トヨタ MR2(SW20型)

さて、不可抗力(?)とは言え、
またしても土日を挟んでの上京となりました。
となれば、車探しに出ないわけにはいきません。
三度野田市へ。


今回はこの車。
トヨタMR2(SW20型)です!
(軽トラックのホンダ アクティを除けば)
昭和59年に日本初の量産MR車として登場したMR2。
初代のAW10型は直線的なデザインでしたが、
平成元年のモデルチェンジでこのSW20型に。
初めてのミッドシップレイアウトということで
初期は手探り状態だったものの、
マイナーチェンジを重ねて少しずつ進化しました。
あのトヨタMR-Sの先代にあたります。


ミッドシップレイアウト、リアウイング、
更にはリトラクタブルヘッドライトと、
ホンダNSX(NA1型)と共通する要素が多いですが、
こちらはスーパーカーと呼ばれることはありません。
NSXの新車価格が最低でも800万円はして
当時の日本車としては飛び抜けて高かったのに対し、
MR2は200万円台とMR車らしからぬ
トヨタらしい圧倒的なコスパだったから、
というのが大きな要因としてあるでしょう。
しかし、お蔭で僕のような庶民でも手が届くわけです。
軽さや機動性を売りにしていたMR-Sに比べて、
どちらかと言えばパワー推しだったと言われるMR2。
その乗り心地や如何に…


クラッチペダルとステアリング(低速時)は
重いことは重いですがまあ許容範囲。
それよりも、ブレーキペダルとシフトレバーが
ふわふわしているのが気になります。
ブレーキをちゃんと踏めているのか、
ギアがちゃんと入っているのか、
今一つレスポンスが掴みづらいです。
あと、巡航時のパワーステアリングも
何処かふわふわしているような…
オドメーターが21.6万kmを数えている個体なので、
元々そういう仕様なのか経年劣化なのか
判別が付きにくいところではありますが。


極太のセンターコンソールには
コンソールボックスは疎かドリンクホルダーも無し。
潔いですね。
その代わりなのか、ドアポケットやグローブボックスはあります。
ペットボトルは入りませんが。


流れの速い茨城県のバイパスを走ってみると…
これは軽い!
MR-Sも軽い軽いと言っていたので、
それなら同じなのか、と言われそうですが、
軽さのベクトルが全く違います。
MR-Sはコーナリングでひらりひらりと
曲がっていけるという意味で軽さを感じましたが、
こちらはスーッと加速するという意味での軽さです。
元々ミッドシップレイアウトの利点というのは、
重心位置から来る旋回性能の良さと、
トラクションの掛かりやすさ
(≒タイヤの空転のしにくさ)から来る
加速性能の良さにあるので、
MR-Sは前者、MR2は後者重視なのでしょうか。
あとは、そもそも馬力が全然違う。
ターボ仕様車ながら一般道で穏便に走る分には
ほぼターボは作動しないものの、
それでも前へ前へと出るパワーがあります。
この息切れ知らずの加速感は楽しいですね。
ただ、アイドリングの回転数が低いのか、
アイドリングでクラッチを繋ごうとすると
高確率でエンストしかけますが。


次は交通量の少ない道でギアを落として
ターボを効かせてみると…
うおぉっ!?
更に豹変した!
3,500rpmを超えた辺りでいきなり過給が始まり、
シュィィインという機械的な吸気音と共に
圧倒的に加速するドッカンターボに焦ります。
日産スカイラインGT-Rもターボでしたが、
こちらの方が遥かに車体が軽い分
吹き飛ばされそうな加速をします。
これは痺れる!

と同時に、車重に対してパワーがあり過ぎるのか、
緩い上り坂でターボが効いた際には
一瞬ハンドルが取られて冷や汗をかきました。
ミッドシップレイアウトの弊害の一つとして
前輪が浮きやすいというのがあるので、
これはその実例なのでしょう。
もしかして、ステアリングがふわふわするのも
パワステ云々ではなく単に前輪が取られているだけ…?
上に「MR車の利点は旋回性能と加速性能」で
「MR-SとMR2はその片方ずつが売り」と書きましたが、
売りで無い方は完全に犠牲になっていますね。
MR2のハンドリングの危うさは当時から言われており、
今回借りているIV型では大分改善したそうなのですが…
これで改善後って、I型はどんなんだったんだ…


ただでさえ雨で滑りやすくなっているので、
普段にも況して安全運転で茂木町まで来ました。
目的地は勿論ツインリンクもてぎです。
茂木町はスクールバスまで速過ぎて草生える。
英才教育ですね…


レースはやっていませんが、
お目当てはこのホンダコレクションホールです。
何故ホンダNSXを借りた前回来なかったのかと
お叱りを受けてしまいそうですが、
前回も来ようと思っていたものの、
東武佐野線に想像以上に時間を取られてしまい
来ることが出来ませんでした。


1階は本田技研工業が世界に名を馳せるまでの歴史を
その時々の転換点となった実車と共に展示。
湯たんぽに燃料を入れて原動機を動かす自転車って
見るからに危なさそうでヒヤヒヤする。


2階は乗用車コーナー。
ホンダは二輪車から始まっている上
二輪車のシェアはぶっちぎりの世界一、
売り上げも収益率も二輪車の方が段違いに良いということで
二輪車コーナーの方が遥かに展示台数は多いです。


しかし、正直バイクには興味が無いので見るのは四輪車オンリーです。
ただ、バイクに出自があるからこそ、
自然吸気で高回転のああいう車を出してきたという面もあります。


