奥穂高岳? 第2日目

5:01、起床。
穂高岳山荘のライブカメラで稜線の状況を確認すると…
ガッツリ雪が積もっているじゃないか!
軽アイゼンは持ってきたけど、
これはもう12本爪アイゼンが要るレベルだな…
こうなると昨夜考えた代替案に切り替えねばなりません。

代替案その1は、隣の常念山脈蝶ヶ岳に登る案。
昨晩の雪は西高東低の気圧配置で飛騨側から来たもの。
となれば、梓川の東に位置する蝶ヶ岳ならば
穂高連峰が壁となって雪が積もっていないのではないか?
と期待しましたが、横尾山荘の管理人に状況を尋ねると
常念山脈も普通に積雪しているとのこと。
駄目か…

代替案その2は涸沢まで往復して
今日の内に上高地まで戻ってしまう案。
せめて紅葉の涸沢カールだけ拝んでから
蜻蛉返りして下山してしまおうということです。
ただ、横尾-涸沢-上高地は20km超の長丁場。
混雑も考えると上高地発の最終バスに乗れるかが
怪しくなってしまう程の距離です。
上高地で野宿は嫌だなぁ…

代替案その3は涸沢すら諦めて
大人しく横尾で踵を返して帰ってしまう案。
これは一番の安牌ではありますが、
展望も無い往復20kmの作業道歩きの為だけに
2日も有休を取って上高地まで来たのか?
という悔悟の念を抱きながら
この後の三連休を過ごすことになってしまいます。

代替案その4は涸沢までの往復にして
道中の何処かの小屋に泊まる案。
時間的に余裕があり、涸沢の紅葉も拝めるので
最善案ではあるのですが、
紅葉シーズンの上高地周辺の小屋は何処も彼処も満室。
悪天候でキャンセルが出てはいないだろうかというのが
一縷の望みではありますが、果たして…


どうやら本当にキャンセルがあったようで、
電話してみたらあっさり予約が取れました!
紅葉真っ盛りに涸沢で小屋泊なんて
普通なら奥穂高岳登頂よりよっぽど至難の業ですが、
奥穂高岳を潔く諦めた僕等へのせめてもの慈悲でしょうか。
という訳で、涸沢を目指して登山再開です。
この横尾大橋から漸く登山道。
長野県警山岳遭難救助隊が張っていて
ハイキング気分の観光客を追い返しています。


ただ、上高地の登山道の基準は大分緩くて、
どうやら車が入って来られる道が並走していないだけで
登山道という扱いになっているようです。
暫くは横尾谷の平坦な道が続きます。
一度稜線に出ると凄まじいんだけどな…


本谷橋で横尾谷左岸から右岸へと渡ると、
いよいよ真の意味での登山道開始です。


槍ヶ岳方向へと分岐していく横尾本谷を見送ります。
この辺りの標高から紅葉していますね。


そして、ここからがかの有名な涸沢です。
段々とガレ場が増えてきました。
ガレ場の整備のガチ度が凄い。
南アルプスならほぼ放置か、
精々ちょっとステップを刻むだけだろうな…


穂高連峰を視界に捉えました!
完全に冬山の顔をしていますね。
エベレスト街道から見るヒマラヤ山脈もこんな感じでしょうか。


穂高連峰には低い雲が覆い被さっていますが、
後ろの常念山脈方面は綺麗さっぱり晴れています。
不思議な天気だ。


涸沢カール直前で遂に積雪が。
岩が露出し過ぎていて軽アイゼンは使えないな…
もう小屋は目前なので注意しながら歩きます。


という訳で、涸沢カールに辿り着きました!
まだ緑さえ残るナナカマドと雪山がセットという
頭が混乱しそうな組み合わせです。
このように紅葉前の緑、紅葉真っ盛りの赤、
そして雪の白が共演する景色を三段紅葉と呼ぶそうです。
初めて聞いた日本語だ…


涸沢下流、常念岳の方角を見遣るとこんな感じ。
緑が多くて余計に不思議な眺めですね。
普通の三段紅葉は麓の木々が緑色、中腹が紅葉で赤色、
山頂が冠雪で白色と、山全体を使って
やっと三色を揃えるものらしいのですが、
涸沢カールだけで三段紅葉を実現するのは
20年に1度くらいの珍しい現象だとか。
運が良い…のか?


