(無題)

6:05、起床。
そんなに眠いとは感じていませんでしたが、
いつの間にか寝落ちしてしまっていました。


早起きしたので朝市に来てみました。
Piața Centrală(中央市場)です。


おお、賑わっていますね。
モルドヴァ人の朝は早い。


旧ソ連らしい露店の立ち並ぶ市場です。
ありとあらゆる生鮮食品が並んでします。
熱帯系のもの以外は。
朝食もここで買いました。


勿論、電化製品だって豊富に取り揃えています。
でも、露店であんなでっかいスピーカーとか買うんだろうか。
デジカメもここで買ってしまった方が良いかな…


Piața Centralăの隣にあるバスターミナル。
今日はバスで遠出するのでチケットを買います。
ネットでは時刻表の情報が全然出てこなかったのですが、
11:00発の便があったのでそれにしました。


時間があるのでちょっとその辺を散策します。
まずはChișinău駅(キシナウ駅)。


Chișinău駅構内。
旧ソ連らしく立派な駅舎ですが、
列車本数が少ないので閑散としています。
モルドヴァでは鉄道はあまり主要な交通手段ではないんですね。


そんな閑散とした鉄道駅のお客を増やそうとしているのか、
鉄道模型を展示しているコーナーがありました。
ささやかな鉄道博物館もあるようですが、
残念ながら11:00開館なのでまだ開いていません。


ホーム。
列車の発車まではまだ3時間以上もあるのに
何故こんなに人が集まっているのだろう…
あまりにも列車本数が少ないから
集会所みたいな扱いになっているのでしょうか。


ホームの端にはやけにカラフルな蒸気機関車が静態保存されていました。
良く見たらこれモルドヴァの国旗の色ですね。
ちょっと玩具っぽい配色。


嘗ては国営ホテルだった廃墟。
これまた旧ソ連らしいセンスの建物です。
現在ではヤンキーの溜まり場になっているという説もあるので、
夜間は不用意に近付かないようにしましょう。


そろそろロストバゲージした荷物が届いていないかと
念の為空港に行って確認しておきます。
str. Ciufleaバス停(チウフレア通りバス停)から
9:08発30番バスに乗車。
このバス停、通りの向かいにAcademia de Științe a Moldovei
(モルドヴァ科学アカデミー)があるからか、
いきなりeduroamが繋がって吃驚しました。
押し掛けてセミナーしたら実績になるだろうか。
あと、バス停でバスを待っていると、
お爺さんやお婆さんが容赦なく
ロシア語で話し掛けてきます。
聴き取れた単語から推察するに、
時刻やバスの行き先を尋ねていたっぽいけど、
時刻はともかく、バスの行き先なんて
どう見たって観光客丸出しの日本人に訊いてどうするのか。


Grădina botanicăバス停(植物園バス停)、
あの「キシナウの門」のところで
架線が途切れてしまう為、
ここでパンタグラフを下ろしてバッテリー走行に移ります。
郊外に出るのでここからは別料金…
だと思ったのですが、相変わらず2MDLのようです。


行きで撮りそびれた静態保存されているTu-134。
一度くらいツポレフ乗ってみたいな…
ただ、残念ながら現在ではもうモルドヴァ航空は
ツポレフ機を保有していません。
ちなみに、現在のモルドヴァ航空の保有機材数は驚きの5機です。
世界一小さい国営航空ではなかろうか。


たったの10円強で空港に到着。
世界一アクセスが安価な国際空港ではなかろうか。
何はともあれインフォメーションへ。
PIRを見せて荷物は届いたか訊いたら、
「まだ来てない、ていうか電話を待て」
とあしらわれました。
本当に電話してくれるんだよな…?


