メラネシア旅行第4日目。
火の島へ。
5:55、起床。
爽やかな朝です。
7時過ぎに受付が開くのを待ち、
タクシーを呼んでもらったら空港へ。
Bauerfield国際空港(バウアフィールド国際空港)の
国内線ターミナル。
ちょっと大きめのバスターミナルみたいな見た目です。
中もバスターミナルに毛が生えた程度。
エアコンも無く生暖かいです。
ここでまずはチェックイン。
バヌアツの国内線はとにかく機材が小さいので
受託手荷物10kg、持込手荷物5kgという
とんでもなく厳しい重量制限があります。
と言っても、超過料金は1kgあたり200円程度なので
それくらいならまあ払うか…
と思っていたのですが、
受託手荷物はそもそも全く計量されませんでした。
持込手荷物は計量して5.8kgだったにも関わらず
「そんくらいならオッケーさ〜」
とスルーされました。
離島の緩さは世界共通ですね。
但し、重心がずれないように
体重はキッチリ測定されます。
地元民はピックアップトラックで乗り付けています。
当然のことながらこの国内線ターミナルには
営業中の売店などあるはずもないので、
隣の国際線ターミナルの喫茶店で朝食を食べました。
9:00発NF242便に搭乗。
見るからに小さい18人乗りDHC6ツインオッター。
勿論、荷物検査なんて概念は存在しません。
体重を量ったのに早い者勝ちの自由席でした。
チェックインカウンターのお兄さんは
「この便は経由便で時間も掛かるし、
小さな飛行機だから直行便に変えないかい?」
と親切に教えてくれましたが、
それに敢えて乗るというのがオタクというものです。
ただでさえ小さい機材の席を占有するので
後ろめたさが無いわけでもないですが、
事情を説明したら
「そういうことなら構わないよ、駄目元だったし」
と引き下がってくれました。
優しい。
しかし、飛行機オタクならずとも、
下関出身の某飛行機嫌いでもなければ
こちらの経由便の方が遥かに楽しいこと間違いなしです。
見てくださいこのパイロットとの距離。
操縦席と客席の間に扉が無いので、
パイロットの一挙手一投足が具に見えます。
着陸するATR72をやり過ごしたら出発です。
滑走路の端まで行くことなく、
駐機場を出た瞬間から離陸開始。
急ぎ過ぎて加速不十分で落ちないよな…
と少し不安になりましたが、
滑走路の半分どころか4分の1も使わずに飛び立ちました。
小さなPort Vila(ポートビラ)の街を抜けます。
小さ過ぎて反対の窓からは一切見えません。
Efate(エファテ島)を出て
南太平洋の大海原を飛びます。
30分ほどで島が見えてきました。
この島、平成初期世代までの男性なら
小中学校の地図帳で一度は話題になったはずです。
その名をErromango、
そう、「エロマンガ島」です。
南太平洋に浮かぶエロマンガ島に
健全な男子は妄想を膨らませ想いを馳せたことでしょう。
しかし、最近の地図帳ではより現地語読みに近い
「イロマンゴ島」という表記になっているそうです。
哀しきかな世代間格差。
降下を始めているけど、
一体何処に降りようとしているんだ…?
森しか見えない…
あっ、もしやあの緑色の直線が滑走路なのか!?
Dillon’s Bay空港(ディロンズ・ベイ空港)に到着。
何と、芝生の滑走路なのか…
空港のターミナルもバス停並み。
これまで見た中で断トツにショボい空港です。
秘境空港ですね。
乗客と荷物の積み替えをします。
週に数便しかない航空便とあって
皆大荷物を持ち込んでいますね。
積み替えが終わったら再び出発。
芝生の滑走路でちゃんと加速出来るのか…?
