(無題)

中米旅行第16日目。
最後を飾るに相応しいあの超大国にお出まし願います。

3:10、起床。
最後の最後で猛烈に眠い…
正味3時間しか寝ていません。
しかし、ここで二度寝したらメキシコ永住コースなので、
気合いで起きてタクシーで
Benito Juárez国際空港(ベニート・フアレス国際空港)へ。
2週間前に合流したこの地でISと解散。
お互い帰路に就きます。
チェックインカウンターがやけに厳しくて、
旅行について色々訊かれたので
英語の面接試験状態になっていましたが、
何とか切り抜けて5:40発UA1085便に搭乗。


さらば、中米よ…!
想像より遥かに素晴らしい土地であった…

(以降、アメリカ中部標準時UTC-5.0h)


8:59、George Bush Intercontinental空港
(ジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港)に到着。
世界の色んな国を渡り歩いて50ヶ国目、
23歳にして初めて降り立ちました、
アメリカ合衆国のHouston(ヒューストン)です!
アメリカ領という意味では遥か昔に
Saipan(サイパン)へ行った事がありますが、
アメリカ本土はこれが人生初めてです。

アメリカは入国審査が厳しいみたいな話を聞いたので、
何か難癖を付けられないか心配でしたが、
「入国の目的は?」
「観光です。」
「何日間?」
「1日だけです。」
「観光目的なのに1日しか居ないんじゃ
時間足りなさ過ぎだろ!HAHAHA!」
と言われて終了でした。


うおお、ファッキンヤードポンド法じゃないか!
何というアメリカン。
さっさとSI単位系に移行して、どうぞ。


世界一の超大国アメリカは何でもデカい。
特にこのGeorge Bush Intercontinental空港は
アメリカの中でもデカい部類に入るので、
この途轍もない広さの空港には
無人運転のトラム(subway)が走っています。
これに乗ってターミナルCへ。


物価もとにかく高いアメリカは
空港から市街までタクシーで$60も掛かるというので、
ターミナルCから出ているらしい
メトロバスに乗ります。
バス停が横断歩道も何も無い3車線道路のど真ん中に
ぽつんとこの立札だけとか分かり難過ぎる。


10:19発メトロバス102号線Downtown行きに乗車。
これだけ大きな国際空港だというのに、
30分に1本しかない唯一の公共バスには
僕を含めてたったの7人しか乗りませんでした。
流石は車社会アメリカ…

しかし、その分道路状況は物凄く良いです。
新幹線のような音を響かせながら
片側4車線もあるフリーウェイを走ります。
沿道には超巨大な駐車場を備えた
巨大な郊外型店舗(大半が車関係)が軒を連ねています。
正にアメリカのステレオタイプ。
そしてもう一つ驚くべきが乗客の黒人率。
アフリカの何処かだと言われても納得しそうなほどです。
白人が乗ってきたと思っても
喋っているのはお馴染みのスペイン語や
懐かしのロシア語ではありませんか。
車内広告までスペイン語。
アメリカは英語を話す白人の国ではなかったのか…


Milam St @ Texas Avバス停で下車。
Houstonのバス停は
「バスが走っている通りの名前 @ 交差する通りの名前」
で統一されているようです。
名前を付ける方は楽かも知れないけどねぇ…


何という大都会。
愛用の広角レンズを以てしても
全く画角に収まり切らない高層ビルの数々。
ただ、それに反して人通りは驚くほど疎らです。
気温-40℃のЯкутск(ヤクーツク)や
深夜のHabana(ハバナ)は
何処の通りも多くの人で賑わっていたというのに、
気温28℃でお昼時のHoustonが
何故こんなにもガラガラなのか。


更にメトロバス82号線に乗り継いでホステルへ。
これまたアメリカのステレオタイプを
絵に描いたような住宅街です。
アメリカのステレオタイプはテキサス州だったのか。
まだ時間が早くてチェックイン出来ないので、
バックパックだけ置かせてもらって先に観光します。

Houstonと言えば絶対に外せない観光スポットがある、
というかそこ以外観光地が無きに等しいので、
まずはそこへバスで行く方法を…
…え?週末は運休!?
嘘だろ!?
Oh my god!
ダウンタウンから50km近くあるから
タクシーを使うと$100近く掛かるというし…
しかし、ここまで来て諦めきれません。
どうにかこうにか安く行く方法は無いか探ります。
しかし、車社会アメリカの中でも
特に車崇拝の激しいテキサス州。
車を持ってない奴は死ねと言わんばかりです。
くそぉ、こんな事なら国際運転免許証を持ってくるんだった…

結局、導き出された答は車で行く事。
初めての葉巻に続いて、
初めてのUberにも挑戦します。
Uberというのはタクシーではなく
普通の乗用車を配車するアプリで、
タクシーより少し安くなるとの事。
僕のガラケーは日本時間の4/1から
海外では使えなくなるそうですが、
今日はそのギリギリ6日前なので
何とか電話番号認識も出来て準備完了。


