雨中行軍!白馬鑓ヶ岳 第1日目

昨夜は喧々諤々の議論をした挙句結論が出なかったので、
それならば条件を定めて明朝機械的に判断しようということに。
その条件分岐とは、

・条件A:大雨注意報・強風注意報が発令されていない
・条件B:発雷確率が20%以下
 ├→A、Bのいずれかを満たさないならば登山中止
 ↓
A、Bの両方を満たすならば猿倉登山口まで移動し、
・条件C:猿倉荘で登山道の状況を確認し、通行可能との情報を得る
 ├→条件を満たさないならば登山中止
 ↓
条件を満たすならば白馬鑓温泉小屋に電話し、
・条件D:登山道が通行可能であるとの情報を得る
・条件E:白馬鑓温泉小屋に空室がある
 ├→D、Eのいずれかを満たさないならば登山中止
 ↓
D、Eの両方を満たすならば登山決行

※注意(自戒の念を込めて)
上述の条件はこれを満たしていれば登山の安全が保証される
というものでは決してありません!
今回のようにメンバー内で意見の相違が生じているような場合は
原則として速やかに登山計画を中止して下さい!

さて、まず天気予報の確認をしてみると…
条件AとBは満たされていますね。
なら取り敢えず猿倉までは行ってみるか…


1年振り(2023/7/22)の猿倉荘。
三連休だというのにガラガラです。
まあ、常識的に考えてこの天気予報なら登山なんかしないよな…
既に小雨がパラついているし…


猿倉登山口が空いているのにはもう一つ理由があって、
実は去年使った大雪渓ルートが
クレバスの多発により通行止めになっているのです。
大雪渓ルートは平成28年9月に史上初の雪不足原因で通行止めになり、
実は去年も8月末に同様の理由で通行止めになっていたのですが、
今年は何とシーズン開幕から通行止めという異例の事態に。
地球温暖化の影響でしょうか。
もしかすると、去年が夏に大雪渓ルートを通行出来た
最後の年になってしまう可能性も…

それはそれとして、猿倉荘で登山道の状況を確認します。
曰く、
「白馬鑓温泉ルートなら幾つか雪渓は残っているけど、
軽アイゼンがあれば普通に通過出来るよ。
雨だから気を付けなさいよ。」
とのこと。
山行中止の圧は一切無く、「行きたいなら行けば?」
という雰囲気を犇々と感じます。
ということは…条件Cも成立なのか?

では、最後の条件分岐として白馬鑓温泉小屋に電話をします。
その結果は…
「白馬鑓温泉ルートの通行に支障はありません。
当日予約の手数料として2,000円が掛かりますが、
白馬鑓温泉小屋の予約を取ることも可能です。」


条件D、Eも成立…となれば必然的に登山決行となる!
私情を差し挟まず機械的に決めようと言った手前、
こうなればもう行くしかありません。
え?結局お前は行きたいのか行きたくないのかどっちなんだ、って?
そりゃあ、こんな天気ではぶっちゃけ行きたくないですよ…
2〜3人の山行だったら確実に中止していました。
しかし、絶対に登山したいという強い思いの人も居るし、
6人を前に意見を押し通せる程の圧は持てない…
…この感じ、歴史に刻まれた数々の失敗事例を彷彿とさせるけど、
果たして我々は生還出来るのか。


雨は止むどころか勢いを増していく一方です。
それと反比例して隊の士気は萎えていく一方です。
こんなに精神に来る山行はワンゲル部(2013/6/15-16)以来だぜ…


最早沢と化している登山道。
沢登り企画かな?
写真撮影の気力も湧かないので自然とペースが上がり、
雨具の中は汗なのか雨なのか分からないほどビショビショ、
混乱してそれならば脱いでしまえと脱いだら
ちゃんと雨具は機能していたみたいで余計にずぶ濡れになり、
徒に体力を消耗するだけの結果に。


物理的にも精神的にもずぶ濡れの山行に
文字通り花を添えてくれる白馬の高山植物達。
ニッコウキスゲと言えば今年は霧ヶ峰が当たり年だそうですね。


この辺りも晴れていれば凄く爽やかな休憩適地なんだろうな…
今は樹林帯を抜けると諸に雨を受けるので足早に抜けます。


小さな池を湛えた小日向のコル。
静止画で雨の降り方を伝えるのは難しいですが、
荒れる水面で土砂降り具合が分かるでしょうか。
そして、この地点が白馬鑓温泉までのおおよそ中間地点。
引き返すならここが最後のチャンスです。
リーダー(今回は僕がリーダーではありません)へ
改めて判断を仰ぎましたが、登山続行に。


コルを越えると後立山連峰の稜線がうっすらと見えてきました。
ここへ来て初めてと言って良い展望です。


あっ!
雪渓の脇に白馬鑓温泉小屋が見える!
あそこまで辿り着けば熱い温泉が待っている…!


