東方遊島録 第6日目

Kiritimati Island(クリスマス島)を巡ります。


7:16、起床。
世界一早い夜明けです。


朝食は相変わらずショボい。
8時前に迎えに来たガイドさんの車に乗って
London(ロンドン)に向かいます。
キリバスの人は基本的に時間通りには来ないと聞いていたけど、
今のところ寧ろ正確だという印象さえ受けるな…


Londonの港から小舟に乗ります。
メインカメラのミラーレス一眼を持って行くか、
安全を取って防水カメラだけにしておくか…
と一瞬逡巡しましたが、Eutan Tarawa(北タラワ)を思い出して
メインカメラは車に置いて防水カメラだけを手に持ち、
上着も脱いで水着に着替えて
このまま海に飛び込んでも問題無い装備に替えました。


という訳で、いざ出港です。
早速波飛沫と驟雨の洗礼を受けます。


まずやって来たのはMotutapu Islet(モトゥタプ小島)。
Auckland(オークランド)にあったあの島
全く同じ名前です。
“Motutapu”というのはポリネシアの言葉で「聖なる島」という意味。
遠く離れていても同じポリネシアです。


ここは海鳥の聖地として名高い場所。
上陸するや否や夥しい数の鳥が空を埋め尽くします。
セグロアジサシ…でしょうか。
英語で説明されても種名は分からない…(”sooty tern”らしい)


人が少なく警戒心が薄いのか、
飛んでもあまり高い高度まで上昇しません。
手を伸ばしたら届きそうな低空飛行です。


手を伸ばすどころか普通に立っているだけで
ぶつかってくるんじゃなかろうかという距離です。
近い近い!


こっち見んな。


何なら端から飛びすらしない個体も一定数います。
この子達はクロアジサシ、
またはヒメクロアジサシのようですね(Google先生判断)。


地面に目を遣るとよちよち歩きの雛もいました。
クロアジサシの雛のようです。
可愛いですね。
保護する親鳥が周囲には見当たらないのですが、
よっぽど天敵がいないのでしょうか。


薮の中で抱卵している親鳥もいました。
アカオネッタイチョウのようです。


ガイドさんが
「もっと写真を撮り易くしてあげるよ」
と手を突っ込んで思い切り威嚇されていました。
大丈夫なんだろうか…色んな意味で。


メインカメラを置いてくるということは望遠レンズも無いということで、
それでバードウォッチングなんて出来るんだろうか…
と不安に思っていましたが、
望遠どころかマクロレンズが要りそうな勢いです。
野鳥をこんな接写出来るなんて…
こちらはGoogle先生がセグロシロハラミズナギドリか、
ムナオビシロハラミズナギドリか、
カワリシロハラミズナギドリか、判断に迷っていた鳥。
Kiritimatiでの目撃情報の多さを鑑みるに
ムナオビシロハラミズナギドリ…なのでしょうか。


こちらはアカアシカツオドリ(左)とシロアジサシ(右)。
熱帯のバードウォッチングということで
色鮮やかな鳥達が飛び交う姿を想像していましたが、
基本的に皆白黒です。
後程調べてみたところ、
海鳥というのはカモフラージュの為に基本白黒なのだそうです。
生物学の知識の貧弱さが露呈してしまった。


森の中にも分け入ってみます。
地面はそこら中巣穴で穴ボコだらけになっており、
気を付けないと踏み抜きそうです。


卵ってこんな無造作に置くものなの…?
やらせにしてももう少し凝りそうな置き方です。


卵の主かも知れないヒメクロアジサシ。
いや、謎の哺乳類2体に卵を凝視されて
このドヤ顔を保っているということは違うのだろうか。


Kiritimati Islandに何故こんなに海鳥が多いかと言うと、
太平洋ど真ん中で貴重な羽休めの場所となっているからです。
人間も鳥も大海の中で陸地に休息の地を求めるのは同じですね。


