雁坂峠

僕自身、研究室の後輩が車を買った話を聞いて
一気にマイカー購入に傾いた訳ですが、
僕のS2000購入も少しは周囲に影響を与えたのか
「車購入を考えているので参考にしたい」
と友人から相談を受けたので、
今日は高校時代の友人kuniをS2000に乗せてドライブしました。


中央自動車道を走ってやって来たのは勝沼です。
天気予報は渋めでしたが、すっきり晴れてくれましたね。
早朝に出発して来る朝の甲信越の空気は大好きです。
今日は右奥に見えている雁坂峠を越えようと思います。
道中道の駅で記念切符を集めつつ峠へ…
と思ったのですが、道の駅花かげの郷まきおかも
道の駅みとみも記念切符を売っていませんでした。
道東の道の秘境駅(2022/6/11)でさえ売っていたのに…


だからと言って峠まで直行では面白くない。
道すがらで目にした滝の看板が気になったので、
車を停めてちょっと寄ってみます。
この自由度の高さこそマイカーの醍醐味ですね。


上の道路からは滝の気配を感じられませんが、
この吊り橋まで下りて来ると瀑声が響いています。
これは期待出来そう!


…あれ?
何か想像していたのと違うような…
何処ぞの愛知県ならばともかくとして、
山梨県がこの程度の地形を滝と名付けるか?


そんな訳ないですよね。
これが案内にあった一之釜男滝のようです。
笛吹川の文字通りボトルネックで、
流勢を増した水が一気に流れ落ちています。
このすぐ上は集落があるほど平和な地形なのに、
何故ここだけ急にゴルジュになっているのだろう…


立派な滝を見て満足したら峠越え再開です。
高規格な国道140号を上っていくと…


出ました!
山梨県と埼玉県を結ぶ唯一の車道、雁坂トンネルです!
有料の自動車専用道路になっています。
5年前(2017/4/16)は自転車だったので抜けられませんでしたが、
遂に雁坂峠を越えることが出来ました。


しかしまあ、とんでもない場所を通っていますね…
国道140号が長いこと開かずの国道だったのも納得です。


川又から大滝にかけては
国道140号が中津川沿いの新道と荒川沿いの旧道に分かれます。
自転車で来た時は新道を走ったので、
今回は旧道を走ってみようと思います。
旧道はこの写真に写っている
栃本集落の為だけに国道指定が残されたような道で、
とにかく細くて曲がりくねっています。
新道が出来る前はこの道が埼玉と山梨を結ぶ幹線道路だったのか…
…いや、その頃はまだ雁坂トンネルが開通していないか。


ただ、埼玉と山梨を結ぶ幹線道路だったというのは
強ち間違いという訳でもなくて、
中山道と甲州街道を結ぶ秩父往還はこの地を通り、
関所も設けられた要衝でした。
宿場町ということで料理屋が無いか期待しましたが、
今はもうそういう類のお店は無いようですね…


こうなったら昼食は半分諦めてとことん山奥を探索します。
埼玉県道210号で中津川を遡っていくと、
全く不相応なほど厳しい洞門のトンネルが現れました。


洞門はあんなに立派な割には
中は素掘りにただコンクリートを吹き付けただけなんだな…
こんな仰々しい洞門を後付けで設けなければならなかったほど、
この場所は土砂崩れが起きやすいということなのでしょうか。


あちらこちらで崩れた県道を詰めてやって来たのは
ニッチツ鉱山こと秩父鉱山です。
現在では石灰岩のイメージしかない秩父ですが、
ここでは17世紀の金採掘に始まり、
亜鉛や磁鉄鉱など多くの金属が採掘されていました。
現在ではニッチツが細々と石灰岩を掘るのみで、
それももう末期を迎えていて
遂に来月末に閉山することが決まったそうです。
…と言うと、如何にもこれを目的に計画を組んだようですが、
ここの存在はつい2時間前に
セルシオ乗りTK(埼玉県民)に教えてもらって初めて知り、
閉山するという情報に至っては
kuniがネットで検索して今知りました。


来月末で閉山してしまうというよりも、
現時点ではまだ閉山していないことに驚きを禁じ得ないのだが…
建物はどれもこれもボロボロの木造建築で、
どれ一つとして現役らしさを感じられません。
恐らく、現役の建物は
立入禁止エリアにあるということなのでしょうが。


鉱山と言えば廃線が付き物なので
kuniと一緒に穴が開くほど古地図を見て探しましたが、
どうやら地形が険し過ぎて鉄道は敷けなかったようで、
代わりに索道(ロープウェイ)の跡を見付けました。
そう言えば、毛無峠(2017/6/3)にもありましたね。


廃集落(?)巡りを終えたら下界に下ります。
自転車でも爽快な下り坂でしたが、
S2000ならもっと爽快ですね。
kuniにも是非この爽快さの虜になって欲しい。
このまま爽やかに下り切って多摩へ…


走り去ってしまいそうですが、
交通オタク2人が揃っているのでまだ寄り道があります。


国道140号からお手本のような葛折りで
大分高い位置を通っている秩父往還を目指します。
ここは国道と旧街道との標高差が
実に130m以上にも及んでいるのです。


現代の自動車交通からは隔離された形となった大達原集落。
それにしては意外なほど(と言ったら失礼ですが)
立派な佇まいの集落です。


そして、僕等のお目当てはそんな大達原集落の外れから延びる
この旧道(廃道?)です。
コンクリート敷の道?
いえ、その右の雑草に覆われた「道」です。


殆ど石垣の上の平場くらいにしか見えませんが、
これがれっきとした秩父往還です。
荒川の川面から200mという目も眩むような高さ。
そして、この位置にあるのが…


大達原の手掘り隧道です!
幅3.45m、高さ4.8m、長さ40.5mとのことで、
手掘りにしては中々の規模。
さて、トンネルとくれば気になるのはやはり由来です。
トンネルはとにかくコストの掛かる構造物。
秩父という土地柄は鉱山鉄道や森林鉄道を疑わせますが、
トンネル出口は殆ど直角に曲がっているので
鉄道の線は薄いでしょう。
歩道にしては太過ぎるし、かと言って車道だとすると
この幅で車が通り抜けられるのだろうか…?


気になる答は…


出口に立ててあった案内看板に書いてありました。
明治時代に掘られた馬車用のトンネルだそうです。
なるほど、馬車という選択肢があったのか。
しかし、明治時代にこれほどのトンネルを掘らせる地形とは…


なるほど、これは確かに迂回不可能ですね。
トンネルが開通する以前はここより更に100m以上高い
尾根の上を迂回していたそうです。
こうなると、寧ろ何故この断崖直下を
国道140号は素知らぬ顔をして
走れているのかの方が気になってくるな…


人の往来が途絶えて久しい今では
この手掘り隧道は専らクライマーの聖地となっているようです。
流石に断崖の方ではなくて洞門の周囲ですが、
それでも岩壁がオーバーハングになっているので
落ちたら怪我では済まなさそうです。


関東周辺で地形が険しい場所というと
どうしても上越国境のイメージが強いですが、
武甲の国境も中々のものですね。


この後は正丸峠を越えて多摩に帰りました。
果たして、kuniにマイカーの楽しさは伝わっただろうか…

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