(無題)

今学期取った授業の中では
頭一つ飛び抜けて重い量子情報物理のレポート。
提出期限は来週なのに一昨々日に居残りしてまで仕上げ、
休日なのに昨日わざわざ提出しに行ったのは
何も僕が後回しの嫌いな性格というだけではありません。
実は、今週は先端光科学実験実習Ⅱの実験で
月曜日から金曜日まで伊丹に出張なのです。
そう!となればまさか伊丹まで遠征して
実験だけやって帰ってくる訳がありません。
勿論、しっかりと観光もさせていただきます。
という訳で、今日から前入りして関西を巡る事にしました。

3:20、起床。
眠い…
しかし、始発に乗る為なので仕方ありません。
直通バスを使おうか迷いましたが、
運賃が5割近く高くなるので止めました。
支度を済ませて北千住駅に向かい、
4:44発JR常磐線快速上野行きに乗車。
日暮里駅で4:55発JR京浜東北線各停大船行きに乗り換え、
浜松町駅で5:18発東京モノレール
区間快速羽田空港第2ビル行きに乗り換え、
羽田空港第2ビル駅から6:30発ANA411便に乗り換え。
大学側から支給される交通費は新幹線基準なのですが、
差額は自己負担して飛行機を使います。
まあ、早割を使えばそんなに差は無いし、
伊丹なら伊丹空港からすぐ近くで便利…

という理由でもないんですけどね。
7:45、神戸空港に到着。
伊丹を飛び越して神戸にやって来ました。
ただ通過する以外では6年振りの神戸です。
この神戸空港も伊丹や関空と同じく
一括りで「大阪」という扱いらしく、
全日空なら運賃も一緒なのでこっちにしてみました。


8:00発神戸新交通ポートアイランド線三宮行きに乗車。


前面展望にかぶりつきます。
朝だからか乗客が少なくて静かです。


理学部生が実験の為に神戸空港に降り立ったと聞けば
京コンピュータ使うんでしょ?と言われそうですが、
僕の研究ではそんな高等なものは一切使いません。
そもそも、京コンピュータはネット経由で使えますしね。


神戸水上警察署なる警察署がありました。
流石は海運で栄えた瀬戸内海。
嘗てはコンテナ取扱個数世界一だった神戸港の残照か。


高速道路の入り組む中心街に入ってきました。


8:18、三宮駅に到着。


これが神戸で最も栄えている三宮…!
…思っていたよりはショボいような気がしないでもない。
まあ、名古屋に比べたら遥かに都会ですが。
何てったって味噌臭い名古屋なんかと違って
瀟洒で名を馳せた神戸ですもの…


…朝早いからなのか知りませんが、
ゴミの散乱する通りにカラスが飛び交って
荒廃しきった雰囲気です。
神戸ってこんな街だったのか…


神戸の真の姿を知ったところでまずは神社に参拝。
三宮のど真ん中に鎮座する生田神社です。


荒れ果てた外の通りとは違い、
凛とした空気が漂っています。


本殿の裏にある生田の森では
水に浸すと占い結果が浮かび上がる、
その名も縁結び水みくじなるものが試せるそうなのですが、
生田の森の開門時間は10時からでした。
僕はスタート地点にすら立たせてもらえないのか…


西安門。
朝が早過ぎて早くも小腹が空いてきたので、
中華街で何か買えないかと思ったのですが、
神戸の中華街は朝が遅くて何も買えず…
その代わり、近くのパン屋から良い匂いが漂ってきたので
つい釣られて買ってみたら、
期待の遥か上を行く謎の美味しさでした。
そうか、異人街だからパンも美味しいのか。


それでは、散策に出掛けたいと思います。
元町駅から9:10発神戸高速線普通高速神戸行きに乗車。
阪神電鉄の列車です。


神戸高速駅で9:14発神戸高速線特急新開地行きに乗り換え。
阪急電鉄の列車です。


新開地駅で9:22発神戸高速線普通志染行きに乗り換え。
神戸電鉄の列車です。
関西は私鉄が入り組み過ぎて訳が分からない…
神戸高速線は非地元民を貶めようと利便性を高めようと
数多の私鉄で共有している線路なのです。

9:23、湊川駅に到着。
ここで神戸街めぐり1dayクーポン神鉄拡大版を購入。
神戸中心部のJR以外の主な路線と神鉄全線が乗り放題、
更に加盟施設で使える700円分の商品券も付いた
お得な企画乗車券です。
これで神戸を乗り潰します。


湊川駅ですぐに折り返し、
新開地駅で9:39発神戸高速線特急須磨浦公園行きに乗り換え。


9:58、須磨浦公園駅に到着。
駅の上に見えているのは何でしょうか?


