マツダ RX-8

テキサス州は愛知県と同じく車社会。
車を運転出来ない者に人権はありません。
というわけで、国際運転免許証を申請することに。


フェロー諸島で使う為に国際免許を申請した時以来の
愛知県警察運転免許試験場(平針免許センター)。
前来た時はオンボロだったのに新築になっています。
そして、コロナ禍の平日だというのに大盛況です。
とはいえ、この御時世に国際免許を申請する人は
滅多に居ないだろうし、
そんなに待たされないだろう…
と期待していましたが、
実際には再交付の人と一緒くたにされていて
かなり待たされました。
何はともあれ、これでテキサス州での人権を獲得です。
ダッジとシボレーが俺を待ってるぜ!

さて、アメリカはお楽しみにとっておくとして、
日本もまた自動車で世界に名を馳せている国です。
理想のマイカーを探すにあたって、
直3直4B4直6B6V6、そしてV8と、
これまで多種多様なエンジンの車を運転してきましたが、
思えば日本車の歴史に燦然と輝くあの名機をまだ体験していません。
理論上は理想的なエンジンとされたものの、
数々の技術的困難に直面して
世界の名だたるメーカーが次々と匙を投げる中、
量産化・商業化に成功した会社がたった一つ…


マツダRX-8。
平針へ来るついでに借りてみました。
ピストン運動を回転運動に変換するレシプロエンジンではなく、
おにぎりルーローの三角形の形をしたローターが
ペリトロコイド形(繭のような形)のハウジングの中を
ぐるぐる回る回転運動をそのまま取り出す
ロータリーエンジンを採用した、世界でも類稀な車です。
現在のところ、ロータリーエンジンを搭載した
世界最後の車でもあります。


マツダはそもそもその歴史からして
ロータリーエンジンと共に歩んできた会社です。
ホンダが大急ぎで四輪事業に参入するきっかけとなった
かの悪名高き特振法案に際して、
マツダが他社と無理矢理合併させられてなるものかと
独自性を出す為に開発が始まったのがロータリーエンジン。
ロータリーエンジンはマツダの存続を懸けた起死回生の一手だったのです。
そう考えると、今のホンダとマツダの源流の一つになったという点で、
当初の思惑とは全く違った形ではあるにせよ、
皮肉にも特振法案は日本の自動車産業を強くした…のでしょうか。

現在では残念ながらロータリーエンジンの新車は
マツダでさえ造っていませんが、
マツダは今年唐突にロータリーエンジンについての記事を公開しており、
今もアイデンティティになっていることが窺えます。


では、ロータリーエンジンの利点とは何か。
最大の特徴はスムーズさです。
レシプロエンジンでは重いピストンが高速で往復するので
どうしても振動や騒音が大きくなってしまいます。
その点、ロータリーエンジンでは重心があまり動かない為、
レシプロエンジンに比べて振動や騒音が抑えられ、
高回転域まで滑らかに回すことが出来るのです。
あとは、同じ出力でも小型化出来るという利点もあります。


ボンネットを開けてもローターは見えませんが、
シフトノブはローターを模したデザインになっています。


あと、ロータリーエンジン以外のRX-8の特徴と言えば
フリースタイルドアこと観音開きです。
普通、スポーツカー乃至クーペと言えば
後部座席があったとしてもドアは左右に2つですが、
それでは後部座席への乗り降りが大変になってしまうので、
スポーツカーとしてのデザインを保ちつつ
後部座席への乗降性を増す為にこの形になったとか。
後部座席そのものも(スポーツカーにしては)広いです。


さて、人生初のロータリーエンジンを運転してみると…
おお、これは初感覚。
スルーッと回転数が上がっていき、
自然吸気ながらターボチャージャーを思わせる
シューンという近未来的な音が響きます。
良く「モーターのように滑らか」という褒め方をされますが、
確かにこれはレシプロエンジンとは一線を画した滑らかさですね。
ならEVにでも乗ってろとか言わない。
そもそもモーターに喩えたのは僕じゃないし。