まずは試しにハンバーガー屋に来てみました。
アメリカと言えばハンバーガー。
スモール(大嘘)を頼んでみました。
バーガーの大きさも大きいのですが、
それよりも付け合わせのフライドポテトの量が凄い。
「皿の余白なんてポテトで全て埋め尽くしてやるぜ!」
という気概が伝わってきます。
朝食抜きだったのですが、
それでも完食はギリギリくらいでした。


Uberの使い方を掴んだところでいよいよ目的の場所へ。
片側6車線とか頭おかしい。
車内で運転手と世間話をしたのですが、
運転手「今回の旅行はHoustonだけなのかい?」
僕「中米を2週間巡ってきた帰りだよ」
運転手「何処が一番気に入った?ここかい?」
僕「いや、僕はメキシコの方が好きかな」
運転手「メキシコ?そりゃまたどうして?」
僕「物価が安いし、みんな陽気だし…
あっ、Houstonも勿論良いところだと思うよ!
でも僕にとってはほんのちょっとだけメキシコの方が…」
運転手「そうか」
言ってから気付いたけど、
テキサス州なんて特に愛国色の強い場所だった…
しかもあろう事にメキシコと比べてしまうなんて…
日本人のくせに建前が全然使えない。
Uberの運転手は去り際に
「Houstonも良いところだ!楽しんでくれよ!」
と言っていました。
メキシコに対する対抗心でしょうか。


何やかんやで辿り着きました!
Space Center Houston(スペースセンター・ヒューストン)です!
宇宙を専攻とする者としてここは来ておかないと。


Houstonは別名Space City(宇宙の街)とも呼ばれる
航空宇宙産業の盛んな土地。
アポロ計画の宇宙飛行士達が呼び掛けていた、
日本語だと落下の擬音っぽくて縁起の悪そうな
あの「ヒューストン」こそ、
このビジターセンターを併設する
Johnson Space Center(ジョンソン宇宙センター)なのです。


ここの目玉は何と言っても、
実際に使用されていた施設を見学出来るTram tour(トラムツアー)です。
今日の締切時間ギリギリで何とか滑り込む事が出来ました。


超巨大な施設内をトラムに乗って移動します。
まず向かうのは…


Christopher C. Kraft Jr. Mission Control Center
(クリストファー・C・クラフトJr.飛行管制室)。
アポロと交信していたあの管制室です。


ここがその実際の部屋。
ガラス越しに見る事が出来ます。
ツアーガイドは本場アメリカンなノリノリの解説で
アメリカ人達を盛り上げています。


現役で使われている管制室にはテレビ中継が繋がっています。
今は特に切羽詰まったミッションが無いのか
のんびりした雰囲気です。


どうやら管制室の中に入れるツアーもあるようですね。
受け入れ人数はかなり少なそうですが。


続いてはSpace Vehicle Mockup Facility(宇宙船原寸模型施設)。
宇宙飛行士の訓練などに使われているそうです。
巨大な星条旗の下に米国産の宇宙船が所狭しと並んでいますが…


Союз(ソユーズ)やЗвезда(ズヴェズダ)といった
ロシア製(というかソ連製)の宇宙船も置かれています。
宇宙分野はアメリカがロシアの実力を認める稀有な例ですね。
まあ、現在人を宇宙に送り込めるロケットは
事実上ロシアのСоюзだけなので、
これの訓練をしない訳にはいかないのですが。
日本のきぼうなんかも置いてあります。


格納庫の端にはRobonauts 118(ロボノーツ118)という
地元の高校生達を集めて
ロボット作りを教えているサークルがありました。
未来のNASAエンジニアを育てているのでしょうか。


最後は本物のロケットを展示した施設へ。


Saturn V(サターンV)、
人類を月へと送り込んだ史上最大のロケットです!
全長110.6mというとんでもない大きさ。
この巨大なロケットで漸く3人を月に運べるのか…


格納庫の壁面には歴代のアポロ計画の
宇宙飛行士達の逸話が解説されています。


やはり人が一番集まっているのは11号ですね。
それまで宇宙開発でソ連に負け続けていたアメリカが
この一件で全てをひっくり返して大逆転勝利した、
アメリカのアイデンティティと言っても良い偉業です。


しかし、1972年のアポロ17号を最後に、
地球以外の星に降り立った人間は誰も居ません。
現在の貨幣価値にして10兆円以上という
狂気の沙汰にも近い巨額の予算は、
世界最大の経済大国たるアメリカを以ってしても許容し難く、
ソ連という最大の宿敵の敗北が確定した事で大義名分を失ったアメリカは
20号まで打ち上げる筈だった計画を切り上げてしまったのです。


