ドイツ出張第7日目。
5:30、起床。
ドイツは標準時子午線がかなり東にあるので、
西端に近いAachen(アーヘン)だとまだ真っ暗です。
何故こんな時間に起きたのかと言えば勿論移動の為です。
国際学会は昨日で終わりですが、鎌田さんの
「折角ドイツに行くなら研究所にもお邪魔してこい」
との命により、Hamburg(ハンブルク)にある
DESY(ドイツ電子シンクロトロン)へ行くことに。
Hamburgはデンマークに程近い北の果ての為、
Aachenからは大阪-東京くらいの距離があります。
6:37発RB10364列車Duisburg Hbf(デュイスブルク中央)行きに乗車。
この列車はHeisberg(ハイスベルク)行きが連結されるので
乗る車両を間違えると大変なことになります。
ドイツ国鉄も京急みたいな運用をするんですね。
眠いのでバックパックに寄り掛かって寝ます。
8:26、Duisburg Haupt駅(デュイスブルク中央駅)に到着。
13番線まである大きな駅です。
ここで特急に乗り換えます。
少し時間があるのでちょっと駅の構内を見てみます。
流石は鉄道模型の本場ドイツ。
本物の列車が見放題の鉄道駅に鉄道模型を置くとは。
Duisburg(デュイスブルク)の街並み。
何やらタイヤの焼けたような臭いがします。
化学コンビナートでもあるのでしょうか。
さて、乗り換える列車は13番線から8:51発。
早めにホームへ行っておきます。
ホームの端にFLIXTRAIN
(フリックス・トレイン)の車両がありました。
これは鉄道版LCCとでも言うべき存在で、
ドイツ国鉄よりも割安な運賃で主要都市間を結んでいます。
その内日本にも現れたりするのでしょうか。
うーん、出発予定時刻は過ぎたけど列車が来ないな…
まあ、Brussel(ブリュッセル)から来る時も遅れたし
列車本数の多い西欧は遅延しがちなのかな?
気長に待てば良いか。
と思っていたら、ドイツ語で何やら放送があり、
周りの人達がぞろぞろと動き始めたではありませんか。
何かが変だぞ!
残っていた人に状況を訊ねてみると…
えっ、遅延でホームが変更になった!?
急いでホームを移動し、13分遅れとなった
8:51発IC2408列車Ostseebad Binz
(オストゼーバート・ビンツ)行きに乗り換え。
ホーム変更を告げるのが発車5分前ってどうなんだ…
北へと向かいます。
次の乗り継ぎは7分しか時間が無かったんだけど、
接続待ちしてくれるのかな…
というか、昼食を買いそびれてしまった。
終点まで9時間も掛かる列車だし、
食堂車が付いているだろうと期待しましたが、
食堂車は疎か車内販売もありませんでした。
お腹空いた…
これがシベリア鉄道ならなぁ…
寝たり勉強したりして空腹を紛らわせます。
Hamburg-Harburg駅(ハンブルク=ハーブルク駅)。
お笑いコンビにでもありそうな名前ですね。
Hamburg市内には違いありませんが
南の外れなのでDESYには全く近くありません。
列車はHamburg Hbf(ハンブルク中央駅)に向かわず
東へと進路を取ってHamburgを出てしまいました。
寝惚けて寝過ごしたわけではありません。
14:56、Rostock Haupt駅(ロストック中央駅)で下車。
何故か定刻より3分早着しました。
ドイツの鉄道は良く分からないな…
何にせよちゃんと着いてくれて助かりました。
ここはもう旧・東ドイツです。
15:06発RB13126列車Wismar(ヴィスマル)行きに乗り換え。
2ヶ月前にポーランドで乗ったのと同じ型の気動車です。
今日は土曜日。
早くDESYに着いたところで誰も居ないし、
Hamburgはドイツ第2の都市で都会なので、
やはり例によって田舎のローカル線巡りをしてみます。
このRostock-Thierfelder Straße駅
(ロストック=ティーアフェルダー通り駅)のように
駅舎も無いホームと駅名標だけの小駅も。
あのポーランドのローカル線を思い起こさせますね。
ドイツではコンクリート舗装されたホームがありますが。
そして、もう一つドイツらしさがあるのは
このGroß Schwaß駅(グロス・シュヴァス駅)のように
駅近の線路脇に小さな貸農園が幾つもあること。
これはKlein garten(クライン・ガルテン)と呼ばれるもので、
都会に住む疲弊しきったドイツ人達が
週末に大好きな家庭菜園を楽しむ為に作られています。
ロシアで言うДача(ダーチャ)に近いものでしょうか。
15:27、Bad Doberan駅(バート・ドーベラン駅)に到着。
一見すると何の変哲もない駅のように見えますが…
駅舎の裏手からもくもくと黒煙が吹き上げています。
そう、このBad Doberan駅からはMolli(モーリー)と呼ばれる
蒸気機関車が現役で走っているのです!
