ホンダ NSX(NA1型)

スポーツカーというのは街でもそこそこ見掛けますが、
スーパーカーというのは滅多にお目に掛かれません。
だからこそ「スーパー」なのでしょうが、
そもそもスーパーカーとはどういう車なのか?
ここで下手に例示なんかすると、車オタクから
それはスーパーカーじゃなくてただのスポーツカー
だの何だの文句が出てくるところですが…


この車だけは国産車で唯一異論が出ないでしょう。
バブル絶頂期に鮮烈なデビューを飾り、
今もなお半ば伝説として語り継がれている名車、
ホンダNSX(NA1型)です!
地を這うようなスタイリング、
運動性能第一主義の証ミッドシップレイアウト、
そしてリトラクタブルヘッドライト。
スーパーカーと言えばこれ!
という(一昔前の)要素を全て盛り込んでいます。
オールアルミのモノコックボディは
30年経った今もなお未来を感じさせるデザインです。
以前、日産スカイラインGT-R(BCNR33型)を
TK(横山研)と一緒に野田市まで借りに来た際に、
脇にあったこの車を見て一目惚れしてしまったので、
諸事情あって上京した今回借りに来てみました。


補足すると、リトラクタブルヘッドライトというのは
普段は上のようにボンネットの中に隠れていて、
ボタンを押すとこのように上がるライトのこと。
20世紀はスーパーカーやスポーツカーの象徴でしたが、
LEDの開発や衝突安全性の規制強化により、
現在では姿を消してしまいました。
なので、スーパーカーと言われて
リトラクタブルヘッドライトを思い描くのは
おばさん・おじさんの証かも知れません。


さて、今回の車はMTではなく4速AT仕様です。
スーパーカーなのに4速というのは
何とも時代を感じさせます。
それ以前に何故ATの設定があったのでしょうか。
当時(今も?)、スーパーカーと言えば
とにかくエンジンが主役であって、
ドライバーは物理的に肩身の狭い思いをしながら
不承不承扱い難い車を運転していました。
しかし、ホンダはその不条理さを嫌い、
肩肘張らずに乗れるスーパーカーを目指したのです。
AT仕様車の設定もその一環。
更にはクルーズコントロールまで付いています。
9年後にS2000を出すとは思えない思想ですね…

では、勇ましいのは外見だけで
中身は楽々運転出来る普通の車かと言えば、
やっぱりそんなことはありません。
AT仕様車だから激重クラッチに苦しまなくて良い!
と思ったのも束の間、
何と今度はステアリングが激重です。
こんなに重いステアリングある?
ダンベルでも仕込んであるのかと疑うレベルです。
クルコンよりもパワステを強化すべきでは。
速度計が300km/hまで切ってあるので、
超高速運転の際の安定性を重視しているのでしょうか。
これで激重クラッチまであったら
完全に筋トレマシンだな…
これで運転手思いって、これ以前のスーパーカーは
一体どんなものだったのでしょうか。


さて、交差点でも難儀する激重ステアリングや、
反応の悪い社外ナビのタッチパネルに苦戦しながらも
道の駅かぞわたらせまでやって来ました。
渡良瀬遊水地の隣にある道の駅です。
一度自転車で来ましたね。
あの時は「きたかわべ」という名前だったはず…


但し、今回の目的は道の駅でも遊水地でもなく、
この田んぼの中にあります。


最近頓に話題になった三県境です。
日本には47個も都道府県があるのだから
3つの県が集まる場所など山程ありますが、
その殆どは山か川の中にある為、
このように平地にあるのは極めて珍しいです。


ここも元々は川の中にありましたが、
渡良瀬遊水地を造る際に川の流路が変えられたことで
このように田んぼの中に取り残されました。


道の駅かぞわたらせはこの三県境のすぐ近くにあるので、
群馬県、栃木県、埼玉県全てのお土産が買えるという
一駅で三度美味しい道の駅になっています。


そのまま北西に走り続けて佐野市までやって来ました。
佐野ラーメンで有名な町です。
青竹手打ち麺を売りにしているお店が多く、
コシの強い不揃いな縮れ麺が何処か懐かしいです。
…何て呑気に食べていたら時間がヤバい!
急いで啜り切ってNSXに乗り込み、
ご自慢の走行性能を活かして走ります。


何とか間に合った…
葛生駅に到着です。
葛生駅は東武佐野線の終着駅。
東武佐野線は末端部がほんの少しだけ未乗のまま残っていたので
この機会に乗り潰してしまいます。


1時間に1〜2本程度しか列車の無い盲腸ローカル線にしては
不釣り合いなほど広い操車場があります。
元々東武佐野線はこの一帯で産出する
石灰岩を運搬することを主目的に敷設されており、
葛生駅から先には東武会沢線、東武大叶線といった
貨物線が縦横無尽に延びていました。


14:05発東武佐野線普通館林行きに乗車。


秋山川をわざわざ終点手前で渡って
無意味に建設費を上げているように見えるのも、
上述の通り石灰岩の運搬という大目的があったからです。


14:12、田沼駅に到着。
これにて栃木県の鉄道は完乗です!
ということで、北関東の鉄道を制覇したことになります。


何故こんな中途半端に末端区間だけ乗り残していたかというと、
東武佐野線は5年前にFK(元・成岩中)と
紅葉を見に来た際に田沼駅で降りてバスに乗り換えたからです。
懐かしいな…
あの時は熊(?)に遭遇して冷や汗をかいたっけ。
葛生駅にNSXを置いてきているので
今回はすぐに来た反対列車で葛生駅に蜻蛉返りします。


