北欧旅行第7日目。
北の大地グリーンランドを巡ります。
6:00、起床。
昨夜沈んだ位置のすぐ横に太陽がいますね。
この辺りだと太陽の位置で方角を知るのも一苦労です。
今日はまず昨日海から見たIcefjord(アイスフィヨルド)を
陸から見られる遊歩道を歩いてみます。
仔犬がいました。
可愛いな…
しかし、「ペットではないので触らないで下さい」
という看板がそこかしこに立っているので、
近付くのはやめておきます。
ここがIcefjordへの遊歩道の入口。
Icefjordからは少しずれた半島の先端に向かう黄ルート、
Icefjordを端から端まで歩く青ルート、
そのエスケープルート的な赤ルートがあります。
本来ならば青ルートを完遂したいところですが、
時間の制約上青ルートと赤ルートを繋いで
コースタイム3時間のルートを歩きたいと思います。
「ここから先、ユネスコ世界自然遺産
イルリサット・アイスフィヨルド」
と書かれた銘板がありました。
そう、何気にIlulissat Icefjordは世界遺産なのです。
グリーンランドは全部世界遺産級だと思うけどな…
既に流氷が見えていますね。
陸から遠目に見ても圧倒的な存在感です。
美しい入江がありました。
水の色だけ見ると泳ぎたくなるけど、
温度的には心臓麻痺を起こしそうだな…
せめて浜辺に下りるだけでもと思ったのですが、
“EXTREME DANGER!”だそうなのでやめました。
流氷が崩れた衝撃で津波が発生する事があるそうです。
そんな中遊覧船を出しているのか…
突如として木道が途切れてしまいました。
ここからは岩にペンキで描かれた印を頼りに進みます。
この印が絶妙に見付け難いです。
しかも、陽が浅いものだから光がペンキに反射して
余計に見付け難くなっています。
頑張ってルーファイして岩を登ると…
おお…
巨大な流氷が目の前のフィヨルドを埋め尽くしている…
圧巻の一言です。
耳を澄ますと氷の軋む音が聞こえてきます。
人間の付け入る余地を与えぬ世界ですね。
地球温暖化で大分付け入られているとかは言わない。
なお、この岩の上にはベンチがあるので
腰を下ろしてゆっくり眺める事が出来ます。
流氷の方からかなり冷たい空気が流れてきますが。
毎週末ここでのんびりしたい。
残念ながらそんなにのんびり出来ないので先に進みます。
相変わらず非常に分かり難い道です。
なまじ傾斜が緩くで何処でも通れてしまうからな…
偽の踏み跡も多数あります。
あっ、あんなところにテントが張ってある!
宿泊費を浮かせる為でしょうか。
ここで野営したら気持ち良いだろうな…
細い踏み跡が続いているので
思わず従いそうになりましたが、
何と無く嫌な予感がしたので岩の上に登ったら
赤ルートへの分岐を見付けました。
危ないな…
Icefjordの遊歩道を歩く際は気を付けましょう。
Ilulissatの町に戻ります。
何だか物騒な標識。
“MIANERSORIT! QAARTITERISOQARPOQ”だそうです。
グリーンランド語はGoogle先生さえ翻訳してくれないので
さっぱり意味が分かりません。
町唯一の郵便局。
アイスランドからグリーンランドに入国した際は
国内線のような扱いで
入国スタンプも貰えなかったので、
実家に記念の絵葉書を送っておきます。
日本への送料はDKK16也。
魚屋の前にピックアップトラックで乗り付けて
荷台に載せられたクジラを卸すおじさん。
ワイルドだな…
Ilulissatの港。
岩に腰掛けて暫しぼーっとしていたら、
イスラエル人のおじさんに写真を頼まれました。
イスラエル人も結構色んなところに居るな…
ILULISSATと書かれている橋の下に
パイプの通された吊り橋がありました。
この橋が開通する前はあの吊り橋を渡っていたのかな?
