深夜。
この宿は冷房が無い代わりに雨戸も無く、
心地良い夜風に吹かれながら南国の夜を過ごせる…
…と言いたかったですよ、僕も。
バケツをひっくり返したような雨だの、滝のような雨だの、
色んな大雨の表現がありますが、
そのどれも足りないくらい、
空中からこんな量の水を降らせることが可能なのか!?
と叫びたくなるような豪雨が深夜に襲い、
良く寝ることが出来ませんでした。
太平洋の只中で標高を持つとこうなるのか…
マジで瞬間的には100mm/hを超していたのでは…
その冗談みたいな豪雨も朝には嘘のように上がり、
もしかして悪夢か何かだったんだろうか…?
と思いながらも、
迎えの車に乗ってPohnpei(ポンペイ島)ツアーに出掛けます。
ツアー中にあの雨が襲ってきたら最悪どころじゃないけど、
それはもう文字通り運を天に任せるしかない…
今日はLos Angeles(ロサンゼルス)に住んでいるという
中国人観光客と一緒に巡ります。
ガソリンスタンド併設のコンビニに寄って昼食を買います。
これはスパムおにぎりじゃないか!
しかも、海苔もちゃんと巻いてあるし、
ご飯はちゃんと日本米でもちもちだし、
更にはご飯に混ぜ込みふりかけを入れる一工夫も。
お昼に食べましたが普通に美味しかったです。
関東のコンビニでも売って欲しい。
買い出しを済ませたら、沢を越え入江を越え、
更には海峡も越えてTemwen(テムェン島)へ。
Pohnpeiの一周道路はそれなりにちゃんと舗装されていて
首都を擁する島らしさを見せていましたが、
Temwenに入るとこんな未舗装路になります。
ミクロネシア連邦随一の観光地があるはずなのに
あまりそういうところは整備しないんだな…
冒険気分を演出する為でしょうか。
よもやこの車も日本で散々走った後に
こんな場所で第二の人生を送ることになるとは思うまい。
日本の何処から来たかは知らないけど。
ネッツトヨタ愛知阿久比店!?
実家から5kmと離れていない店じゃないか…
下手したら友達の家の車だったという可能性すらあります。
まさか知多半島出身同士がPohnpeiで出会うとは…
という誰にも共感してもらえない感動の出会いは程々に、
この地域を治めているという豪族に入域料を納めて
いざ熱帯雨林の奥へと進みます。
マングローブの中を抜ける若干頼りない遊歩道。
マングローブ林との標高差が全然無いことから分かる通り、
この道は満潮時には普通に沈むそうです。
赤く染まった落葉に埋め尽くされたエリア。
熱帯気候のPohnpeiにも紅葉する木があるのか…
平均台みたいになっている丸太橋。
もうちょっと隙間無く並べようという考えは無いのか。
下の水は最初から最後まで海水なので、
足を滑らせたら電気製品は全てオジャンです。
数々の難所を越えて辿り着きました、
Nan Madol Ruins(ナンマドール遺跡)です!
12世紀(5世紀説有り)に建造されたという遺跡で、
現在でさえ人口4万人足らずのこの太平洋の孤島で
どのようにしてこんな巨大な宮殿を造ったのか、
未だに解明されていない謎のままなのだそうです。
実はここまで歩いてきた道も遺跡の一部だったりします。
近年ミクロネシア連邦初の世界遺産に登録されました。
メインの宮殿は水路で囲まれている為、
ここだけは渡渉しなければなりません。
大潮の満潮時にはKolonia(コロニア)から
船で乗り付けることも出来るそうですが、
今は中途半端な時期なので…
水着とサンダルに履き替え、
腿まで海水に浸かって渡ります。
Nan Douwas(ナンドワス宮殿)に上陸しました。
丸太のように積み上げられた六角柱の石材。
Sokehs Rock(ソケースロック)にもなっている
Pohnpeiの玄武岩が用いられています。
王の墓だという建造物。
1907年に墓を掘り起こしたドイツ人が不慮の死を遂げたり、
近年ではここで映画の撮影をしたチームが
謎の病に冒されて撤退するなど、
遺跡の祟りを思わせる事象が幾つも生じており、
島の人達は実際に祟りだと信じているとか。
お墓にしてはえらく風通しの良い構造ですね。
件のドイツ人が掘り起こしたからでしょうか。
ただ、掘り返さずに自然に任せるとこんな有り様になります。
日本も欧米に比べると相当森が強いと言いますが、
ミクロネシアの多雨地帯ともなると段違いですね。
元々は92もの人工島で構成されていた
巨大な海上都市だったそうですが、
今ではその殆どがマングローブに覆われてしまって
上陸すら儘ならなくなっています。
Nan Douwasの裏側。
石材は規格化されていた訳ではないようで、
裏側の方がより大きな石材を使っています。
外洋に面しているからより堅牢にした、とかでしょうか。
波の打ち寄せる音が聞こえてきます。
やはり、堤防は築かれていたようですね。
あまり長居をすると潮が満ちて
泳がないと帰れなくなってしまうので、
渡渉で済む内に戻ります。
無事に駐車スペースまで戻って一服していると、
レンタカーで来たという2人組が現れました。
あれ、何処かで見覚えがあるような…
あっ!
Eneko(エネコ島)で一緒になったスイス人の2人!
Chuuk(チューク州)へ行くと言っていたはず…
何でも、昨日のUA132便でオーバーブッキングかあり
$2,000で途中降機してくれる人を募っていたので、
それに名乗りを挙げてPohnpeiで降りたそうです。
$2,000も貰えたなんて…
僕もChuukまで航空券を買っておけば良かった。
それはともかく、次はKepirohi Waterfalls(ケプロイの滝)へ。
Nan Madolは入場料$1、駐車代$3だったのですが、
こちらは入場料$10という強気の値段設定です。
その分、道は極めて良く整備されています。
以前はここも水に浸かる必要があったそうですが、
入場料を原資に整備したのか今ではその必要はありません。
そして、こちらがKepirohi Waterfalls!
