只見幹線の大元を極めるという目標は達成しましたが、
この地ではまだやり残したことがあります。
4年前の全く同じ三連休(2018/7/14)、
ロードバイクで意気揚々と発ったは良いものの、
二居トンネルにて手酷い転倒を喫したことにより
心身共に大きな傷を負い、
入口までやって来ておきながら踵を返した
国道352号県境区間…
マイカーという最強最愛の相棒を得た今なら
何も恐れるものは無い!
と1週間前までは思っていたのですが、
先週和田峠でまさかの敗北をして
トラウマを植え付けられてしまいました。
そして、国道352号は和田峠なんかとは比べ物にならない
全国に名を轟かせる酷道です。
その規模は文字通り桁違い。
何かあったらただでは済みません。
降水量たったの80mmで全面通行止めになる土地柄だし、
朝起きて雨が降っていたら止めて別の道にするか…
と弱気だったのですが…
天気予報が大外れで眩しいほどの晴天。
誰だ警報級の大雨に注意とか言ったのは。
「天気を言い訳に使うことは許さん。
行くか退くか決めるのはお前自身だ。」
とお天道様が言っているようです(被害妄想)
枝折峠は通行止めで二輪車は通り抜けが出来ない。
そして、今この瞬間にすぐ近くに居る人でなければ、
奥只見が実は好天だということに恐らく気付けない…
となると、交通量は晴天の三連休中日の割には少ないはずで、
これ以上無い好条件が揃っているのでは?
ここまでお膳立てされたからには行かなければ名が廃る!
今日こそ討つぞ、国道352号樹海ライン!
枝折峠は昨日見た通り冬季通行止め中なので
奥只見シルバーラインで迂回します。
このまま尾瀬まで迂回出来たら一番楽だけど。
さあ、いよいよ後戻り出来ない領域に足を踏み入れてしまいました。
30kmに及ぶ悪天候時通行止め区間です。
ある程度の悪天候になったら
樹海ラインは丸ごと通行止めになってもおかしくはありませんが。
とにかく細い!
そして山肌に忠実に沿っている為
無数のブラインドカーブが精神を消耗させてきます。
意外にもバイクが走ってくるな…
そして、スポーツカー乗りに対しては
ブラインドカーブだけではなく
段差も精神を着実に削ってきます。
下を擦らないように気を付けなければ…
貴重な安息ポイントであるグミ沢トンネル。
照明は無いし停車も厳禁ですが、
きちんと2車線あって落石の心配も無いという
樹海ラインでは随一の安心出来る区間です。
何だかんだと文句は言っていますが、
ワインディング自体はとても楽しいです。
S2000は一昔前の車なので今時の車よりは一回り小さく、
細い道でも比較的余裕があります。
そして今日はこの晴天。
最高ですね。
荒天だったら泣いていたところですが。
快晴なのに路面がビシャビシャになっている箇所が現れました。
そう、樹海ライン名物の洗い越しです!
洗い越しは橋を架ける予算も付けたくないようなド田舎で
小さな沢をそのまま道路上に流してしまうというギミック。
私道(2019/11/17)や県道(2019/8/17)ならまだ例がありますが、
国道で常時水の流れている洗い越しというのは極めて珍しいです。
しかも、その水量が結構な椀飯振舞い。
この写真を見てここが国道だと自信を持って答えられる人は
果たして何人居るでしょうか。
この豊富な水が奥只見湖へと流れ込み、
奥只見発電所のタービンを回して
延いては関東に暮らす人々の生活に光を灯しているのです。
ほぼ満水状態のように見える奥只見湖。
良く見ると湛水線と平行するように
国道352号の線が走っているのがお分かりでしょうか。
無数の沢に満ち満ちた奥只見湖を
ほぼ橋梁ゼロでなぞっていくという苦行を
この樹海ラインは強いられています。
直線距離は2kmも無いのに道程は12km、などという区間まであります。
橋やトンネルで直線的に貫くのは風情が無い!
と言う人は是非樹海ラインを走って欲しいですね。
「携帯電話通話可能 5km先」という
ここ以外ではまず見られないであろうレア標識。
裏を返せばそれ以外の区間は全て圏外です。
そうなると、長大な樹海ラインの中で
何故そこだけが圏内になっているのかの方が気になる。
地形的な問題?