とそこそこ不安になりましたが、
半分も使わずに離陸しました。
ツインオッター凄い。
遊覧飛行並みの低空飛行でErromangoを横断します。
集落が全然見当たらないし、
道も赤茶けた未舗装路1本しかないな…
反対側の東海岸に出ました。
陸路で行ったとしたら果たしてどれくらい掛かるのだろう…
海岸沿いにはポツポツと集落があります。
道が通じているのかは謎ですが。
再び高度を下げていきます。
エンジントラブルじゃないですよ。
Ipota空港(イポタ空港)に到着。
2つ目の経由地です。
Erromangoは陸上交通があまりにも貧弱過ぎて
東西に1つずつ空港があり、
その両方に同じ便が経由するという
中々ロックなことをしています。
20代後半くらいの日本人男性2人が降機していきました。
えらく高そうなハンディカメラで撮影しているけど、
テレビ局かユーチューバーか何かだろうか。
三度離陸。
階段状になっている海岸段丘を後に
Erromangoを離れます。
目的の島が近付いてきました。
おお、ここの滑走路はアスファルト舗装ですね。
これならATR72でも大丈夫そうです。
10:35、White Grass空港(ホワイト・グラス空港)に到着。
火の島、Tanna(タンナ島)です!
南国の風が心地良いです。
ロッジのような空港ターミナル。
バス停よりはグレードアップしましたね。
但し、当然ターンテーブルなんて代物は無く、
手荷物は手渡しされます。
待合所に貼ってあったTannaの地図。
和歌山県みたいな形をしていますね。
南東部がやけに栄えているように見えますが、
熊野本宮大社のようなスポットがあるだけで
町としての中心は御坊辺りにあります。
迎えに来ていたピックアップトラックに乗って
島の反対側にある宿へと向かいます。
Tannaではピックアップトラックが
タクシーやバスの役割を果たしています。
Tannaはバヌアツの島の中では
3番目くらいに栄えているので、
何と自動車で島を横断することが出来ます。
しかも、アスファルト舗装です。
先進的ですね。
島の中心であるLenakel(レナケル)で買い出し。
3番目くらいに栄えているTannaではありますが、
今日のホテルはその最果てにあるので
必要なものはここで買っておかねばなりません。
Lenakelにしても通りはこんな感じですが。
現金とか引き出せるのだろうか…
買い出しを終えたらLenakelを離れ、
超急勾配の坂を越えてホテルを目指します。
真ん中に見えている煙を吹き続ける山こそ、このTanna、
いや、このバヌアツを世界に知らしめている
活火山Mt. Yasur(ヤスール火山)です。
何が凄いのかはじきに分かります。
ここまで曲がりなりにも舗装が続いてきましたが、
峠を越えて島の東部に来たところで
舗装が終わってしまいました。
コンクリートミキサー車が峠を越えられないのかな?
しかし、いきなりとんでもない道になったな…
後で聞いた話によると、
この道は村人の手作りなんだとか。
補修も自ら行っていますね。
あまりのデコボコ具合に
カメラの調子が悪くなってしまいました。
そう言えば、Sani Pass(サニ峠)でも同様の現象が…
OLYMPUSは悪路に弱いのでしょうか。
やっとの思いで宿に辿り着きました。
一棟貸切タイプの宿で、
ガスは疎か電気すら通っていないという秘境中の秘境です。
当然、WiFiなんてものはありませんし、
そもそも電波が入ってきません。
とはいえ、それはそれで中々快適。
波音を聞きながら現代社会から隔絶されるというのも乙なものです。
SNSの発展と共にあった平成の最後の日を
まさかこんな場所で過ごすことになろうとは。
目の前にはプライベート
と見せ掛けて地元住人も普通に通る火山性の黒い砂浜が。
夕方にツアーに参加するのですが、
それまで時間があるので暫くのんびりします。
15時になったら迎えの車に乗って
バヌアツの象徴Mt. Yasurへと向かいます。
地元民を満載したピックアップトラックとすれ違いました。
路線バスなんてものは当然存在しないので
これが地元の人々の唯一の足です。
あれっ、結構幅の広い川があるけど
橋が一切見当たらないぞ。
これはまさか…
洗い越しか!
何という大胆な…
この辺りは火山灰が堆積しただけで
基礎も何も打てたものではないので、
橋を架けることがそもそも不可能に近いのでしょうが。
Mt. Yasurの入口に辿り着きました。
Mt. YasurはEntani族(エンタニ族)によって統治されており、
ここで彼等に入山料を払わねばなりません。
価格はバヌアツにしてはかなり高額で、
某歩き方に書いてあった値段よりも更に値上がりしていましたが、
ここまで来てケチる人は居ません。
…っていうか、背後のMt. Yasurが
日本なら臨時ニュースが組まれそうなくらい
大噴煙を上げているんだけど、
本当に入れるんだよな…?
