未明に雷を伴う暴風雨があって良く寝られませんでした。
朝もまだ雨が残っていたので、
二度寝がてら雨が止むのを待ちます。
雨が止んだら出発。
今日は自転車で島内を巡ります。
ヤギが放し飼いされていますね。
見ていたらガンを付けられたと勘違いしたのか
自転車向かって突撃してきました。
血気盛んですね。
そんなヤギ達が屯する多良間村ふるさと民俗学習館。
多良間島についてちょっと学びます。
宮古島と石垣島のほぼ中間地点に位置する多良間島では、
異国情緒を感じさせるお祭りなど
絶海の孤島として独自の文化が育まれました。
昔の多良間島の民家。
この画だけで既に片鱗を見せていますが…
とにかく甕が多いです。
20km2足らずしかなく、起伏も殆どゼロ、
土壌は隆起珊瑚礁由来で透水性抜群となれば
飲用水の確保は死活問題。
水は一滴たりとも無駄にしないという熱意が伝わってきます。
道具には説明に加えて
多良間方言での現地語読みも記されているのですが…
マジで読めない。
「ピィ゚ズキ゚ィ゚」って何…?
一応、特殊音について解説する記事もありましたが、
それを見ても尚全く分からない。
もし、このiに横棒を付けた記号が国際音声記号のそれならば
非円唇中舌狭母音を著しているはずで、
端的に言えばロシア語のЫと同じ発音ということになります。
「ゥイ」とか「曖昧なイ」とか言われるやつですね。
日本にもこの発音があったのか…
あと、謎発音に気を取られてしまうけど、
姉を「アニ」と発音したら
兄とどうやって区別するんだろうか。
多良間島の独自性を学習したら、
お次は島唯一の高台から集落を俯瞰してみます。
高台の上には展望台と八重山遠見台があります。
八重山遠見台とは薩摩藩が設置させた先島諸島火番盛の一つで、
外国船が現れた際に狼煙を伝達する為の施設です。
石垣島と宮古島の中間に位置する多良間島は
正に中継点として使ってくれと言わんばかりの立地ですね。
とは言っても宮古島までは70km近くありますが、
狼煙ってそんな長距離で伝達出来るものなのでしょうか?
最低でも380mくらいの高度まで煙を上げないと
地球の曲率からして物理的に視認不可能なはずだけど…
それはそれとして、僕のお目当ては展望台の方です。
潮風で劣化したコンクリート造りの螺旋階段を登っていきます。
その内常滑の大曽公園の展望台みたいに閉鎖されそうだな…
展望台の上に出ました。
これが多良間島唯一の集落のほぼ全景です。
それにしても真っ平な島ですね。
展望台の頂上には何故か鐘が吊り下げられていました。
外国船が現れた時に打ち鳴らすのかな?
現在では使われていないようですが。
お次は内陸部へ。
畑の中を突っ切るこの並木は…
御嶽へと通じるフクギ並木です。
所謂参道に相当するものですね。
そこはかとなく自動車の往来を感じさせる幅員ですが、
昔からこの幅だったのでしょうか。
これが並木道の通じる塩川御嶽。
塩川と書いて「シュガー」と読みます。
塩じゃなくて砂糖じゃないか。
こちらはブラウン塩川…
じゃなくて、黒糖の精糖工場。
今年の初物が出ています。
黒糖ピーナッツが美味。
精糖工場の側には港があります。
かなり閑散とした印象です。
多良間島は全方位を海に囲まれていながら
漁業は全く発展しておらず、
漁業を生業とする人は10人も居ません。
そんな訳で、この普天間港は専ら貨客船の発着に使われています。
パッと見廃止された施設にしか見えませんが、
れっきとした現役のフェリーターミナルです。
まあ、ただでさえ欠航率が高い上に
コロナ禍の煽りを受けて週3便まで減便してしまったので、
船で多良間島を訪れる人は殆どいませんが。
普天間港はよりにもよって
島の中で集落から一番離れた位置にある為、
集落まで村営バスが出ています。
この大きさのこの人口の島で路線バスがあるのは驚きですね。
船の出入りの少なさを物語るように
コンクリートには苔のように海藻が張り付いています。
それにしても綺麗な海ですね…
さて、ここからは海沿いの周回路を走ります。
辺り一帯何も無い中にポツンと現れたこの自動販売機は
一体誰に向けたものなのだろう…
宿のご主人から海岸に洞窟があるという旨の話を聞いたので、
地図にも載っていない未知の洞窟を発見するべく
脇道毎に海岸に出てみます。
多良間島では海に出る小道のことを「トゥブリ」と呼び、
島全周では実に47ヶ所ものトゥブリがあるそうです。
閑散とした港でも思ったけど、
色んな意味でナウルを彷彿とさせる島だな…
海沿い(と言っても防潮林があるので海は殆ど見えませんが)
を走っていたら、宮古市の森なるものを見付けました。
宮古島はすぐ隣なのに、
わざわざ友好関係を誇示するような森を作る必要ってある?
