(無題)

大東諸島旅行第4日目。
ウィニングランならぬウィニングクルーズです。


6:40、那覇が近い事を知らせる船内放送で起床。
結局、大して揺れませんでした。
何だ、荷役の時だけか。
南大東島で沢山貨物を積んだので
それが重石になって安定したのかも知れませんね。


那覇の海の玄関口、泊港フェリーターミナルとまりん。
沖縄本島周辺の離島へ向かう船が犇めいています。
座間味島に向かう「ざまみ3」の船名が
どう見ても「ざまみろ」にしか見えない。


7:25、泊港に到着。
だいとうに割り当てられた区画は勿論港の端っこです。
これにて大東諸島リベンジは完了しました。

実は、元々は今日の夕方の飛行機で
那覇に戻って来る予定だったので、
予約した成田行きの飛行機は明朝。
船の日程がずれた事で丸一日暇が出来てしまいました。
さて、どうしようかな…
沖縄本島はこの前に一周しているし、
一度もまともに観光した事のない那覇を見るか…
いや、やはりここは離島か。
フェリーターミナルの各所に掲示された
幾つもの時刻表を見比べて、
日帰り出来て尚且つ一番秘境そうな島を探します。
そして、僕は神が与えてくれた
もう一つの好機を見付けてしまったのです。


8:30発久米商船フェリー琉球に乗船。
だいとうの隣にいた船です。
久米島へ向かう自衛隊の人達で賑わっていました。
しかし、僕が向かうのは久米島ではありません。


見えてきました。
うぉっ、何だあの島影は!
波照間島黒島みたいな平坦な島を想像していたら、
その予想を完全に覆す荒々しい断崖に縁取られています。
予想外の展開に興奮してきたぞ!


10:30、渡名喜島(となきじま)渡名喜港に到着。
那覇から西に約50km、
久米島、粟国島、慶良間諸島に囲まれた
周囲12.5kmの小さな島。
名前が似ていますが、渡嘉敷島とは無関係です。


何故この島に来るのが神の与えた好機なのかと言うと、
今は丁度久米商船のもう一つの船、
ニューくめしまがドック入りしていて
特別ダイヤになっているから。
那覇-渡名喜-久米を結ぶ久米商船は
午前と午後の1日2往復を運航していますが、
何故か午前便も午後便も那覇と久米島から
よーいどんで同時に出港して海の上ですれ違い、
しかも午後便は夏期の金曜日以外
渡名喜島を経由しない為、
本来渡名喜島は日帰り不可能な島なのですが、
ドック期間の特別ダイヤになっている間だけは
日帰りする事が可能になるのです!
これを神の与えた好機と呼ばずして何と呼ぶ。


北大東村より小さい渡名喜村役場。
役場前の舗装された部分は
沖縄県で一番短い県道だそうです。


島の目抜き通り。
未舗装路なのか、単に砂が積もっているだけなのか。
格子状に道が引かれているようで
微妙に格子からは歪んでいるのは、
完全に格子状にすると台風が来た時に
暴風が集落を吹き抜けてしまうからだそうです。
また、渡名喜島はフクギ並木が名物らしく、
ここの通りは夜にライトアップされるとか。


こちらはフクギのトンネル。
夏は蚊が凄そう。
というか、11月の今でさえ結構飛んでいます。


渡名喜郵便局。
ATM完備です。
持ってて良かったゆうちょのカード。


民家はフクギの生け垣に加え、
門の手前に塀が立てられています。
台風を凌ぐ為でしょうか。
ここのお店で自転車を借りられるとの事だったのですが、
呼び掛けても誰も居らず…
諦めて徒歩で回ろうかと思ったら、
道を歩いていたおじさんが
「畑に行ったんかなぁ~
俺が伝えとくから勝手に乗ってけば良いよ」
と、自転車が置いてある場所に案内してくれました。
有り難し。
でも、2台ある自転車は
片方は後輪がパンクしているし、
もう片方は前輪のブレーキが壊れているな…
何はともあれ足を手に入れました。


民家の門に貼ってあったのは
住所かと思いきや謎の屋号。
「ウィーバルヘーバランヤー小(グヮー)」って何だ…


マンホールマニアには堪らなさそうな渡名喜村マンホール。
描かれているのはフクギと
島の南に聳える大岳でしょうか。


そんな島の象徴と化している
南部の山岳地帯をまずは目指してみます。
曇天の11月でこの海の色…
そして、半袖で走っていても暑くなってきます。


迫り出した岩壁の脇を走ります。
この岩壁はシュンザと呼ばれており、
2億5千万年前に生まれたものだとか。


昔の人達は満潮時にもここを通行出来るように、
シュンザの下に石を積み重ねて
アマンジャキと呼ばれる道を造ったとか。
落石の危険が極めて高いので現在では通行禁止です。
ボルダーならこのシュンザも登るのかな…


アンジェーラ浜。
拝啓~この手紙~


ここから山道に入ります。
沖縄というより、五島列島辺りを彷彿とさせる景観です。


海風に靡くショウキズイセンが
渡名喜の遅い秋の到来を告げています。
自転車がちょっとあれだから坂道が辛い…


島尻毛散策道に着きました。
ここからはボードウォークを歩きます。
渡名喜島はハブが多いらしいけど、
ボードウォークなら安心…


って、草茫々じゃん!
どうやら、丁度草刈りをする直前で、
今は一番伸びに伸びた状態だったようです。
ハブがいそうで怖いな…
岩に飛び移ったりして
極力茂みに入らないように進みます。


