薩南諸島旅行第8日目。
中之島滞在日です。
それは最早爆発音に近かった。
耳を劈く轟音で目が覚める。
まさか諏訪之瀬島が噴火でもしたのか!?
と思っていると眩い雷光が。
なんだ、雷か。
…雷?
げー、土砂降りじゃないか…
トカラ最高峰の御岳に登ろうと思っていたのに…
しかし、お天道様の為す事なので
こればっかりはどうしようもありません。
ただでさえ天候が不安定だという真冬に
1週間以上も旅行しているから仕方無い。
周りは海ばかりで落ちる場所が無いからか
中之島にばんばん雷が落ちてきます。
山は疎か集落を練り歩くのさえ難しい。
どうしようかな…
離島って天気が悪いと
驚く程何もする事が無いんだよな…
wifiも携帯電話も通じないし…
なんて途方に暮れていたら
お天道様が情けをかけてくれたのか
晴れ間が出始めました。
天候が不安定というのは晴れ間だけで無く
雨も長くは続かない事を意味するんですね。
とは言っても山頂は見るからにガスっているし、
山登りが出来る天気では無いな…
どうしようかな…
と郵便局の前をふらついていたら、
「昨日歴民館のところに居た方ですよね?」
昨日宿の大将に電話してくれたお母さん
(後に知ったが、歴史民俗資料館の館長さん)が
歴史民俗資料館を見るかと誘ってくれたので
お言葉に甘えて行く事にしました。
歴史民俗資料館。
吐噶喇(トカラ)の独特な自然や文化について展示しています。
ラオスやタイなど東南アジアの
山岳地帯に住む少数民族の文化と
トカラの文化は似ている点が多いのだそうです。
山岳地帯って島とは真逆な気もするけど、
隔絶されているという面で類似しているのかな?
東南アジアの文化が琉球経由で
ここトカラまで伝わったのだとか。
日本文化の代表とも言える神社の鳥居も
トカラのものは模様が特徴的で
タイ北部やラオスに住むアカ族の魔除けと
とても良く似ているそうです。
そして、トカラの文化と言ったらこれ。
お盆の終わりに現れる妖怪、ボゼです。
盆踊りの最中に突如として現れ、
赤土を塗った棒で人々を小突きまわし
踊りを滅茶苦茶にして消えていくというもの。
お盆の間死霊に親しんだ人々の心を
元の日常に戻す役割があるのだそうです。
送り火みたいなものでしょうか?
十島村は地球惑星物理学科の人だけで無く
文化人類学や民俗学の人にとっても魅惑の地ですね。
ちなみに、嘗ては三島村にも同様の風習があったとか。
(左から黒島大里、硫黄島、竹島のもの。)
実は、お盆では無くて大晦日ではありますが
あの甑島にもトシドンという妖怪が居ます。
もう少し滞在していれば見られたかも?
歴代の連絡船。
十島航路は日本の交通網の中で
最も後回しにされた路線と言っても過言では無く、
十島航路の発展は即ち
日本の真の国力の発展を反映していると言えます。
そういう意味では社会基盤学の人にとっても
トカラは面白い場所と言えるでしょう。
江戸時代にはトカラ列島に漂着した
イギリス捕鯨船の乗組員が島の牛を強奪し、
それに対抗して薩摩藩士が
船長を銃殺したという宝島事件が起き、
異国船打払令(無二念打払令)が出される原因となりました。
トカラは歴史文化学科にとっても面白い場所ですね。
勿論、植生の遷移地帯でもあるので
生物学科や農学部にとっても。
理物にとっては(ry
ちなみに、この歴史民俗資料館、
来館者は月に10人程度(先月は5人)だそうです。
皆さん機会があったら行ってあげて下さい。
歴史民俗資料館からは徒歩で民宿に帰りました。
ギリギリ土砂降りになる前に着けた…
あれ?御岳の山頂が白く染まっている?