仕方ないのでデジカメ無しで行きます。
再び30番バスに乗って市街に戻り、
11:00発Тирасполь(ティラスポリ)行きのバスに乗車。
何だか妖しい内装ですね。
バスの外観は写真を撮ろうとしたら制止されました。
ロシア語で。
ロシア語が分からない振りをしたら撮れたのかな…


牧歌的な景色の中を走ります。
道路状況はあまり良くありません。

1時間ほど走ったところで「国境」が現れました。
しかし、モルドヴァの出国審査はありません。
これは括弧付きの「国境」なのです。
そう、この先は勝手にモルドヴァからの独立を宣言し、
何処の国からも承認されていない所謂未承認国家。
モルドヴァからすると自国の一部という立場なので
出国審査は当然ありませんが、
入国審査はきっちりとあります。
何故かバスの乗客の半分くらいは
入国審査を受けていませんでしたが。
見たところ、ウクライナへ抜けるだけのウクライナ人は
入国審査が免除されるようです。


あらゆる国から国家承認されておらず、
入国スタンプを押すと(特にモルドヴァで)問題になってしまう為、
このレシートのようなペラペラの
Миграционная карта(入出国カード)が渡されて終わりです。
失くさないように気を付けましょう。


というわけで、沿ドニエストル共和国に入りました!
その名の通り、Днестр(ドニエストル川)に沿って
くねくねと細長い国土を有する「国」で、
ルーマニア語系住民が大半を占めるモルドヴァでの
民族意識の高まりに危機感を覚えたロシア系住民が、
1990年に独立を宣言したことに端を発しています。
ロシアより旧ソ連感の残るモルドヴァ
よりも更に旧ソ連が色濃く残る場所として名を馳せています。
入国審査官に
「カメラを持っていないだろうな?」
と訊かれたので、もしロストバゲージせずに
いつものカメラを持ち込んでいたら、
面倒なことになっていた…のかも知れません。


沿ドニエストルの象徴Днестр。
領土は基本的にはДнестрの東岸ですが、
今通ってきたБендер(ベンデル)だけは西岸です。


Тираспольに入りました。
小さなバス停でちょこちょこと乗客が降りていき、
終点まで乗っていたのは4、5人でした。


Тирасполь駅(ティラスポリ駅)に到着。
町の外れにあってあまり人通りがありません。
中心街まで歩きます。


沿ドニエストル共和国は未承認国家ながらも
ナンバープレートにもしっかり「国旗」が描かれています。
このナンバーでモルドヴァに行ったら
面倒なことにならないのでしょうか。


中心街までやって来ました。
別にここまで来たからといって
そんなに人通りが増えるわけでもないですね。
ここも主な公共交通機関はトロリーバスのようです。


何はともあれお昼時なので昼食にします。
Chișinăuの宿のお兄さんがお薦めしていたモルドヴァ料理、
Mămăligă(ママリガ)です。
Mămăligăという単語が指しているのは
画面上方にあるバニラアイスクリームのようにも見える物体で、
トウモロコシの粥に牛乳とバターを混ぜ込んだ
餅とパンの中間のような食感の料理です。
付け合わせの牛肉やチーズなどと一緒に頂きます。
ネギもかかっていてちょっとアジアンな感じです。
このお店、実はお寿司とかも売っていたので
お店のテイスト自体がアジアンなのかも知れませんが。


しかし、そうは言っても親ロ派の国なだけあって
やっぱり旧ソ連名物のこれがあります。
Мороженое(アイスクリーム)とКвас(クヴァース)の屋台です。
旧ソ連の夏はやはりКвасが無いと始まらない!
歩き回った後に飲むと最高です。


一方で、旧ソ連らしからぬ観光案内所なんてものも出来ていました。
案内によればお土産も買えるとのこと。
閉店中でしたが。


両替所の国旗は若干標準的なものとは違います。
ブルガリアとコロンビアは国章付き、
そして日本はまさかの旭日旗です。
香港はBlue Ensign(ブルー・エンサイン)じゃないのに何故…


同じ未承認国家仲間のアブハジア共和国と
南オセチア共和国の事務所がありました。
彼等もロシア系住民が蜂起したクチです。
どちらもジョージア領内にあります。


Тираспольのモニュメントがありました。
果たして年間何人の観光客が記念撮影するのだろうか。
目の前でカップルが記念撮影していたので、
ついでに僕も撮ってもらいました。


こちらは英語のIが分からない人の為に
ちゃんと露訳してЯにしたモニュメント。
英語の通用度はお察しです。


Площадь Суворова(スヴォロフ広場)。
ロシア、沿ドニエストルを始めとして
様々な国と地域の旗がはためいています。


左から順に、未承認国家仲間のアブハジア共和国、
南オセチア共和国、ナゴルノ・カラバフ共和国の旗。
ロシア系住民の独立意識高過ぎでは。
ナゴルノ・カラバフは主にアルメニア系ですが。


