北海道旅行第7日目。
名残惜しいですが、最終日です。
5:30、起床。
眠いですが仕方がありません。
それ以外の選択肢は無いのですから。
手早く支度を済ませて宿を出ます。
寒い!
今季最強の寒波が来ているとかで凄まじく寒いです。
宿の女将さんに拠ると、
「20℃まではいかないだろうけど、
それに近いんじゃないかな。」
この辺りは「氷点下」を省くみたいです。
-20℃って業務用冷凍庫並みですね。
ちなみに、今日の予想最高気温は-7℃です。
今日はまず隣駅まで乗ります。
隣駅(初乗り運賃740円)
石北峠を越えた34.0km先です。
6:16発石北本線普通網走行きに乗車。
一瞬5両編成なのかと驚きましたが、
後ろ2両は反対方向の旭川行きでした。
それでも3両編成か…
まあ、送り込み列車だろうけど。
中越信号場。
保線員の人が出て来て、
列車内に居たおじさんから何やら受け取っていました。
なるほど、この列車は保線用という一面もあるのか。
嘗てここは旅客駅だった時代があります。
その昔は急行列車も止まっていたとか。
列車は峠道を喘ぎ喘ぎ登っていきます。
気を抜いたら一気に転げ落ちるのでは無かろうか
というくらい遅いです。
上越信号場。
現在、道内最高所(標高634m)の信号場です。
ここも保線員の人が出て来て、
列車内に居たおじさんと入れ替わっていました。
制服には見えないけど、
寒過ぎるから私服OKという事なのかな?
「石狩北見国境標高六三四米上越駅」
と書いてある事からもお分かりの通り、
昔はここも旅客駅でした。
周囲10km以上無人地帯の山奥で
一体誰が利用したというのだろうか…
そして、全長4,356mの石北トンネルを抜け、
奥白滝信号場を過ぎると…
7:04、上白滝駅に到着。
ホームから見えるのは水墨画の如き雪山ばかり。
鳥の鳴き声だけが凍った空気に響き渡ります。
鉄道に詳しくない人でも、
何処かでその名を聞いた事があるのではないでしょうか。
一体、何で有名なのか?
見よ、この時刻表。
1日2本。
現在、日本で最も停車する列車が少ない駅なのです。
(臨時駅を除く。)
7:04発普通網走行きと17:30発普通旭川行きのみ。
一度降りたが最後、10時間半近く待つ事になります。
流石に待ちませんが。
ちなみに、後者は昨夜上川へ行く時に乗った列車です。
外気温は-17.1℃。
この地域は標高の高い内陸部という事もあり、
道内でもトップクラスの寒さを誇っています。
日本で一番寒い部類に入る駅に、
一番寒い時期の、一番寒い時間帯に降り立った訳です。
剰え、今季最強とかいう寒波が来ているしな…
風が吹いていないのがせめてもの救いか。
暖かいように感じた駅舎内も室温-13.2℃でした。
こんな中10時間半も待っていたら凍りますね。
なので、隣の白滝駅まで歩きます。
白滝駅なら特急列車も止まります。
白滝駅までは3kmちょっと。
その為、車以外の方法で上白滝駅を訪ねる人は
ほぼ例外無く上白滝-白滝間を歩いています。
なので、1日2本しか列車が無い割には
到達難度はそこまで高くない…筈。
嘗ては中越や奥白滝も1日2本しか止まらない駅でしたが、
こちらは10km以上歩く必要がありました。
それを考慮してこの上白滝駅だけ廃止しなかったとしたら
JR北海道は相当な策士だな…
駅前はこんな感じ。
中越や上越とは違い、普通に人家があります。
1日2本しか止まらない割には割と普通の場所です。
…少なくとも、小幌駅や小和田駅に比べれば。
白滝駅へはこの国道333号線をひたすら歩きます。
寒い…
鼻や指先が凍りそうだ…
眼鏡は凍りました。
前が良く見えない…
「28号線温泉入口」…
温泉?
良いなぁ、今浸かったらさぞかし気持ち良いだろうなぁ。
しかし、北海道では「入口」と言っても
そこから10km、20kmある事がザラにあるので
寒さを我慢して歩を進めます。
「十勝石沢露頭」…?
“Obsidian Outcrop”って事は
黒曜石が露出しているのかな?
気になりますが、これも相当離れていそうなので断念。
湧別川。
ここで工事をしていたおじさんが
「もっと寒ければ樹氷が見られるんだけどねぇ。
先週は28℃までいって綺麗な樹氷が出来てたよ。」
と言っていました。
凄まじい寒さだな…
-17℃なんてまだ序の口?
