(無題)

JGRG29第5+2日目。

5:30、起床。
大きな荷物は宿に残したまま延岡駅に向かいます。
温暖な宮崎県とは言え、12月の日の出前は寒いです。
何故わざわざそんなに早起きしたのかと言えば…


ダイヤがこんな感じだからです。
大分方面の時刻表に注目してみてください。
一見何の変哲も無いように見えますが、
お気付きでしょうか?
極端に普通列車の数が少ないことに。
そう、延岡駅から大分方面への普通列車は
始発の6:10発と最終の19:33発の僅か2本のみ。
ここは日本一普通列車の少ない場所の一つなのです。


6:10発JR日豊本線普通佐伯行きに乗車。
特急列車じゃないか!って?


こう見えて普通列車なんです。
特急列車を回送させるついでに
普通列車として運行しているようなものなので、
車両も特急列車と全く同じものを使っています。


但し、乗車出来るのは先頭の4号車だけです。
青春18きっぷの有効期間ならいざ知らず、
この時期は貸切状態だろう…
と思ったら、僕以外にも3人中高年の乗客が居ました。
まだ夜の明けきらない峠へと向かいます。


6:39、宗太郎駅に到着。


宮崎-大分の県境を越えてすぐにある宗太郎駅。
その昔は宗太郎峠に挑む機関車の中継地として
栄えた時代もあったそうですが、
現在では鎧川の水の流れる音や
ニワトリの鳴き声が時折聞こえる他は、
何一つ音がしないような静寂の駅です。


駅舎は無く、あるのは錆びた運賃箱と
コンクリート製の小さな公衆トイレだけです。
あと、何故か電話ボックスがあるので、
風雨が激しくなった際は避難小屋として使える…かも?
なお、auの携帯電話だとここは圏外です。


そしてこれが宗太郎駅の時刻表。
大分方面が2本、延岡方面に至ってはたった1本です。
平成30年3月までは倍の上下計6本ありましたが、
それでも平成26年の「年間」利用者数は42人で、
9日間に1人降りるかどうかという有様でした。
平成28年度以降の利用者数は公表されていませんが、
1ヶ月に1人レベルになっていてもおかしくありません。
もしかすると、不便になって逆に利用者数が増える
新十津川駅現象が起きているかも知れませんが。


駅前には小さな集落があります。
人の気配はありませんが。
ただ、ニワトリの声がするということは
少なくとも1人はまだ住んでいるはず…


佐伯市コミュニティバスのバス停がありました。
万が一列車を逃した時の避難路として使える…
はずもなく、事前予約制で木曜のみの3本という、
宗太郎駅の7分の1以下の使い勝手です。


ならば駅のすぐ近くを通る国道10号でヒッチハイク…
と考えたくなるかも知れませんが、
東九州自動車道が延岡南IC-佐伯IC間で
無料化している影響によりこの区間は交通量が僅少で、
僕は滞在中に1台しか通行車を見掛けませんでした。
あらゆる交通から取り残された場所、
それこそが宗太郎駅なのです。


天満社という名の集落の神社。
標高が高いので既にモミジが落葉し始めています。


短い滞在時間ではありましたが、
前述の通りここで列車を逃すと洒落にならないので
大人しく延岡に戻ります。
6:54発JR日豊本線普通延岡行きに乗車。
本日の延岡方面最終列車(兼始発列車)です。


今度は1号車のみ開放されていましたが、
1号車は前半分がグリーン車になっている為
実質0.5両分しかありません。
青春18きっぷの時期でもない限りは
0.5両分でも十分過ぎるくらいですが。


日が昇って山間にも陽光が射し込んできました。


日向長井駅で反対列車と行き違い。
交換待ちの間に日の出を撮ってみました。


ついでにレア方向幕を。
特急用の787系がこの方向幕を掲げるのは
日に一度、これきりです。


7:26、延岡駅に到着。
戻ってきました。
宿に戻って荷物を回収します。

さて、これからどうしようか…
とにかく公共交通機関の不便な宮崎県。
行きたい場所は色々あるのですが、
鉄道とバスだけを使うとなると
時間の制約上殆ど何処にも行けません。
どうしたものか…
…公共交通機関以外を使えば良いのか。
ここで意地を張っても仕方ないので、
大人しくレンタカーを借りることにしました。
正直、バスに乗り継いだりすることを考えると
レンタカーの方が安く付きそうだというのもあります。


準高速道路と化している国道10号を南下し、
日向市の日向岬までやって来ました。
日向市駅からレンタサイクル案もありましたが、
かなり急勾配の道が多くて
レンタカーにして良かったと心底ほっとしています。
駐車場に車を停めて遊歩道へ。


細島灯台。
濃紺の日向灘に映える白亜の灯台です。
登ることは出来ませんが。


そして、その先にあるのが馬ヶ背です。
国内最大級である高さ70mにも及ぶ
巨大な柱状節理が聳え立つ様は圧巻です。


正に馬の背のような岬に
タテガミの如く延びる道も見ものです。


馬ヶ背と細島灯台。
こう見ると溶岩の流れ出た様子が良く分かりますね。


駐車場に戻る遊歩道にも隠し切れない柱状節理が。
林になっている部分もちょっと掘れば
柱状節理が顔を出すようですね。


嘗ては日向岬の観光地と言うと
この馬ヶ背一強だったのですが、
近年ではもう一つ急速に人気を伸ばしている
とある撮影スポットがあります。
写真はその撮影スポットの駐車場の端に
何やら神官のように鎮座していた猫です。


何はともあれ、その噂のスポットがこの展望台。
何やらありがちな鐘がありますが…


ここから見た日向岬の景色。
絶景なのは言うまでもありませんが、
何か見えてきませんか?