Памятник Ленина(レーニン像)が屹立する
Совиетул Супрем ши Гувернул ал РМН(連邦政府庁舎)。
ザ・旧ソ連ですね。
ガチの旧ソ連だったらこんな政府の建物を撮影したら
秘密警察がやって来て連行されてしまいますが。


離合も出来なさそうな頼りない橋、
実はこれ「国境」の橋です。
その割に全然警備が無いな…
いや、何処からか分からないように見張っているのでしょうか。


そして、これまた旧ソ連あるあるのТ34戦車モニュメント。
モルドヴァからの独立戦争の際に使ったのでしょうか。

駆け足で街を回ってきましたが、
そろそろ良い時間なのでChișinăuへ戻ることにします。
じゃあ、バスのチケットを買って…
…そう言えば、ここは鉄道駅でもあるけど、
Chișinăuまで鉄道で行けたりするのかな?


おお!16:48発という御誂え向きの列車があるじゃないか!
ただ、旧ソ連圏では第三国人の国際列車への乗車は禁止されることが屡々。
特にこういう複雑な事情のある地域では尚更です。
果たして、日本人が乗ることは出来るのか…


出来るようですね。
普通に切符を売ってくれました。
発行者はРЖД(ロシア国鉄)になっています。
鉄道運賃は130PRB(900円弱)。
150MDLにほぼ等しいので、
36.5MDLのバスと比べて実に4倍の値段です。
それでいて所要時間は3割増。
贔屓目に見ても何一つ利点が無いので、
鉄道を利用するのは余程の物好きだけだろう…


と思ったら、プラットホームには大勢の人が。
沿ドニエストルって実は鉄オタが多いのか…?


16:41、定刻通り列車がやってきました。
065М列車Chișinău行きに乗車。
ロシア語ではКишинёв(キシニョフ)です。
プラットホームに居た人達は単なる送迎で、
誰一人として乗ってきませんでした。
やはりそんな物好きは居ないか…
この列車はМосква(モスクワ)始発とあって
大荷物を抱えた乗客が次々に降りてきます。


16:47、定刻より1分早く出発しました。
Тираспольから乗らないどころか
そもそもこの列車でモルドヴァに向かう乗客自体全然居ないな…


Бендер 2駅(ベンデル2駅)に停車。
ここは30分間停車します。
停車時間や位置からして
ここで出国審査が行われるものと思っていましたが、
パスポートや出入国カードは一切確認されませんでした。
17:33にやはり定刻より1分早く出発。
もしかして、時計が1分進んでいるのだろうか。


国境付近の工業地帯。
そもそも、沿ドニエストル共和国が「独立」出来たのは
旧ソ連時代からこの地域に工場が多く建てられていたからで、
実は本国のモルドヴァよりも経済的には裕福だそうです。
だからこそ欧州最貧国のモルドヴァとしては
何が何でも逃すわけにはいかないという。


一方、モルドヴァ領に入るとこんな感じ。
何とも長閑です。
時折、牛糞の臭いさえ漂ってきます。


18:03、Bulboaca駅(ブルボアカ駅)に到着。
税関職員が乗り込んできました。
どうやらここが国境駅のようですね。
ただ乗り込んできただけで
パスポートコントロールも手荷物検査もありませんでしたが。


勿論定刻より1分早い18:31に出発。
同じ車両で終点まで乗るのは、僕の他は僅か2人だけのようです。
Chișinăuの人はМоскваに行かないのでしょうか。
飛行機の方が安いからそっちを使うというだけかな?


19:14、Chișinău駅に到着。


というわけで戻ってきました。
心成しかスラブからラテンの国に戻って来て
街の雰囲気もちょっぴり陽気に感じます。
言うてここもガッツリ旧ソ連ですが。


モルドヴァ最後の夜はやはりワインで締めようと、
ちょっとだけ高級そうなレストランまでえっちらおっちら歩いて
ウサギのソテーと一緒に頂きます。
流石本場モルドヴァのワインは違う
…とか言えたら良かったのかも知れませんが、
残念ながらお酒の違いが分かる男ではありません。
でも、リーズナブルで普通に美味しかったです。

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