自動車メーカーとしてのホンダの原点であるSシリーズ。
昭和36年に当時の通商産業省が
「国内に小さな自動車会社が乱立するより、
トヨタと日産だけに集中させた方が良いんじゃないか?
これから新興勢力が自動車産業に新規参入するのは禁止しよう」
と特振法案と呼ばれる法案を出したのですが、
これに大激怒した創業者の本田宗一郎が
「そんなら、この法律が出来る前に車を造って
自動車メーカーとしての実績を作ってしまえ!」
と大急ぎで造らせたという逸話が残る車です。
実はS600は400万円くらい、
S800でも500万円くらいで未だに中古車が売っていたりします。
縦しんば買えたとて維持出来る気が全くしませんが。


この辺りは比較的最近(80〜90年代)の車のコーナー。
見覚えのある顔が並んでいますね。


3ヶ月半前にガチャガチャで回したシティ。
実物は思った以上に小さいです。
これでもホンダはMM(Man Maximum/Mechanism Minimum)思想で
居住空間を最大限広く取っているそうなので、
当時の軽自動車規格の小ささが窺い知れます。


つい最近生産終了が発表されたS660の
事実上の先代にあたるビート。
実はこいつもMR車です。
平成初期の尖ったホンダ車の代表例として、
S2000、NSXに並ぶ強烈な個性の持ち主でした。
車選びに際してこれも一度は乗っておくべきだろうか。


これまたホンダの代名詞であるタイプRの面々。
タイプRとは、サーキットでの速さを念頭に市販車をより強化した
メーカー公式チューニングカーとでも言うべき存在。
パッと見はファミリーカーなのに回すとヤバいというギャップで
多くのファンの心を掴みました。
外見は普通だから家族を説得しやすいという面もあるのかも知れません。


元祖タイプRのNSXタイプRは見た目からしてレーシングですが。
やっぱり何度見ても格好良いですね…
ところで、この乗用車コーナーにS2000の姿が無いのは何故だ。


3階はレーシングカーコーナー。
ホンダは鈴鹿サーキットやツインリンクもてぎを自社で建設するなど、
日本の自動車会社の中でも特に
モータースポーツに熱を入れていることで有名です。


中でも一番有名なのはF1でしょう。
これは1988年のF1選手権で16戦15勝を上げた伝説のマシン、
マクラーレン・ホンダ MP4/4。
熱狂的な人気を博したアイルトン・セナが駆ったマシンです。
実は、今このブログのヘッダーにある
「ここはモナコモンテカルロ、絶対に抜けない!」
という台詞も、セナの死闘を表した有名な実況です。
あれは1992年なのでMP4/7Aですが。


こちらは佐藤琢磨選手がインディ500で日本人初優勝を飾った
ダラーラDW12 Honda。
2004年以降ホンダエンジンはインディ500で18戦14勝を上げており、
今のインディ500は最早ホンダ対シボレーの戦いと化しています。


企画展ではシビック特集をやっていました。
この後、ミュージアムショップも隈無く探しましたが、
結局S2000はポスター1枚以外見付からず…
まだ現役扱いなのでしょうか。


…トヨタMR2の試乗に来ているのに
ついホンダの話ばかりしてしまいましたが、
ここから豪雨の中野田市まで再びドライブです。
水溜りに突っ込むとただでさえ不安定なハンドルが
より一層危なっかしい挙動を示すので、
今回は筑波山に行ったりとかは無しです。
雨が落ち着いてきたところで
常磐自動車道に乗って踏み込んでみたりしましたが、
この加速力は流石ですね…

そんなこんなで野田市に帰着。
燃費はトリップメーターの読みで9.88km/hでした。
MR-Sより大分悪いのは古さ故かターボ故か。

というわけで、6台目になる理想のマイカー探しシリーズ。
このトヨタMR2も中々に強烈な個性の持ち主で、
何と言っても加速感が抜群です。
が、それと同時にステアリングの不安定さも群を抜いています。
初っ端が別次元のコーナリング性能を誇るS2000だったので、
これまで贅沢にも借りてきた数々の名車のステアリングに
然程の感銘を受けずにいましたが、
今にして思えばやっぱり高い完成度だったんだなぁ…
と思わずにはいられません。

ただ、これは前述の加速性能の良さが
裏目に出ているという面もあるのでしょう。
実はS2000もピーキー(少しでも限界を超えるとすぐスピン)
で知られていたりするのですが、
超高回転型のエンジンなのと
自然吸気で絶対的な加速力が物凄いわけではないので、
僕のようなそんじょそこらの民草の胆力では
限界まで持っていくこと自体が出来ません。
そもそも、一般道では限界なんて遥か彼方で絶対に無理です。
ところが、MR2の場合はターボで加速性能が良過ぎる所為で
弱腰の僕の運転でさえもう少しで限界が来そうなくらい、
限界領域のすぐ近くにまで常用域が迫っています。

…自分の中でも最終評価を下し兼ねている所為で
纏まりの無い堂々巡りの文章になってしまって恐縮ですが、
それでも、そういった不安要素を押し退けるくらい
この痛快な加速は楽しいの一言です。
散々な物言いをしていますが、
実のところ、かなり本気で惹かれています。
目下第一位のS2000も
低速トルクの無さが尋常では無かったし、
オールマイティにそつなく纏っている車よりも
一芸特化で粗も目立つような車に心ときめくタイプなんだろうか…

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