…と僕も騙されてしまったのですが、
宮古島にあるのは宮古「島」市。
宮古市は岩手県の三陸海岸にあるあの宮古市です。
江戸時代末期に遭難した宮古市の漁船が
この地に漂着したことを記念しているのだとか。
もし隣の宮古島に漂着していたら
宮古島市にある宮古市の森になっていたのか…
この景色なんかはナウルのガバブ水路を強く想起させます。
海外へは行けなかった卒業旅行で
せめて海外に思いを馳せる。
…で、結局洞窟は何処なんだ。
島の交通安全を見守る宮古島まもる君。
元々は名前の通り宮古島名物の人形なのですが、
平成22年に多良間島に異動してきたそうです。
多良間まもる君と呼ばれることもあるとか。
そんなまもる君が見つめる多良間空港。
あまりにも洞窟が見当たらないので
ここで情報収集してみます。
空港内には喫茶店があるので入店します。
島を文字通り駆けずり回ってちょっと疲れたので、
一服する為にソルトコーヒーを注文。
塩っぱいコーヒーってどんな感じなんだ…?
と思っていましたが、
塩味を感じるような量の塩ではなく
酸味をまろやかにする程度のものでした。
さて、本題に入ってマスターに洞窟について訊きます。
曰く、
「空港の裏から海へと続く脇道が延びていて、
そこを進むと目の前の砂浜に目を取られるんだが、
実は右を見ると洞窟があるという訳なんだ。
かなり長いこと未舗装路を行くことになるぞ。」
とのこと。
空港の裏の脇道、未舗装路…
何かそれっぽい道はあるけどこれなのか?
空港の裏というか滑走路の端に出ました。
こんなところに立ち入ってしまって大丈夫でしょうか。
枯れ枝が散乱して凸凹の道をえっちらおっちら漕いでいたら、
頭上をプロペラ機が飛んでいきました。
こんなに至近距離で飛行機を見られるなんて
国内の他の空港では有り得ないのではないでしょうか。
実は飛行機オタクには知られた空港だったりするのかな?
見付かって怒られたりしないかちょっとビクビクしつつ
空港の裏の海岸までやって来ました。
が、洞窟は見当たりません。
獣道程度のトゥブリにも突っ込みますが…
やはり洞窟はありません。
話にあった「かなり長い未舗装路」っぽいトゥブリも
勿論しらみ潰しに探索していきますが…
ありません。
複数の地元民が言うからにはガセではないはずなのに…
Googleマップは疎か、地理院地図でさえ手掛かりは皆無です。
え?もしかして多良間島の人が言う「洞窟」って
本州の人間が指すそれとは別の概念だとかそういう話?
海からは離れてしまいますが、
諦めきれず滑走路脇の未舗装路を走ります。
確かに、滑走路以上の長さがあるから間違いなく長い未舗装路だけど…
滑走路の北端近くに謎の空き地を発見しました。
鎮魂の碑がポツンと立てられています。
車でのアクセスも儘ならない位置で
この小さな慰霊碑一つの為だけに
こんなにだだっ広い空き地を整備するものか…?
他にも何かがあるような気がする…
空き地から左奥に進んだ森の中にあった注意書き。
「落石注意」ということは!
あった!洞窟だ!
案内看板によればフタツガーという遺跡だそうです。
嘗てこの近くにあった集落が
水を得るのに使っていた井戸の跡だとか。
まさか空港の裏にこんなものが隠されていたなんて…
リアルなRPGを味わえました。
良きクエストであった。
…しかし、教えてもらったヒントを良く思い出すと
「右を見ると」洞窟がある、というものでした。
このフタツガーはどう見ても左手にあるし、
もう一つのヒントである「目の前の砂浜」も無い…
単なる記憶違いの可能性も無くはないけど、
何かが引っ掛かる…
という訳で、探索続行です。
滑走路の北端近くから更に先へと未舗装路が延びていたので、
銀チャリでバキバキと進みます。
再び海岸に出ました。
この辺りは未舗装路を数km走らないと着けない
プライベートビーチです。
目の前の砂浜に目を取られるものの、
右を見てみれば…
…え?
穴は穴だけど、いやまさか…
これがその「洞窟」!?
高さ1m、幅2〜3m、長さは10mかそこらという穴。
定義上洞窟と言えなくはない…のか?
これを島民が挙って推す理由は全く分からないけど…
何はともあれ洞窟は発見出来たので任務達成です。
再び内陸部に戻ります。
道端に置かれていた厳つい機械。
サトウキビの収穫機でしょうか?
攻撃力の高そうな見た目ですね…
最後にもう一つだけ観光。
このボロボロの建物は何かお分かりでしょうか。
正解は旧・多良間空港ターミナルビルです。
現在では風力発電所と太陽光発電所になっていますが、
平成15年まではここが多良間島の表玄関でした。
その滑走路長は驚きの800m。
末期はブリテン・ノーマン アイランダー(定員9席)が就航するという
正に秘境空港でした。
その当時に来てみたかったな…
RPG気分で巡れる面白い島でした。
しかし、色んな意味で上級者向けというか、
これは観光客が少ないのも宜なる島ですね…
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