5:46、起床。
ぐっすり10時間も眠ってしまいました。
もう日が昇ってしまっています。
ただ、昨日頑張った分今日明日は余裕のある行程なので
今朝は少しだけのんびり出来ます。
荒川小屋のご機嫌な朝食。
嬉しいミカン缶付きです。
では、今日も一日頑張っていきましょう!
昨日ので感覚が麻痺してしまっていますが、
今日は今日で5時間超のコースタイムではあります。
7:02に荒川小屋を出発。
振り返って見る荒川小屋。
こうして見ると本当にとんでもない位置にあるよな…
流石は日本で最も遠い山小屋の一つに挙げられるだけあります。
荒川岳は高山植物の宝庫としても知られており、
鹿による食害を防ぐ為に防鹿柵が設置されています。
が、もう花は全く咲いていませんね…
山の夏は短い。
昨日見えていたあの稲妻道を登っていきます。
急登は急登ですが、景色が良いので頑張れます。
大聖寺平以来の稜線に復帰しました。
やっぱり稜線は気分が良い。
荒川岳は別名荒川三山とも呼ばれる3つのピークから成る山なので、
西側から順に踏んでいきます。
8:26、まずは荒川前岳(標高3,068m)に登頂。
西側の眺めが非常に良いです。
…あまりにも良過ぎます。
実は荒川前岳の西斜面は
「荒川大崩壊地」と名付けられているほど崩壊の激しい場所で、
雨の度に崩落が進んでいるのです。
江戸時代に一帯から大量の木材を伐採したことが
きっかけではないかと目されているとか。
南アルプスの不安定さが垣間見える一面です。
崖は山頂を示す標柱ギリギリのところまで迫っており、
そろそろ標柱が飲み込まれてしまうのではないかと言われています。
いつか荒川前岳自体が消えてしまうのでしょうか。
荒川前岳から三伏峠への登山道も崩壊に巻き込まれており、
道が崩れてしまっているところもあるとか。
その内に廃道化してしまうのでしょうか。
南アルプスがどんどん登り難くなっていく…
ここから荒川三山の残りをなぞっていきます。
8:54、荒川中岳(標高3,083m)に登頂。
中央に位置しているので主峰…
という訳ではなく、正直一番地味なピークです。
ただ、三角点はこの荒川中岳にあります。
中岳の面目でしょうか。
そして、赤石岳と同じく山頂直下に避難小屋もあります。
中岳避難小屋です。
まるで絵に描いたような山小屋。
山小屋のイメージ像はここから持ってきたのか?
と思わずにはいられない、
山小屋のエッセンスを混じり気無しに具現化したような景色です。
ここも静岡県営の山小屋で、
赤石岳避難小屋と同じく定員10人の予約制で素泊まり宿泊出来ます。
1週間くらい泊まってみたい…
中はこんな感じ。
サイズ感も相俟って民家みたいですね。
ペットボトル飲料と行動食を売っていました。
中岳避難小屋の前で一息吐いていると…
また見えちゃったよ…
今度はあの道を登るのか…
同じ荒川岳の名で括られている割に登り返しが激しくない?
あそこが荒川三山の最高峰で謂わばラスボスなので、
心して掛かりましょう。
中岳避難小屋に別れを告げて前進です。
北アルプスを彷彿とさせる細い稜線になってきました。
ラスボスの前の回廊に相応しい。
さあ、ここからが最後の急登です!
滑りやすそうな砂利の九十九折の先には
針山地獄を思わせる岩稜地帯が続いています。
思ったよりガチな岩場だな…
南アルプスって北アルプスよりなだらかなイメージがあったけど…
登山者が少ないからなのか、
北アルプスなら鎖が付けられていそうな場所でも
己の身体のみで登攀することが求められます。
しかし、南アルプスのそういう朴訥なところがそそりますね。
登山の何たるかを体現している気がします。
いや、北アルプスが登山じゃないと言いたい訳ではないのですが。
岩場地帯を抜けました。
ここまで来れば後はウイニングランも同然…!
