ドイツ出張第8日目。
3:30、起床。
時差ボケなんかじゃありません。
寝不足で倒れそうになりながらも起きたんです。
今日はDESYもお休み日曜日。
何か面白い場所でも無いかなーとネットを漁っていたら、
昨日のMolli(モーリー)をも遥かに超える
衝撃的なものを見付けてしまい、
拙いドイツ語で頑張って情報を検索してみたら
Hamburg(ハンブルク)から始発で出れば
ギリギリ日帰り可能であることが判明。
居ても立ってもいられなくなり、
即決でチケットを購入してしまったのです。
Zum Hünengrab (DESY)バス停
(ツム・ヒューネングラブ(DESY)バス停)から
4:08発1番バスBf. Altona(アルトナ駅)行きに乗車。
Hamburg-Altona駅(ハンブルク=アルトナ駅)で
5:20発ICE1211列車München Hbf(ミュンヘン中央)行きに乗り換え。
9時間7分を掛けてドイツを縦断するICEです。
日本で言うなら東京発博多行新幹線のぞみ号みたいなもので、
ドイツの顔と言っても良い列車だと思うのですが、
改札が無いからか長時間停車の度に物乞いがやって来て
鬱陶しいことこの上ありませんでした。
Hamburgのイメージがどんどん落ちていく…
Bremen Haupt駅(ブレーメン中央駅)で
6:53発RE4402列車Norddeich Mole
(ノルドダイヒ・モーレ)行きに乗り換え。
RE(地域内快速)ですがwifiが付いていました。
濃い霧に包まれたBremen(ブレーメン)を抜けます。
9:05、Norden駅(ノルデン駅)に到着。
ここはオランダに程近く干潟の多い
Niedersachsen(ニーダーザクセン州)。
風車もあり、オランダの影響を感じさせます。
Norden駅外観。
ここでバスに乗り継ぐのですが…
ここへ来て便意が…
しかし、バスが来るまでもう時間が無い…
だが、バスの乗車時間は1時間半もある…
急いでトイレに駆け込んだらギリギリ間に合いました。
9:14発K1番バスHarlesiel(ハルレージール)行きに乗り換え。
貨物輸送もするのか貨車を牽引していますね。
このバスは鉄道から通しのeチケットをオンライン購入できます。
ひたすら牧場に次ぐ牧場と風力発電に次ぐ風力発電。
Maastricht(マーストリヒト)よりもずっと
典型的なオランダのイメージそのものです。
Esensバス停(エセンス バス停)は
一見するとただの停留所のように見えますが、
良く見ると裏に線路が敷かれています。
ここはドイツ国鉄の鉄道の終着駅でもあり、
一応鉄道とバスの結節点になっています。
バスが暫く停車していたので列車に接続するのかと思いきや、
何事も無かったかのように発車していました。
鉄道ではなくK2番バスと接続していたようです。
Bensersiel Anlegerバス停
(ベンサージール桟橋バス停)。
Langeoog(ランゲオーグ島)へのフェリーが出る港です。
Niedersachsenにはオランダから遥々続く
Ostfriesland Inseln(東フリースラント諸島)が
沖合に鎖のように連なっており、
北海のビーチリゾートとしてドイツ人に人気を博しています。
そして、ここからK1番バスは堤防沿いを走るようになります。
K1のKというのも、「海岸」のKから来ています。
…勿論、”Kaigan”ではなくてドイツ語の”Küste”です。
Neuharlingersiel Anlegerバス停
(ノイハルリンガージール桟橋バス停)。
Spiekaroog(シュピーカーオーグ島)への港です。
運河が特徴的なCarolinensiel
(カロリーネンジール)の町に入りました。
そろそろ終点です。
10:41、Harlesiel Anlegerバス停
(ハルレージール桟橋バス停)に到着。
途中雨も降っていましたが、晴れてくれましたね。
勘の良い方はお気付きかも知れませんが、
ここもまた離島へのフェリーが出る港です。
しかし、船着き場にフェリーはおらず、
ターミナルも閉鎖されて閑散としています。
ここまで見てきた3つの島の中でも
このHarlesielから行ける島は飛び抜けて難易度が高く、
何とフェリーには定まった時刻表というものが存在しません。
物理的に作ることができないのです。
島の港の水深が浅い為、定期船は喫水の関係で
満潮時にしか入港することができず、
毎日運行ダイヤが変化するのです。
しかも、それが日に2往復だったり3往復だったりで
計画を立てづらいことこの上ありません。
更には、駅から港までの接続バスはあるものの
