御蔵島

5:30、起床。
果たして結果は…!


8:44、八丈島底土港に到着。
…はい、敗れました。
御蔵島抜港で八丈島まで送られる、通称八丈流しです。
天気は好転しつつあったし、
ワンチャン行けるかと思ったけど無理だったか…


しかし、12月に御蔵島を目指しているのですから
そこはちゃんとリスクヘッジ策を講じてあります。
底土港から歩いて八丈島空港へ。


東京愛らんどシャトルに乗ります。
御蔵島だけでなく利島(2018/8/6)や青ヶ島(2017/8/18-19)など
客船の就航率が低い島を複数抱える伊豆諸島。
それに対する施策として東京都が打ち出したのが
日本で唯一のヘリコプター定期路線です。
青ヶ島へのアクセスとして有名ですね。
定員がたったの9人なので、搭乗1ヶ月前の予約開始時は
それはそれは熾烈な電話合戦が繰り広げられます。
最も競争率が高いのは青ヶ島線ですが、
御蔵島線も中々のものです。


ヘリコプターって空港の何処に着陸するのかな?
と思っていたら、青ヶ島から飛んできた機体が
律儀に滑走路に沿って降下してきました。
ヘリであってもグライドスロープに
従わなければならないのでしょうか。


11:00発TAL21便に搭乗。
人生初のヘリコプターです!


定員9人の機内はこんな感じ。
ちなみに、明々後日から新型機の
レオナルドAW139が運航を開始するので、
このシコルスキーSC-76Cは
もしかすると乗り納めになってしまうかも知れません。


一瞬の滞在だった八丈島から飛び立ちます。
滑走無しで浮上するのは何だか奇妙な感触ですね…


ぽてっとした形状なので
セスナ(2018/3/18)やアイランダー(2019/5/2)よりは
機内が広めに感じます。


一度は僕等を跳ね除けた御蔵島が近付いてきました。


しかし、これはまた青ヶ島に負けず劣らず
周囲360°何処を取っても断崖絶壁だな…
一体何処なら人が住めるのでしょうか。


あそこか。


猫の額ほどの区域に密集する集落の頭上を掠めます。
民家の無い海側からアプローチするとかはしないんですね。


11:31、御蔵島ヘリポートに着陸。
足掛け数ヶ月にして遂に御蔵島に辿り着きました!
感慨も一入です。


平地が皆無と言って良い有様なので、
あらゆる建造物が傾斜の上に辛うじて鉛直を保っています。


さて、抜港の所為で5時間半滞在時間が削れてしまったので、
予約していた弁当を受け取ったら
すぐさまガイドさんの車に乗って出掛けます。
自然豊かな御蔵島には幾つもハイキングコースがあるのですが、
自然保護の観点からそのほぼ全てが
ガイド同伴でないと立入禁止になっています。
そうでなくともレンタカーが無く
自転車も持ち込み禁止のこの島では、
ガイドが居ないとまともに島を巡ることすら出来ません。


林道沿いの眺めの良い場所で昼食。
御蔵島唯一の弁当屋が提供している海苔弁当です。
左下のおひたしがほうれん草か小松菜かと思ったら
明日葉だったのは流石伊豆諸島。
爽やかで良いですね。


ちなみに、明日葉は商店やスーパーには売っておらず、
その辺の道端に生えているものを摘みます。
今日採っても明日また生えてくるから「明日葉」なんだとか。
究極の節約食材ですね。


昼食を食べていたら
丁度さるびあ丸が御蔵島港に入港するところが見えました。
海況が好転したのでしょうか。
ガイドさん曰く、桟橋が波を被っているかどうかが
着岸出来るかの一つの目安だそうなので、
干潮時だと着岸しやすかったりするのかも知れません
(今日の干潮時刻は11:35)。


さて、昼食を終えたら入山です。
島での風習に則って祠に明日葉をお供え。
万が一下山して来なかった際に捜索の手掛かりにするという、
登山届のような意味合いがあるそうです。


それでは登っていきます。
登山道にしては幅員が広いのは、
元々柘植(黄楊)を運び出すのに使っていた道だからだとか。
そもそも、全域が国立公園に指定される御蔵島では
新しく道を造ることが非常に難しいので、
原則として「昔から使っていた道の整備」という
姿勢を取る必要があります。


しかし、ただでさえ少ない来島者の
更に極一部しか登山をしないという状況にあって、
登山道がこれだけ綺麗に維持されているのは正直意外でした。
ガイドさんも案内をするのは1ヶ月振りだそうですが。