さて、お昼からはツアーに参加します。
Ilulissat郊外にある、船でしか行けない集落を訪れます。
流氷をすり抜けてIlulissatの南へ。
またあの3匹のクジラがいました。
1時間ほどでIlimanaq(イリマナク)に到着。
Ilulissatから直線距離で15kmほど離れた
人口250人の小さな集落です。
まずは海沿いの食堂へ。
地元で採れた魚や肉が使われているとの事。
クジラ、タラ、ジャコウウシ、
それにトナカイだそうです。
イヌイットは生肉を食べるらしいですが、
これはちゃんと臭い消しをしてあるので
獣肉に慣れていない人でも安心です。
ツアーが始まるのは14時からだそうなので、
それまで暫し自由に散策します。
集落の脇にある海岸にあるロッジ。
Ilimanaqの集落の活性化を目的として建てられた、
一棟貸切型の宿泊施設だそうです。
海岸がとても綺麗…
ですが、やはり海辺に下りる事は出来ないようです。
ああ、夏の間誰にも告げずにここに来て、
本なんか読みつつボーッとしてみたいなぁ…
…それは流石に手持ち無沙汰になるだろうか。
箱入りワンちゃん。
ここにも犬ゾリ用の犬が飼われています。
海があまりにも綺麗なので、
港のすぐ傍の岩場から下りてみました。
Ilulissatの港は正直ちょっと汚かったけど、
ここは港でも驚くほど綺麗ですね。
残念ながら、スーツ無しで泳げる温度ではありませんが。
14時になったらガイドさんに連れられて集落散策です。
このIlimanaqは1741年に入植が始まり、
それから10年後の1751年に建てられた最初の教会と家が
さっきのレストランとツアー会社の建物だとか。
と言っても、流石に266年前の建物を
そのまま使っている訳ではなく、
2013年に資金援助を受けて改装したそうです。
この青い小屋は公衆便所…
かと思いきや、これは給水所で、
山の向こうの湖から汲んできた水を
ここで各家庭に配布するのだそうです。
Ilimanaqのほぼ全ての家は水道が通じていないので、
タンクに汲んで持って帰るのだとか。
これだけの寒冷地だと普通の水道管を使うと
凍ってしまうから大変なんだろうな…
グリーンランドの過酷な大地に咲く可憐な花。
名前も説明してもらったのですが、
植物名の英語なので全く分かりませんでした。
この小さな赤い教会は1908年建設。
現在も使われているとか。
祭壇には北極圏らしくアザラシの毛皮が。
そして、讃美歌用なのか電子ピアノもありました。
弾きたかったけど、流石に自重。
Ilimanaqの集落の裏手にある湖。
子供達が湖畔で水切りなどをして遊んでいます。
子供のみならず住民憩いの場になっていて、
冬にはここにクリスマスツリーも飾られるとか。
その湖の畔にある生徒10人の小中学校。
先生は1人だけで、読み書き計算を教えているとか。
義務教育はここで終える事が出来ますが、
高校は直線距離で260kmのSisimiut(シシミウト)、
大学ともなると550km先のNuuk(ヌーク)か、
さもなくば3,000km以上離れた
デンマーク本土まで行く必要があるとか。
そこまで出ていってしまうと、
漁業しか職の無いこの集落に戻ってくる者は居らず、
集落に住む人の教育水準の低さが問題視されているとか。
小笠原だとちょっとは戻って来てくれるそうだけど…
こういう自給自足的な生活をしてきたコミュニティに
近代的教育を持ち込む事自体、
本当に「正しい」のか微妙な気もするしねぇ…
小中学校の少し先に墓地がありました。
死者を邪魔しないのと生死の境界をはっきりさせる為に、
グリーンランドの墓は郊外にある事が多いとか。
高原植物のような小さな花しか
自生していないグリーンランドでは、
生花は目玉が飛び出るほど高いので、
お墓に供えてあるのは造花か貝殻です。
また、冬の間は氷の所為で墓穴を掘る事が出来ないので
夏の間に予め掘っておくそうですが、
それでもツンドラ地帯で土壌が極めて薄く、
すぐ硬い岩盤に突き当たってしまう為、
ダイナマイトで墓穴を掘るとか。
色々ワイルドだな…
昔は水葬していたのかな?