そんな中で工事をされている方々には頭が下がります。
白滝の街に入りました。
極寒の中を歩く事丁度1時間、白滝駅に到着。
白滝駅は無人駅ですが、待合室は暖房が効いていました。
有り難い…
歩いている間にペットボトルの水が凍っていました。
常に揺れ動いていたというのに…
20分間追加で外に置いたらここまで凍りました。
「北海道では飲食物が凍らないよう
保温の為に冷蔵庫を使う」と
真しやかに噂されていますが、
白滝では本当にそういう用途で冷蔵庫を使いそうですね。
さて、特急が止まると言っても不便な事には変わりありません。
乗車する列車まで2時間以上あるので
白滝の街で適当に時間を潰します。
遠軽町埋蔵文化財センター。
五七五でとっても語呂が良いので来てみました。
十勝石沢露頭ではこんな黒曜石が取れるそうです。
白滝一帯は黒曜石の産地として
ジオパークに認定されているとか。
埋蔵文化財センターというから
てっきり土器でも展示してあるのかと思いきや、
黒曜石についての地質学的な展示ばかりでした。
この施設、予想外にしっかりしたもので
黒曜石を使った石器作り体験や
夏期は露頭へのツアーもやっているそうです。
面白そうだな…
夏に地物の人でも誘ってきてみようかな?
結構楽しく時間が潰せたので駅に戻ります。
10:57発特別快速きたみ旭川行きに乗車。
北海道で唯一の「特別快速」です。
何と特急列車の方を待たせて行き違いしていました。
特別急行よりも特別快速の方が扱いが上なのか…
12:28、8分遅れで旭川駅に到着。
そう言えば、JR北海道って終着駅に着く時は
「ご乗車ありがとうございました」じゃなくて
「ご乗車お疲れ様でした」って放送するんだな。
流石は北海道?
道北最大の都市、旭川です。
思ったより暖かいな。
と思ったら、気温-3℃でした。
大分慣れたのでしょうか?
氷像が融けかけていました。
やはり暖かいのか。
旭川と言えば旭川ラーメン。
今回の旅行で何度目のラーメンだろう…
寒い街でのラーメンは最高です。
13:38発函館本線普通岩見沢行きに乗車。
いよいよ、旅も終盤です。
トンネルを抜けて深川市に入ったらこんな景色に。
吹雪いて50m先も良く見えません。
白滝がこんな天気じゃなくて良かった…
その所為なのか、今日は特急列車が良く遅れています。
岩見沢駅で15:35発普通小樽行きに乗り換え、
札幌駅で16:25発快速エアポート162号に乗り換え。
特急列車が札幌-新千歳空港間で運休した所為か
車内はJR北海道に似合わず超満員でした。
17:07、新千歳空港駅に到着。
夕食を食べます。
奇しくも一昨年食べたのと同じ店。
冬季限定のチーズしゃぶしゃぶを食べました。
チーズフォンデュとは逆の発想で
チーズをトマトソースに漬けて食べます。
締めのリゾットが何とも美味。
19:55発ANA714便に搭乗。満席らしく、搭乗便変更を2万円で募っていました。
そして21:45、中部国際空港に到着。
こうして、上野駅から始まった
鉄路だけでも2515.7kmの旅が幕を下ろしました。
北海道はこれまで5回程訪れていながら全て真夏だったので
今回は初めて厳冬期に訪れてみた訳ですが、
夏の北海道と冬の北海道は全く違う場所ですね。
夏以上に本州との差が際立っていて
北海道のみならず日本の大きさをも感じられました。
冬の北海道なんて雪ばかりで面白く無いだろう
と行く前は思っていましたが、
限り無く澄み切り、凍てついた空気の中の北海道は
これこそカムイの住まう地という様相。
夏の北海道しか知らずに
北海道好きだと言っていたのが恥ずかしいです。
また、地元の方は夏以上に優しかった気がします。
そんな地元の方々が口を揃えて言うのが
「冬の北海道は旅行する場所であって住む場所では無い。」
北海道に住むにはそれ相応の覚悟が必要ですね。
脚注
※「送り込み列車」
乗客を運ぶ為というよりは、列車そのものを運ぶ事を目的とした列車。
回送列車にするとただ走っているだけで勿体無いから
ついでにお客さんを乗せてしまおう、みたいな感じ。
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