槍ヶ岳 第2日目


3:58、起床。
台風の影響か、今日は昼から天気が崩れる予報。
ここまで来て登頂出来ず敗退なんてことになれば
再挑戦する気力さえ失われ兼ねません。
少しでも登頂成功率を上げる為に朝食をお弁当にし、
日の出と同時に出発出来るよう未明の談話室でもそもそ食べます。
箱全体にみっちりもちもちのご飯が詰められているから
見た目以上にお腹に溜まるな…


では、5:04に早速行動開始です。
飛騨沢に沿って標高を上げていきます。
槍平小屋は標高2,000m足らずなので、
3,000m峰の槍ヶ岳山頂までは1,000m以上登る必要があります。
まあ、昨日のあのだらだらした道でも
何だかんだ900mくらい登っていたらしいので、
何とかなるでしょう。
平均斜度は3倍ですが(昨日が11%、今日が31%)。


千丈沢分岐に到着。
夏山シーズン中のみ救急箱が置かれている分岐点です。
ここで道は飛騨乗越経由と千丈沢乗越経由の二手に別れます。
どちらの経路を取ってもコースタイムは同じとのこと。
どちらにしようかな…


歩いている人が少ない千丈沢乗越経由にします。
千丈沢乗越経由の方が稜線メインの道になるようです。


登山道を彩る可憐な青紫色の花。
群生していて綺麗です。
この花は凄く有名な植物なのですが、お分かりでしょうか?
まるで烏帽子のような形をした特徴的なこの花の名は…


ミヤマトリカブトです。
古来から狩猟や暗殺に用いられてきた植物です。
むしゃむしゃ食べたりしなければよっぽど大丈夫だとは思いますが、
トリカブトの毒は経皮吸収もされるらしいので
無闇矢鱈に触ったりしないようにしましょう。


千丈沢乗越で稜線に出ました。
裏銀座にもなっている西鎌尾根です。
槍ヶ岳は雲の中か…
僕等が着く頃に晴れてくれたら嬉しいけど…(淡い期待)


乗越(峠)の名前の由来になった千丈沢。
千丈と呼ぶだけあって広々とした沢です。
ただ、天上沢と合流する辺りから急激に険しくなるので
道は付けられていません。


上の方の稜線は未だにガスが掛かっていますが、
剱岳の時(2020/9/21)のように晴れてくれることを願って登ります。


振り返ると西鎌尾根の双六岳方面が良く見えました。
裏銀座もいつかやってみたいな…
裏と言うものの飛騨山脈(北アルプス)の主稜線は寧ろこちらです。


おや…?雲が薄くなってきたような?
これはもしかすると本当に行けるかも!?


槍ヶ岳頂上直下の槍ヶ岳山荘に到着。
この立地ながら日本最大級という巨大な山小屋です。
槍ヶ岳頂上の核心部、槍の穂先へは
ここで大きな荷物をデポしてアタックすることになります。
槍の穂先の様子は…


うおお!キター!!
願い通りにバッチリ晴れています!
しかし、変わり易いと言われる山の天気の中でも
取り分け変わり易いのが槍ヶ岳の天気。
まごまごしている内にまたガスが出たりなんかしたら号泣ものなので
サッとアタックザックに切り替えてアタックをかけます。


ここまで一切難所らしい難所の無かった槍ヶ岳ですが、
穂先になると思い出したように突如岩峰としての本領を発揮します。
一昨日の西穂高岳(2024/8/11)だと
西穂高口駅→(ハイキング)→西穂山荘→(トレッキング)→丸山
→(中級登山)→独標→(上級登山)→西穂高岳→(and beyond…)
と段階を踏んでいましたが、槍ヶ岳はいきなりですね。
裏を返せば、体力さえあれば槍ヶ岳山荘までは普通に来られます。


とはいえ、その槍の穂先もしっかり整備されている上に
混んでいなければコースタイム20分と短いので、
ちょっとしたアトラクションくらいの感じです。
実際、岐阜県の山のグレーディングでは
西穂独標と同じC難度に位置付けられています。


ただ、鉄梯子なんかは結構高度感があるので、
技術的にそこまででは無くても
ある程度高所経験は積んでおいた方が良さそうです。


…興奮隠しで槍ヶ岳を下げてしまいましたが、
内心はそれどころではありません。
逸る気持ちを必死に抑えながら歩を進めています。
この最後の鉄梯子を昇れば…


おぉ…


遂に成し遂げました!
8:41、槍ヶ岳(標高3,180m)登頂です!
これで即ち、三大岩峰剱岳・槍ヶ岳・穂高岳を制覇しました!!
やっと「日本で登山をしている」と胸を張って言えるようになった…