墓地から集落に戻ったら、
グリーンランド・ドックの仔犬が寄ってきました。
この集落では人口より多い300頭が飼われているそうです。
基本的に放し飼いなので、
子供が怪我をしないよう幼稚園には柵があります。
また、仔犬は他の成犬から守る為に
柵に囲われています。
とても人懐こいグリーンランド・ドッグですが、
ペットではない事を忘れてはなりません。
集落の南の外れにある古い加工場。
ここにクジラを水揚げしたりしていたそうですが、
より高値で買い取るIlulissatの加工場に魚を奪われてしまい、
2006年に閉鎖されてしまいました。
こうして集落の貴重な産業が一つ失われてしまったのです。
ジャコウウシの頭蓋骨が飾られた家。
どの家も何かしらの骨が飾られています。
魔除けでしょうか。
サービスハウス。
診療所を兼ねており、遠隔で診断してくれるとか。
竹島と一緒ですね。
グリーンランドは世界最大の島で
殆ど大陸みたいな大きさですが、
その様子はフェロー諸島と比べても遥かに離島らしさがあります。
解体中兼建設中の家。
資材や廃棄物もそうそう運べないので、
可能な限りリサイクルするそうです。
そう言えば、グリーンランドに来てから
樹木なんて一本たりとも見ていないけど、
一体何処から運んできているのかな?
というか、何故石造りにしないのだろう。
集落唯一の商店。
普通にクレジットカードが使えます。
品揃えも中々。
野菜は流石に殆どありませんが。
何と、こんなところにキッコーマンが!
フェロー諸島にもあったし、
醤油って今や世界を股に掛けているんだな…
魚食文化だから普及し易かったのでしょうか。
ちなみに、日本で売られているものとは風味が違って
辛味が少なくまろやかになっています。
いやあ、何とも長閑で良い集落だなぁ…
世界地図の端っこにこんな暮らしがあったとは…
名残惜しいですが、
迎えの船に乗ってIlulissatに戻ります。
復路でもまたクジラが見えました。
探している訳でもないのに
驚くほどの確率でクジラが見られますね。
Ilulissatに戻ったらホテルの人に空港まで送ってもらいます。
Ilulissat空港(イルリサット空港)。
改めて見ると奇抜なカラーリングですね…
何故北欧は建築物をカラフルに塗りたがるのか。
早々と観光案内所が閉じて薄暗い空港内で
お土産とか売っていないかなーと歩き回っていたら…
これはグリーンランド航空グッズ!
こんなの買うしかないじゃん!
グリーンランド航空エアバスA330-200の
飛行機模型を買おうと思って
グリーンランド航空の窓口で訊いてみたら、
何とまさかの売り切れでした。
残念…
仕方無いのでUSBを買いました。
РЖД(ロシア国鉄)のUSBも勿体無くて使っていないけどな…
電光掲示板に表示されていた出発案内。
うおっ、6便中2便も欠航してる!
天候の変わり易いグリーンランドでは
飛行機の遅延・欠航は日常茶飯事。
僕等の乗る飛行機も使用機材到着遅れの影響で
かなり遅延するようですが、
飛んでくれるだけ良しとしなければなりません。
そして、これから乗る飛行機はまさかの「自由席」です。
飛行機に自由席なんて存在するのか…
流石に立ち乗りはさせられないので
席数以上の航空券が発券される事はありませんが。
あと、Ilulissatの空港コードが”JAV”、
Kangerlussaqが”SFJ”なのは、
それぞれデンマーク語での呼び方が
“Jakobshavn”(ヤコブスハウン)と
“Søndre Strømfjord”(センドレ・シュトレムフィヨルド)
だった名残です。
Qaanaaq(カーナーク)からの便が
定刻より40分早くやって来ました。
Qaanaaqは北緯77°に位置し、
プロペラ機で行ける場所としてはグリーンランド最北です。
一体どんな人が降りてくるんだろう…
あの一見イヌイットっぽい見た目は…
日本人!?