10:28、悪沢岳こと荒川東岳(標高3,141m)登頂!
これで荒川三山制覇です!
我々が登頂するや否やガスってしまいました。
陽光の下の姿をギリギリ拝めてラッキーでした。
この悪沢岳は標高が円周率の10^3倍ということで数学徒に人気
…ということもないようです。
ここまで登って来られる数学徒は殆ど居ないのでしょう(暴論)
悪沢岳というおどろおどろしい名前は
この山から下る沢の地形が非常に「悪い」ことから
その名が付けられています。
そして、「地形が悪い」とは「崩れていて険しい」という意味です。
何とも南アルプスに相応しい名前です。
登山道の続く東斜面も崩れた岩が散乱していて歩き難い。
攀じ登る岩場よりもこういう足元に気を付ける岩場の方が
足を挫きそうで嫌いなんだよな…
悪い岩場を抜けました。
大分なだらかな地形になってきましたね。
11:17、丸山(標高3,032m)に登頂。
名前通り丸っこい形の山です。
広い山頂で皆思い思いに休憩します。
悪沢岳よりもこちらの方が休憩適地ですね。
お昼時なので昼食を摂ります。
これでもう険しい箇所は終わりかと思いきや、
まだ梯子が掛かっていたりと悪い地形は続きます。
12:19、千枚岳(標高2,880m)に登頂。
これが荒川岳最東のピークにして、
今回の山行における最後のピークです。
ここからは明日も含めてひたすら下り一辺倒です。
楽しい稜線歩きもここでお別れか…
名残惜しいですが仕方ありません。
森林限界も下回ってこの先は眺望も望めません。
修行要素も強いのが南アルプスです。
二軒小屋への分岐。
二軒小屋ロッヂは椹島ロッヂと同じく特殊東海フォレスト管理の小屋で、
宿舎感の強かった椹島ロッヂと違ってログハウス風のお洒落な建物に
本格的なジビエ料理と檜風呂まで楽しめる
下界のホテル顔負けの宿泊施設だったのですが、
リニア工事の影響で長らく休業状態になっています。
泊まってみたかったな…
12:51、千枚小屋に到着。
これにて今日の行程は終了です!
昨日に比べるとぬるい行程に思えてしまう。
ここもまた非常に綺麗な山小屋です。
静岡県営の小屋は最近一気に改修したのでしょうか?
売店の品揃えも良いです。
卯年ということで近くにある兎岳を描いたTシャツがあったので
お土産に買ってみました。
軽食も買って談話室で新入部員育成計画などを駄弁ります。
夕食はハンバーグでした。
登山の後の蛋白質は良いものです。
千枚小屋は東側に開けた斜面にあるので
夕陽は見えないだろうと思いつつも外に出てみたら、
謎の光がある一点から放射されている様子が見えました。
何この光!?
調べてみたところ反薄明光線という現象のようで、
雲の切れ間から太陽の光が漏れ出た際に
そのまま空の反対側へ飛んでいく軌跡が霧などにより可視化されると、
太陽とは正反対の点に光が収束していくように見えるそうです。
なるほど、太陽光は地球の位置ではほぼ平行光線だからそうなるのか。
日が完全に落ちて目が慣れると街灯りが見えて来ました。
この立地でこんなに明るい街灯り?
方角的に左は甲府市で右は富士宮市のようです。
この距離でもこんなに明るく見えるんだな…
天体観測では荒川小屋に敵いませんね。
荒川小屋のスタッフの方も星を見に出てきていたので、
夜空を眺めながら色々お話を伺いました。
曰く、昨今の働き方改革の波は山にも押し寄せているそうで、
今は山小屋の仕事でも労働時間をきちんと管理して
残業代が支払われるのだとか。
話をしたスタッフは普段地元の林業会社で働いているそうですが、
社長に山小屋のバイトを紹介されて
実際に来てみたら想像以上に良い条件で驚いたそうです。
民営ではなく県営の小屋だからというのもあるのでしょうか。
こういう背景も鑑みると宿泊料金の値上げも已む無しですね。
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