日本最後の秘境 黒部川源流域 第4日目

4:28、起床。
昨夜にも況して深夜は豪雨でした。
今日は寒冷前線の影響で全行程中最も天気が悪いと目される日。
もし登山中にあの雨に遭ってしまったら…
という判断もあり、当初計画では昨日の内に黒部五郎小舎まで歩いて、
今日は黒部五郎小舎から太郎平小屋までの
11.5kmにも及ぶ最長小屋無し区間を詰める予定だったところを、
昨日の行程を三俣山荘で打ち切って
今日は三俣山荘から黒部五郎小舎までの僅か3.6km、
YAMAPコースタイムにして2時間半にまで短縮しました。


三俣山荘の朝食は異色のパン食。
猪肉のサルシッチャ有り体に言えばソーセージ。を挟んで食べるという
雲ノ平山荘に負けず劣らぬお洒落感を演出してきています。
でも、パンってお腹にあまり溜まらないような。


5:55に出発。
昨日と同じく濃霧の中のスタート。
天気予報によると昨日と違って
天候の好転は望めないとのことですが、果たして。


ハイマツのトンネルを潜ります。
三俣山荘での夕食時の説明曰く、
元々は両脇のハイマツの根と同じ高さまで土壌があったものが
大勢の登山者が行き交ったことで抉れてこの形になったとか。
抉れていなかった時代はどんな姿勢で歩いていたのでしょうか?


ハイマツ帯を抜けるとこの濃霧。
漫然と歩くと道迷いしそうです。


三俣蓮華岳(標高2,841.4m)に登頂。
何も見えない…
写真では分かりませんが暴風が吹き荒れています。
恵山白馬鑓ヶ岳を思い出します。


日本百名山でも二百名山でもなく、
日本三百名山になってやっと名を見せる三俣蓮華岳ですが、
富山県、長野県、岐阜県の三県境になっている点がここです。
測量士の方も大変ですね。


濃霧から霧雨になってきたので、
メインカメラは富山駅で買った防水バックに押し込んで
ここからはサブの防水カメラで行きます。
この山頂は登山道が三叉路になっているのですが、
このガスりようだと普通に道迷いしそうです。


そして割と道が険しい。
湿った岩場自体ちょっと怖いですが、
ちゃんと周囲に気を払わないと
ルートを外れてしまいそうになるのが一番危ないです。


ただ、岩場はまだ良い方で
最悪なのがこういうだだっ広い砂場。
しかもここはよりによって進行方向が微妙に変わる場所で、
藪漕ぎでもないのに方位磁針を出して確認することになりました。


五里霧中の状態でせめてもの彩りを与えてくれるチングルマ。
花に気を取られるのも道迷い的な観点からは良くありませんが。


森林限界を下回って樹林帯に入りました。
こうなれば濃霧の視界不良による遭難からはおさらばです。
熊がこんにちはする危険は高まりましたが。


三俣蓮華岳から激下りすること標高差約300m、
霧の中に煙る山小屋が現れました!


9:09、黒部五郎小舎に到着。
これで今日の行程は終了です。
あまりにも早い行程終了。
ちょっと勿体無い気がしなくもない。
三俣蓮華岳から双六岳までピストンする?みたいな話もありましたが、
それで雨に降られたりしたら元も子も無いので…


今日は疲労が溜まってくる折り返し地点でもあるので、
談話室でのんびりと過ごします。
やっぱり談話室は畳敷きに限る。


昼食営業が始まる時間になったら昼食。
山小屋と言えばカレーライス、
なのですが、今回の山行では6つ目の小屋にして初めて。
こういうので良いんだよ。


のほほんとしていたら正午辺りから土砂降りになり、
すぐ近くに何度も落雷するような荒天に。
もしも当初計画通り太郎平小屋までの稜線を歩いていたり、
助平心を出して双六岳に寄ったりしていたらと思うと…


更には怪我をした人も居たらしくて、
小屋の前に緊急搬送用のヘリコプターが飛んできていました。
今回は偶々上手く計画変更出来ましたが、
白馬鑓ヶ岳での例然り計画変更というのは
概して計画継続バイアスが働いて躊躇ってしまうものなので
気を付けなければなりませんね。


しかし、救助ヘリってこんな視界ほぼゼロの中で
普通に飛べるものなんですね。
悪天候時ほど救助要請は増えるので
如何に厳しい条件で飛べるかが肝心なのは分かりますが、
実際に目の前でやってみせられると感嘆します。


そうこうしていたら夕食の時間に。
山では珍しい揚げ物、トンカツを主菜に副菜に蕎麦など
派手さは無いものの素直に嬉しい献立です。
飲料水も無料だし、夏でもストーブを焚いてくれるし、
宿泊費も比較的お安めだし、
昨日一昨日みたいなお洒落パリピ山荘を経験した後だと
こういう原点の山小屋の良さが身に沁みますね。
我々みたいな陰キャには特に。


夕方になるといつの間にかあの雷雨は過ぎ去り
何事も無かったかのように晴れ渡っていました。


小屋の南にあるテント場からの眺め。
右の特徴的なトンガリ山は笠ヶ岳です。
槍ヶ岳ほどでは無いにしても存在感があって
その名を良く表している山容ですね。
こう見ると登ってみたくなる。


こちらは太郎平とそこから突き上げる薬師岳。
水晶岳も相当な重厚感でしたが、
薬師岳も結構な大きさですね。
順調に行けば、あの頂に立つのは明後日です。

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