(無題)

北欧旅行第6日目。
北の果てへ。

6:44、起床。
朝食を済ませ、歩いて空港に向かいます。


相変わらず小さなReykjavík空港(レイキャビク空港)。
アイスランドを出入国する人の2%しか利用しないそうです。
この大きさならそりゃまあそうだろうな…
という事は、出入国共にこの空港を使う僕達は
2,500分の1の珍しさという事になりますね。


NY439便に搭乗。
1,400km足らずなのに3時間も掛かるなんて
おかしいと思ったら、やっぱりプロペラ機でした。
Þríður(スリズル)という愛称が付いているそうです。


定員はたったの36人。
扉が開けばコックピットも丸見えです。
これで3時間も飛ぶのか…


1時間半ほど飛ぶと陸地が見えてきました。
何とも寒々しい土地です。
とても北半球の8月とは思えません。
あのシベリアでさえ今は緑が生い茂っているのに…


氷河が海に迫り出して流氷になっています。
海が青くて綺麗(小並感)


雲じゃないですよ。
この白いものは全て氷床です。
まるで南極ですね…
この氷が全て解けると世界の海水面が
7m以上も上昇するとか。
何かがあったと思ったら雲の影だった、
というくらい何も無い世界です。
この白銀の大地の上を飛行機は1時間半も飛びます。
窓に日除けが無いから滅茶苦茶眩しい…


ぽつぽつと湖が現れ始めました。
もしかしてこの下はもう海?


まるで快晴の空をそのまま溶かしたような青色。
そろそろ着陸だとか言い出したけど、
一体何処に着陸するつもりなんだろうか…


あっ、町が見えてきた!
皆窓に張り付いて写真を撮っています。
こんなに皆が身を乗り出して外を見る飛行機は
エチオピア航空以来だな…

(以降、ヌーク時間UTC-2.0h)


13:21、Ilulissat空港(イルリサット空港)に到着。
北緯55°(デンマーク)、
北緯62°(フェロー諸島)、
北緯64°(アイスランド)と北上してきて
遂に辿り着きました!
北緯69°、北極圏のグリーンランドです!
グリーン(大嘘)
アイスランドと国名を交換すべきでは…
何でも、アイスランドを見付けた時に
アイスランドと名付けたら、
寒そうな印象を与えて移住者が全然増えなかったので、
グリーンランドを見付けた時は
「グリーンって名前付ければ人来るんじゃね?www」
という糞みたいな理由で命名したとか。
当時はネットで口コミを調べたり出来ないから
騙される人も居たのかな…


Reykjavík空港より更に狭いIlulissat空港。
36人乗りの飛行機の乗客さえ
一度に入ると一杯になってしまいます。


ホテルの人が迎えに来ていたので
車で送ってもらいます。


世界地図の上の外れ、
メルカトル図法では極端に形が歪められ、
日本版の世界地図では省かれる事さえままある世界の果て、
そのグリーンランドに今居るんだ…!
感慨も一入です。


Ilulissat(イルリサット)の港。
National Geographic Explorerなる船が停泊しています。
ナショジオの写真撮影に来ているのかな?


港の奥には小型ボートが犇いています。
一家に一台?
集落間を結ぶ陸路がほぼ存在しないグリーンランドでは
自動車よりも船の方が有用だったりします。
流石にこの小さな舟で違う町には行かないでしょうが…


ホテルに到着。
世界の果てらしからぬお洒落なホテルです。
Ilulissat(イルリサット)が
グリーンランド随一の観光都市だからでしょうか。


部屋にあった注意書き。
アイスランド語も中々でしたが、
グリーンランド語は更に上を行く意味不明さですね。
キーボードを適当に叩いたようにしか見えません。
英語と照らし合わせて考えるに、
印→allagartag
緑の→qorsuk
赤の→aappalaartoq
お願いします→eqqiiarneqassaaq
肯定→-aq
否定→-nngilaq
なのでしょうか…
“You may please use the HORESTA signs”
という(既に怪しい)英文は、グリーンランド語では
“Kissaatigingussiuk inisi eqqiarneqassanersut eqqiarneqassannginnersulluunnit HORESTA-minngaanneersut allagartat arlaat matumut nivinngalaartarisigit.”
となるようです。
膠着し過ぎィ!
こういう極端な膠着語は極北地域に多いとか。


