(無題)

日本物理学会2019年度秋季大会第4+2日目。

4:40、起床。
早寝したって眠いものは眠い。
でも、頑張って起きます。


酒田駅から5:35発JR羽越本線普通秋田行きに乗車。


鳥海山の山麓を走ります。


俄に地形が険しくなり、荒々しい海岸となります。
日本海の県境は何処も難所揃いです。


そんな中、ぼーっとしていたらその存在にすら気付かないような
小さな小さな駅がありました。
しかし、この列車は無情にもこの駅を通過します。
普通列車すら大半は止まらぬ駅なのです。
この駅に降りたい!
そう、今朝早起きして始発列車に乗ったのは
何を隠そうこの駅に降り立つ為なのです。
が、酒田発の列車はこの時間帯全て通過してしまいます。
その為、朝に酒田からこの駅へ行こうと思ったら
一つ先の小砂川駅で折り返さねばなりません。
この列車の小砂川着は6:02。
一方反対列車の小砂川発は6:03。
小砂川駅でこの上下列車が交換するので、
この列車が着く前に行ってしまうことはありえませんが、
ネットの乗換案内では不可能と判定されるこの乗り換え。
小砂川駅の跨線橋を全力昇降した結果や如何に…!


6:08、女鹿駅に到着。
やったぜ。


山形県最北の駅。
女鹿と書いて「メガ」と読みます。
音だけ聞くとえらく強そうな駅名ですね。
男鹿と対比しているのでしょうか。


途中からホームが木造に変わるところが実に哀愁漂います。
踏みしめるとギッギッと音が鳴るのもいとあはれ。
辺りには林や森しか見当たりませんが、
林の裏には国道7号が通っている為、車の音はそこそこします。


ホームは1面しかありませんが、線路は複線です。
実はこの女鹿駅は元々信号場として開業したものを
国鉄民営化の際に旅客駅へと昇格させたもの。
嘗ては駅舎も信号場時代の詰所をそのまま用いていたそうですが、
平成28年に駅舎が新築され、
ついでに2面あったホームの片方を廃止したそうです。


女鹿駅駅舎。
こぢんまりとしています。


そして、これが鬼の時刻表。
秋田方面は午後の4本、
酒田方面に至っては朝の2本しか停まりません。
この区間を走る普通列車は1日に10往復あるので、
実に7割もの普通列車が通過していることになります。
地元住民が酒田へ通勤・通学することしか考えていない
実に旅行者泣かせの駅です。
まあ、普通の旅行者はそもそも
ここに来ようなどという発想に至りませんが。


次の7:07発の酒田行きを待っても良いのですが、
眠気覚ましに隣駅まで歩いてみます。
駅舎改築工事の時に重機を入れたのか
駅前の道は幅員もかなりあって立派です。


すぐに国道7号に出ました。
しかし、民家は国道の反対側に3軒ほどあるのみです。


アマハゲの里女鹿…?
ギャグ漫画がナマハゲの里男鹿を捩ったような響きです。


5分ほどで山形県本土最北の集落である女鹿に入りました。
思ったよりも多くの人が住んでおり、新しい家も多いです。
ちなみに、日本で最も郵便番号の大きい集落はこの付近にあります。
(〒999-8531 山形県飽海郡遊佐町菅里)


集落の中心にある神泉の水。
多層式になっていて、最上段が飲用、
下へと下るにつれて果物冷却、野菜洗浄、衣類洗濯と
用途が移っていくそうです。
思ったよりは冷たくありません。


女鹿の集落を出ると地形は険しさを増し、
家を建てられるような状況ではなくなります。


勿論、国道7号は遥か青森まで途切れることなく続いていますが、
何やら面白そうな脇道を見付けてしまったのでこっちを歩きます。


荒々しい海岸で釣り人が磯釣りに興じていますね。
ここはまだ比較的アプローチしやすそうではありますが、
どんなに険しい海岸でも釣り人は居るものですね…


県境になっている岬こと三崎。
もうちょっと捻った名前は付けられなかったのか。


というわけで、1ヶ月振りに秋田県に戻ってきました!
徒歩で秋田県に入るという新鮮な経験。
東北地方の御多分に漏れず、
秋田県もまた険しい県境ばかりの県です。


羽後交通の路線バスの運賃区間の境界を示す標。
バス停でも何でもないところで運賃が変わるんだな…
フリー乗降区間なのでしょうか。
だとすれば、この境界標のギリギリ手前で降りたい乗客と
ギリギリ向こうで降ろしたい運転手との間で、
日々熾烈な争いが繰り広げられているのでしょうか。


2時間振りに小早川駅に到着。
既に電車が来ていて焦りましたが、反対方向でした。


小砂川駅の時刻表。
これが本来の羽越本線の列車本数です。
女鹿駅以外にも秋田方面で
通過されまくっている駅が2つありますね。


8:28発JR羽越本線普通秋田行きに乗車。


8:42、金浦駅に到着。
朝のお散歩はまだまだ続きます。
秋田県道290号を北へと歩きます。


やって来たのはこの建物。
何だか分かりますか?