そんな疑問は通話可能エリアに入った瞬間
忽ちに氷解しました。
携帯電話通話可能エリアとはそれ即ち
送電線の真下のエリアだったのです。
恐らく、只見幹線を点検しにきた作業員が
外部と連絡を取れるようにする為の措置なのでしょう。
その説を裏付けるように、
送電線を離れた瞬間露骨なまでにすぐ圏外になりました。
しかし、ここまで点検しにくる作業員って
一体何処の営業所からやって来るのだろう…
「最寄駅」の小出駅からでも60km近くあるけど…
貴重な休憩地点である十二山神社で一休み。
神社ということはここには嘗て人の営みがあったということです。
陸の孤島を通り越して陸の大海原のど真ん中のようなこの地に。
その訳はというと、ここには銀山があったからです。
江戸時代の話ですが。
鱒釣りで山に入った百姓が見付けたそうで、
場所が場所だったので越後と会津が揉めに揉めて
延いては現在の新潟-福島県境を決定する要因になったとか。
(枝折峠を境として主張する会津が敗訴し、
只見川本流を境とする越後が全面勝利した。)
当時の鉱業に対する熱意は凄いですね。
「奥只見シルバーライン」の名もこの銀山から来ています。
銀山の跡は殆どダム湖に没してしまっているものの、
一部見学出来る坑道もある…
と案内にはありましたが、
道が荒れていて良く分かりませんでした。
金泉橋で只見川の本流を渡れば…
福島県です!
本州屈指の秘境檜枝岐村の奥の奥。
それでも、この辺りから道がかなり良くなります。
逆に、福島県側から来た場合
国道352号ってこんなもんか〜
と高を括って死ぬ可能性があるので注意しましょう。
福島県側も別に凄く走りやすい道という訳ではないのですが、
新潟県側は格が違うので…
県境に程近いこの陸の孤島で
まさかの喫茶店があったので一休みします。
良くぞこんな場所でお店を維持出来るものだ…
この付近一帯は砂子平と呼ばれる平地になっていて、
周りには畑もあったりして
正に深山の中のオアシスといった様相です。
ご主人と話していた人の話を聞くに、
釣り人や山菜採りの人が結構やって来るようですね。
只見川を離れて九十九折りで標高を上げていきます。
樹海ラインの名前に相応しい景色ですね。
福島県側から来るとこれが国道352号の核心部だと思うだろうな…
尾瀬の玄関口、御池ロッジまで辿り着きました。
ここまで来ればもう勝ったも同然です。
尾瀬に寄るほどの時間はありませんが、
折角マイカーで来たのでモーカケの滝に寄ったりなどします。
そもそも、尾瀬はマイカー規制があるんですよね…
それでも、少しくらい尾瀬を感じようと
ミニ尾瀬公園なる公園も寄ってみました。
…こういう感じだったっけ?
もっと湿地が広がっていたような…(2015/7/26)
何て考えてのんびり歩いていたら、
雨が降り出してしまいました。
これがあの新潟県区間だったらと思うと背筋が寒くなります。
本当に恵まれたタイミングだったんだな…
本降りになってしまった雨の中を走って
道の駅きらら289で昼食。
さらっと書きましたが、
金泉橋からの距離は54.2kmあります。
福島県側でさえそれくらい何も無い道だということです。
檜枝岐村にもそこそこの大きさの道の駅はありましたが。
南会津の名物だという南郷トマトを使ったラーメンを頂きました。
さて、後はもう今夜の宿までひた走るだけ
なのですが、そう言えばこの付近には
もう一つ因縁の地があることを思い出しました。
尾瀬周辺に因縁の地多くない?と言われそうですが、
この辺りはとんでもない山奥なこともあって
自然災害やら何やらで計画通りにいかないことが多いので…
という訳で、西根川を遡上してきました。
駐車場から西根川沿いへと下っていくと…
復旧していました!
2年前(2020/2/26)は土砂に埋もれてしまっていた
木賊温泉岩風呂です。
浴場のシンボルだった巨岩もきっちり掘り起こされて復活しています。
雨音を聞きながら入る秘境の露天風呂…
良いですねぇ…
長時間運転の疲れが癒やされます。
しかし、あまりのんびりもしていられません。
今夜の宿まではまだ100km以上あるのです。
何でそんな遠いところに宿を取ったのかと言えば
そこ以外取れなかったからと言うしかありません。
奥会津がこんなに人気だったとは…
今日一日で酷道中心の下道ばかり200km以上を走って
どうにか宇都宮市の宿まで辿り着きました。
疲れた…
しかし、得も言われぬ達成感です。
人馬一体に一歩近付いたような気がします。
酷道って良いものですね。
あくまで天候に恵まれることが前提ではありますが…
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