何故か島発の始発便と本土発の最終便に合わせており、
どう見ても島民のことしか考慮されていません。
今日のHarlesiel発の時刻は8:30、18:00、19:00の3本。
始発便は前日入りしない限り間に合わず、
夕方の2便は行ったが最後今日は帰って来られません。
明日は月曜日でDESYに行かねばならないので、
普通に考えると今日はどう頑張っても行けないはずですが…
そこで知恵を絞るのが理論屋というものです。
港から東へと歩きます。
ありました。
と言って、これが何の建物なのか
すぐに分かる人はそう多くはないでしょう。
正解は空港です。
Flugplatzなので正確には「飛行場」ですが。
実はHarlesielからお目当ての島には飛行機が飛んでいるのです。
ターミナル内部。
ここを発着するのは離島路線だけということもあり、
非常にこじんまりとした建物です。
それでも何気に飛行機グッズとか売っていました。
ここでネット予約票を見せて運賃を支払い、
荷物を計量してチェックイン手続きをします。
出発時刻になると名前を呼び出されて滑走路へ。
11:30発の便に搭乗します。
現れました、バヌアツ以来のブリテン・ノーマンBN-2アイランダーです。
某ロシア好きなら泣いて喜びますね。
乗客は僕の他に老夫婦2組だけでした。
操縦席真後ろの特等席に案内されました。
島からの飛行機が着陸したら出発です。
定刻より10分早く飛び立ちました。
離陸して北へと進路を取ると眼科には広大な干潟が。
船の航行にとっては邪魔で仕方ないことでしょう。
そんな干潟の中に僅かに浮き出た島が近付いてきました。
最終アプローチ。
この島の滑走路は果たして舗装されているのか…
されていますね。
アイランダーには長過ぎるくらいの滑走路です。
11:27、Wangerooge飛行場(ヴァンガーオーゲ飛行場)に到着。
定刻の「出発」時刻より早く着くという。
というわけでやって来ました、
Wangerooge(ヴァンガーオーゲ島)です!
Ostfriesland Inselnで一般人が住む島としては最東端に位置し、
ここもまたビーチリゾートとして密かに人気があります。
飛行場前の通り。
このWangeroogeには自動車が走っていないので
とても静かで長閑です。
まずは最東端を目指して歩きます。
Ostfriesland Inselnは砂が堆積してできた島々なので、
日本の島とは違って極めて平坦です。
折角なので砂浜を歩いてみます。
何という美しい砂浜。
隆起珊瑚礁の島でもないのに眩いほどの白砂です。
確かに、これはビーチリゾートになるのも分かる。
ただ、北海とあって水はかなり冷たいので
泳いでいる人は殆ど見受けられません。
皆砂浜をただ歩いています。
…しかし、想像以上に長いな。
そもそもは全部が砂浜だったような島なので、
日本の島の砂浜とはスケールが違います。
うおっ!
いつの間にか岸との間に潮が満ちてきている!
えらく広い砂浜だと思ったら満潮時には沈むのか!
とにかく平坦なので潮の満ちる速さも尋常ではありません。
傍目に見ても分かるくらいの勢いです。
急いで戻らねばなりません。
しかし、既に飛び越えられるような幅ではない…!
結局、急いで靴を脱いで渡渉しました。
危うく取り残されるところだった…
しかし、岸に戻ったは良いが何処から道に戻れば良いんだ…
完全に迷ってしまいました。
まさかこんな小さな島で遭難するとは…
何とか遊歩道を見付けました。
展望台から続く道のようですね。
迷い込んでいた場所は本来立入禁止のようでした。
展望台の高さは大したことありませんが、
如何せん真っ平らな島なので実に眺めが良いです。
見えている草原のようなものは塩性湿地と呼ばれるものです。
帰りは遊歩道を使います。
この道にも水溜まりが幾つも現れているけど、
まさかこの道も満潮時には水没するのかな…
水没危険エリアを抜けました。
3時半起きで歩き詰めてお腹ペコペコです。
舗装路の終点にあった喫茶店で昼食。
島ということで魚を頼んでみたらカレイのムニエルでした。
付け合わせがフライドポテトじゃない!
ジャガイモには違いありませんが。
また、ここはオランダ文化の影響が強いということで
コーヒーではなく紅茶も注文。
氷砂糖をカップに入れた上から紅茶を注いで
ティースプーンでかき混ぜずに飲むというのが
Niedersachsenの流儀なんだとか。
氷砂糖の割れる音が心地良い。
さて、昼食を終えて集落まで戻ってきました。
集落の中で一際大きく立派な建物。
これが一体何かお分かりでしょうか。
そう、これこそが僕をこの島へといざなった真犯人、
Inselbahn(島鉄道)です!
