(無題)

上越峠越え合宿第3日目。

6:00、起床。
朝食を食べ、自転車を担いで燕三条駅に向かいます。
本来なら国道352号で奥只見を抜けて
鬼怒川へと出るつもりだったのですが、
予定を変えに変え、気付いたら
今居るのは東京から遠く離れた燕三条ではありませんか。
ここまで来たらいっそ新潟駅まで走って
上越新幹線で帰れば良い気がしないでもないですが、
燕三条-新潟は精々50km程度しかない上に
上越新幹線は既に全線乗った事があります。
しかも普通に市街地なので心が惹かれません。
経緯は何であれ折角ここまで来たのだから、
この機会は有効活用したいな…


7:06発JR弥彦線普通東三条行きに乗車。
今日は輪行で帰るついでにちょっと乗り潰す事にしました。


東三条駅で7:16発JR信越本線普通
新潟経由内野行きに乗り換え。


7:44、新津駅に到着。
またしても待たされます。
新津は列車待ちの記憶しか無い。


今回は前回と違って晴れているので、
駅前商店街に来てみました。
時間が早過ぎるのかまだ殆ど開いていません。
まあ、至って普通の商店街…


しかし、新津は今「鉄道のまち」をアピールしているので、
お店の看板やシャッターに
そこはかとなく鉄要素が散りばめられています。
もしかすると、売り物も鉄仕様になっているんだろうか…
しかし、開店を待つほどの時間は無いので駅に戻ります。


僕はもっと直接的に鉄分を補給するので。
8:41発JR磐越西線快速あがの会津若松行きに乗り換え。


磐越西線は新津から会津若松を経由して郡山までを結ぶ
全長175.6kmの長大な路線で、
「森と水とロマンの鉄道」という愛称が付けられています。
東北本線と磐越西線を繋いだルートは、
関東圏から新潟へ向かう際には殆ど唯一と言っても良い
難所らしい難所の無いルートで、
嘗ては新潟へのメインルートの一つとして栄えていました。
しかし、上越線や上越新幹線の台頭により、
今となっては相方の磐越東線同様
ありがちな一ローカル線となっています。
会津若松-郡山間については
裏磐梯や猪苗代の観光需要でまだ賑わっていますが。


磐越西線の新潟県内部分は阿賀野川に沿っており、
SLばんえつ物語も走る風光明媚な区間です。
ただ、木々が茂っているので思ったより見えませんが。


三川駅。
いわき駅とかを除けば
小学1年生が一番初めに書けるようになりそうな駅名。


磐越西線の新潟県内部分では随一の観光地、津川駅。
狐の嫁入り行列というお祭りで有名です。
催されるのは5/3なので今日は何もありませんが。


9:33、鹿瀬駅に到着。


裏に赤崎山が控える山間の駅です。
ロードバイクを持っているのに乗り潰しだけでは
ロードバイクがただの重石でしかないので、
ちょっと阿賀川沿いのサイクリングを楽しみます。


ツバメに対して無許可で営巣しないよう呼び掛ける注意書き。
許可を取れば良いのだろうか…


吊り橋で阿賀野川の対岸に渡ります。
この吊り橋、踏み板が透けていてちょっと怖い。


渡った先に写真を撮ってくれと
言わんばかりの待避所があったので、
新津方面の列車を待って撮り鉄。
ちなみに、この阿賀野川深戸橋梁、
日本で初めて落下式架け替え
(橋脚はそのままに古い橋桁を川に突き落として
新しい橋桁を乗せ替えるという工法)
が行われた事で有名なんだそうです。

さて、今日はもう殆どおまけみたいなものですが、
一応峠越え合宿と銘打っているので
今日も一つだけ峠を越えておきます。
上の鉄道写真で背景に聳えていた
黒崎山と引入沢山の間の峠を越える新潟県道322号です。
ネットで調べても情報は一切出て来ず、
現道なのか、旧道なのか、
はたまた廃道なのかも良く分からない状況。
地図に載ってるなら通れるだろ、って?
甘いですね、ここは新潟県です。
世界に名だたる豪雪地帯に於いて人間が引いた道など
小指の爪で引っ掻いた傷よりも早く消え去ります。
県道どころか国道でさえ、
超主要道の癖に路面状態最悪な国道17号(二居峠)、
平成が終わるのに未だ全通しない国道289号(八十里越)、
徒歩でも通れぬ伝説の国道291号(清水峠)…
新潟県の峠は甘くない!
それが県道ともなれば…