目的地が見えて俄にやる気が出てきました。
雨は依然として降り頻っていますが、
見果てぬ温泉への夢を心の拠り所に歩き続けます。


真っ白い雪が詰まった杓子沢と、
それと対照的な真っ黒い落石沢。
まるでソリモンエス川とネグロ川の合流です。
どちらもおどろおどろしい…


落石沢という名前からして危険地帯の沢も
当然越えなければ温泉に辿り着けません。
雨で地盤が緩んでいるだろうし、尚のこと怖いな…


まずは杓子沢の雪渓を越えます。
落石沢の衝撃で霞みがちですが、
こちらも中々の危険地帯です。


軽アイゼンを持ってきてあるのでここは危なげなく通過。
地球温暖化の影響があるのか、
元々のルートよりもかなり下まで迂回するルートが付けられていました。
ここもその内通行不可能になったりするのでしょうか。


そして、次が落石沢です。
断続的にサラサラ、パラパラ、ガラガラと落石の音が聞こえてきます。
タイミングを計って一気に通過せねばなりません。


今だ!通過!
足元の悪いトラバースで滑らないよう気を付けつつも、
可能な限り滞在時間を短縮出来るように足早に進みます。


落石沢を越えると、雪の影響でひん曲がった木が目立つようになります。
如何にも豪雪地帯らしい景観です。


フキやゼンマイなど美味しそうな山菜も増えてきました。
摘んで天ぷらにして信州らしく蕎麦と一緒に頂きたい。


今度は白い落石で埋め尽くされた鑓沢。
こう見えて落石の下は雪渓です。


落石が途切れるとまた大きく下ってから横断します。


尾根筋を越えるとまた雪渓。
ここは下を流れる沢によって特に大きく抉れており、
今度はかなり上まで巻く必要があります。


で、この巻道がとにかく危ない!
細かい砂利から成る側堆石が雨を吸収していて
踏み締める毎に崩れて滑り落ちていきます。
下山時までルートが残存しているかさえ不安になる脆さです。


話を聞いた限りだと雪渓通過はこれが最後…?


最後の沢には雪渓がほぼ無く、
木橋によって沢を越えることが出来ます。
何故この沢だけ例外的に雪が少ないのか?


それはこの沢、湯ノ入沢には温泉が混じっているからです。
仄かに硫黄の臭いが漂い、
石には湯の花が沈着しています。
これは温泉小屋も近い証拠…!


コンクリートのような湯の花の斜面を登れば…


着いたぞー!!
標高2,017mの天空温泉、白馬鑓温泉小屋に到着です!
本当に辛い道のりだった…


昨日今季の営業を開始したばかりの白馬鑓温泉小屋。
三連休にも関わらずテント場には一張もテントがありません。
部屋も閑散としています。
ある意味快適…かも。


この小屋は雪崩による倒壊を避ける為に
毎年冬になると解体しているからか
付近の他の小屋にはある乾燥室が無く、
雨に濡れた装備は軒先に干す他ありません。
これは山行中ずっと濡れたままになりそうだな…


しかし、この際そんなことは瑣末な問題です。
ここには何と言っても源泉掛け流しの露天風呂があるのです!
ずぶ濡れになって冷え切った心も身体も芯から温めてくれます。


それをこの絶景の中で堪能出来るんですからね。
贅沢過ぎる…
頑張って良かったなぁ…


一風呂浴びて身体を回復させたら、
軒先でコーヒーを淹れたりして一服します。
雨音を聞きながらの一服も良いものです。
ただ、この頃には五月蝿いくらいの豪雨になっていましたが。
間一髪だったな…


温かいお風呂に温かいご飯、それに温かい寝床。
これが幸せというやつですね。
…では、明日の行程について話し合わなくては。

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