何とロープウェイです。
この須磨浦公園駅は全国でも珍しい
鉄道駅舎から直接ロープウェイが延びている駅なのです。


須磨浦ロープウェイは神戸街めぐり1dayクーポンの
商品券が使えるので乗ります。
こじんまりとしたゴンドラで山上へ。


おお、神戸の街並みが一望の下に。
夜景も綺麗そうですね。


こちらは神戸と逆方向の明石方面。
明石海峡大橋が見えます。
ちょっと足を延ばせば四国にも行けそうだな…


カーレーターなる乗り物があったので乗ってみます。
ベルトコンベアにゴンドラが載せられた、
ジェットコースターとエスカレーターの合いの子のような乗り物で、
ベルト越しにローラーの凹凸が伝わってきてかなり揺れます。
この乗り心地の悪さを逆手に取って売りにしているようで、
「評判の『乗り心地の悪さ』を適度に保つため、
施設の維持管理に努めています」との事。
僕も「乗り心地の悪さ」という文言に惹かれて乗った一人です。


2分半ほどで鉢伏山山頂の駅に到着。
ここからは登山道が延びているので歩きます。


神戸中心街を抱く六甲山系には
「須磨アルプス」の別名が付いており、
須磨浦公園駅から「縦走路」が延びています。
最高所で312mしかないのにアルプスなんて名付けたら
スイス国民から訴えられそう。


一瞬で最初のピークである旗振山(標高253m)に到着。
茶屋があって高齢者で賑わっています。
ちなみに、旗振山という山名は
江戸時代に大阪の堂島米会所の米相場を
西国へいち早く伝える為に使われた旗振り通信で、
この山の山頂が中継地点として使われたからだそうです。
その通信速度は当時としては驚異的なもので、
大阪から岡山まで僅か15分しか要さなかったとか。


旗振山の裏手。
ここも神戸市(垂水区)ですが、
旧国名は摂津ではなく播磨です。


地元の老人会と思しき団体が頻繁に行き交う縦走路を歩きます。
何ならペットボトル1本くらいでも登れそうな山ですが、
皆さん結構本格的な装備を持っています。
オフシーズンの訓練なのでしょうか。
それとも、神戸の所得水準の高さが滲み出ているのか。


これだけの人が行き交う登山道ながら
以外にもところどころ抉れています。
ここなんかは幅が2m弱しかありません。


鉄枴山(標高234m)に到着。
摂津側の神戸が良く見えます。
晴れた週末にはお弁当を持ってふらりと山上に…
あー神戸に住みたくなってくる!


ん?
アルプスの縦走路だというのに
何やら団地に向かって階段が延びているぞ…?


そのまま高倉台団地に突っ込んでしまいました。
これが正規ルートです。
何とも大胆な登山道だ…
この団地の住人は登山し放題ですね。


高倉台団地を抜けると、
道が急峻になる事を警告する立て札が現れました。
階段の勾配がキツ過ぎて辛い。
1週間分の荷物を全て背負っているからな…


露わになった岩肌に設けられた階段を進みます。


遂に鎖場が現れました。
いよいよか!


あれだ!
住宅街の裏山に突如現れる鋸状の尾根。
僕がここへ来るきっかけとなった馬の背です。
とても神戸の団地の裏手にあるとは思えません。


そして、他ならぬこの馬の背が正に正規の登山コースです。
キルギスのスカースカをちょっと思い出す。


須磨アルプスの核心部。
最も狭隘な地点では幅1mほどしかありません。
とは言え、地元では小学校低学年でも遠足しているくらいなので
ちょっと気を付けていれば問題ありません。