本当に入れるそうです。
ここからは数台のピックアップトラックに分乗して
頂上を目指します。
Mt. Yasurはその活発さも然ることながら
「世界で最も火口に近づける活火山」として有名。
バヌアツ気象学・地質災害省の情報によると
噴火警戒レベルは常に2以上。
日本の気象庁のものとの対応関係は良く分かりませんが、
恐らく火口周辺規制程度のレベルではあるのでしょう。
しかし、そんなことはお構いなしに登っていきます。
ここからは徒歩で火口縁まで登ります。
シェルターの類が何一つ無いな…
ここまで来たら覚悟を決めろということでしょうか。
登山道の途中に郵便ポストがありました。
ギネスブックで「世界一危険なポスト」に認定されているポストです。
こんな場所のポストを
平日の朝夕2回も収集しているのか…
世界一危険な郵便局員の仕事ですね。
ただ、このポストは火山活動よりも
寧ろサイクロンによってしょっちゅう破壊されるそうですが。
火口縁に辿り着きました。
潮の打ち付けるような音がします。
これが噴煙の音か…
ここで、火山ガスが自分の方に向かってきたら
火口に背を向け、顔を布で覆ってしゃがむこと、
火山の状況次第ではすぐに引き返すことなど
基本的な注意を受けます。
そんな注意を聞いている最中にも
後ろではもくもくと噴煙が上がっています。
この火山でお鉢巡りをするなんて正気の沙汰じゃないな…
しかし、ここで引き返すという選択肢などありません。
いざ、展望場所へ!
細い火口縁を歩きます。
段々風下側に近付いて火山ガスが濃くなってきました。
今日近付けるのはここまでだそうです。
何処まで行けるかはその日の風向き次第。
そして、これが世界一近くから見た活火山の火口です!
5分に1回くらいのペースで噴火が起こる度に
スギャァァゥウウン!
という、雷鳴とも爆轟ともとれる音が響き渡り、
思わず視線を外して仰け反ってしまいます。
もっと近付いて撮れやこのチキン!
と思われるかもしれませんが、
実際に火口の縁に立ってみると物凄い恐怖感です。
これが日本のツアーとかなら
まあ言うて安全なんだろうと思えますが、
ここは他ならぬバヌアツですからね…
時折中規模な噴火があると
風向きによってはこちらにも火山ガスが襲ってきます。
2ヶ月前のKawah Ijen(イジェン噴火口)で
一生分の火山ガスを吸ったものとばかり思っていたけど…
二生分になってしまいますね。
ガイドさん達は火口には目もくれず、
背を向けて蹲って鼻と口を抑えています。
一生に一度来るかどうかの観光客は良いけど、
毎日登らされるガイドからしたら
堪ったものじゃないよな…
その分のお金は十分に払っていると思いますが。
噴出した溶岩がボトボトと落ちる音が
ここまで聞こえてきます。
小さく見えるあの1個1個が
軽自動車ほどもあるのです。
あれが飛んできたら一堪りもないな…
怖気付いたのか、
1時間の制限時間を待たずして
多くの観光客が帰っていきます。
ここへやって来る為には
オーストラリアやニュージーランドならともかく、
欧米からとなると日本の何倍も時間やお金を要します。
それでも、踵を返さずにはいられないという
凄まじいまでの力が火山にはあります。
日が落ちて暗くなってくると火口は妖しく光り、
地獄の門どころか地獄そのものの様相です。
溶岩もよりハッキリと見えるようになりました。
小さめのものも見えるようになって気付いたけど、
今居るこの高さまで舞い上がっている溶岩とかも普通にあるな…
1時間経って日が完全に暮れたら帰ります。
いやー、素晴らしい経験だった。
夕食は宿で食べます。
秘境中の秘境と言うに相応しい立地ですが、
ちゃんとした料理です。
猫がねだってくるのはご愛嬌。
誇張ではなく人工の光が一切無いので満天の星空です。
折角なので砂浜に寝転んで暫し眺めていました。
ちょっと赤みがかって見えるのは火山ガスの所為?
いやー、しかし…
平成最後の日をこんな世界の果てで過ごすことになろうとは…
最高ですね。
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