一通りMotutapu Isletの海鳥を見終えたら
次の島に向かいます。


Cook Islet(クック小島)に上陸。
礁湖の入口に邪魔臭く陣取る小島です。


ここにもまたとんでもない数の海鳥がいます。
Motutapu Isletと違って森が無いので
全ての鳥が草地に陣取っています。


さっきもいたアカアシカツオドリ。
近くで見ると結構キモい顔してますね。


こっち見んな。


そろそろ海鳥は一生分見た気がするので、
三度小舟に乗って次の島へ。


エイが砂浜に群れていました。
エイって結構強い毒を持っていたりするけど、
Kiritimatiのエイは大丈夫なんだろうか。


お目当ての上陸地が見えてきました。
ここは小島ではなくKiritimati Island本島の陸地です。


上陸しました。
Cook Isletを挟んでLondonの対岸にあるこの集落、
何という名前が付られているか覚えていますか?


正解はParis(パリ)です。
さっき渡ったのがStrait of Dover(ドーバー海峡)ということか。
「花の都パリの真の姿がこちら」
みたいなネタ画像を撮りたくて標識を探しましたが、
小さな集落だからか標識の類は見当たりませんでした。


Parisと言えばシュノーケリングだそうなので、
曇天を通り越して雨がぱらついてきましたが海に入ります。
フランス本国のParisで泳ぐのは…やめようね!


太陽は顔を出していませんが、
それでも十分過ぎるくらい良く魚が見えます。
この魚の量だと釣りの聖地になるのも頷けますね。
キリバス人のガイドさんに呆れられるまで
たっぷり泳ぎました。


では、Londonに戻ります。
メッチャ豪雨になってきた…
まあ、Buariki(ブアリキ)みたいな距離じゃないし、
水着なのでノーダメージです。
これが経験に学ぶということよ。


幸い、Londonに戻ってきた頃には雨も上がりました。
ここからLondon近辺を巡ります。


Kiribati Solar Salt(キリバス・ソーラー・ソルト)。
昨日見た塩田で作っている天日塩を取り扱っている公社です。


無造作に塩の袋が陳列されています。
日本では300g700円とかで売られている塩が
ここでは1kg僅か2AUDです。
破格。


ただ、お土産用というか地元民が普段使いする用なのか
袋には一切の印刷がありません。
見た目が完全にヤバい薬のそれ。
税関で止められて「これはただの塩なんです!」って言い訳したら
確実に別室送りにされるやつですね。
そして、これぞお役所仕事と言うべきか
塩の現物を置いているこの建物ではお金を払うことが出来ません。
天日塩の販売はMinistry of Line and Phoenix Islands Development
(ライン・フェニックス諸島開発省)の管轄の為、
町外れの合同庁舎の窓口で収入印紙を買わなければならないのです。
その代わり、太平洋っぽい大らかさで後払いもOKですが。


ブツの代金の支払いは後回しにして、
ガイドさんの案内でLondonのローカルなところを見せてもらいます。
この一見何でもない建物は…


Kiritimatiの映画館です。
鑑賞料金大人1.0AUD、小人0.5AUD。
これ、家庭用プロジェクターか、
下手したらちょっと大きめのディスプレイに映すだけのやつですね。
イコライザー THE FINALがあるということは、
世界と比較して半年遅れくらいのラインナップでしょうか。


お次はこの建物。
雨除けか何かかと思ったら、
他の島から来た人々が泊まる為のドミトリーなのだそうです。
Line Islands(ライン諸島)にはKiritimatiの他に
Tabuaeran(タブアエラン島)と
Teraina(テライナ島)という2つの有人島があり、
それらの島の島民は行政手続きをしたり外界へ出る為には
必ずKiritimatiを経由する必要があります。
しかし、連絡船は日程が読めない為に
数日から下手すると月単位で船待ちをする羽目になります。
その長い船待ちをする為の待合所がこの建物なのだそうです。
キリバスならではの施設。


