(無題)

南アフリカ旅行第3日目。
喜望を求めて走ります。

7:30、起床。
朝食を済ませ、迎えに来ていた車に乗り込みます。


乗り合いツアーなのですが、
今日は僕等3人だけのようです。
ノリが良いながらも何処か上品さのある黒人ドライバーと一緒に
アフリカ大陸の果てを目指します。


海岸沿いの道には多くの自転車が走っています。
Cape Town(ケープタウン)は
世界最大規模の自転車レース、Cape Town Cycle Tour
(ケープタウンサイクルツアー)が開かれる
世界のサイクリストの憧れの街でもあるのです。
こんな道を自転車で走ったら
さぞかし気持ち良いだろうなぁ…
今年のレースは強風で中止されたそうですが。


まずやって来たのはHout Bay(ハウト湾)。
大西洋に臨む入り江です。
街の交差点にはジンバブエやウガンダからの
難民が屯していたりして、
若干の混沌を感じさせます。
しかし、ここの難民はあまり殺気立っていません。
白人も普通に出歩いているので、
治安はそんなに悪化していなさそうです。


一人R70を払って船に乗り込みます。
船には中国人観光客が大勢乗っていて、
僕等も船員に「你好!」と挨拶されました。
まあ、日本人が南アフリカ人と
ケニア人を見分けられないように、
南アフリカ人も日本人と中国人なんて
見分けられないでしょうしね。


ここの湾の売りはアシカ。
港内にも野生のアシカが大勢います。


港の外に出ると途端に波が激しくなります。
流石は大西洋。
そして、テーブルマウンテンの上から雲が流れ落ちてきています。
その速さが尋常ではありません。
それだけ強い風が吹いているんだろうな…


Sentinel(センチネル)という絶壁を回り込みます。
Cape Peninsula(ケープ半島)は
地形がとにかく険しいです。


島というよりは岩礁に近い
Duiker Island(ドイカー島)が見えてきました。
何やら海藻がこびり付いているような…


あ、これ全部アシカなのか!
夥しい数のアシカが犇いています。


HKは理化のブラックさに耐え兼ねて
アシカに転生したがっていました。
アシカも荒波に揉まれて大変だと思うけどな…


港に戻ります。
船着き場では何やら歓迎の演奏をしている人が居ましたが、
あまり積極的にはチップを求めてきませんでした。


Hout Bayを離れてChapman’s Peak Drive
(チャップマンズ・ピーク・ドライブ)を走ります。
大西洋に面した断崖に造られた道で、
南アフリカ有数の景勝路として有名です。


断崖を穿った道。
スノーシェルターならぬ
ロックシェルターで覆われています。
屡々落石で通行止めになるとか。


Cape Peninsulaで一番長いという
その名もLong Beach(ロングビーチ)。
水温は9℃しかないわ、サメが多いわで
海水浴をする人は皆無だそうです。


Cape Peninsula南端のTable Mountain National Park
(テーブルマウンテン国立公園)に入ります。
Cape Townにある木々は
欧州からわざわざ土を持ってきて植えたもので、
元々のCape Peninsulaは土壌が痩せていて
このように灌木程度しか生えていなかったそうです。
野生のダチョウやシマウマ、それにヒヒもいるとか。


Cape Point(ケープポイント)に到着。
海から250mもせり上がっているので
駐車場から登ります。
ケーブルカーもあるそうですが、
僕等は若いので歩きます。


振り返ると海から聳え立つテーブルマウンテンと、
左に一回り小さい断崖が。
Cape Pointの方が何倍も高いのですが、
実は世界的に有名な岬はあの小さな断崖の方です。


Cape Pointの断崖がこれ。
物凄い高さです。


灯台はCape Pointの方にあります。
高いですからね。
ただ、あまりにも高過ぎて屡々霧に隠れてしまうので、
後にもっと低い位置に新しい灯台が造られたそうです。


灯台から見たCape Peninsula。
左側が大西洋で、右側がインド洋です。
ここが二つの大洋の境目なのです。
(正式にはCape Agulhas(アグラス岬)が
境界という事になっているらしいが。)