荷物を置いて町に繰り出します。
カラフルでお洒落な家々は北欧っぽさがありますが、
ここまでとは決定的に違うのが住民の顔。
半分以上がアジアを思い起こさせるイヌイットです。
グリーンランドは人口の9割近くが
カラーリットと呼ばれるイヌイット系の人々なのです。
その為、グリーンランドはデンマーク領ながら
北欧ではなく北米の括りに入れられる事が多々あります。


何と町の通りから流氷が見えました!
冬ならともかく、盛夏ですよ?
しかも、距離から推察するにとんでもない大きさです。
これがグリーンランド…!


車道は一応ほぼ舗装されていますが、
縦横無尽に延びる歩道は全て未舗装です。
土壌は栄養の極めて少なさそうな砂利と砂ばかり。
とても硬いです。
家なんかは岩盤に建っています。
しかし、こんな場所でも集合住宅があるんだな…


Ilulissatの目抜き通り。
それも、中心となる交差点。
がらーんとしています。
とは言え、今は観光シーズン真っ只中なので
奥に見えるツアー会社の建物の周りは
観光客でそこそこ賑わっています。
日本でばっちりツアーを予約してきたアイスランドに対して
このグリーンランド、
実は殆どノープランに近い状態で来たので、
ツアー会社を覗いて良さげなツアーに申し込んでみました。
グリーンランドを完全自力で観光するのは狂気の沙汰なので…


お腹が空いたのですぐ傍にあった喫茶店で昼食。
グリーンランディック・ホットドッグだそうです。
北欧でのホットドッグは
日本で言うところの焼きそば的扱いなんだろうか…
ソーセージとかピクルスとか、
保存食だけで作れるからでしょうね。
グリーンランドはアイスランドよりも具沢山。


さて、辺境の地に来ると気になるのは
やはりその地の生の暮らし。
まさかの大型スーパーマーケット、
スパーがあったので覗いてみる事にしました。


中はこんな感じ。
品揃え豊富です。
食品売り場に鎮座するこのテントは一体何なのだろう…


しかし、流石に生鮮食品は少ないですね。
ジャガイモ、タマネギ、パプリカ、ズッキーニ、
キャベツ、ブドウ、レモン、キウイという
何を作れば良いのか思い浮かばない組み合わせ。
缶詰めや瓶詰めは潤沢にあるので、
そちらを活用しているのでしょうか。


食品売り場の横には空気銃が並べられていました。
流石は北米。
しかし、これは強盗に襲われた時の護身用ではなく、
ホッキョクグマに襲われた時の護身用です。
でも、これでホッキョクグマから身を守れるのかな…


土産を見たり散策していたら時間が来たので、
ツアー会社の車で港に向かい、船に乗り込みます。
今日のツアーは流氷クルージングです。


いざ出発!
色褪せたグリーンランド国旗がたなびいています。


港を出るとすぐに流氷が見えてきます。
網走のそれとは全く桁が違う…
氷河のようにも見えますが、
これは既に海に浮かぶ流氷です。
アイスランドとは違って純白ですね。


近付くとこんな感じ。
寒い!
船がちょっとスピードを出すと身を切るような寒さです。
8月なのに…


軍艦の如き大きさの流氷。
火山灰っぽい筋が入っていますが、
ガイド曰くこれは火山灰ではないそうです。


鳥の彫刻のような氷。
これが自然に出来たのか…


あっ、クジラだ!
流氷の合間にクジラがいました。
ホエールウォッチングのツアーも別にあるのですが、
そちらでクジラを見られる確率は99.6%を歌っていて、
如何にIlulissat近海にクジラが多いかが分かります。
という事は、ここが沿岸ながらかなり深い事を意味します。