正解は白瀬南極探検隊記念館です。
日本人として初めて南極を探検した白瀬矗の出身地が
ここ金浦だということで建設されました。


南極探検隊縁の品が数多く展示されています。


南極探検に用いられた開南丸。
驚くほどちゃっちい木造帆船です。
こんな船で南極まで行ったのか…
トン数はたったの200t。
あのははじま丸おがさわら丸でさえ
450t以上あるというのにです。
スクリューも付いていたそうですが、
出力は18馬力と小型バイク並みです。
先駆者というのは凄いですね…
ちなみに、現役の南極観測船である しらせ(2代目)は
トン数12,650tで出力は30,000馬力です。


昭和基地近くで採れたという氷も展示されていました。
えっ、触って良いの?


どちらが南極の氷か分かりますか?
正解は右の白い方。
何万年もの間雪が圧縮されて出来た為に気泡を含んでいて白く、
普通の氷に比べてとても融けにくいのが特徴です。
左の氷は融けて蝶ネクタイ形になってしまっているのに対し、
南極の氷は直方体のまま殆ど融けていません。


南極探検隊にも女子高生アニメがあるらしく、
コラボ(?)していました。
このアニメのファンは聖地巡礼で南極に行くんだろうか…


白瀬記念館入口バス停から10:02発
羽後交通本荘象潟線象潟駅前行きに乗車。


このバス、何と床が木造でした。
開南丸のオマージュ…?


10:15、ねむの丘前バス停に到着。
道の駅象潟「ねむの丘」に来てみました。
道の駅らしからぬ背の高い建物です。
その理由は…


この眺めを見せる為です。
お分かり頂けるでしょうか?
田んぼの中にポコポコと隆起している部分があり、
松島のような景色になっています。


実はここ、嘗ては本当に松島と同じく小島が浮かぶ潟湖でした。
それが1804年の大地震で隆起して陸地化したのです。
ドローンがあったら飛ばしてみたいですね。


ついでに道の駅も見ていたら
ヨーグルトコーヒーなる商品を発見してしまいました。
ベトナムにはそういう飲み物があるらしいけど…
試しに買ってみましたが、
コーヒーの苦味が中和された分
コーヒーの持っている酸味がヨーグルトによって更に強調され、
他のあらゆるヨーグルト飲料にも況して酸っぱくなっています。
眠気覚ましには良い…のかも知れない。


ねむの丘前バス停から10:50発羽後交通本荘象潟線象潟駅前行きに乗車。


10:57、象潟駅に到着。
さて、早朝の女鹿駅訪問も
行程を組む上ではかなりの悩みどころでしたが、
それと同じくらい時刻表と睨めっこして悩んだのがここです。
白瀬南極探検隊記念館と象潟の両方を見て
尚且つその後の行程をちゃんと維持する為にどうしたら良いか…


11:09発JR羽越本線特急いなほ1号秋田行きに乗り換え。
答は特急列車でした。
秋田方面に進んでいくなら象潟→金浦と行くのが順当なのに、
バスを使ってまで逆向きに進んでいたのはこういう訳です。


羽後本荘駅で12:00発由利高原鉄道鳥海山ろく線
普通矢島行きに乗り換え。
本日第四の目的である由利高原鉄道です。


何やら案山子祭りをやっていて
各駅に何本も案山子が立っています。
人気投票もしているようです。


鳥海山ろく線はその名の通り、
鳥海山の麓を鳥海山に向かって走っていく路線。
と言っても、流石に山頂を目指していた訳ではなく、
計画ではそのまま山麓を回って奥羽本線の院内駅へつながる予定でした。


羽後本荘駅から離れるに従って
著作権的に大分際どい案山子が増えてきたような…
某社もこんな山奥までは来ないだろうという考えでしょうか。


12:39、矢島駅に到着。


全方位に喧嘩を売っていくスタイル。
ちなみに、人気投票で見事1位を獲得したのは
この写真で一番手前にある某女の子と烏の案山子でした。


レトロと見せ掛けてかなりモダンな矢島駅。
鳥海山ろく線という如何にも鳥海山に登って欲しそうな路線名なのに
登山口への路線バスは出ていません。


お昼時なので食堂へ行きます。
収穫の時期を迎えつつある
黄金色の稲穂を横目に歩きます。


輪切りのレモンが乗った生姜ラーメン。
ラーメンらしからぬ爽やかさです。
このラーメンを食べていたら俄に店主が出て来て
「君、良いとこの大学なんじゃない?」
とか言われてビビりました。
物理学会の参加者が他にも来ていたのでしょうか…?