灯台からまだ先の方へと進めるらしいので、
集合時間に遅れないよう急いで行ってみます。
この両側の切れ落ちている感じが何とも良い。


道の向こうからヒヒが歩いてきました。
かなり大きいです。
Cape Peninsulaには野生のヒヒが大勢生息していて、
観光客から食べ物を奪う事が問題になっているとか。
襲ってこないか不安でしたが、
悠然と通り過ぎていっただけでした。


観光客が行けるCape Peninsulaの先端。
下の方に小さく灯台が見えますね。
アフリカを縦断してきてここに辿り着いたら、
さぞかし感動するんだろうな…
マレー半島の比ではない難度だろうけど。
時間が迫っているので急いで戻ります。


でも、ちょっとだけ撮り鉄。
アフリカ最南端のケーブルカーを撮りました。


駐車場の近くの店で昼食。
大混雑だったので、テイクアウトして外で食べる事に。
ヒヒには気を付けていたのですが、
このカラスのような鳥も曲者で、
背後から襲撃されてサンドイッチを齧られました。
おちおち食事も出来ないな…


Cape Pointの次はあの岬へと向かいます。


あっ、あんなところに野生のダチョウが!
ダチョウって大草原の中を走っているイメージだったけど、
こんな海岸沿いにいるものなんだな…
ダチョウ肉はかなり美味しいらしく、
Cape Peninsulaにはダチョウ牧場が幾つもあります。


岬に辿り着きました。
Cape of Good Hope、喜望峰です!
恐らく、世界一有名な岬でしょう。
嘗てはアフリカ大陸最南端と思われていましたが、
本当の最南端はここから200kmほど東南東にある
Cape Agulhasである事が分かってしまったので、
現在では「アフリカ大陸最南西端」という
何とも歯切れの悪い称号が与えられています。


ちょっと登ってみます。
恐ろしく風が強いです。


大きなモルモットのような動物がいました。


下から登れるのはここまで?
断崖の上へはCape Pointから遊歩道が続いていました。


中国人観光客の団体が来てしまったので
Cape of Good Hopeを後にし、
今度はCape Peninsulaの東側を通って帰ります。
とその前に最後の寄り道。


本日最後の観光スポット、
Boulders Beach(ボルダーズビーチ)。
ここには普段は見られないとある生物が数多く、
しかも間近に見られる場所です。
アフリカの南端にいるその生物、何か分かりますか?


そう、ペンギンです!
ケープペンギン、別名アフリカペンギン。
大陸の南端にはペンギンが付き物ですね。
南米のマゼランペンギンよりも毛並みが黒く、
艶々していて綺麗です。
パタゴニアよりは気候が穏やかだからでしょうか。


ケープペンギンは南極など
不毛の地に棲むペンギンのイメージとは違い、
茂みの中に巣穴を掘って暮らしています。


Boulders Beachは無料の遊歩道と
有料のビーチがあります。
この砂浜はペンギンと一緒に泳ぐ事も出来るそうだけど、
見たところペンギンは全然いないな…


遊歩道は柵こそあるものの、
ペンギンは沢山います。
ただ、ペンギンは結構攻撃的で
手とかを近付けると嘴で攻撃してくるので注意。
運転手さん曰く、鋏で切られるような痛さだとか。


こっち見んな。


灰色でふかふかな毛をしているのは子供のペンギン。
寒さを凌ぐ為にふかふかしているのだそうで、
撥水性は無いので泳ぐ事は出来ないのだとか。
この頃はまだ瞳もつぶらで可愛いですね。
でも、Cape Townの気候では
そんなにもふもふである必要はないような。


子ペンギン達は子ペンギン同士で集まっている事が多いです。
ケープペンギンの産卵数は普通2個だった筈だけど、
何家族か集まっているのかな?


地面が踏み固められてしまって
巣穴が掘れないペンギンの為の救済策か、
巣穴用と思われる壺があちらこちらに置かれていました。
彼等は壺の周りで何を話し合っているのか…
壺の割り当てについて?


