道には一切立ち入ることが出来ません。
秘境駅とはまた違った隔絶のされ方ですね…

ところで、女川駅で列車に乗る際に述べた通り、
先程降りた列車が鈍行のみで北松戸駅へ到達出来る最終列車です。
ということは、僕は今夜この地で夜を明かさねばならないのでしょうか。


いいえ、鈍行縛りを無くせば帰れるのです。
19:28発JR常磐線特急ひたち30号品川行きに乗車。
双葉駅は言わば福島第一原子力発電所建設の見返りに
昭和43年から急行列車、その後特急列車が停車していた過去があり、
今回の全線復旧に伴う特急ひたちの仙台直通再開でも
再び停車駅に指定されたのです。
残念ながら、現状としては日本一停車の意義が無い
特急停車駅と言わざるを得ませんが…
その内賑わいを取り戻すのでしょうか。


広野駅で20:00発JR常磐線普通いわき行きに乗り換え。
そのまま土浦駅まで特急に乗り続けていれば
23時前には北松戸駅に着けるのですが、
少しでも特急料金を浮かす為に普通列車に乗り換えます。
実はこれ、双葉駅で降りた列車です。
追い付きました。


20:24、いわき駅に到着。
大都会に見える…
乗換時間は31分間しかありませんが、
ここで夕食を食べられなければ今夜は夕食抜きです。


急いで駅前の百貨店に駆け込んでラーメンを啜り、
走っていわき駅へと戻ります。


20:55発JR常磐線普通水戸行きに乗り換え。
何とか間に合った…


この後は勝田駅で22:32発JR常磐線普通我孫子行きに乗り換え。
我孫子駅で0:12発JR常磐線各停松戸行きに乗り換え、
0:29、北松戸駅に帰着しました。
アゼルバイジャンやトルクメニスタンへの渡航の夢は絶たれましたが、
これはこれで楽しい三連休でした。

脚注
※「600kmにも及ぶ三陸海岸」
   この距離はリアス式海岸によって大幅に水増しされており、直線距離では約250km。

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