ポーランド出張第6日目。
ポーランドを発ちます。
6:30、起床。
手早く片付けて電停に向かいます。
Aleja Lotników電停(空港通り電停)から
7:17発市電10系統Metro Młociny
(メトロ・ムウォツィニ)行きに乗車。
朝のWarszawa Centralna駅(ワルシャワ中央駅)。
あまり時間帯による人の量の変化が無いような。
朝食を食べて列車の時刻を待ちます。
8:35発IC128列車Брэст-Цэнтральны
(ブレスト中央)行きに乗車。
クラシカルな客車列車ですね。
欧州の旅の醍醐味である国際列車です。
眠いので取り敢えず寝ます。
起きたらこんな感じ。
既に国境の手前まで来ていました。
11:05、Terespol駅(テレスポル駅)に到着。
57分間停車するポーランド側の国境駅です。
Тирасполь(ティラスポリ)と響きが似ているけど、
「川沿いの国境の町」みたいな意味でもあるのかな?
左腕に遊戯王のデュエルディスクみたいな装置をはめた
出国審査官が乗り込んできて出国審査をします。
日本のパスポートなら顔パス…
と言いたいところですが、ビザが多過ぎるからなのか
滅茶苦茶念入りに検査していました。
緑色のロシアの機関車が牽引する
中国からの貨物列車なんかも停まっています。
一帯一路でしょうか。
長い停車時間を終え再び走り始めた列車は
ゆっくりと国境のБуг(ブーク川)を渡ります。
橋を渡ってすぐの操車場のようなところで
国境警備隊が乗り込んできて入国審査。
乗客のパスポートを回収し、
何処かで入国印を押してから返却します。
というわけで、ベラルーシ共和国入国です!
(以降、ミンスク時間UTC+3.0h)
13:47、Брэст-Цэнтральны駅(ブレスト中央駅)に到着。
欧州最後の独裁国家とも呼ばれるベラルーシ。
ビザの取得が難しいことでも有名で、
今回はトランジットビザという裏技を使いました。
…最近は随分条件が緩和されてきていて、
Мінск国際空港(ミンスク国際空港)から
ロシア便以外で出入国すれば、
30日間ビザ免除になっていたりするのですが、
僕の場合は入国がそもそも鉄道だし、
出国はロシア便を使うので何一つ条件を満たしていません。
まるで城塞のようなБрэст-Цэнтральны駅。
ディズニーランドにあっても違和感ありませんね。
舞浜駅の駅舎をこれに変えよう(提案)
この荘厳な駅舎は上下線のホームの間にあり、
町のどちらから来ても跨線橋を渡らねばなりません。
町の中心部はこの写真の右側にあるので、
駅舎もそちら側に建てれば良かったのでは?
と思ってしまいますが、
実はこれには重要な理由があります。
右側のホームはМаскоўскі Бок(モスクワサイド)、
左側のホームはВаршаўскі Бок(ワルシャワサイド)で、
両者は軌間(線路の幅)が異なるのです。
Маскоўскі Бокはロシア規格の軌間1,520mmで、
Варшаўскі Бокは西欧規格の軌間1,435mm。
その為、このБрэст-Цэнтральны駅を直通する列車は
全てここで台車を交換することになります。
台車交換を体験したい場合は、
火・日曜にBerlin Ost駅(ベルリン東駅)から来る014М列車、
月曜にNice-Ville駅(ニース市駅)から来る018Б列車、
水曜にPraha hlavní駅(プラハ本駅)から来る022А列車、
金曜にParis Est駅(パリ東駅)から来る024Й列車、
火・木・土曜にWarszawa Zachodnia駅
(ワルシャワ西駅)から来る010Щ列車のいずれかか、
木・土曜以外にМосква Беларусский駅
(モスクワ・ベラルースキー駅)から来る
上記列車の反対列車に乗りましょう。
特に018Б列車はフランスを出発して
モナコ、イタリア、オーストリア、チェコ、ポーランド、
そしてベラルーシを経てロシアに向かい、
実に8ヶ国を経由する実に夢のある列車です。
恐らく経由国数世界一であろうこの国際列車に
是非とも乗ってみたいところですが、
残念ながら第三国人はベラルーシ・ロシア国境を
鉄道で越えることができません。
長々と蘊蓄を認めてしまいましたが、
何はともあれ駅に荷物を預けて街に繰り出します。
独裁国家なだけあって旧ソ連感が強い…
と思いきや、目抜き通りは今風です。
歩行者天国にあった喫茶店で遅い昼食。
ジャガイモのパンケーキと訳されることもある
ベラルーシの国民食Драники(ドラニキ)です。
ここのДраникиはハッシュドポテトっぽいですね。
豚肉入りのトマトソースと良く合っていて美味しいです。
お堅いレストランで出てくる感じではありませんが、
普段から食べたいちょっとジャンクで素朴な味です。
お腹を満たしたら町外れにある観光地へ。
この巨大団地は旧ソ連っぽいですね。
いや、中国かな?