そして、滑らかで振動や騒音が少ないというのは、
自分の車の存在を可能な限り知らしめたい!
というDQN的思考の運転手ならともかく、
僕のようなチキンハートな運転手にとっては大きな利点です。
怖がることなくレブリミットまで回し切れるからです。
淀みなく限界まで吹け上がるエンジンは快感の一言に尽きます。


また、マツダのフラグシップモデルだっただけあって
ロータリーエンジンだけの一発屋ではありません。
旋回性能も極めて高いレベルになっており、
アクセルもステアリングも打てば響きます。
とにかく反応が頗る良いです。
絶対的なエンジンパワーが物凄いわけではないのですが、
その分公道を走るのがとても楽しいです。
ロータリーエンジンの特徴として低速トルクには欠けますが。
色々とS2000に通じるところがありますね。


山道を走って新城市の山奥までやって来ました。
どうにか駐車して少し散策します。
駐車時の左後方の視認性はかなり絶望的ですね…


上の写真で車を停めた場所、
パッと見ただの畦道ですが、実は廃線跡です。
昭和43年に廃止された豊橋鉄道田口線です。


途中から素掘りに変わっているトンネル。
実は昭和4年開業とかなり古い路線。
歴史を感じさせますね。


そして、トンネルを抜けると…


そこには駅があった。


林の中で苔生す旧・三河大草駅です。
最近頓に人気になっている廃駅。
周囲一体林だらけでまるで人の気配がありません。
弩級の秘境駅ですね。
何故トンネルを抜けた先にしなかったのだろう…


近年ではハイキングツアーなども開催されているようです。
廃線50年ってめでたいことなんだろうか…


今回は線路跡を歩いてアプローチしましたが、
現役当時は当然そんなアクセスは出来ないはずです。
となると、この小道が当時の駅前通りなのでしょうか。


さて、お次はもっと山道を走ってみようと
鳳来寺山パークウェイへ。
こういう反応の良い車はやっぱり山道に限りますね。
とにかく楽しい!


快調に走って道の駅したらまでやって来ました。
3ヶ月前に開業したばかりの新駅です。


豊橋鉄道田口線清崎駅の跡に造られており、
田口線関連の展示などもあります。
これは田口線で使われていたモハ14。
気動車かと思ったら電車なんですね。
接続する国鉄飯田線が電化されていたからでしょうか。


中はこんな感じ。
車両自体が展示室になっています。


現役当時の三河大草駅の写真もありますね。
木造の待合室が見えます。
でも、周囲の景色は今と大して変わらないような…


運転に夢中になってお昼ご飯を食べ損ねていたのでここで食べます。
一推しだというラーメンが道の駅ならざる美味しさ。
これは相当に美味しい。
併設された郷土館の展示も見応えがあり、中々良い道の駅でした。


それでは知多半島に戻ります。
長時間運転し続けた所為で眠くなって
已むを得ず路肩に駐車して仮眠を取ったりもしましたが、
バケットシートでも案外寝られるものですね。
車中泊は流石に厳しいですが…

さて、ここまでロータリーエンジンをベタ褒めしてきましたが、
では何故そんな素晴らしいエンジンの系譜が途絶えてしまったのか?
それは、ロータリーエンジンには致命的な欠点があるからです。
オイルの消費が早い、耐久性に欠けるなどありますが、
最も大きいのが燃費の悪さ。
先代のRX-7は何と5km/Lを切るという専らの噂で
アメ車とタメを張るような車でした。
お待たせしました、給油の時間です。
果たして、RX-8の燃費や如何に…
…トリップメーターの読みで9.24km/Lか。
案外普通ですね。
ネタにならなくてちょっと残念?
良いお車でした。
自分で所有するとなると整備が大変そうだけど…

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