まさかこの中之島で積雪なんて事は…
土砂降りの昼飯時を挟み、午後は再度散策。
懲りずに御岳に挑戦しようか迷いましたが、
工事の人から上は雪が積もっていると聞き、
登山靴を持ってきていないので諦めました。
標高1,000m足らずで
北緯30度を下回っていると言うのに
本当に雪が積もっていたのか…
暖冬とは何だったのか。
3往復目になりますが台地の上に登ります。
歴史民俗資料館に辿り着いたところでまたしても雨…
いや、これは雹!?
本当に降るのか…
しかし、10分もすると雹は止み、
まるで初夏のような陽光が。
四季を一日の内に凝縮したようですね…
御岳。
薩摩硫黄島の硫黄岳や
諏訪之瀬島の御岳ほどではありませんが、
脇から噴煙を上げているのが見えます。
中之島も活火山なのです。
台地の東端にやって来ました。
御池です。
御岳と言い、ネーミングセンス皆無です。
まあ、島で単に山とか池とか言ったら
誰もがあそこしか無いと分かるのでしょうが。
ちなみに、「御岳」は十島村だけでも
中之島、諏訪之瀬島、悪石島、平島と4つもあります。
逆さ御岳…?
御池は底が泥になっているので
地元の人からは底無し池と恐れられているとか。
でも、深さは4mだそうです。
底無し(水深4m)
御池は豊富な地下湧水によって
水位が一年を通してほぼ一定に保たれており、
その水量を利用して水力発電まで行われています。
海水を淡水化してまで飲料水を確保している
諏訪之瀬島とはエラい違いだな…
水力発電所本体。
台地から海までの高低差を利用しています。
御池だけでは物足りないので
更に先を目指してみます。
切り通し。
火山灰が積み重なっているのが分かります。
道はここから下りに転じます。
確かに、この写真をパッと見せられて
東南アジアの山奥ですと言われたら
普通に納得してしまいそうだな…
環境が似ているから文化が似るのも自然?
島の東側に出て来ました。
正に人跡未踏。
十島村は人跡未踏の地が大半ですが。
美しい海岸が見えます。
良し、あそこを目指してみよう!
うねうねと山道を下っていきます。
沢を渡り川を越え。
この水って飲めるのかな…
分かれ道。
右は奇岩で有名な中之島の南端
セリ岬に通じているのですが、
道の法面が崩落したとかで通行止めです。
そうで無くても半日で行ける距離ではありませんが。
左に曲がり、下っていきます。
やっと着いたー!
七ツ山海岸です!
宿のある東集落から300m登って
200m降りて100m登って200m降りて
10km歩いて漸く辿り着いた東海岸。
喜びも一入です。
上の道からも見えていた
エメラルドグリーン色になっていた部分は、
ここだけ岩が取り払われて
下の砂地が見えているようです。
奥に見えている島影は口之島です。
大川が勢い良く海に流れ込んでいます。
この辺は汽水になっているのかな?
ちなみに、ここに嘗てはキャンプ場があったらしく、
管理棟、トイレ、シャワー棟が残っています。
勿論、全て使えなくなっていますが。
公衆電話と書かれていてちょっと期待しましたが
当然の如く何も残っていませんでした。
暗くならない内に帰ります。
帰りも当然10kmです。
夕暮れの台地、日之出集落。
トカラウマやウシに見つめられながら
夕陽に照らされた村道を歩きます。
雲の隙間から溢れ出す夕陽。
まるでミラーボールです。
東集落まで戻ってきました。
遠かった…
今日はここ1週間で唯一船に乗らなかった日。
その分長く歩いた一日になりました。
この後は昨夜の教訓を活かし、
暗くなる前に公衆温泉へ。
昨日は貸切状態でしたが、
今日は地元の人が4人居ました。
冬に来る観光客は相当珍しいらしく
色々訊かれました。
いつの間にかカミオカンデの話になったり。
カミオカンデの本来の主目的は
ニュートリノの検出では無かったという事が
中之島で広まったりするかな?
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