さて、ここまで無料エリアのみ見てきましたが、
Boulders Beachのあの有名な光景は
有料エリアに入らないとどうしても見られないので、
R70を払って入場します。


テーブルマウンテンを背にしたケープペンギントリオ。
さあ、あの砂浜にはどれだけのペンギンがいるのか…


おお!これは凄い!
夥しい数のケープペンギン達が屯っています。
ちなみに、ケープペンギンはその鳴き声が
意外にもロバに似ている事から
ジャッカス(雄のロバ)ペンギンとも呼ばれ、
鳴き出すとかなり騒々しいです。


ペンギンに紛れてカモメもいたり。
心成しかペンギンを装って歩いているような…?


観光客の一人がレンズを落としてしまったので
それを拾う為に清掃員が砂浜に入ったら、
ペンギン達が一斉に海へと逃げ込みました。
あたふたしていて可愛い。


Ushuaiaとはまた違う良さがありました。
プライベートツアー状態なのを良い事に、
運転手さんに頼んで
多めに時間を割いてもらった甲斐がありました。


Simon’s Town(サイモンズ・タウン)。
植民地時代の建物が数多く残る欧風な街で、
南アフリカ共和国海軍の基地もあります。


ちなみに、Cape TownからSimon’s Townまでは近郊列車が走っており、
鉄道で訪れる事も出来ます。
南アフリカ共和国の近郊列車とか
走る死亡フラグにしか思えないけど…
しかし、五能線も真っ青の絶景路線ですね。
運転手さん曰く、
「Cape Flatsを通る通勤列車は危ないけど、
Simon’s Town行きの列車は白人くらいしか乗らないから
そんなに危なくはないよ。」
だそうですが。


帰りはCape Peninsulaの中の方を走ります。
一切街灯が無いですね。


Cape Townが見えてきました。
手前から順に白人居住区、カラード居住区、黒人居住区だとか。


南アフリカ共和国の英雄、
ネルソン・マンデラの別荘。
この周囲一帯はブドウ畑になっており、
良質のワインが多く醸造されているそうです。


高速道路で帰る間、
運転手さんについて色々訊いてみました。
大学に二度入学し、保険や観光業について学んだそうです。
保険会社やホテルマンとして働いた事もありながら、
座ってばかりの仕事では刺激が無いという事で
ツアーの添乗員になったのだとか。
更に、現在は50歳にして修士課程で社会学を学び、
南アフリカの貧困層を救おうという
壮大な夢を抱いているそうです。
想像以上に凄い人だった…
道理で博識だし、押し付けがましさも無い訳だ。
最後に記念撮影もさせてもらったりしました。
僕と滅茶苦茶表情が似てて草。


ここまでアフリカらしさがあまりないので、
夕食は宿の主人や今日の運転手さんがオススメしていた
現地の人が集うアフリカ料理店へ。
欧風の建物が立ち並ぶCape Townに於いて
この食堂だけはアフリカらしさを前面に押し出しています。


ホールではアフリカの女子会(?)が。
いきなりミュージカルでも始まったのかと思う声量で
皆が立ち上がって大合唱していました。
全員上手過ぎワロタ。
これがアフリカンソウル…
アフリカの人ってどういう訳か皆異様に歌が上手い気がする。


アフリカらしいものを食べよう!
という事で、インパラのステーキ。
牛肉に近い雰囲気ながら癖が少なくて美味しいです。


こちらはダチョウのステーキ。
鳥とは思えぬ食べ応えです。
これまた美味しい。
運転手さんが絶賛していただけの事はあります。
アフリカンソングも聞けて身も心も大満足です。


すっかり暗くなってしまったので、
急いで宿に戻ります。
南アフリカ共和国の夜はヤバい…
道を早足であるいていたら、
何やら大声で呼び掛けてくる人が。
えっ、これはもしかしてヤバいやつ!?
と思ったら、
「そっちの通りには行くな!危ないぞ!」
と注意しにきた警備員でした。
良く見ると、交差点毎に警備員が立っています。
そこまでしないと治安が保てないんだな…
南アフリカの闇も垣間見えた一日でした。

コメント