松田町の廃線跡

「優れたアイデアは机に向かっている時には決して生まれず、
外を散歩している時にこそ生まれるものだ」
と数百人くらいの偉人が言っていた気がするので、
僕も在宅勤務中に思考が行き詰まると
近所を散歩することにしています。
松田山の方に歩いてみたり、酒匂川の河原を歩いてみたり…
松田に引っ越して良かったと思う一時です。
人間にはこういう時間が必要だよなぁ…


そんな中、裏路地を歩いていたら気になるものを見付けました。
常光沢という名の小さな沢を渡るじゃり線橋です。
じゃり線という名前、そして蒸気機関車が牽引する貨物列車の絵…


これは立地から言って酒匂川の砂利を採取する為の貨物線跡だな!?
蒸気機関車ということはJR御殿場線の支線でしょうか。
まさか、自分が住んでいる町に知らない廃線があったとは…
そして、それに邂逅するという喜びよ。
ただ、発見時はすぐ仕事に戻らなければならず
詳しい探索をすることは出来ませんでした。


家で航空写真を見てみると
思った以上に鮮明な廃線跡が写っていました。
ここまであからさまなものを今の今まで見落としていたなんて…


こんな辺境のブログに辿り着いているような読者諸兄姉は
地理筋ムキムキなので要らぬお世話だとは思いますが、
一応補助線を引いておくとこういう感じです。
図中赤実線は確実な廃線跡、
赤破線は赤実線部を自然に伸ばした時の線形と
「酒匂川の砂利を御殿場線に運ぶ」という用途から推察した廃線跡です。
実は蒸気機関車の絵が正しくなくて、
南へ大きく折れ曲がって小田急線に砂利を運搬していた
という可能性も全く無いとは言い切れませんが。


という訳で、別日に再探索。
良く見てみると新十文字橋へ繋がる高架の下に
JR御殿場線から分岐する古そうな廃線を見付けました。


一旦松田さくら保育園で廃線が断ち切られた後、
用水路で駐車場のアスファルトの下に埋もれた
橋台跡らしきものが視認出来ました。
上図の推定経路の内、東側については正しかったようですね。


そして、航空写真でもハッキリ写っていた区間。
自転車が良く通るのか下草が禿げて
砂利が露出している場所もあります。
生活道路として利用されているようです。


明瞭な線形のままじゃり線橋にぶつかって終了。
廃線跡を主張する橋の銘板に反して
明らかに廃線の線形とは食い違った方向に架橋されています。
別に廃線跡を廃線跡として整備しようとしている訳でもないんだな…
松田町議会での一般質問[1]によると、
ここまで廃線跡然として残されているのは、
歩道や車道として舗装路整備するのに
お金が掛かり過ぎるからという理由からだそうです
(一応松田町が日本鉄道建設公団から路盤は購入したらしい)。
怪我の功名とでも言うべきか。


廃線との邂逅という、
鉄オタにとって人生で幾度も無い興奮を味わえて
散歩の有用性を改めて認識した週でした。

参考文献
[1] 田代実. 『「じゃりせん橋」東側の遊歩道整備を!』. 令和5年第3回松田町議会定例会 一般質問, 2023.

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