(無題)

三連休中日です。
某知事は外出自粛要請とかいう
責任逃れの詭弁を弄していますが、
満足な施策を打つこともなく
ただただ「良く考えて慎重に行動して欲しい」
とかいう頭空っぽの発言を繰り返すばかり。
知事がその気なら県民としても良く考えて
それ相応の行動をせねばならないでしょう。

自家用車で大して混まないところへ行くのなら、
感染リスクは地元で過ごすのと大差無いでしょう。
ということで、新東名高速道路で島田金谷ICへ。


大きく蛇行する大井川。
今日は折角天気が良いのでこの大井川を観光しようと思います。


県道から見えた大井川鐵道地名駅側の「日本一短いトンネル?」。
山も何も無い平地に急に現れていますが、
これは嘗てこの地に存在していた貨物索道、
つまり貨物用のロープウェイである川根電力索道がこの上を通っており、
万が一貨物が落下した際に
線路や列車に当たらないように設けられたものです。
周囲が削られて取り残されたJR牟岐線の海部トンネルとは
また事情の違う珍トンネル(?)です。
大井川鐵道に乗っていた時は完全に見過ごしていましたが。


大井川を観光するなら何故大井川鐵道に乗らないのか?
と不思議に思う方が多いでしょうが、
先月の豪雨によって大井川鐵道大井川本線は
家山-千頭間が不通となってしまっているのです。
まあ、大井川鐵道はあまりにも時間が掛かり過ぎるというのもありますが。


今回大井川に来た目的の一つは川根茶です。
深い山奥に位置する川根は茶葉の生産に適しており、
本川根町(現・川根本町)、中川根町(同左)、川根町(現・島田市)の
所謂三川根合わせて年間30億円もの茶葉を生産しています。


お茶を飲まない愛犬は涼を求めて大井川に飛び込んでいました。
相変わらず土砂を大量に含んだ濁り水ですね。


お昼時になったので昼食。
山間と言えばお蕎麦、
川根茶と合わせて茶蕎麦です
…と言いつつ、これを頼んだのは親で
僕が食べたのはこの地域の郷土料理だという
大根蕎麦をラーメンにアレンジした川根大根ラーメンでしたが。
おでんの大根とラーメンって意外に合いますね。


愛犬は草を食べていました。
健康志向?


昼食が出てくるまでに思ったより時間が掛かって
次の目的地に間に合うかギリギリになってしまったので、
機関車トーマスの愉快な仲間達が留置されている
千頭駅は無視して先を急ぎます。


ここまであまりにも広い川幅で
その名前の由来を存分に見せてきた大井川ですが、
千頭から先は一気に川幅が狭まり、
日本有数の嶮岨な峡谷となっています。
ある意味ではここからが大井川の真骨頂ですが。
この道、通学路に指定されているのか…


鉄道とは思えぬ急勾配の大井川鐵道井川線。
現在の日本では唯一のアプト式ラック鉄道
(普通の線路だけでは滑るので歯車も使う)を取り入れており、
日本の普通鉄道としては最も急な
90‰もの勾配を有している区間です。


日本一の急勾配区間を造る原因となった長島ダム。
放水していますね。


というわけで、どうにか間に合いました!
大井川鐵道井川線の長島ダム駅です。
上述の通り大井川本線は不通区間がありますが、
意外にも井川線は全線通常運行だそうなので
前回来た際には不通で乗れなかった
末端区間に乗っておこうと思います。


アプト式電気機関車に押されて列車がやって来ました。
何故大井川鐵道井川線名物のこの区間に乗らないのかというと、
撮り鉄する為…ではなくて、
アプト式の所為でこの区間の所要時間が延びているので、
次の長島ダム駅まで先回りすれば
ギリギリ間に合いそうだったからです。


列車が長島ダム駅に到着。
しまった、反対側のホームか。


おおぅ、機関車で踏切が塞がれているじゃないか!
これでは向こう側に渡れない!