これまで何度も述べてきた通り、
広大な干潟の中にあるOstfriesland Inselnの島々は
船の接岸できる港を造ることが非常に困難で、
膨大な量の土砂を浚渫する手間を少しでも減らす為に
可能な限り沖合いに桟橋を建設せざるを得ませんでした。
その為、嘗て船を降りた乗客は徒歩で干潟を横断するか、
あるいは馬車で集落に向かうことを強いられました。
そこで造られたのがこのInselbahn。
まるで海の上を走るが如く干潟を突っ切る姿は
一目見ただけで忘れられないほど強烈なものでした。
そしてこのInselbahn、実はドイツ国鉄直営です。
ドイツ国鉄の運営する路線としては最後の軽便鉄道なのです。
離島+軽便鉄道+アクセス困難+情報少という
僕を魅了する要素を全て取り揃えた正に魔性の島ですね。
満潮時にしか出入港できない船に合わせて運行される為、
これもまた定まったダイヤは存在しません。
ここにも鉄道模型などのお土産が売っていました。
しかし、流石にこの大きさでは持って帰れませんね…
Inselbahnともう一つ、この島のシンボルになっているのが
集落の中央にあるこの旧灯台です。
登れる灯台なので勿論登ります。
灯台の上から見たWangerooge。
集落の裏には塩性湿地が見えます。
良く見るとInselbahnの軌道もありますね。
灯台の中には資料館もあります。
これはInselbahnが無かった時の上陸の様子と見られる写真。
馬車で干潟を渡っています。
1793年以来のWangeroogeの遷移。
少しずつ東へと動いているのが分かります。
Ostfriesland Inselnは西からの海流により西側が削れ、
東側に砂が堆積していく為、このように動くのです。
1922年当時の地図。
Inselbahnが完全に海上になっていますね。
あと、西にある集落が海中のような書かれ方をしていますが、
これはもしかして嵐か何かで元々西にあった集落が水没して
現在の位置に移転してきたということなのでしょうか。
そろそろ午後の第1便が出る時間なのでInselbahnを見に行きます。
高潮を防ぐ為に線路も水門で閉じられるようになっていますね。
塩性湿地を貫くInselbahn。
良くこんな軟弱な地盤に軌道を敷いたものです。
干潟への遊歩道があったのでそこから撮影してみます。
小振りなディーゼル機関車が水門から顔を出しました!
コンテナも牽いていますね。
小さな沼と一緒に。
高原を走っているようにも見えますね。
もう少し干潟っぽさを出そうと頑張ってみた画。
望遠レンズを買っておくべきだったかな…
列車は港へと消えていきました。
そろそろ戻らねば。
とその前に一つ記念品を買っておきます。
欧州全土で見られるスーベニアメダル製造機。
€1硬貨と¢5硬貨をセットしてハンドルを回すと
¢5硬貨がミシミシと潰されて…
このように柄が刻印されるというものです。
お金を潰す感覚は中々快感です。
日本では貨幣損傷等取締法によって
硬貨を潰す行為は禁止されているので、
欧州ならではの経験と言えるでしょう。
16:30発のInselbahnに乗車。
ドイツ鉄道のホームページにあった運行スケジュール曰く、
Inselbahnと船を乗り継いでHarlesielまでは約90分とのこと。
午後の便は15:30発と16:30発の2本あるのですが、
15:30発の便は満席だったので16:30発の便を予約しました。
念願ののんびり島鉄道の旅…
と言いたいところですが、心中は穏やかでありません。
帰りの終バスはHarlesielから18:05発なので、
少しでも遅延したらその時点でアウトなのです。
ここまでの経験ではドイツは田舎の方が定時性が高いようだし、
晴天弱風の今日遅延するようなら
どんな条件で90分という所要時間を算出したんだという話になるから、
多分何とかなるはず…
列車は水門を抜けて塩性湿地へと入ります。
線路のすぐ側にも沼が出来ています。
一体どれほどのバラストを敷いているのでしょうか。
やはり草原っぽくも見えますね。
フェリーが出るのは干潮時だからというのもあるのでしょうか。
港が近付くにつれて干潟っぽくなってきました。
偶に小さな橋梁もあるのですが、
ここだけ盛土ではなく橋梁にしたのは何故なのでしょうか。
魚の通り道にでもなっているのかな?