ちなみに、御蔵島の宿はドルフィンスイムツアーを
兼業していることが多く、
登山目的で宿泊されると全体としての売上が減ってしまうので
夏のイルカシーズンは登山客を断ることもあるのだとか。
それで夏は全く予約が取れなかったのか…
同様の理由からか、東京都産業労働局が推進する
伊豆諸島でのワーケーション事業でも、
あの青ヶ島や母島(2017/3/27-28)でさえ
「オフライン主体の作業をどうぞ!」
と苦しいながらも売り文句を捻り出していたのに対し、
御蔵島だけは
「※テレワーク目的での来訪には向きません」
と突き放しています。
産業労働局が匙を投げたというよりは
御蔵島側が拒絶したんだろうな…


少し行くと開けた場所に出ました。
鈴原湿原です。
御蔵島は伊豆諸島の中で最も水に恵まれた島。
湿原まで存在します。


沢も無数に存在し、
離島ながら水力発電所まで存在します。
伊豆七島に残る伝説では、
昔島々の神が水の配分を決める為に
神津島で話し合いをすることになった際、
御蔵島担当の神様が一番乗りしたので最も多くの水を得た、
と伝えられています。
ちなみに、寝坊して遅刻した所為で
全然水を貰えなかったのが利島だとか。
なお、青ヶ島はそもそも伊豆七島にカウントされていません。
上陸困難トリオの中だと
御蔵島はまだ恵まれている方…なのでしょうか。


登山道(嘗ての作業道)の途中にはこのような水溜めがあり、
黄楊の伐採・運搬中の水分補給に用いたとか。
コンクリート製だけど、相当最近まで現役だったのでしょうか。


ここから最後の急登です。
階段が苔生していて滑りやすい…
という苦情はやっぱり以前からあったそうで、
段には滑り止めのシールが貼られています。
その上から苔が生えてしまっていますが。


という訳で、御蔵島最高峰の
御山山頂(標高851.1m)に到達です!
八丈富士(2017/8/20)には3.2mだけ及ばない為、
伊豆諸島の中では二番手です。
全然眺望が無い…


笹藪を掻き分けて何とか眺望を得ました。
有史以来の無人地帯である御蔵島南部です。
方角的には八丈島が見えてもおかしくはないはずですが、
今日の天気では厳しいようです。


もう少し展望の開けた場所は無いかと
乙女峠方面に歩いてみます。


かなり背伸びしないと厳しいですが、
御蔵島以北の伊豆諸島が全て見渡せました。
こう見ると八丈島だけ遠いですね。


南の島のようなイメージを持たれていますが、
実は緯度としては福岡市よりも北で
日没時刻は東京本土と大して変わらないので、
暗くなる前に急いで下山します。


16時前に下山出来ました。
割と余裕でしたね。
季節を考えるとこれが今年最後の山行でしょうか。
まさか御蔵島で締めることになろうとは。


宿に戻ってきてもまだ時間があるので、
集落近辺を散策してみます。


島唯一のガソリンスタンド。
価格は不明です。
唯一の集落は徒歩でも十分過ぎるくらいの広さですが、
如何せんあらゆる箇所が急坂なので
自動車を使いたくなってしまうのでしょうか。


いや、それとも船向け?
だとしたら、港から結構な高低差がある
集落の中にスタンドを造る意味が分からないけど…


集落から見下ろした御蔵島港。
見るからに無防備な、黒潮の中にただ突き出しただけの桟橋です。
これはまあ欠航が多いのも已む無しだな…
ただ、御蔵島、それに利島と青ヶ島の欠航率が高いのは
岸壁の無防備さも然ることながら、
島で一つしか港が無いことに因るところが大きいです。
2つ以上港があれば風向きに応じて風下の港を使うことで
就航率を飛躍的に向上させることが出来るのです。


そんな訳で、御蔵島でも新しい桟橋を建設中です
…って、今の港の真横に造っても効果が薄いのでは。
嘗ては今の集落と反対側に南郷という集落もあり、
そこにもう一つ港を建設するという話もあったそうですが、
昭和40年代に集落が無人化して立ち消えになったとか。


集落から港へ下る道の法面はガッチガチに固められています。
よっぽど崩れやすいのでしょう、
今も尚工事の真っ最中です。


こういう法面舗装ってどう施工するのか不思議でしたが、
生コンを背負って懸垂下降しながら吹き付けるんですね。


荒々しい波が打ちつける御蔵島港。
でも、午後便が着岸したということは
これでも12月にしては上位3割で穏やかな海況なんだよな…


黒潮の只中に突き出す桟橋。
ところどころ濡れているのは波飛沫が洗ったものです。
岸壁際に釣り人が5人ほど居ますが危なくないのでしょうか。


突端には八角錐形の赤い灯台が。
まるでパイロンみたいですね。
初めて見る形です。


薄暮にその陰影を濃くしていく三宅島(と左奥の神津島)。
明日はあの三宅島を目指します。
…この太平洋を越えて。

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