中米旅行第14日目。
キューバ人民の生活に染まります。
4:00、起床。
眠い…
しかし、あのおじさんと約束したので行かねばなりません。
通りには人っ子一人居ません。
昼間は半袖でも暑いくらいでしたが、
未明は長袖が要るくらい寒いです。
こんな暗い時間に出歩くというのは
他の中米諸国なら自殺行為以外の何物でもありませんが、
ここはキューバなので大丈夫です。
…多分。
Trinidad駅(トリニダー駅)にやって来ました。
本当に列車は走るんだろうか?
ん?でもエンジン音が聞こえてくるな…
起動している!
でも、乗って良いものなんだろうか…?
と逡巡していたら、
「良いから乗りな」みたいなジェスチャーをされたので、
何はともあれ乗り込んでみる事にしました。
おお、これは正真正銘のレールバス!
流石はクラシックカーを魔改造して
60年間以上保たせているキューバです。
Trinidad(トリニダー)には蒸気機関車が牽引する
観光列車しか走っていない
(但し、蒸気機関車が故障して2010年以降運休中らしい。)
と聞いていたのですが、
僕等以外の乗客は明らかに地元民ばかりです。
思いがけずキューバの人民列車に乗れてしまったようです。
おじさんの言っていた通り、5:00に発車。
脱線するんじゃなかろうかというくらい
ガタガタ揺れながら走ります。
昨日見たあのバスの停留所みたいなホームで停車すると、
多くの人民が乗車してきました。
作業着姿の人が多いように見えます。
漆黒の闇夜の中を進みます。
スピードは原付くらいです。
橋梁もあるのですが、
如何せん保線状態が悪いので
脱線して落っこちないか心配になります。
ちょくちょく踏切で停車しては数人が下車して
懐中電灯を手に闇の中へ消えていきます。
一体何処へ行くのだろう…
元はバスなので運転席は立ち入り自由。
3人くらい乗客が入って運転手と話しています。
40分ほど走ったところで、
「お前達はここで降りろ。
1時間くらいしたら折り返しの列車が来るから。」
と、突然放り出されてしまいました。
駅舎も何も無いManaca Iznaga駅
(マナカ・イスナガ駅)。
寒い!
近くに川でもあるのか、冷気が漂ってきます。
長袖を着てくるには着てきたのですが、
春物の薄いやつだったので寒くて堪りません。
待合所の傍に観光地図らしきものがありました。
このManaca Iznaga(マナカ・イスナガ)は
18世紀から製糖で栄えた町なようです。
地図に描かれている線路から察するに、
先程の列車は製糖工場へ工員を送る
通勤列車の役割を果たしているようです。
山の中から時折警笛音が聞こえてきます。
しかし、それにしても寒い!
中米時間で1時間も待っていたら風邪を引きかねません。
しかも、多分復路も日の出前で特に車窓は見えないし…
ISの提案により、タクシーがいないか探す事にしました。
と言っても、こんな田舎町ではなぁ…
Trinidadへ通じる国道に出ました。
40分掛けて14kmしか進んでいないのか…
表定速度は21km/hですね。
ただ、蒸気機関車時代は1時間半掛かっていたらしいので
それに比べたら倍以上早くなっています。
国道の交差点に何やらバス停らしきものがあり、
多くの人民が立っています。
これはもしや、バスがやってくるのでは!?
来た!
しかも立派なバスです。
これでTrinidadに帰れる…
…と思ったのに、まさかの乗車拒否されてしまいました。
キューバ人民以外乗る事を許されないのか…?
すぐに続いてやって来たのは、
軍用トラックにしか見えない厳つい車。
何だこれは…
ちょっと引いていたら、近くに居た黒人の兄ちゃんが
「Trinidadに行きたいんだろ?
こいつに乗りな!運賃はCUP5さ!」
と促してきました。
車内(荷台?)は顔も見えないほど真っ暗。
僕等以外は作業着を来た人民が5人乗っています。
もしこの5人が強盗だったりしたら
その先に待ち受ける未来は死しかありませんが…
5人は箱状の機械を取り囲んで何かしていたかと思うと、
いきなり爆音で陽気な音楽が鳴り始めました。
どんな時でも心に音楽を忘れない、
それがキューバ人民。
20分でTrinidadに到着。
結局、何事もなく普通に送り届けてくれました。
中米諸国は散々な前評判があるので
どうしても身構えてしまいますが、
キューバも普通に良い人が多いです。
往復とも観光客向けではない交通機関で、
ありのままの人民の暮らしが垣間見られて楽しかったです。
宿に着いたら寝ます。
9:30に再び起床。
4:00に起きた時よりも眠い…
しかし、あと1ヶ所だけ見ておきたい場所があるので
頑張って起きます。
朝に強くなければ中米は巡れない…!