いやぁ、事前の天気予報では散々なものだったけど、
結果としてこんな清々しい空の下で登頂出来て本当に良かった…
つくづく槍ヶ岳の天気は読めませんね。
今回に限ってはそれが僕等に味方してくれました。


ちょっと雲が多めではあるのですが、
それはそれで神々しい雰囲気があるのでまた良し。


剱岳と比べてしまうと槍ヶ岳一般ルートの技術的難度は低い
というのは事前に良く分かっていたことなので、
実は元々は一般登山道最難関との呼び声高い
大キレットを通る計画を立てていたりしました。
天気予報が宜しくなかったのと、
槍ヶ岳登頂の成功率を少しでも高めたかったので
結局無難な新穂高右俣コースを使ってしまいましたが…


更に難易度の高いルートとして
北鎌尾根という著名なバリエーションルートもあったりします。
こちらは剱岳の北方稜線と同じくロープワークが必要になってくるので
今の僕等の技能では歯が立ちませんが。


朝早くに出発したお蔭で山頂が空いていたので
たっぷり40分以上も滞在してしまいました。
名残惜しいですが、槍ヶ岳山荘に戻ろうと思います。
上で言及しそびれましたが、
槍の穂先は登りと下りが別ルートになっているので
行き違いで待たされることはそんなにありません。


もうガスってきてしまった…
本当に、針の穴を通すような晴れ間に登頂出来たんだな…


興奮冷めやらぬまま槍ヶ岳山荘に帰着。
ちなみに、上の写真では興奮で言及し忘れていましたが、
槍ヶ岳本体(大槍)の左奥にピョコンと突き出しているのが
童謡「アルプス一万尺」で有名な小槍です。
午前中どころか9時台に行動が終了してしまった…
ぶっちゃけ余裕で新穂高温泉まで下山出来る時間ですが、
前述の通り昼から天気が崩れる予報なのと、
折角なら余韻に浸りたいので今日は槍ヶ岳山荘で泊まります。


流石は槍ヶ岳山荘、グッズの充実度が段違いです。
バンダナ、Tシャツ、ピンバッジといった定番物は勿論のこと…


CITIZENとコラボした槍ヶ岳ウォッチなんてものまでありました。
山で使うならG-SHOCKとかの方が良いのでは。


部屋に入れるのは10時半からだそうなので、
暫く小屋の前のテラスで槍沢を眺めながらお菓子を摘みます。
すぐそこに殺生ヒュッテが見えていますね。
この写真では雲に隠れていますが、
左奥の東鎌尾根の上にはヒュッテ大槍も見えます。
この山小屋密度、流石は北アルプスの中でも特に人気な山ですね。


時間になったのでチェックインします。
元々は相部屋で予約していましたが、
簡易個室なるものが空いていたので追加料金を払って移ってみました。


蚕棚を2人分ずつ木の板で区切ってあり、
入口はカーテンで目隠し出来るようになっています。
最近改装か増築でもされた棟なのか真新しく、
見るからに古さを感じる相部屋に比べて大分快適です。


11時になると喫茶で昼食営業を始めたので昼食に。
槍ヶ岳ブラックキーマカレーがオリジナルメニューだそうですが、
麻婆茄子丼の誘惑に負けてしまいました。
なお、水が貴重なのでお茶はおかわり自由ではなく1杯のみです。


談話室などで時間を潰していたら、
いつの間にか外が土砂降りになっていました。
早出早着して本当に良かった。


14時になると今度は喫茶でおやつタイムです。
モンブランやプリンなどが頂けます。
槍ヶ岳を模しているのか全てとんがりコーン乗せです。


ジョッキパフェ(2023/10/6)ならぬジョッキプリンなんてメニューも。
4人グループくらいならシェアしても面白いかも。
2人だと流石に食べあぐねそうな量ですね…


17時から夕食です。
食べてばっかりじゃねーか!と言われそうですが、
談話室とか個室に居る時間は特に書くネタが無いので…
暇過ぎて昼寝したら高山病で頭が痛くなりました(標高3,080m)


夕暮れの槍ヶ岳。
丹色の霧に包まれた穂先も絵になりますね。
明日までに雨は上がってくれるのか、
そしてあの滝谷はちゃんと通行出来るのか、
幾つか心配事はありますが今日のところは寝ます。

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