草に覆われていない箇所でも
踏板が壊れていたりして
不安要素があります。
結構新しそうに見えるけど、
何故こんなにボロボロなんだろう…
台風の影響でしょうか。


どうにか行き止まりまで辿り着きました。
ただ、何故ここを終点にしたのかは
良く分からないような中途半端な場所です。
まだ延ばす計画でもあるのでしょうか。


上から見えていた岩と入り江に近付けないか
ちょっと試してみましたが、無理そうでした。
ここまではボードウォークの支線が延びていますが。


島尻毛散策道から戻ってサイクリング再開。
大本田展望台からは島最南端の岬が見えます。
この辺りが島一周道路の最高地点なので
ここからひたすら下り坂。
普通の自転車なら爽快なところですが、
この自転車が後輪がパンクしているので
道路の凹凸が直に尻に伝わってきて痛いです。
しかも、急斜面特有の溝があるものだから…


どうにか島南西部の海岸まで降りてきました。
集落から遠い所為か
集落側のアガリ浜より綺麗です。
ウツボなんかも泳いでいました。

これにて渡名喜島一周完了!
ああ、お腹が空いた…
ギリギリ13時までに戻って来られたから、
集落の食堂で昼食を…
…え?もう終わった?
いや、営業中って札が外に…
変え忘れてたから今から準備中に変える?
何て事だ…
仕方無いねぇ~みたいなノリを期待していましたが、
観光シーズンでもない今の時期では、
本当に営業時間内だとしても
気が向かないとやらないのかも知れません。


仕方無いので商店でパンを買いました。
看板も何も無いただの民家にしか見えないこの建物が商店です。


さて、島を一周したと言っても
車道が通っているのは主に島の南部なので、
今度は島の北部の遊歩道を歩いてみます。
急勾配の坂を立ち漕ぎで…
上ると自転車が分解してしまいそうなので押して上ります。
何の為の自転車なのか。


島北部に位置するサカシ散策道。
こちらは良く整備されていますね。
今正に草刈りしている人達が居ました。
これならハブの心配も無用…


ではないのか…やはり。
展望台へ向かう最後の階段は草茫々です。
最大限地に足を付けないように上ります。


何とか辿り着いた島の最北端、西森園地展望台。
ここからの景色は…


おお、これは中々。
ここまで上ってきた稜線によって
西岸と東岸に分けられてしまいますが、
南端部を除いて島を一望出来ます。
こちらはアンジェーラ浜を含む東岸です。


西側にはスリッパのような形をした島が。
入砂島という名前の無人島で、
米軍の射撃場になっているそうです。
なお、南北大東島の南にある沖大東島も
同じ様に米軍の射撃場となっています。


稜線を望む。
民家があるのは島中央部の極一部だけですね。
でも、大東島を見た後だと民家が凄く多く見えます。


サカシ散策道は西森園地展望台以外にも
もう一つ別方向への分岐があったので行ってみます。
海岸に下りられるのかな?


…何を見て欲しいのだろう。
島尻毛散策道もそうでしたが、終点が謎ですね。
この緩さがまた良いですが。


サカシ遊歩道から戻る途中に
「水田→」なる看板を見付けました。
水田って言うほど看板で案内するほどのものか…?
沖縄だと珍しいのでしょうか。
気になるので行ってみます。
ここはこれまでに増してハブがいそうだな…


水田…?
水も稲も見当たりませんが…
後で草刈りしていたおじさんに訊いたら、
嘗てはこのもう少し上に井戸があって
稲作をしていたのだそうです。


なお、現在の農耕はこんな感じ。
島にしては贅沢に土地を使っています。
ニンジンが名産だとか。


自転車を返しに来たら店の女将が戻ってきていました。
どうやら、僕が乗った自転車は廃棄予定のものだったらしく、
奥の方にずっと新しい自転車が置かれていました。
坂道でのあの苦労は一体…
レンタル料を払おうとしたら、
ボロい方を使わせてしまって申し訳ないからお代は要らないとの事。
帰りのフェリーまで時間があるので軒先でお話していたら、
何と新美南吉ファンで半田市まで来た事があるとの事。
こんな場所で故郷の名前を聞く事になろうとは…
ちなみに、僕以外にも以前ここを訪れた半田市民が居たらしく、
その人は帰宅後に新美南吉の絵葉書を送ってきたそうです。
半田市民も以外と色んなところに来ているんだな…


15:35発久米商船フェリー琉球に乗船。
中々に良い島だった。


足腰の弱そうなお婆さんが居たので
一体どうやって乗船するのだろうかと見ていたら、
まさかのコンテナに乗ってフォークリフトで持ち上げられていました。
大東島のクレーンと言い、
建設機械は乗船にも活躍しているんですね。


渡名喜島一周の疲れで熟睡していたら
いつの間にか那覇が目前に迫っていました。
大都会です。


17:34、泊港に到着。
国際通りにある宿まで歩いて荷物を置き、
沖縄最後の夜を締めるべく繰り出します。
あれだけは絶対に食べておかねば!


そう、大東寿司です!
八丈島出身の開拓者が多かった大東島で、
八丈島の島寿司が独自の進化を遂げた料理。
大東諸島では食べ損ねてしまったので、
大東島の島民も食べに来るという寿司屋に来てみました。
これは…美味しい!
八丈島の島寿司とは少し違っていて
カラシではなく普通にワサビが使われています。
甘いシャリと漬けは健在。
やはり島寿司は良いなあ…
お通しなんかも絶品でした。
泡盛も飲んで気分良く酔っ払い、宿に戻って寝落ちしました。

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