市街地に下りてきました。
いやー、想像以上に歩き甲斐があった。
舗装路に出て来たからもう安心…
かと思いきや、登山道より生活道路の方が勾配がキツいです。


急勾配の坂に自転車を停める生活の知恵なのか、
車輪が排水溝に突っ込まれています。
雨が降ったらどうするのだろう…


鉄人28号が守る商店街。
鉄人28号を正面から撮りたかったのですが、
列車の時刻が迫っていたので
そんな余裕は全くありませんでした。


新長田駅から神戸市営地下鉄海岸線三宮・花時計前行きに乗車。
本当は和田岬線とかも乗りたかったのですが、
やはりそんな余裕は全くありませんでした。
というか、今日はそもそも日曜日だからな…


三宮の地下街で昼食。
1軒大行列の出来ているカツ丼屋があったので食べてみました。
トンカツ、卵、ネギ、それにご飯だけという
簡潔極まりないスタイル。
それだけに基本をしっかりと捉えていて
誤魔化しようのない美味しさがあります。
その人気に肖ろうとしてか
同じフロアに類似のカツ丼店が幾つもあるので注意しましょう。


せわしないですが、三宮駅から
14:28発神戸市営地下鉄山手線西神中央行きに乗車。


湊川駅で14:38発神鉄有馬線西鈴蘭台行きに乗り換え。
神鉄拡大版の1dayクーポンを買ったからには
神戸電鉄を乗り潰します。


神戸電鉄は神戸市街と北部の郊外を結ぶ鉄道。
地下区間を抜けると六甲山地に向かって
住宅街の中を駆け上がっていきます。


トンネルを抜けるとこんな駅が。
六甲山地のど真ん中にある菊水山駅です。
神戸中心部の湊川駅から
僅か4駅とは信じられない山深さ。
辺りに民家は一切無く、正に秘境駅です。
当然の事ながら利用者が極めて少なかった為、
13年前から全列車が通過する休止駅となっています。
事実上の廃駅なのですが、神戸電鉄はお金が無いので
休止という体でホームの撤去などを先延ばししています。
同じ神鉄には同様に昭和50年から38年間の長きに渡って
「休止」され続けてきた新有馬駅という駅もありましたが、
そちらは平成25年に遂に廃止されてしまいました。


たったの4駅でそんな秘境駅が現れるとなると、
その先には一体どんな魑魅魍魎が巣食っているのか…
と思いきや、もう一度トンネルを越えると六甲山地は抜け、
再びただの住宅街になります。
菊水山駅だけが特殊な訳です。


鈴蘭台西口駅。
ここがサミットのようです。


そこからほんの少しだけ下って
終点の西鈴蘭台駅に到着。
鈴蘭台西口駅を終点にした方が
電気代を節約出来たんじゃなかろうか。


名前からも想像が付くかも知れませんが、
鈴蘭台は神戸市街への通勤・通学者向けに造られた団地です。
神戸は山に囲まれているが故に
市街地に隣接した地域には中々住宅街を造成出来ず、
山を越した先に団地が造られています。


西鈴蘭台はただの乗り換え駅に過ぎないので
すぐに後続の列車に乗り継ぎます。
15:12発神鉄粟生線普通粟生行きに乗り換え。


再び山の中に分け入ります。
この藍那トンネル、左側にもう1本あるのが分かりますか?
実はニュータウン開発による需要増を見越して
巨額を投じて複線化工事を進めていたものの、
利便性、運賃共に優るバスが台頭した為に粟生線の利用者は激減。
今では複線化どころか存廃さえ危ぶまれる状況にあります。


山を抜けると再び住宅街。
まるで襞のような地形ですね。
この地形が建設費や維持費の負担を重くしているのですが。


沿線火災!?
運休しないか心配になりましたが、
涼しい顔をして通り過ぎていました。
野焼きだったんだろうか…


三度坂を駆け上がります。
前面展望にかぶりついていると、
まるでジェットコースターの如く
線路が上下している様子が見て取れます。


三木駅。
嘗てはこの付近を終点とする
三木鉄道という第3セクター鉄道も走っていたのですが、
平成20年に廃止されてしまいました。
神戸って都会で人が溢れているかと思いきや
意外とそうでもないのかな…


樫山駅。
今学期は樫山さんの下でTAをしていた身としては
撮っておくべきかと思った。


加古川を渡ります。


16:01、粟生駅に到着。
これで「あお」と読みます。
読める人は多分兵庫県民か鉄オタですね。


えらくハイカラな駅舎。
白い壁面に赤い瓦は沖縄っぽさも感じさせます。
あお陶遊館アルテなる建物が併設されていたので
どうやら陶芸が有名な町なようです。


駅からほんの少し歩くとこんな風景になりますが。
如何にも需要の無さそうな駅だな…
しかし、実は粟生駅には3社も乗り入れていたりします。
(神戸電鉄、北条鉄道、JR西日本)
秋葉原駅と同じですね。


