裏妙義

今日はIT(元・旭丘高)と登山です。

6:00、起床。
碧岩の時は何度か起きたけど、
今回は自分でも驚くくらい熟睡出来たな…
軽自動車と普通自動車の差は大きい。
ITは鹿の気配を感じて起きてしまったそうですが。
車内で朝食と着替えを済ませ、
何台か車がやって来た辺りで出発します。


昨夜着いた時は暗過ぎるのと鹿がいるのとで
写真どころではありませんでしたが、
実はこんな場所で車中泊していました。
この国民宿舎裏妙義が営業してくれていればなぁ…
今日目指すのは国民宿舎の裏手に聳える
鋸の刃の様な妙義山(裏妙義)です。


国民宿舎の裏手に延びる林道から登山開始。
始めの内は至って平凡な登山道ですが…


すぐに鎖場が現れます。
この辺はまだ鎖無しでも十分に登れますが…


裏妙義は次第に牙を剥いてきて、
普通の山ならまず登山道指定されないであろう
急峻な岩場が序盤から続々と現れます。
しかし、これはまだ序の口にもなっていない事を
この時の僕等はまだ知る由もありませんでした。


この20mにも及ぶ長い鎖場を登りきると…


籠沢のコルに出ました!
おお、高崎まで見渡せる。


しかし、それにしても細い稜線だな!
太いところでも1m程度、
鎖が掛かっていた場所などは10cmもありません。
小さな小さなピークは2人が立つだけで満員です。


ここからは下からの見た目通り
鋸の刃の様な切り立った稜線を、
山羊の如くへばり付くようにして歩きます。


木もあまり生えないほど険しい斜面の為、
眺望は基本的に抜群です。


稜線に入ってからも鎖場は留まるところを知りません。
寧ろその数を増しています。
妙義山は険し過ぎて稜線の上を歩き続けるのは不可能な為、
頻繁に登り下りしてトラバースにトラバースを重ねるのです。


一際高度感のある岩場が現れました。
恐怖を感じつつも登ります。


この最期の鎖場を越えれば…


着きました!
丁須の頭です!
…正確には今立っているのが丁須の頭の基部で、
この写真には丁須の頭が写っていません。


なので、数十cm幅の岩を這って
丁須の頭の全景が見えそうな向こう側の岩に乗ってみます。
写真では分かりにくいですが、
この岩の両側どちらに落ちても間違いなく大怪我です。


見えました!
このハンマー状の巨岩こそが丁須の頭です。
正に「丁」の形をしているからこの名が付いたのでしょう。
自然の造形とは信じられないような形ですね。


そしてお気付きでしょうか、
この丁須の頭から意味深な鎖が垂れ下がっている事に。
そう、何とこの丁須の頭、
一応上に登る事が想定されているのです。
しかし、基部に向かってオーバーハングしている為、
20m以上切れ落ちている左側に大きく回り込まねばなりません。
写真ではどうって事ないように見えるかも知れませんが、
実際に目の前にすると途轍もない恐怖が湧いてきます。
こんな時の為にボルダリングゼミを重ねてきたんじゃないか…!
と自分に言い聞かせても、
そもそもボルダリングはトライアンドエラーでやっていくもの。
ここでエラーなんてしでかそうものなら即死です。


僕が逡巡していたらITが躊躇なく登り始めました。
怖くないの!?


そのまま登頂。
ITってそういう奴だったっけ…
仕事のストレスが溜まっていたとか言っていますが。


触発されて僕も挑戦してみましたが、
高度感が尋常ではありません。
加えてまともなホールドが殆ど無く、
ゴツい登山靴では足を掛けられません。
ITは登れたのに…という思いが無いわけではありませんが、
正直なところ墜死する気しかしなかったので断念しました。


この先進む稜線を望む。
ここの山域だけ明らかに形がおかしいよな…


丁須の頭での大休止兼奮闘を終えたら再び稜線へ。


丁須の頭遠景。
正に「丁」ですね。
唯一足場のある基部に向かってオーバーハングしているという
殺意しか感じられない構造です。
どうやって鎖を設置したのだろう…


丁須の頭から暫くの稜線はただ細いだけで
これと言って技術を要求してくることはありませんが…


稜線からトラバースに移るところで
こんなルンゼが現れたりします。
ITにとっては先程の丁須の頭よりも
このルンゼの方が怖いとか。
うーん、感覚が良く分からん。


大分落ち着いた登山道(当道比)になってきました。


こんな巨岩が現れたりはしますが。
この烏帽子岩は流石の裏妙義でも登攀不可扱いだそうです。
登らされるかと思って焦った…
…ん?登攀不可だとしたらどうやって進むんだ?


どうやらこの絶壁をトラバースするしか無いようですね。
とは言え、絶壁の基部の斜面が始まるところだから、
絶壁にへばりつくような道ではないはず…


と思っていたら…


正にそのへばりつくような道が現れました。
何をどう考えたらここを登山道にしようと思うのか。


実は横向きになって撮影した
トリック写真なんじゃないかというような道ですね。
一応、登山道の部分は幅20cmほど平らに削られているので
遠目に見たほどの怖さはありません。
ここまでの道で恐怖の閾値が上がっているのかも知れませんが。


風穴尾根の頭から望む
碓氷峠に向かう上信越自動車道とその奥に佇む浅間山。
標高1,000m程度でこんな絶景が望めるのは
偏に樹木も生えられない絶壁のお蔭です。


歩いてきた稜線を振り返って。
凡そ人間の歩く場所ではありませんね。
このあまりの危険性から、
屡々行政から登山禁止を打診する声が上がるそうですが、
地元山岳会が反対したことで現在も登山可能となっています。
ありがとう山岳会。
この素晴らしい裏妙義にいつまでも登れるよう、
登山の際には細心の注意を払って遭難事故を出さないようにしましょう。


三方境から谷急山には向かわず下山します。
紅葉真っ盛りでとても綺麗です。


中木川まで降りてきました。


最後の林道歩きを終えれば…


国民宿舎裏妙義。
生還です!
体力面も然ることながら今回は精神的に疲れた…


高崎のパスタで祝杯を挙げます。
天候や体力による理由ではなく、
純粋に技術面で敗退した箇所のある初めての山行。
しかし、これはこれで貴重な経験でした。
丁須の頭の心残りが無いわけではありませんが、
その他の鎖場で十分過ぎるくらい楽しめたので大満足です。
この後は疲れた身体に鞭打って亀有まで運転して帰りました。

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