今では殆ど民家が無くなった西の集落。
城のように聳えているのはユースホステルだそうです。
ドイツはユースホステル発祥の地なんだとか。
自動車の無い島だから宿泊者はあそこまで歩かされるのだろうか…
そろそろ終点です。
桟橋に到着。
乗客達はぞろぞろと船に乗り換えます。
あれ?先頭で牽引していた機関車がいないな…
と思ったら切り離されて荷役をしていました。
かなり小さい特殊なコンテナです。
もしかすると、K1番バスが運んでいたのは
このコンテナなのでしょうか。
Inselbahnの機関車。
ドイツ本土の標準軌と違って狭軌なのですが真新しいです。
島の為だけにわざわざ新造したのでしょうか。
だとしたらえらい力の入れようですね。
Inselbahnは可愛らしい軽便鉄道ですが、
客車は6両もあったので乗り換え先の船は満員です。
この輸送力の大きさこそ鉄道の真骨頂ですね。
このフェリーもドイツ国鉄所属です。
実質鉄道連絡船ですね。
Wangeroogeに別れを告げて出港です。
一直線に本土の港へ向かえば良さそうなものを
この船はわざわざ蛇行しながら進んでいきます。
これは何故かと言うと、上空から見ても分かる通り
この周囲は水深が極端に浅くなっている為、
船は特別に浚渫された航路しか航行できないからです。
早く着いて欲しい…
しかし、やきもきしても仕方ありません。
お利口な犬達のように静かに待ちます。
辺りの会話を聞き流していたら
急に会話の単語が理解できるようになったので、
この一瞬でドイツ語力が激増したのかと驚きましたが、
良く聞いたらロシア人観光客のロシア語でした。
本土側の港に続く航路に入りました。
船の起こした波に驚いて
干潟で休んでいたカモメ達が一斉に飛び立っています。
しかし、揃いも揃って波の進行方向に逃げる為、
いつまで経っても移動が終わっていません。
カモメに学習能力は無いのか。
17:54、Harlesiel港(ハルレージール港)に到着。
所要時間は84分でした。
朝とは打って変わって大賑わいの港。
乗客の殆どは自家用車利用なので
バス停には目もくれません。
僕は急いでバス停に向かいます。
さて、結果は…
賭けに勝ったぞ!
18:05発K1番バスEsens(エセンス)行きに乗り換え。
この18:05発の便が最終便だと言いましたが、
実は違う行き先なら18:20発という便もあります。
但し、こちらは利用者が極端に少ないのか、
当日16:00までに電話予約しないと運行されない
オンデマンド方式になっています。
英語電話も怪しいのにドイツ語電話ができるわけもなく、
僕は18:05発に賭けざるを得ませんでしたが。
何はともあれ、これで一安心…
しかし今度は渋滞だとぉ!?
次の乗継時間は6分間だというのに!
やはり車社会は悪、はっきり分かんだね。
幸い、渋滞からはすぐに離脱して
遅れを回復し始めました。
Neuharlingersiel Anlegerバス停で
18:26発SEVバスOldenburg(オルデンブルク)行きに乗り換え。
SEVバスとは鉄道代行バスの意味のようです。
このバスはBensersiel Anlegerバス停で
団体客が乗ってきたりしてほぼ満席でした。
それでも、謎の東洋人の僕の隣には誰も座らない。
20:08、定刻より16分も早くOldenburg駅
(オルデンブルク駅)に到着。
乗換時間を利用して急いで夕食を食べます。
構内にあったアジア料理店の定食。
タイ料理?
結構美味しいです。
何より休ポテトできるのが嬉しい。
定刻20:35発RE4435列車Hannover Hbf
(ハノーバー中央)行きに乗り換え。
15分遅れています。
次の乗換時間は14分。
相手も遅れていない限り絶対に乗り継げません。
果たして…
21:23、18分遅れでBremen Haupt駅に到着。
急いで乗り換えます。
居たっ!Hamburg-Altona(ハンブルク=アルトナ)行きのICだ!
滑り込みで乗車。
何とか間に合った…
21:19発IC2022列車Hamburg-Altona行きに…
…ん?
何か列車番号が違うような…
あれっ、こいつIC2022列車じゃなくてIC2400列車だぞ!
どうやら、元々乗る予定だったIC2022列車は
遅延が理由なのかHamburg Hbf(ハンブルク中央)止まりとなり、
電光掲示板でもそのように表示されていた為に
間違えてこのIC2400列車に乗ってしまったようです。
調べてみたら、これも本来20:57発らしいな…
却って好都合…かも知れないけど、
列車変更不可の割引切符だったような気がするから、
検札の時にちょっと面倒なことになるかもな…
が、何故かこの列車に限って検札を受けませんでした。
今日の運の強さは不安になるほどだな…
22:35、Hamburg-Altona駅に到着。
22:52発1番バスSieversstücken
(ジーファースシュテュッケン)行きに乗り換え、
23:12、Zum Hünengrab (DESY)バス停に到着。
DESYに帰着しました。
長く濃い一日であった…
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