しかし、最近では月ではなく
火星に人類を送り込もうという計画が出ています。
新しい敵である中国を意識しているのでしょうか…


Tram tourから帰還。
いやー、面白かった。
閉館までまだ少し時間があるので、
博物館の方も覗いてみます。


ロボットアームがソフトクリームを作ってくれる機械。
何ともアメリカン。


「火星の石」。
何と触る事が出来ます。
ただ、これは火星まで行って取ってきた訳ではなく、
火星から飛んできた隕石です。
貴重である事に変わりはありませんが。


アポロ計画で使われていたコンピュータ。
良く「ファミコン以下(もしくは同等)」と呼ばれるやつです。
コンピュータの進歩は人類の歴史の中で最も凄まじいものの一つなので、
17年も後に発売されたファミコンが性能面で凌駕していたとしても
何ら不思議は無いと言えば無いのですが。
ちなみに、マッハ3で飛行出来たソ連のМиГ-25に至っては
何と真空管を使っていたとか。
痛快ですね。


各ミッションのピンバッジ。
毎回作るんですね。
集めたい。


実際に使われている宇宙食。
日本語で「鶏肉のチリソース煮」と書かれていますね。
何故英訳しなかったのだろう。
日本語が書かれていると美味しそうに見えるのかな?


月の土を詰めた鞄。
重そうですね。
これ本物なのかな…?


そして、これが月の石です!
大阪万博では垣間見る為だけに何時間も並んだというこの月の石、
ここでは何と触る事が出来ます。
触られ過ぎてツルツルになっています。
その内摩耗で消失するんじゃなかろうか。


今だからこそ素手で触ったり出来ますが、
持ち帰った当時は真空チェンバーに入れて、
地球の大気にさえ一切触れさせないよう
細心の注意を払って分析が行われていました。


続いて屋外展示を見ます。
この巨大なジェット機はSpace Center Houstonに到着して
まず最初に目に飛び込んでくる奴です。
この中に入る事が出来ます。


その正体はボーイング747を改造した
スペースシャトルの輸送機。
着陸地点から回収したスペースシャトルを
打ち上げ場所や修理工場に運ぶ為に使われていた機体です。
ジャンボジェットの揚力って凄いですね。


適職診断があったのでやってみたら、
業務計画、在庫管理、船外活動講師とかいう
滅茶苦茶裏方の仕事ばかりオススメされました。
いや、巨大プロジェクトでは
裏方の仕事こそ肝要である事は分かるけど、
エンジニアとかやらせてくれないのか…


こちらは輸送機の上に載せられているスペースシャトルの内部。
アポロとは違って広々した船内です。
勿論、本来はギッチギチに荷物を詰めるのでしょうが。


こちらはスペースシャトルの操縦席。
こんな膨大な数のスイッチを覚えきれるんだろうか…
ところで、スペースシャトルって緊急事態に陥ったら
メーデーを宣言したりするんですかね?
そもそも専用の回線だし要らないのかな?


最後にお土産を見ます。
定番はやはり宇宙食でしょうか。
最近では保存食の技術が進歩しているので、
宇宙食と言って想像されがちな流動食とか
カピカピの乾燥食ではなく、
地上で食べるのとほぼ同じレトルト食品が、
宇宙ステーションなんかでも食べられています。
しかし、そういうレトルト食品を並べると
そこらのスーパーと変わらなくなってしまうので、
ここでは偏見に基づいた(実際は食べられていない)
カピカピ宇宙食が売られています。


まさかのナノブロックも。
日本語もそのままになっています。
アメリカの誇りSpace Centerなのにそれで良いのか。


閉館時間一杯で退館。
いやー、楽しかった!
宇宙好きの義務を果たせました。
まあ、初期宇宙論は宇宙開発とは何の関わりもありませんが。

再びUberで車を呼んで市街地へ戻ります。
片側4車線もあるくせに渋滞に次ぐ渋滞、
更には警察による謎の封鎖もあって、
日本とは比較にならない規模の
10マイル単位の迂回をさせられました。
嗚呼、お金が飛んでいく…


やっとの思いで辿り着いたのはステーキハウス。
アメリカの、それもテキサス州と来たからには
ステーキを食らわない訳にはいかないでしょう。
肉汁迸るミディアムレア。
付け合わせの丸ごとポテトサラダも美味しい!
しかし、相変わらずボリューミーですね…
店員さんはチップ欲しさか分かりませんが
えらく愛想が良かったです。
これでチップ文化さえ無ければ最高なんだけど。

さて、予想外の大迂回で出費が嵩んでしまったので、
ホステルまでは路線バスで帰ります。
車はバンバン走っているのに、
昼間にも況して歩行者が少ないので
バス停でバス待ちしている時間がとにかく怖いです。
20時過ぎのメトロバス、果たして治安や如何に…
Beechnut St @ w Loop Sバス停から
メトロバス49号線Northwest TC行きに乗車。
Westheimer Rd @ Chimney Rock Rdバス停で
メトロバス82号線Downtown行きに乗り換え、
Westheimer Rd @ Whitney Stバス停で下車。
身構えていましたが、バス車内の雰囲気は
平穏そのものでした。

駆け足だけど、アメリカを満喫した一日だった…
Uberの運転手から初めて
英語が上手いと褒められて嬉しかったです。
WS(須藤研)との日常会話のお蔭ですね。

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