それも標準軌ではなく軌間900mmの狭軌(ナローゲージ)。
昨夜本で見付けてしまって来ざるを得ませんでした。
15:36発Kühlungsborn West
(キュールングスボルン西)行きに乗り換え。
小気味良い汽笛と共に出発です。
狭軌の蒸気機関車というだけでもかなりのインパクトですが、
実はMolli最大の売りはそれだけではないのです。
Bad Doberan駅を出て2分もしないうちに…
何と併用軌道になりました。
それも、大通りではなく細い路地です。
そう、Molliはお洒落なオープンカフェの並ぶ通りを
スレスレの位置で走っていく姿が有名なのです。
路面電車や、台湾やタイなどのアジアならともかく、
10両編成の、それも蒸気機関車牽引の列車が
欧州の喫茶店の軒先をかすめて走っていくなんて
常識では中々考えられないような光景です。
短い汽笛を絶えず鳴らしながらゆっくりと走ります。
駅(乗降所?)も店の軒先です。
これはBad Doberan-Stadtmitte駅
(バート・ドーベラン=シュタットミッテ駅)。
辺りの喫茶店で寛いでいた人達も
一斉にカメラを構えてMolliを撮影しています。
住宅街のど真ん中にも駅があります。
Bad Doberan-Goethestraße駅
(バート・ドーベラン=ゲーテ通り駅)。
しかし、流石に全線併用軌道ではなく、
Bad Doberan(バート・ドーベラン)の
市街地を抜けると専用軌道になります。
思ったより速いです。
隣の道路を走る遅めの自動車くらいはあります。
Rennbahn駅(競馬場駅)。
イベントがある時のみ停まる臨時駅だそうです。
Heiligendamm駅(ハイリゲンダム駅)で列車交換。
1886年にMolliが開業した際の終着駅です。
建物の隙間からバルト海が見えます。
元々、Molliは海水浴需要を目当てに造られた鉄道で、
正式名称はMecklenburgische Bäderbahn、
即ち「メクレンブルク保養地鉄道」。
(Mecklenburgは州の名前。)
北ドイツにはこうしたリゾート鉄道が幾つもあり、
ドイツ人のビーチリゾートに対する熱意が窺えます。
日本でいうところの温泉みたいなものでしょうか。
草原の中にホームだけがあるSteilküste駅
(シュタイルキュステ駅)。
Molliの中で最も海に近い駅です。
秘境駅感がありますね。
駅のすぐ側にはキャンピングカーが集まっており、
オートキャンプ場になっています。
このオートキャンプ場へのアクセス駅ということでしょうか。
でも、オートキャンプ場なら車で来るんだから
鉄道駅があっても意味がないのでは…
港町に出てきました。
Kühlungsborn(キュールングスボルン)です。
Kühlungsborn Ost駅(キュールングスボルン東駅)。
Molli直営のレストランがあったりします。
Kühlungsborn観光をするならこの駅が便利です。
Kühlungsborn Mitte駅(キュールングスボルン中心駅)。
次がいよいよ終点です。
16:21、Kühlungsborn West駅
(キュールングスボルン西駅)に到着。
煉瓦造りの蒸気機関車に良く合う駅です。
喫茶店も入っています。
更にはMolliにまつわる品を集めた鉄道博物館も。
とは言え、解説は全然付いていないので
どういうものが展示されているのかは良く分かりませんが。
喫茶店では鉄道グッズも買うことができます。
ただ、日本で言うところの鉄道グッズとは少し趣が異なり、
かなり子供向けのものが多い印象を受けます。
ライターや腕時計もありますが。
まあ、乗務手帳とか売るのは日本だけか。
駅前通り。
お店などは見当たりません。
別荘地なのでしょうか。
機関車は側線に入って石炭と水を補充し…
手作業で客室に連結したら準備完了です。
折り返しの16:35発Bad Doberan行きに乗車。
帰りは結構激しい雨が降っていました。
17:14、Bad Doberan-Stadtmitte駅で下車。
未明にAachenでパンを1個食べたっきりで
もう倒れそうなくらいお腹ペコペコなので、
通りにあるレストランで遅い昼食にします。
一番美味しそうな匂いの漂っていたお店に入ったら、
まさかのギリシャ料理店でした。
実際美味しいから仕方ないね。
イギリスで美味しいものを食べたければ
インド料理店に行けという名言がありますが、
ドイツなら地中海料理店ですね。
食べているところに折り返しのMolliがやって来ました。
こう見ると本当に近いですね。
食事再開。
デザートくらいはドイツっぽく
Apfelstrudel(アップェルシュトゥルーデル)。
シナモンの良く効いたリンゴがバニラアイスと良く合います。
デザートの最中に反対方向のMolliがやって来ました。
待てよ、このMolliが来たということは
早くBad Doberan駅に行かないと列車を逃してしまう!
急いで会計を済ませて駅に走ります。
何とか間に合った…
バックパックとスーツケースを携えて走るのは堪える…
18:30発RB13133列車Tessin(テッシン)行きに乗車。
駅に着いた際既に列車が入線していて焦りましたが、
Bad Doberan駅では長いホームの両端を
上下列車がそれぞれ使って、
Tessin行きの列車が出発後すぐに
側線に入ることで列車交換を行うという、
中々珍しい方式を取っているようです。
Rostock Haupt駅で19:07発RE4316列車Hamburg Hbf行きに乗り換え。
北ドイツの丘陵に日が沈む…
21:44、Hamburg Haupt駅(ハンブルク中央駅)に到着。
流石に大きな駅ですね。
何やら色粉塗れになった人々が彷徨っています。
あれってインドの祭りじゃなかったっけ…
21:48発S1バーンBlankenese(ブランケネセ)行きに乗り換え。
Reeperbahn駅(レーパーバーン駅)では、
発車間際に凄い勢いで駆け込んできて
小さく折られた紙幣を数え出す人が居ました。
薬物の売人とかじゃないだろうな…
22:02、Hamburg-Altona駅(ハンブルク=アルトナ駅)に到着。
ホームレス同士が喧嘩したりしていたり、
変なおっさんに絡まれたりしました。
今のところHamburgに良い印象が全然無い。
22:32発の1番バスSieversstücken
(ジーファースシュテュッケン)行きに乗り換え、
22:52、Zum Hünengrab (DESY)バス停
(ツム・ヒューネングラブ(DESY)バス停)に到着。
Aachenを出てから遥々16時間半。
やっとこさDESYに到着しました。
ゲストハウスにチェックイン手続きをしたら
そのまま部屋になだれ込んで寝落ちしました。
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