葛生は三方を山に囲まれた地形なので、
山道での走行性能を試すのに最適!
と、南東にある唐沢山に登ってみました。
ヘアピンカーブが連続すると重ステでは若干大変ですね…
念の為確認しておきますが、
大量に刻まれたタイヤ痕は僕が付けたものではありませんので
お間違えの無きように。


唐澤山神社なる神社があったので参拝しておきます。
山一つ丸ごと神社みたいな立地ですね。


元は唐沢山城というお城だったようです。
こんな立地に築城するって凄いですね…


海沿いとかなら魚が釣れるしまだ分かるのですが、
何故かこの唐澤山神社には猫が沢山います。
参拝客があまりにも餌をやっているのか
目の前に餌が残っていても気にしていません。


急な階段を登って本殿に辿り着きました。
あまり時間を費やしても勿体無いので
参拝を済ませたら足早にNSXの元に戻ります。

さあ、お次は高速走行性能です!
北関東自動車道に乗って踏み込むと…
これは…凄い!
ホンダらしく自然吸気で二輪駆動なので、
スカイラインGT-Rのようにターボや4WDが作動して
押し付けられるような加速を見せる、
というようなことはないのですが、
最も違うのは何といっても「音」です。

3.0Lと排気量が大きいからか、
低回転ではTKの愛車トヨタ セルシオのような
高級セダンを思わせる音がします。
ところが、4,000rpmを超えた辺りから豹変し、
ガロロロォ!と獣の咆哮のような声を上げます。
流石はMR車、席の真後ろからエンジン音が響くので
その臨場感に鳥肌が立ちます。
ただ回転数を上げたいが為だけにギアを落としてしまう。
これがスーパーカーか…!
それでも、ランボルギーニのような爆音ではないので
ある程度品良く音を楽しめるのが嬉しいところですね
…と言ってみたものの、
速度を上げずに回転数だけ上げてエンジン音を楽しんでいると
高確率で少し前にいる車が露骨に道を譲ってくるので、
外から聴くとやはり結構な爆音なのかも知れません。


そのまま筑波山までやって来ました。
日産スカイラインGT-Rも乗り回したこの地で
NSXの総合的な力を見ます。
と言っても、借り物で公道を走るわけですし、
そもそも僕の腕ではNSXの限界に迫るなんて不可能ですが…


ステアリングがとにかく重いのでちょっと不安でしたが、
手に力が入ると逆に丁度良いくらいかも知れません。
それでも、シフトチェンジしつつ
片手で操作出来るかというと厳しいものがあるので、
この点はAT仕様車で助かったというべきでしょう。
Dレンジだと山道を走るには回転数が低くなり過ぎますが、
4速ATということでワイドレシオ気味なので
2速で固定しておけば大体何とかなります。

ヘアピンカーブを曲がっていく時は、
ステアリングの重さもあって
馬の手綱を捌いているような感覚を覚えます。
「人馬一体」はホンダではなくマツダのスローガンですし、
跳ね馬はフェラーリのシンボルですが、
正に車というよりは馬といった感じです。
乗りこなすのには少々物理的に力が必要ですが、
こちらが命令すればキッチリ応えてくれます。
スーパーカーが馬やら牛やらをモチーフにする理由が
分かったような気がする…


北関東自動車道と筑波山で十分堪能したら、
セイコーマートによって帰ります。
北関東のセイコーマートも随分増えましたね。


…コンビニの駐車場に停めると改めて認識させられるけど、
このリアオーバーハングは中々に凶悪だな…
バックカメラなんて付いているわけはないので
バック駐車の度にヒヤヒヤします。


あと、実用性についてもう一点補足すると、
S2000はドリンクホルダーがあるものの
500mLペットボトルを置くと
シフトチェンジの邪魔になって仕方が無い、
という話を以前しましたが、
NSXの場合はドリンクホルダーが無い代わりに
500mLペットボトルが丁度収まるポケットがあります。
AT仕様車なら(そんなに)シフトノブを触らないし、
普通にドリンクホルダーを付けても良かったのでは…?
ちなみに、燃費はトリップメーターの読みで9.00km/Lでした。

そんなこんなで、色んな意味で痺れたNSXドライブでした。
走行性能も勿論凄かったのですが、
この車の魅力は何と言っても音と見た目ですね。
文章では音を伝えられないのが残念でなりません。
が、音と見た目に惚れ込んだという理由で
30年落ちの車に600万円だの
900万円だのといった大枚を叩けるかというと…
スーパーカーの一番の不条理はやっぱりそこであり、
ある意味一番求められている点でもあるのでしょうね。
まあ、スーパーカーにしてはお買い得なのかも…

…と、こんな締め方になってしまいましたが、
僕がもっとお金を持っていたなら
間違いなく買っていたと思いますよ。
だって、こんな車が家の軒先に鎮座していたら
それだけで毎日が楽しいじゃないですか。
買えないから僻んでいるだけです。
いつか高給取りになったら…と言いたいところだけど、
ガソリン車が禁止された世界では、
このV6エンジンみたいな官能的な音の車は
未来永劫現れないだろうしなぁ…
維持費は何とかして自費で捻出するので
どなたか恵んでください(乞食)

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