お次はこの家へ。
外観はただの民家のようですが…


…中もただの民家では?
ガイドさんは何を思ってこの家を覗かせたのでしょうか。


奥に進んでいくと水槽が幾つも並べられていました。
どうやら、ここは魚屋のようです。
今は1匹も入っていませんが。


壁に掛けられていた黒板を見ると、
スリランカ、タイ、香港に輸出しているようです。
この家で海外輸出するほどの量を捌けるんですね。
というか、輸出先は豪州とかじゃないんだな。


次は合同庁舎へ。
この長屋が合同庁舎です。


本当です。
それぞれの扉の上に手作り感満点の
木の表札が掲げられています。
何という長閑な合同庁舎。


移民と保険の窓口のところに貼り紙があったので
何が書いてあるのかと思ったら、
ウォーターサーバーやらエアコンやら売りますという内容でした。
払い下げ品でしょうか。


こちらのRevenue Cashier(収入出納係)で
先程の塩の料金を支払います。
何故こんな離れた位置に窓口を設けたのだろうか。


お次は天日塩以外のお土産を求めて
島一番のスーパーマーケットへ。
土産物屋なんてものはありません。


中はこんな感じ。
トゲトゲボールが山積みされていたり、
品揃えの充実のさせ方が良く分かりません。


冷凍ですが野菜もありました。
グリーンピースと芽キャベツとコーンとポテトだけですが。
もうちょっとほうれん草とか無いんですかね。


そして、お土産(?)もありました。
Tarawa Atoll(タラワ環礁)の地図が描かれた腰布です。
ST(元・旭丘高)なら買いそうだけど…
結局、飲み物だけ買って退店。


次は、日本で宇宙論を専攻した者として見ておきたい物、
JAXAダウンレンジ局を探します。
ダウンレンジ局とは、打ち上げたロケットが水平線の下に消えた後
引き続き通信を行う為に設置されたアンテナ。
ロケットは地球の自転速度を利用する為に東へ発射されるので、
基本的には打ち上げ基地の遥か東に存在します。
それが日本のJAXAの場合Kiritimatiな訳です。
これは…三沢空港とかで見たから多分軍用レーダーですね。


太平洋諸島センターマイナー国含め太平洋諸島のガイドブックを公開している超有難い国際機関。のガイドブックに載っていた
大雑把な地図によればこれっぽい気がする…
ただ、看板とかが一切無い上に
ガイドさんも知らないので答え合わせが出来ません。
携帯電話も通じない現地では
「多分これだろう、ヨシ!」で済ませましたが、
後々ネットに繋いで調べてみたら、
Satellite Tracking Station Communications Mast
(衛星追跡管制局電波塔)であることが判明しました[1]。
本物はもっと背の低いパラボラアンテナのようです。
まあ、これも宇宙には関係しているから…


最後に、空港の裏にあるこの謎施設。
これが何かと言うと…


蟹の養殖場です。
島内に食用として売られるそうです。
これまた後程Googleレンズで調べてみたところ
オカガニという蟹の種類だそうで、
少なくとも沖縄県に生息している種は
泥臭くて食べられたものではないそうです。
Kiritimati産は違うのでしょうか。


トタン波板で囲われただけの生け簀からは
隙あらば蟹達が脱走しようとしていて、
それを子供が手で叩き落としています。
何処までも長閑な国ですね。


という訳で、これにてKiritimati観光は終了。
ホテルに戻ります。
豪州のお下がり品なのか、
カンガルー飛び出し注意の警告が付いたままの速度制限標識で草。


今夜は送別会も無く、
熱帯らしい豪雨の夜をしめやかに過ごしました。

参考文献
[1] AECOM, “Obstacle Limitation Surface (OLS) Survey and Type A Chart, Cassidy International Airport (CXI) – Kiribati (D-V2-1)

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