6:00、起床。
眠い…
しかし、今日はツアーに参加するので
移動中に寝られると思って頑張ります。
迎えの車に乗っていざ南西へ。
Cairns(ケアンズ)近郊とは打って変わって
まるで北海道や英国を思い起こさせる牧場の景色です。
肌寒い気温が一層彷彿とさせます。
でも、真冬にしてはそんなに寒くないような?
やって来たのはVictoria(ビクトリア州)南岸の
Great Ocean Road(グレートオーシャンロード)です。
何にでもかんにでもGreatを付けがちな豪州っぽい地名。
「偉大な海の道」の直訳の通り、
南インド洋の雄大な姿を望める絶景路として有名です。
今日はこの道を一日掛けて走ります。
世界恐慌の時期に豪州版ニューディール政策の一環として、
この荒涼たる景色の中に16年の歳月を掛けて
ツルハシとシャベルを使って人力で切り拓かれた道。
Greatなのは景観なのか、先人達の労力なのか。
で、いきなり見えているこの海食柱が
Great Ocean Roadの顔となっている
The Twelve Apostles(十二使徒)です。
どう数えたら12本になるんだ…?
と思った人は鋭くて、
そもそもこの石柱群はPiglets(子豚達)と呼ばれていたものを、
観光化にあたってもっとキャッチーな名前にしようと
元々9本しか無かったのにThe Twelve Apostlesと呼び出したのです。
しかも、その後2本折れてしまって
今では7本しか残っていません。
ちょっと走って次はLoch Ard Gorge(ロック・アード峡谷)へ。
Loch Ardは1878年にこの近くで沈没した帆船の名前です。
19世紀後半、豪州と英国本国を結ぶ交通は
Clipper(クリッパー)と呼ばれる帆船が担っていました。
帆船なので強い風を受けた方が素早く移動出来る為、
英国を発ち大西洋を一気に南下したClipperは
Roaring Forties(吠える40度)と呼ばれる
強烈な偏西風の吹き荒れる南緯40°台の海域を航海していました。
ただ、風の強さは当然波の荒さも意味している訳で、
Loch Ard号は目的地Melbourne(メルボルン)の直前、
南緯38°のこの地で沈没してしまったのです。
54人の乗組員の内生存したのは
この入江に流れ着いた2人だけだったとか。
海況の荒さと海食の凄さを雄弁に語る
ペラッペラのThe Razorback。
Razorbackは剃刀のような背中を持つ動物、
即ちナガスクジラか野生の猪を指すのですが、
The Twelve Apostlesの元の名がPigletsなことを鑑みると
多分後者を指しているのではないでしょうか。
Razorbackの裏にあるのがThree Sisters(三姉妹)…
なのですが、8年前に1つ崩れてしまったそうです。
Great Ocean Roadの見所は変化が激しいですね。
そんな荒くれ者のGreat Ocean Roadですが、
この断崖絶壁の下に降りられる場所も存在します。
Gibson Steps(ギブソン階段)です。
下から見上げた海食崖。
圧巻の一言です。
日本の石灰岩と比較するとかなり赤みががっていますね。
浜からはThe Twelve Apostlesも見えます。
こちらから見ると12どころか2つくらいしか見えませんが。
絶えず荒波が打ち付けているということで
ここはサーフィンの聖地になっているらしく、
真冬にも関わらず多くの人達がウェットスーツを着込んで
ビッグウェーブに乗っています。
散々波乗りしてくたびれた後に
ボードを担いであの階段を登るのは相当億劫だろうな…
とか考えてしまう陸の人間の浅ましさよ。
お次は飲食店や土産物屋が軒を連ねるApollo Bay(アポロベイ)へ。
ここでお昼休憩です。
Great Ocean Roadは豪州大陸最南端の一帯なので、
幾つかのお店は豪州大陸最南端を推しています。
日本では南の果てと言うと
麗らかな楽園を想起してしまいますが、
南半球の豪州にとっては寒風吹き荒ぶ最果ての地です。
まあ、豪州の場合は最北端も最北端で
麗らかとは程遠い密林地帯ですが。
ただでさえ物価の高い豪州にあって
最南端補正の掛かった観光地価格ということで、
どのお店も阿呆みたいに値段が高いので、
新入社員と院生で金欠な我々はパン屋のパイで我慢しました。
ここからは豪州大陸最南端のCape Otway(オトウェイ岬)より東、
東海岸を走っていきます。
Roaring Fortiesは偏西風なのでこちらは比較的風が弱めで
西側ほどの断崖絶壁にはなっていません。
ただ、下手になだらかな分道はその真ん中を突っ切っていて
海食台地の上を走っていた西側よりも
道という意味では険しくなっています。
日本でのイメージだとあまりこういう景色とは結び付きませんが、
野生のカンガルーもいました。
Tasmania(タスマニア島)にも生息しているくらいなので
案外寒さには強いんですね。
野生のカンガルーを見たとなれば
当然あれも見ておきたいところです。
という訳で、ちょっと丘を登ったところで車を降りて
森に目を凝らしながら歩きます。
居ました!野生のコアラです。
かなり高い位置にいることが殆どなので、
中々見付け難いです。
梢に腰掛けて眠っている姿は可愛らしいですが、
実はこの周辺の木を15万本も枯らしたのだとか。
害獣じゃないか…
ただ、ユーカリはユーカリで
自然発火して能動的に山火事を引き起こす害樹なので、
どっちを応援すべきかは良く分かりません。
豪州の生物は仁義無き戦いが多過ぎでは。
これにて今回のツアーの目玉は全て終了。
後は休憩を挟みつつMelbourneに戻ります。
休憩地のLorne Pier(ローンピア)。
荒れた海に突き出す桟橋です。
…この桟橋、何か臭うぞ。
やはり廃線跡があった!
このLorne Pier、元々Otway(オトウェイ)の森から切り出した
材木を搬出する為に造られたそうで、
1904年にSt. George River(セントジョージ川)河口の製材所から
Lorne Pierまでの2km弱を結ぶ馬車鉄道が開通。
この地までGreat Ocean Roadが伸びた1934年まで使われていたそうです。
思い掛けず廃線探索まで出来てしまった。
Victoriaを満喫してMelbourneに戻ってきました。
バーで祝杯を上げます。
頼むのはMelbourne名物Chicken Parma(チキンパルマ)。
チキンカツの上にベーコン、トマトソース、チーズを乗せて
オーブンで香ばしく焼き上げてあり、これがかなり美味しい。
豪州というよりはイタリア料理な雰囲気ですが。
この後は、ライトアップされたThe University of Melbourne
(メルボルン大学)を見たりしてから宿に帰りました。
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