とはいえ、ハイキング客ではなく一介の登山者としては
やっぱり奥穂高岳にも登りたかったな…
今年は穂高岳山荘が100周年で記念品も貰えたらしいし…
まあ、3度目の正直で登頂を果たした剱岳(2020/9/20-21)然り、
実は1度悪天候で山行計画を中止していた槍ヶ岳然り、
日本三大岩峰の剱、槍、穂高は
何度か撤退を余儀無くされるくらいが
ラスボスっぽくて良いのかも知れません。
お楽しみは取っておくということで…


今夜の宿は涸沢ヒュッテ。
紅葉時ともなれば日本一予約困難と言っても過言ではなく、
コロナ禍前は1枚の布団に3人寝るのが普通だったという
超人気の山小屋です。


しかし、今はコロナ後の時代なので1枚の布団に1人どころか、
布団と布団の間にもう1枚布団を敷けそうな間があるという、
4年前までの登山者に伝えたら
絶対に信じてくれないであろう快適さです。
予約は更に取り難くなってしまいましたが、
ある意味登山者にとって良い時代になったのでしょうか。
ちなみに、涸沢ヒュッテには何と無料Wi-Fiもあります。


屋上のテラスは盛況です。
この寒いのに屋外で食べるのか…
だからなのかは分かりませんが、
涸沢ヒュッテ一番の名物メニューはおでんです。


おでんに続く名物を作ろうとしているのか、
「涸あげ」なるメニューもありました。


横尾から涸沢カールまでのコースタイムは3時間足らず。
時間が余りまくっているので、
カールを挟んでお隣の涸沢山荘にも遊びに行ってみます。
この小屋の密集具合は流石北アルプス。


涸沢小屋の名物メニューはジョッキパフェ。
ですが、残念ながら夏季限定のメニューだとか。
ソフトクリームも売り切れです。


ということで、スタミナ豚丼を頂きます。
ニンニクが効いていて美味しい。
汗をかいてきた登山者向けだからか塩辛い味付けです。
付け合わせのわかめスープはやけに薄いけど。


食べていたら外から音が聞こえてきたので
何かと思って出てみたら、
涸沢ヒュッテにヘリコプターが飛んできていました。
着陸していたので荷上げではなくて遭難者の救助のようです。
この天候の急変によって低体温症になってしまった人が居たとか。


今度はこちら側にヘリが飛んできました。


涸沢小屋に荷上げをしにきたようですね。
もしかして、ソフトクリームも補充されるのかな?


されました。
「この気温でソフトクリーム〜?」
と周りのおじさんに茶化されながらも己を貫きます。


ホットコーヒーも頼んでコーヒーフロート風の食べ合わせに。
このカップとソーサーが涸沢小屋オリジナル仕様で
凄く欲しかったのですが、
残念ながらお土産としては売っていないようです。


涸沢小屋でのんびりコーヒータイムを楽しんでいたら、
いつの間にかテントの数が100を優に超えていました。
そろそろ涸沢ヒュッテの方に戻るか。


中の売店でお買い物。
丁度ヘリで荷上げされてきた
ナルゲンボトルをお土産として買ってみました。
湯たんぽしても使えて便利。


時間が余ったので食堂でのんびりします。
この一角は特に意匠が凝らされていて
およそ山小屋とは思えません。


それでも、窓から見える景色はちゃんと山小屋です。
こんなところでテレワークがしたい。


談笑したり昼寝したりしていたら
夕食の時間になりました。
ここもまた具沢山な夕食です。
トンカツやエビフライまであるけど、
油の処理とかどうしているのだろう…


夜の帷が下りてから再び外へ。
夜の涸沢の名物、色とりどりのテントです。
まるで無数のランタンが山を飾っているかのよう。


露光時間を長くしてみるとこんな感じ。
背後の北穂高岳とその上には星も見えます。
三脚があってフルサイズのカメラなら
もっと綺麗に撮れるのでしょうが…


マイクロフォーサーズのカメラを
吹き曝しの凍った手摺りに置いて撮るのではこれが限界です。
ちなみに、前面の紅葉の光源は
偶然そこを通りかかる登山者のヘッドライトです。
もう少し何とかならないかと暫く悪戦苦闘しましたが、
極寒の山風が体温だけでなく
カメラのバッテリーもゴリゴリ削ってくるので、
この辺りで切り上げて寝床に戻りました。
湯たんぽ代わりのナルゲンボトルが早速大活躍している…

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