高さ15mの玄武岩の岩肌を
轟音と飛沫を立てながら水が流れ落ちています。
離島にこれだけの規模の滝があるとは驚きです。
Pohnpeiが如何に水に恵まれた多雨地帯であるかが分かりますね。
昨夜の豪雨で水量が幾分増していたりするんだろうか。
今日の水勢ではとても川に入る気にはなれませんが、
一応自己責任で泳ぐことも出来ます。
滝を見終えると主な見所は終わりなので、
Pohnpeiを時計回りに一周して戻ります。
途中から大雨になってきて、
少しタイミングがズレていたら危ないところでした。
途中でちょっとだけ寄り道。
ミクロネシア連邦の高等教育を担う
College of Micronesia(ミクロネシア短期大学)です。
USP(南太平洋大学)は無いんですかね?
Kolonia(コロニア)はPohnpei(ポンペイ州)の州都ですが、
Pohnpeiにはミクロネシア連邦の首都もあります。
それがこのPalikir(パリキール)です。
元々は旧日本軍の飛行場があった場所だそうで、
首都として整備するべく様々な省庁が建てられたとか。
周囲一帯には熱帯雨林しかなく、
幹線道路からの入口にCapital Corner
(キャピタルコーナー)という小さな商店があるのみ。
あまりに何も無いので大統領はKoloniaに住んでいるとか。
今日はCultural Day(文化の日)という祝日なので誰も居ません。
という訳で、Pohnpei一周を終えて戻って来ました。
僕の宿の周りはPalikir以上に何も無いので、
中国人観光客と同じホテルで降ろしてもらって
ホテルの食堂でのんびりします。
遅い昼食か早い夕食か良く分からない時間ですが、
お腹が空いたので頼んでみた巻き寿司。
非常にスパイシーな味付けの鉄火巻です。
流石Якутск(ヤクーツク2018/2/11)とは違って
マグロはちゃんとしていますね。
まだ大分時間は早いけどどうしようかな…
このホテルから街に行くにしてもタクシーは必要だし、
街に行ったところで特に何かがあるかと言えば…
なんてグルグルと考えを巡らせつつ
ミクロネシアスタイルの寿司をゆっくり食べていたら、
見覚えのある人影が相席を求めてくるではありませんか。
また会いましたね…スイス人の御二方!
ここまで行動パターンが一致すると運命さえ感じる。
今日はこれからどうするの?みたいな話をしていたら、
「今日はCultural Dayのイベントがあるみたいなんだ。
一緒に行ってみないかい?
僕等のレンタカーがあるからさ!」
とお誘いを受けたので勿論乗ることに。
イベント会場の陸上競技場にやって来ました
が、午前中だけのイベントだったそうで既に撤収作業中。
「どうしようね…」
と2人が悩んでいたので、
「それなら、山登りしてみない?」
と持ち掛けてみました。
乗合タクシーで登山口まで乗り付けるのは難しいし、
犬だらけのSokehs(ソケース島)で徒歩アプローチは無理なので
すっかり諦めていたSokehs Mountain(ソケース山)に、
挑戦出来る機会を得ました。
急勾配を直登していきます。
轍があるのでまだ車道っぽいですが、
レンタカーではトラクション不足で登れませんでした。
眼下には空港のあるDekehtif(デケティフ島)と
Kolonia(コロニア)が一望出来ます。
立派な竹の巨木(?)が現れました。
この辺りから旧日本軍の遺構が点在しているそうですが…
熱帯雨林の泥濘の中を進みます。
登山というより行軍みたいになってきた。
ありました!
旧日本軍の高射砲です。
南洋諸島の旧日本軍設備は米軍によって破壊され尽くした
と思っていましたが、
この高射砲は完全に近い形を保っているように見えますね。
高射砲は目立たないよう
山頂からは少し離れた森の中にあるので、
改めて山頂を目指します。
驟雨に濡れた葉や蔦の所為か、
それとも自分が流す大粒の汗の所為なのか、
服をずぶ濡れにしながらひたすら歩きます。
着きました!
Dollap(ドラプ山)山頂です!
KoloniaとDekehtifを俯瞰するという立地から
電波塔が設けられています。
電波塔があるならそれを管理整備する為の車道がありそうなものだけど、
あの道を登攀して来られる車は存在するんだろうか…?
山頂からの眺め。
草木が生い茂っていてかなり背伸びしないと見えません。
この写真はスイス人に草を除けてもらって撮りました。
日瑞の国際共同作業ですね。
Koloniaとは逆を見遣ると
沢山の船が碇泊しています。
船にはあまり詳しくないのですが、
どの船も巻き網用と思しきクレーンを持っているのを見るに
漁船が漁の合間の休憩に環礁を使っているのでしょうか。
こちらはスイス人2人(と僕も)が当初登ろうと画策していた
Sokehs Rock(ソケースロック)。
見るからに険しい山(岩)なので
大雨が降った直後ということで避けてしまいましたが、
一応登山道は付けられているそうです。
整備状態がどんなものかは不明ですが。
過酷ではあったけど楽しい登山でした。
この後はレンタカーで元の海沿いのホテルまで送ってもらって
自分の宿に帰る迎えのタクシーを待っていたら、
石油タンカーでミクロネシアを回っている最中だという
フィリピン系グアム人と仲良くなったり、
思い掛けず国際交流を深めた一日でした。
離島に居ると誰も彼も心が開けますね。
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