13:54発由利高原鉄道鳥海山ろく線普通羽後本荘行きに乗車。


この車両は鳥海おもちゃ列車と言って
木の玩具をモチーフにした内装になっています。
沿線にある鳥海木のおもちゃ美術館が由来だとか。
積み木で遊べるスペースなんかもあるのですが、
残念ながら僕以外に乗客は居ません。


14:17、曲沢駅に到着。
もうちょっとだけ由利高原鉄道を巡ります。


曲沢駅は周囲360°田んぼに囲まれた秘境駅。
駅名の由来となった曲沢集落は600mほど北にあるので、
パッと見は田んぼで農作業をしに来る為の駅に見えます。


ここは晴れていれば田んぼの奥に
雄大な鳥海山が聳える絶好の撮影スポットなのですが…
この天気では全く見えませんね…


15:10発由利高原鉄道鳥海山ろく線普通羽後本荘行きに乗車。


羽後本荘駅で15:38発JR羽越本線普通秋田行きに乗り換え。
瑠璃色のいなほが格好良かったので入れた図。


上に挙げた女鹿駅や小砂川駅の時刻表を見て、
女鹿駅の他にもやけに普通列車が通過している駅があることに
注意深い方はお気付きになったかも知れませんが、
羽越本線にはあと2つ、普通列車の大半が停まらない駅があります。


停まらない駅には降りられないので
15:57、岩城みなと駅に到着。


やけにお金の掛かっている通路を通って
道の駅岩城を目指します。


ちょっとメルヘンな雰囲気の道の駅岩城。
しかし、例によってこの道の駅がメインの目的地ではありません。
ここには地形図を見ていて気になったものがあるのです。


道の駅の脇から橋が延びる構造物。
あれは一体何でしょうか?


正解は漁港。
この道川漁港は全国的にも珍しい、
港が丸ごと海の中にある島式漁港なのです。


何故そんな形の漁港を造ったのかというと、
この場所は遠浅かつとても砂が堆積しやすい為、
普通に陸地に接する形で漁港を造ると
物凄く浚渫の手間が掛かってしまうからです。


綺麗な砂紋が出来ていますね。
遠浅で一直線に続く砂浜を象徴する現象です。


漁港に渡ってみました。
海堡みたいですね。


ここまでしてもなお砂の堆積は酷いのか
ショベルカーが大量の砂を掻き出しています。
この土砂は何処から運ばれてきているのですかね?
子吉川?それとも雄物川?


17:09発JR羽越本線普通酒田行きに乗車。
今日は行ったり来たりばかりしていますが、
これが最後の南下です。


17:18、折渡駅に到着。
1時間強前に通過した普通列車の大半が停まらない駅です。
あともう1つは桂根駅です。
3駅とも元・信号場という点が共通しています。


女鹿駅のホームはオンボロでしたが、
ここはつい最近改築でもしたのかピカピカです。
個人的にはちょっと寂しい。


しかし、ホームの立派さに反して待合室はこの狭さ。
利用者数を考えれば必要十分ですが。


ただ、女鹿駅と違って信号場時代の建物も残されており、
下り線ホーム側にはこんな立派な駅舎があります。
秋田県警の警察官はこんな所まで立ち寄るのか…


折渡駅時刻表。
上下とも女鹿駅より1本ずつ多いです。
五十歩百歩ですが。


秋田県道69号からみた折渡駅。
信号場にしか見えませんね。


辺りも散策してみましたが、
人の住んでいる気配がありません。
打ち捨てられた小屋が車がちょっと怖い。


一気に暗くなってきたので1本だけ撮り鉄したら
足早に駅へと戻ります。


上り線ホームのちっこい待合室で一服。
赤岩駅を思い出しますね。
こういう雰囲気は大好きです。


19:03発JR羽越本線普通秋田行きに乗車し、
19:12、再び岩城みなと駅にて下車。


正直秋田駅周辺は栄えていないので、
道の駅岩城で夕食を食べます。
道の駅にしては結構遅くまでやっていて便利ですね。
21:37発JR羽越本線普通秋田行きに乗車。


22:00、秋田駅に到着。
1ヶ月以内に2度も来ることになろうとは。
北へ南へ、朝から10本以上の列車に乗ってきましたが、
これで漸く終わりです。
先月は秋田空港から飛行機に乗りましたが、
今日はもう終便が出てしまっています。


というわけで、今度は夜行バスです。
22:20発秋田中央交通フローラ号に乗り換え。

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