そう、波によって侵食された柱状節理が
十字架の形に割れているのです。
以前は十文字と呼ばれていたこの場所は、
平成10年頃から地元の民宿経営者によって
スペイン語やポルトガル語で「十字架」を意味する
「クルス(cruz)」を取って
「願いが叶うクルスの海」と改名され、
宣伝活動が盛んに行われてきました。


ただ、まだちゃんとした共通認識になっていないのか、
英訳は”granted”だったり”come true”だったり、
“cruz”だったり”cross”だったりかなりのブレがあります。


ん?良く見ると十字を形成する柱状節理の一つに
何やら赤い屋根が見えるような…
あそこにも展望台があるのか?


気になったので来てみました。
「サンポウ」と書かれています。
これは何語なんだろう…
「三方」?


おお、読み通り絶景!
クルス自体は近過ぎて良く見えませんが、
潮溜まりなどが美しいです。
クルスの海展望台の何倍も車が停まっていましたが、
どうやら磯釣りスポットになっているようです。


おや?良く見ると裏手の山の上に
何やらコンクリート造りの建物が見えるような…
まさか、あそこにも展望台があるのか?


ありました。
旗振り通信みたいに展望台から展望台へと移っていますね。
米ノ山展望台という名前のようです。
地元のウォーキングコースにでもなっているのか、
多くの年配者が徒歩で登ってきていました。


パラグライダーも出来るとのことですが…
それらしきものは見当たりませんでした。


展望台通信はキリがないのでここで打ち止め、
今度は麓にある神社に来てみました。
大御神社という日向灘に面した神社で、
臨時駐車場が開かれるほどの盛況っぷりです。


この神社もまた柱状節理の上にあります。
この柱状節理はその形から亀岩と呼ばれているそうです。


平成15年に境内の拡張工事をした際、
日本最大級のさざれ石が出土したことでも有名だとか。


そして境内にはもう一つ、
柱状節理に口を開けた巨大な裂け目に祀られた
鵜戸神社があります。
ここも洞窟だから鵜戸神宮と同名なのでしょう。


洞窟の奥に祠があり、
「ここから入口を振り返って下さい。」
という立て札が立てられています。


入口から入ってくる光を手前の岩で上手く隠すと
龍が天に昇っているように見えるということで、
縄文時代から龍神信仰があったのだそうです。


さて、帰りの飛行機の時刻もあるので
そろそろ延岡に戻ろうと思います。


しかし、戻っている途中に気になってしまったので、
ちょっとだけ寄り道します。
ここで問題です。
この何の変哲もない無人駅、
一体何が変わっているのでしょうか?


答は駅名です。
その名もすばり「トトロ駅」。
ジブリのあのキャラと全く同じ名前です。
一切コラボしていませんが。
お隣の大分県佐伯市には「ととろバス停」があり、
そちらには公園が整備されるほどの
様々なオブジェが何者かによって置かれているそうです。


延岡まで戻ってレンタカーを返却し、
宮崎名物チキン南蛮で締めます。
チキン南蛮と言えばタルタルソースの掛かった形が有名ですが、
元祖はこのように甘酢に浸しただけの形なんだとか。
この甘酢が実に美味しい。
30分以上待たされるほどの大盛況っぷりも納得です。


延岡駅から13:37発JR日豊本線特急にちりん14号大分行きに乗車。
後は空港に行くだけ…


なのですが、運転停車でえらく待たされるではありませんか。
反対列車が9分遅延している為この列車も遅れる見込み…
9分!?
空港行きのバスへの乗り継ぎ時間は9分しかないんだぞ!


宮崎県に信頼の於ける公共交通機関は無いのか…?
一縷の望みを託して空港バスを運行する
大分交通に電話してみたものの、
バスは列車と一切接続していないとのこと。


14:48、佐伯駅に到着。
ぴったり9分遅れのままです。
県境を越える延岡-佐伯間58.4kmは
当然の如く客扱いをする停車駅は一つも無く、
ダイヤ上でも1時間以上無停車という、
時間だけで言ったら東北新幹線はやぶさ号の仙台-大宮並みです。
表定速度は昼間の名鉄河和線の特急以下ですが。


とか何とか書いてみましたが、
内心は穏やかでありません。
そんな僕の心情を描写するかのように
打ち付けるような豪雨が降ってきました。
いや、豪雨に突っ込んだと言った方が正しいか。
まさかこの雨で更に遅延しないだろうな…


15:47、大分駅に到着。
遅れは5分にまで圧縮されました。
すぐさま15:45発JR日豊本線特急ソニック42号博多行きに乗り換え。


15:56、別府駅に到着。
最終的に3分遅れで済みました。


16:02発大分交通空港バス大分空港行きに乗り換え。
間に合った…


大分空港から17:55発ANA800便に搭乗し、
羽田国際空港へと飛びました。
これにて今回の出張は終了。
5年越しの心残りも解消出来たし、
何気に発表賞も獲れたし、
実り多い出張だったな…

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