あれ?
普通に走りやすいぞ?
県道に良くある粗めの舗装ではありますが、
真新しいガードレールやカーブミラーも設置されており、
きちんと整備されている様子が伝わってきます。
麓の深戸集落に「工事用大型車両が通ります」という
注意書きの看板が立っていたので、
もしかするとつい最近改良されたのかも知れません。
いや、別に険道を期待している訳ではないのですが。


木々の切れ間からさっき撮り鉄した
阿賀野川深戸橋梁が眼下に見えました。
これは絶好の撮影スポットですね。
ただ、そう考える輩がやはり多く居るのか、
このすぐ脇には路肩駐車に憤慨する看板が
木に括りつけられていました。
僕は今回自転車で来ているので
合法的(?)に撮り鉄するチャンスだったのですが、
ただでさえ本数の少ない磐越西線で
さっき1本撮影したばかりなのに、
更にもう1本待っていては
帰りの列車を逃しかねないので諦めます。
そもそも、この撮影スポットは望遠レンズが無いと厳しそうだし。


峠に着きました。
勾配は急だったけど、思ったより快適な峠道だった。


ここからは一気に下っていきます。
交通量が少ないからか、沿道に猿の親子がいました。
自転車で速度も速いし、熊じゃなければ猿だろうが鹿だろうが…
…まさか、いないよな?
噂をすれば影が差すと言いますが、
何やら路上に真新しい極太の糞が…


冷や汗をかきながら集落まで一気に下ってきました。
疲れた…
お腹が空いてしまった…
集落の商店でパンを買ったら、
東大ブランドが効いたのか分かりませんが
ガリガリ君をおまけしてくれました。
この大学名、地方では強いですね。
代わりに、賞を取った際の講演で
この日出谷集落の事を話してくれと言われました。


日出谷駅。
ホームこそ長くて立派なものの、
待合室はあってないようなものです。
旧駅舎と思しき建物は公民館になっていました。
その軒先でパンとガリガリ君を食べます。
正直ガリガリ君はちょっと苦手なんだけど、
灼熱の峠越えの後だとこの上なく美味しい!
日出谷集落は僕の心に刻まれました。


さて、勿論この日出谷駅から輪行する事も出来るのですが、
そうすると鹿瀬-日出谷間が未乗車のまま残ってしまうので
頑張って鹿瀬駅まで戻ります。
流石に帰りは峠経由ではなく
阿賀野川に沿った国道459号を走りますが。


っていうか、次の列車まであと1時間足らずなのに
鹿瀬駅まで12kmもあるのか…
鉄道ならたったの5.2kmなので、
道路が如何に曲がりくねっているかが窺い知れます。
しかも、この国道459号は
「至極(459)キツい」と揶揄される事もある酷道。
結構時間が危ないのでは…?
1本でも列車を逃そうものなら次の列車は何と5時間後。
全力で漕ぎます。


隧道連続区間が現れてしまいました。
何と昭和30年代の素掘りのトンネルです。
師走トンネルと名付けられているという事は、
開通したのが12月だったからという理由でもない限り
ここから12本もこんな古いトンネルが続くのか…
気が滅入りましたが、
壁面こそ歴史を感じさせるものの路面は真新しく、
走行時には殆ど危険を感じさせませんでした。
超主要国道の国道17号があの有様だというのに、
何故この鹿瀬・日出谷地域の400番台国道や県道が
こんな破格の厚遇を受けているのだろうか…
新潟県と福島県を結ぶ唯一のルートだから
とかならまだ分かるのですが、
このすぐ南にずっと短い距離で短絡している
国道49号があるので謎は深まるばかりです。


予想外に道路状況が良くて時間を短縮出来たので、
道すがらにあった角神不動滝なる滝にも寄ってみます。


遊歩道のすぐ脇に岩肌を流れ落ちる滝があります。
そんな滝を横目に急な階段を上ると…


ありました、これが角神不動滝のようです。
ここのところ雨が降っていないからか
水量は少なめですね…
気を取り直して先に進みます。


僕の誕生月である弥生のトンネル。
誕生日祝いお待ちしております。


最後は睦月橋で終了。
12本トンネルがあるのかと思いきや、
橋にも月名を付けて12にしているんですね。


鹿瀬ダム。
このダムが出来たからなのか
国道459号は急に川面を離れて高台に上がります。
これが本当に最後の峠越え…!