黒いほどに澄んで何も生き物が見えない極寒の海を見ていると、
こんなちっぽけな船に身を任せている事が
途端に恐ろしい事のように思えてきます。
漆黒の闇夜の中を小型飛行機で飛んでいるような。
…陽光が氷に反射して非常に眩しいですが。


ガイドが水面に浮かぶ流氷を網で掬って解説。
流氷は非常に長い時間を掛け、
強烈な圧力で押し潰された為に透明度が高く、
潰された気泡は太陽光に照らすと虹色に輝きます。
持って帰りたいくらい綺麗。


3匹並んだクジラがいました。
親子だとか。
このクジラは今回の航行中に何度も見掛けました。
ホエールウォッチングじゃなくても見放題だな…
ホエールウォッチングツアーより
流氷ツアーの方が安いのでオススメです。
ホエールウォッチングツアーだと何が変わるんだろうか…


船長が船をここまで近付けてくれました。
20mかそこらの距離です。
日本人としては美味しそうと言うべきだろうか。


3時間弱ながら実に充実したツアーでした。
白夜のナイトツアーが一番人気だそうですが、
夜だと相当冷え込む事を覚悟した方が良いです。
あ、ナショジオ号が帰港してる。


17時になったというのにこの明るさ。
ぶらぶら散歩しつつホテルに戻ります。


海に臨む教会前の広場。
地元の人達がベンチに腰掛けながら海を眺めています。
この港町っぽい雰囲気、良いなぁ…


海岸まで下りる事も出来ます。
泳ぐ事はとても出来ませんが。
出来てから数億年くらい経っていそうな古そうな岩だ…


ボードウォークを歩いて宿に戻ります。
こんなボードウォークが家の近くにあったらなぁ…
毎日15kmくらい散歩出来そう。


町を歩いていて気付いたのですが、
車のナンバーは最初の二文字が
“GR”と”GL”の二通りありますね。
前者は”GReenland”で、後者は”GreenLand”という事でしょう。
そんな二つ用意しなければならないほど車は無い気がするけど…


ホテルに戻ったらバーでハッピーアワーをやっていたので、
ジンライムを頼んでみました。
浮かべてある氷は内陸部の氷河を削り出したものです。
氷河でお酒を飲むのは二度目ですね。
夕食はアザラシやクジラなど
イヌイットらしさのある料理も並んでいました。


21時になったら夜…というか夕方の散歩。
色とりどりの民家を見ながら歩きます。
ホテルで貰った地図によれば、この近くに…


あった!
橇を曳く犬達の牧場(?)です。
未だに道路が殆ど整備されていないグリーンランドに於いて、
陸上交通で最も重要と言えるのが犬ぞり。
その為、町のあちらこちらで犬が飼われています。


犬達と民家の間は堀で仕切られています。
時に非情なまでに走り詰めさせられる橇用の犬は
ペットのように愛情を注ぎ過ぎてはならず、
人とある程度の距離を保って飼われているのです。


偶に触れるくらい近くにいる犬もいますが。
しかし、盲導犬と同じくお触り厳禁です。
というか、そもそも結構獣臭いので
あまり触る気にはならないと思いますが…
冬季は犬ぞりツアーも催されるので、興味がある方は是非。


世界最北端(?)のバス停。
6:30から18:00まで毎時3本走っているようです。
武豊線より走っているのか…
そんなに需要があるんですかね?


そして遅い日没。
さて、今何時でしょうか?


正解は23:21。
今日の日の入りの時刻は23:27、
明日の日の出の時刻は3:39です。
あと2週間早ければ白夜だったのですが…


まあ、そもそも白夜だろうが
眠くて起きていられないので一緒ですね。
今日ははしゃぎ過ぎて疲れたので
カーテンを閉めてもう寝る事にします。

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