しかし、心配は無用です。
特注の高価なアプト式機関車は、
少しでも走行距離を短く抑える為に
アプト式区間の終わったこの長島ダム駅で即外されるのです。
13:24発大井川鐵道井川線井川行きに乗車。


陽射しの照り付ける接岨湖沿いを走ります。
この標高だとまだ普通に暑いですね…
井川線の車両はトロッコ列車で
窓ガラスが填められていないので
密ではありません。


接岨湖は平成15年の国体で漕艇の競技会場になって以来
カヌーの競技場として有名になっています。
今日もカヌーの大会が開かれていました。
日陰が一切無いから暑そうですね…


懐かしの奥大井湖上駅。
観光客で賑わっています。


そして、この接岨峡温泉駅から先が
大井川鐵道最後の未乗区間です。


この地は嘗て全国に350あった営林署の中で
トップの予算規模を誇った東京営林局千頭営林署の管轄地域。
山奥で伐り出した木材を運搬する千頭森林鉄道は
東京営林局管内では最後まで残っていたことで知られています。


その為、林業関係者が山を行き来する為の吊橋が
至る所に架けられており、
一部マニアの間では聖地とも称される場所です。
大井川本流よりも寸又川流域の方が凄いそうですが。
ただ、林業自体が廃れてしまった現在では
その殆どが廃道と化してしまっています。


そんな嘗ての栄華を偲ばせる駅がこれ。


民家や車道どころか登山道すら通じていないという
正真正銘の陸の孤島である秘境駅、尾盛駅。
嘗ては伐採した木材の積み出しを行なっていた他、
ダム建設作業員の宿舎が置かれており、
小学校さえあった時期があったそうです。
しかし、現在ではあまりに隔絶された土地柄の為、
熊が出没した際には逃げ場の無さから下車が「禁止」されるなど
全く以って公共交通機関にあるまじき扱いを受けています。
それでも尚、廃止を免れているのは
この駅がダム建設に伴う補償として設置されたからです。


尾盛駅から先も列車は人の気配を感じさせない
南アルプス深南部を走ります。
こんなところでも保線をしている作業員の方が居て頭が下がります。


現在、日本一高い鉄道橋となっている関の沢橋梁。
川底からの高さは70.8mです。
トロッコ列車で車体が非常に小さく、
窓ガラスも無いので結構怖いです。
なお、この関の沢橋梁を渡った先は
静岡県の県庁所在地であり、
静岡県の玄関口である静岡駅も位置する静岡市葵区です。
北部だけを独立した区として切り離してしまうと
財政的に立ち行かなくなるというのは分かるけど、
それにしてもあまりにも範囲が広大過ぎるのでは…(名古屋市の約3倍)


閑蔵駅に到着。
ここは車道が通じており、駅前にバス停まであります。
…ただそれだけで井川線の平均を超えているという事実。
そのバス路線というのが他ならぬ大井川鐵道の運行する閑蔵線で、
鉄道の井川線だと接岨峡温泉-閑蔵に17~21分を要しているところを
たったの4分で結んでいるという便利短絡路線です。
自分で自分の路線の首を締めていくのか…
ちなみに、閑蔵線のバスは下り列車に接続しており、
千頭側から列車に乗って来て
関の沢橋梁を体験してとんぼ返りする需要を狙っているようです。
(閑蔵→千頭は列車が所要85~90分なのに対し、バスは30分。)
実際、そういう親子連れが何組も居ました。


親子連れから見放されてしまった
最後の最後の末端区間を行きます。
遥か眼下に見えるのは奥泉ダム。
あまりにも深い峡谷にある為車道からはその姿が一切見えず、
一般人はこの井川線でしかその姿を望めません。