雨が降り出す中やって来たのは
赤い星が輝くБрэсцкая Крэпасць(ブレスト要塞)。
第一次世界大戦の際に建造され、
第二次世界大戦ではドイツ軍とソ連軍の間で
激しい戦闘が繰り広げられました。
その経緯もあって、今では
ベラルーシ国民の愛国心を煽る
プロパガンダ的存在にもなっています。
ちなみに、ここでは勇ましい行進曲が流れています。
社会主義っぽいですね。
敷地内には何台もの戦車が並べられています。
巨大な像もあります。
手前は「長期間の抵抗で疲弊した兵士が水を汲む姿」だそう。
そして、上の写真で奥に見えていたのが
このБрэсцкая Крэпасцьのシンボルでもある
Мужество(勇敢)と名付けられた像です。
造花や看板と比較して
この巨大さがお分かりいただけるでしょうか。
文字通りБрэстの顔と言っても良い存在感ですが、
勿論これは戦後に建てられたものなので
これの所為で世界遺産登録が阻まれている
…のではないかと個人的には思います。
これが戦時中からある要塞本体。
ドイツ軍の猛攻によって穴だらけになっており、
戦闘の壮絶さを如実に伝えています。
ドイツ軍の侵攻経路を示した図。
歩いているだけでは中々判りませんが、
Брэсцкая Крэпасцьは
五稜郭などと同じ星形要塞になっています。
最終的にはドイツ軍に占領されてしまったそうですが、
ソ連軍の抵抗はそれはそれは凄まじいものだったそうです。
Брэсцкая Крэпасцьのすぐ側に
Музей Чыгуначнай Тэхнікі
(鉄道技術博物館、看板はロシア語表記の
Музей Железнодорожной Техники)
があったので、寄ってみることにしました。
窓口が閉まっていたので
もう閉館したのかと思ったのですが、
近くを通り掛かったおじさんが係員を呼んでくれて
中に入ることが出来ました。
窓口では土産物まで売っています。
博物館と言っても屋外展示だけで
鉄道史を解説するようなものは特に無いのですが、
その分旧ソ連時代の蒸気機関車を主として
何十台もの車両が静態保存されている様は圧巻です。
Warszawa(ワルシャワ)の鉄道博物館にもあった
戦闘用車両もありました。
Warszawaの方が強そうでしたね…
これはWarszawaには無かったラッセル車。
ベラルーシはそこまで雪が降らないはずなので、
旧ソ連の他の地域で用いていたものでしょうか。
ゴツい蒸気機関車が三重連で後ろに付いているけど、
これって現役当時もこんな編成だったのかな…?
そんな馬力の要る峠とか無いような…
それとも、大雪原で故障したら凍死してしまうから
冗長性を持たせているということなのでしょうか。
緑色の車体に赤い星が良く映える、
この博物館の一番人気らしいТЭ-8026型蒸気機関車。
鈍重そうな見た目に違わず、
設計速度は80km/hだったとか。
運転台を見られる機関車もあります。
メッチャ青いけど、これは流石に後から塗ったんだよね…?
ただただ使わなくなった車両を
そのまま静態保存してあるだけかと思いきや、
本物の蒸気機関車を改造して
蒸気機関車の仕組みを解説する展示なんかもあり、
中々力を入れている様子です。
願わくば路線図とか時刻表の展示も欲しかったけど、
それは機密情報なのかな…
いつの間にか晴れていました。
散歩しながらのんびり駅に戻ります。
途中のスーパーマーケットで
行動食とお土産を買い込みます。
旧ソ連の独裁国家と言うと
今も物不足に喘いでいそうな印象を持ってしまいますが、
他の欧州各国と比べても遜色無い品揃えです。
それでいて物価はかなり安く、
イクラ160gが2.29BYN(100円弱)という破格の安さ。
ポーランドから買い出しに来ても元が取れそうですね。
昼下がりのМухавец(ムハヴェツ川)。
Брэст市民憩いの場所でしょうか。
旧ソ連らしからぬまさかのドミノピザが。
良く見たら頭文字のDだけキリル文字(Д)になっていませんね。
筆記体ならДもほぼDみたいな形になるので
これでも問題無いということなのでしょうか。
旧ソ連アピールでレーニン像。
ちゃんとありますよ。
夕食は公園内にあるレストランで
Борщ(ボルシチ)とДраники。
お昼のДраникиは
ファストフード感がありましたが、
ここのはクリームを包んだ分厚い牛肉が載せられており、
お洒落なレストランにもピッタリの高級感です。
安食堂から高級レストランまで、
アレンジ次第で幾らでも化けるのも
Драникиの素晴らしさですね。
ベラルーシ料理をじっくり味わっていたら
辺りが暗くなってきたので、
急いで駅へと向かいます。
実はこの時点で既に22時過ぎだったり…
何とか真っ暗になる前に戻って来られました。
荷物を回収して列車を待ちます。
23:53発096Б列車に乗車。
更に東へと向かいます。
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