今日のクラシックカー。
ここまでアメ車ばかり撮っていたので、
今回はソ連車のモスコヴィチを。
心成しか、ソ連車はアメ車に比べて
整備が適当な気がします。
道端でクラシックカーを修理するお爺さんが居ました。
クラシックカーは見る分には良いけど、
実際に普段使いするとなると
整備するのが大変だろうな…
町から坂を上ってやって来たのは
Cubanacan(クバナカン)系列のホテル、
Las Cuevas(ラス・クエバス)。
“Cueva”とは「洞窟」の意味。
町を見下ろす山の斜面にあるこのホテルは
その名の通り敷地内にある洞窟が有名で、
宿泊者以外もフロントで申し込めば見学出来ます。
という事で早速申し込んだのですが…
ガイドが来るまで待てと言われたきり
一向に動きがありません。
早起きと待ち惚けは中米旅行の十八番か…
結局、40分待たされて
「ガイドが居ないから私が案内します。」
と、受付のお姉さんが案内してくれる事に。
ガイドとやらは一体何をやっているんだ…
ホテルの裏手の山の中腹に
施錠された洞窟の入口がありました。
中はこんな感じ。
宛ら地下神殿です。
20年前まではバーとして使用されていた為、
階段や灯りなどが整備されています。
最早鍾乳洞の一部となりつつある机と椅子。
これが一番有名らしく、お姉さんが
「貴方達の持ってるガイドブックにも
この写真が載ってたんでしょ?」
と言っていました。
南大東島で学んだストローやカーテンもあります。
そう言えば、あの星野洞の解説は
「何処となくタコスに見えてきませんか?」
とかいう謎のボケをかましてきてたっけ。
そのタコスの本場で再開する事になろうとは…
と言いたかったのですが、
良く考えたらタコスの本場はメキシコで、
キューバでは別にタコスはありませんでした。
大きなホールのような空間。
実際、嘗てはディスコホールとして使われていたとか。
この洞窟が使用されなくなった一因が、
ディスコで大音量の音楽を流し過ぎて
反響により洞窟の崩落が進んだからだとか。
中米の大音量信仰は一体何なのか。
祭殿っぽい場所。
インディヘナの英雄を祀っているそうです。
今も先住民が残る大陸部とは違い、
カリブ海に浮かぶ島国に住んでいた先住民は
スペインによって絶滅させられてしまいました。
ライトの周りに生えた苔。
何故かこのライトの周りだけに生えており、
ISが化学系だと知ったお姉さんが
「何故ここだけに生えるのか、
貴方なら説明出来ないかしら?」
と言っていましたが、出来ていませんでした。
それは化学や物理学じゃなくて生物学の範疇ですね…
Trinidadは石灰岩質の土壌で、
山から海岸に至るまで無数の洞窟があるそうです。
中々見応えのある洞窟でした。
市街に戻ります。
Iglesia Santa Ana(サンタ・アナ教会)。
Iglesia Mayor Santísima Trinidad
(サンティシマ教会)と比べると
まるで爆撃でも受けたかの如くボロボロな教会です。
でも、こっちの方が絵になるから
CUC25¢の絵柄はこちらにすべきだったのでは。
Iglesia Santa Anaの前にも
クラシックカーを修理するおじさんが居ました。
もったいない精神が根付いた国、それがキューバ。
未明から朝食抜きでお腹が空いたので
レストランに入ってブランチ。
Espagueti de la Boloñesa
(ボロネーゼ・スパゲティ)を頼んだら、
昨夜のPollo al Jigüe(ポジョ・アル・ヒグエ)のように
陶器の皿に盛ってオーブン焼きし、
チーズを融かしたパスタが出てきました。
Trinidadのパスタは全てこの形式なのでしょうか。
さて、それではTrinidadを離れます。
旧市街のど真ん中にあるViazulのバスターミナルへ。
1時間前にしっかりチェックインを済ませます。
今回は更に飛行機っぽく
受託手荷物を別途チェックインさせられました。
Habana(ハバナ)から来たバスの周りに
人集りが出来ています。
バスの前面にも”C. Habana / Varadero, Trinidad”
と書かれているし、
これの折り返し便がHabana行きだな。
と思ったら、こいつはHabanaではなく
Varadero(バラデロ)行きだと言うではありませんか。
掲示されていた時刻表を元に運行を推測すると、
Habana 7:00発→Trinidad 13:25着
Trinidad 13:55発→Varadero 20:15着
Varadero 翌7:25発→Trinidad 13:45着
Trinidad 14:30発→Habana 20:50着
の1泊2日を一巡として回しているようです。
遅れているから勘違いしたけど、
こいつは13:55発の便なのか…
平気で1時間くらい遅れるのに、
折り返し時間が30分しかないのは
流石に見積もりが甘過ぎでは。
恐らくVaraderoからやって来たのであろう
14:30発ViazulバスHabana行きに乗車。
出発時点から既に少し遅れていたのに、
バスの運転手は同じViazulのバスとすれ違う度に
窓を開けて世間話をしています。
国営体質と言うべきか、ラテン気質と言うべきか。
全行程の4分の3が過ぎた辺りでトイレ休憩。
時刻表上ではあと1時間だけど、
ドライブインの名前が”Km. 104”だから
まだ100km以上残っているんだろうな…
ああ、日が沈んでしまった…
21:15、Habanaに到着。
もっと1時間単位で遅れるかと思っていましたが、
25分遅れで済みました。
タクシーで宿に向かいます。
もう大分慣れてきたHabanaの夜。
ケチケチCUCに両替してきた弊害で
残りの手持ちがたったのCUC3ちょっとしかありません。
人民の店を見付けなければ
今日の食事は昼のパスタだけで終わってしまう…
宿の斜向かいに、人民で賑わうパン屋を見付けました。
これなら買えそう!
…え?1個CUC2?
やはり都会は糞。
パン1個を2人で分け合うという
嘗てなくひもじい夕食となってしまいました。
宿にキッチンがあったお蔭で
ISの虎の子のインスタント味噌汁も食べられましたが…
このひもじさもある意味人民らしいと言える…
のかも知れない。
キューバ人民に溶け込んできた1日でした。
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