さあ、ぼーっとしていられません。
粟生は神戸からかなり離れているので
うかうかしていると時間が無くなってしまいます。
折り返しの16:10発神鉄粟生線普通鈴蘭台行きに乗車。


日没。


鈴蘭台駅で17:09発神鉄有馬線準急三田行きに乗り換え。
まだまだ乗り潰しは終わっていません。
神鉄の運賃は安くないので
この機会に文字通り完全乗車を狙います。


有馬線沿線もまた神戸市街に通勤する人々の
ベッドタウンとして開発されています。
神鉄有馬線は山塊の南縁をなぞるように走っていますが、
驚いた事に有馬線の北側、
山の斜面にも団地が造成されています。
神戸の住宅地は斜面との戦いだな…


水道管の凍結に対して注意喚起する広告。
神戸なんて瀬戸内海だから温暖かと思っていたけど、
六甲山地を越えると完全に山岳気候なんですね。


横山駅で17:52発神鉄公園都市線
普通ウッディタウン中央行きに乗り換え。
樫山駅だけでなく横山駅もあります。
吉田駅は残念ながら近鉄ですね。


横山駅の隣はフラワータウン駅。


その隣は南ウッディタウン駅。


そのまた隣が終点。
18:00、ウッディタウン中央駅に到着。
遊園地の子供鉄道かと思うような駅名しかない路線ですね。


この辺りは昭和40年代以降に開発された
神戸三田国際公園都市の一部で、
神鉄公園都市線はそのアクセスの為だけに敷かれた路線です。
その為、観光客が来る事はまず無いです。
すぐに18:12発神鉄公園都市線普通三田行きで折り返します。


18:26、三田駅に到着。
慶應大学のある三田(みた)と同じ漢字ですが、
こちらは「さんだ」と読みます。


ちょっとだけ外に出てみました。
三田は他の終着駅とは違ってかなり栄えています。
そして、画面右端に停まっている赤いバスこそ
粟生線を窮地に追い込んだ神鉄の宿敵、神姫バスです。


神戸電鉄とほぼ同じ昭和2年に設立され、
去年90周年を迎えた歴史あるバス会社。


回送車両の方向幕には90周年を祝うメッセージが。
ちなみに、神姫バスは全国のバス会社で初めて
回送中のバスの方向幕に詫びを入れた
「すみません回送中です」を表示した会社だとされています。
電光掲示板方式だと色々遊べますね。


まだまだ乗り潰しは終わっていません。
この付近の神鉄は三つ股になっているので
何度も行ったり来たりしないと完全乗車出来ないのです。
折り返し18:36発神鉄三田線普通新開地行きに乗り、
有馬口駅で19:01発神鉄有馬線普通有馬温泉行きに乗り換え。


19:05、有馬温泉駅に到着。
東の草津温泉と並んで、江戸時代の温泉番付では
西の大関とされた由緒ある温泉地です。
実はここも神戸市だったり。
これにて神戸電鉄は完全乗車達成です!


温泉に浸かって乗り潰しと登山の疲れを癒したいところですが、
時間が無いのですぐに折り返します。
19:08発神鉄有馬線普通新開地行きに乗り、
有馬口駅で19:13発神鉄有馬線急行新開地行きに乗り換え、
谷上駅で19:23発北神急行電鉄西神中央行きに乗り換え。
この北神急行電鉄は谷上-新神戸のたった1区間だけの鉄道会社で、
しかもそのほぼ全線がトンネルです。
有馬・三田方面から山陽新幹線への短絡線として造られました。
ついでにこれも乗っておきます。


三宮駅で阪急神戸本線に乗り換えて梅田駅に到着。


ここで大阪大に進学した成岩中水泳部の同期FMと会い、
夕食を共にしました。
久し振りだな…実に懐かしい。
本来の出張期間は明日からで
今夜はまだ宿が取られていないので、
夕食の後はFMの下宿にお邪魔させてもらいました。

脚注
※「吉田駅」
   大阪府の近鉄けいはんな線にある。
   また、新潟県のJR越後線・弥彦線にもある。

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