その奥泉ダムへ物資を運搬する為と思しき
モノレールが線路脇に設置されていました。
黒部峡谷鉄道と違って
ダム関係者専用の駅は設けないんですね。


さあ、いよいよ終点です。
井川線建設の動機となった巨大な井川ダムが見えてきました。


14:18、井川駅に到着。
これにて大井川鐵道は完乗、
ということで静岡県の鉄道はJR・私鉄ともに完乗です!
ラストを飾るにこの上無く相応しい地ですね。


列車の停車位置から駅舎まではちょっと歩きます。
と、ここで奇妙な点に気付いた方は居ないでしょうか?
列車が到着したのは手前のホームですが、
駅舎の前で何やら写真左手に延びる線路が分岐しています。


やはり謎の線路が分岐してトンネルに消えています。
しかし、駅名標は確かにこの井川駅が終点であると主張しています。


この線路の正体はここから更に1.1km延びていた貨物線です。
畑薙第一・二ダム建設までは盛んに使われていたものの、
昭和46年に一旦休止。
その後、休止から17年を経た昭和63年に
赤石ダム建設の為に特例のような形で再開したものの、
平成8年に再び長い眠りに就いて以降は起きていません。


自動車で先回りしていた愛犬達と合流。
やはり車の方が大分早いですね。


こんな山奥滅多に来られるものではないので、
遊歩道として整備されている堂平駅跡まで歩いてみます。
今日はこの標高でも暑いな…


ほぼ全線に渡って線路が残されており、
ちょっと整備すればすぐにでも列車を走らせられそうです。
一応、書類上は廃止ではなく休止なので、
また列車が走る可能性もゼロではない…のでしょうか。


20分弱で堂平駅跡に到着。
嘗てはここから井川集落中心部を通って畑薙第二ダムまで
井川線を更に延伸する計画もあったそうですが、
その頃にはもう自動車輸送が発達していたので
静岡県道60号線を整備するに留まりました。
リニア中央新幹線の南アルプストンネル掘削が本格化すれば
ひょっとしたら延伸するかも…?


折角なのでもう少し歩いて吊橋まで来てみました。
井川の夢の吊橋です。


寸又峡にも同名の吊橋があり、
知名度はそちらの方が断然上ですが、
川底からの高さは寸又峡のものが8mなのに対し
こちらは何と50mもあり、
そのスリルは段違いです。


愛犬は何故か渡る気満々でしたが、
ずっこけられたら洒落にならないので待機させて一人で渡ります。


写真で伝わるか定かではありませんが、
かなりの高さで怖いです。
踏み板はギシギシと音を立て、
恐怖を更に掻き立ててくれます。
夢だったら間違いなく転落して目が覚めるやつですね。


しかし、これは夢ではないので渡り切りました。
深い山の中に浮かぶ吊橋とは
中々に幻想的な景色ですね。
これをもう一度渡って戻らねばならないとなると
急に現実に引き戻されますが。


復路は大井川鐵道沿いではなく
静岡県道60号線で帰ります。


南アルプストンネルの工事用車両が走るとしたら
ほぼ間違いなくこの道しかないはずなのですが、
落石や土砂崩れは勿論のこと
長さ数百mに渡って1m以上も路面が陥没した箇所もあるなど、
南アルプス特有の地盤の悪さが如実に現れています。


この林道だけでも相当な難工事であったことは想像に難くなく、
富士見峠には巨大な林道開通記念碑が立てられていました。


大井川鐵道が開通する以前は
井川集落の人間が下界へ下りる為の唯一の道がこの大日古道だったとか。
あの井川に縄文時代から人が住んでいたというのは衝撃ですね…


この道沿いでも偶に集落が現れるのですが、
一体どうやって暮らしているのでしょうか…
自家用車が無かったら買い物だけでも泊まり掛けでは。


人里の温もりを感じる川幅の広い場所まで下りてきました。
これは大井川ではなく安倍川です。


この後は新静岡ICから新東名高速道路に乗って帰りました。
静岡県北部は全く凄まじい場所だった…
いつの日か南アルプス南部の山々も登ってみたいものです。

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