何故Qaanaaqから日本人が!?
気になって話を聞いてみたら、
北海道大を中心とした氷河調査団なのだそうです。
Qaanaaqは嘗て冒険家植村直己が拠点としていたので
現地の人が日本人を良く知っていてやり易いのだとか。
へぇー、地球科学専攻だとこんなところに来られるんだ…
地球科学専攻にしておけば良かったかな?
こちらは40分遅れで出発です。
18:45発GL581便に搭乗。
これまで経験した事のないほどの急加速で離陸。
滑走路がたったの845mしかない為
(ジャンボジェットの離陸には2,500mほど必要。
ちょっと大きいプロペラ機でも1,000mは要る。)、
余裕が全く無いのでしょう。
調査団の人の話によると、その厳しい条件故
天候不順で数日欠航する事も珍しくないとか。
そして、何ともグリーンランドらしい機内設備の案内。
不時着した時の為に防寒着が積まれているようです。
百歩譲って夏ならまだしも、
冬に内陸部で不時着なんかした日には絶望しかないな…
あと、夏用にサングラスも用意すべきでは。
20:09、Kangerlussuaq空港(カンゲルルススアーク空港)に到着。
こちらは非常に大きく立派な空港です。
元々は第二次世界大戦中に
空軍基地として造られたのが始まりで、
2,810mもの長さの滑走路を持つ為、
グリーンランドで唯一、
København(コペンハーゲン)への定期便があります。
東京も入ったサインポスト。
スカンジナビア航空がここをハブ空港として
北極圏航路を飛ばしていた名残だそうです。
アラスカのAnchorage国際空港
(アンカレッジ国際空港)みたいなものですね。
現在ではスカンジナビア航空の定期便は一本もありません。
僕等はIlulissat空港から入りましたが、
一般的にはここがグリーンランドの玄関口である為、
多くの人達が乗り継ぎの
København便を待っています。
お店もそこそこあるのでお土産も買える…
と思ったのですが、土産物屋は既に閉店。
いや、København便が出る直前が
一番の稼ぎ時だろうに…
しかし、グリーンランド航空の窓口に押し掛けたら、
あの飛行機模型を買う事が出来ました。
やったぜ。
乗り継ぐ飛行機の出発は夜遅くで暇なので
ちょっとだけ辺りを散策してみる事にします。
とは言っても、Kangerlussuaq(カンゲルルススアーク)は
空港の為だけに造られたような町で、
これと言って空港以外の何かがある訳ではなさそうですが…
ありました。
ジェット機の踏切です。
空港のすぐ裏に道路が通っていて
ジェットで飛ばされる危険性があるので、
離着陸時は通行止めになるようです。
はぇー。
出来れば動くところも見てみたかったのですが、
これが動く時というのは
僕の乗る飛行機が離着陸する時なので、
諦めて空港に戻ります。
ここからの飛行機もまた遅延しています。
そんな遅延するような気象条件には見えないけどな…
延々待たされて漸く搭乗手続き開始。
免税店もあるエリアを通るのですが、
グリーンランドはデンマーク領なので出国審査はありません。
スタンプは貰えないのか…
遥々ここまで来たんだから押して欲しい!
と思ったら、出国審査の窓口には
「記念スタンプは押さねーぞ!」
という貼り紙がしてありました。
考える事は世界共通だな…
そもそも、れっきとして違う国である
アイスランドから来た時でさえ押されていないので、
デンマークへの移動で押される訳がないのですが。
しかし、今やグリーンランドへの定期国際便は
デンマークとアイスランドからのみなので、
グリーンランドの出入国スタンプは
世界で最もレアなスタンプの一つと言えるでしょう。
23:10発GL874便に搭乗。
グリーンランドには似つかわしくないほどの
ジャンボジェット機です。
しかし、グリーンランド航空のジェット機は驚くほどボロいです。
肘掛けは割れているし、背もたれは勝手に倒れるし、
更には何と壁の断熱材まで見えています。
大丈夫かな…
さらば、グリーンランドよ…!
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