何とか間に合いました。
鹿瀬駅から12:39発JR磐越西線普通会津若松行きに乗車。


県境を越えて福島県に入ります。
さらば、新潟県…!


この辺りは銚子ノ口という景勝地だそうですが、
列車内からではどの辺が凄いのか良く分かりませんでした。


阿賀野川の渓谷を抜け、
会津盆地に入ってきました。


13:48、喜多方駅に到着。
お腹がペコペコなので昼食にします。


喜多方と言えばやはり喜多方ラーメン!
という事で、住宅街のど真ん中にあるお店に来ました。


これぞ正統派のラーメン!
ゴテゴテと余計な装飾を加えず
純粋に麺とスープだけで勝負する姿は、
基礎物理学の理想に通ずるものがある
とか変態的な事は別に言いませんが、
やはり喜多方ラーメンは美味しいです。


お昼時を少し過ぎていたからか、
外を出歩くには暑過ぎるからか、
ラーメン屋が想像より混んでいなかったので
少しだけ時間が余ってしまいました。
折角なのでもう一つの喜多方名物も見ておきます。
当然の事ながら一切花が咲いていない枝垂れ桜並木。
これは一体何でしょうか。


そうです、旧・日中線の廃線跡です。
勘の良い人なら喜多方というだけで気付いたかも知れませんね。
会津若松と米沢を結ぶ予定だった日中線は、
峠を越える事が出来ずに福島県内の盲腸ローカル線として
ご多分に漏れず廃止されてしまいました。
末期は朝夕夜の1日3往復しか列車が無く、
「日中は走らぬ日中線」と揶揄されたほど。
本州最後の定期SL旅客列車が運行されていたので、
SLマニアにも名前の知られた路線でした。


もう少し一般受けしそうな観光スポットも挙げておくと、
喜多方は蔵の町としても有名です。
勿論、我等が半田も蔵の町として有名ですが、
半田は運河周辺に酢や酒を貯蔵しておく集積所として
商人が蔵が建てたのに対し、
ここ喜多方は「男は蔵を建てて初めて一人前」とする
独特の価値観によって皆が蔵を建てたという違いがあります。
ある意味では「見栄を張る為の」蔵でもあり、
かなり立派な造りの蔵が目立ちます。


巨大な石造りの蔵の幾つかは改装されて
この蔵のように産直所なんかになっています。


駅前にあったこの煉瓦造りの蔵は…


何と喫茶店です。
英国辺りの古いパブを思わせる雰囲気になっています。


折角なのでちょっと休憩。
看板メニューの水出しコーヒーが
水出しなのにアイスじゃないというまさかの展開で、
仕方ないのでコーヒーゼリーにしました。
ミカンが添えられていて驚いたけど、
この酸味は案外コーヒーに合っている気がする…


それでは、今度こそ帰ります。
15:52発JR磐越西線普通会津若松行きに乗車。


磐梯山を望みつつ懐かしの会津若松へ。


会津若松駅で16:21発JR磐越西線普通郡山行きに乗り換え。
これで福島県の鉄道路線はJR、私鉄とも全て制覇しました。
…もしかして、僕が県内の鉄道路線を完全乗車したのは
この福島県が初めてでは?
意外な県が初めてになったな…


郡山駅で18:05発JR東北新幹線
やまびこ152号東京行きに乗り換え。
疲れた身体でロードバイク担いで
7時間半も鈍行を乗り継ぐのは、
幾ら何でも辛過ぎるので新幹線を使います。
3時間を2,590円で買えるなら安い。
大宮駅からは帰宅ラッシュを避けて
武蔵野線経由で北松戸に帰りました。

今回の合宿で得た教訓は、
「山奥のトンネルには気を付けろ」
ですね…
奥只見はいつかリベンジしたい。

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