碧岩

今日は登山です。
西上州のマッターホルン、大岩・碧岩に登ります。

5:00、起床。
想像以上に冷えて寒かったので
夜中に何度か起きてしまいました。
10月下旬でこれだから、
冬に車中泊なんかしたら死ぬな…
外は寒いので車の中で支度をします。
あっ、しまった!
熊鈴を忘れてきた!
二人きりで熊だらけの山に入るのは…
と怖がっていたら、5時半頃に1台車がやって来て、
夫婦が山登りの支度をし始めたので
孤独感は和らぎました。
二人は熊鈴を持っていたので
後をついていこうと思ったのですが、
僕等に遠慮しているのか中々出発してくれないので
先に出発してしまいました。


極めて滑り易い木道を歩きます。
これ、木道が無い方が却って歩き易いのでは…


鉄梯子もあります。
南牧村の言い分としては
ここはまだハイキングに最適な遊歩道、だそうな。
群馬県のハイキングはレベルが高いな…


見事な滝が現れました。
南牧村三名瀑の一つ、三段の滝です。
ここまでは遊歩道(群馬基準)が延びており、
ちょっとキツいハイキング程度で来られます。
が、この先は登山者の少なさも相俟って道が不詳、
更には危険な岩場も連続するという事で
あの南牧村が注意を呼び掛ける程の難度だそうです。
この三段の滝の右側をかなりの急勾配で登り、
何度も渡渉しながら沢沿いを歩いていきます。
地図に拠れば何処かで沢から左に逸れて
尾根筋に移るようだけど…


これ!?
凄まじい急勾配の上に極めて脆い足場。
大石山にも似た場所がありましたが、
あれよりも更に難度が上がっています。
普通の山ならまず登山道には指定されない斜面でしょう。
そんな斜面を這いつくばるようにして登っていきます。


どうにかこうにか稜線に出ました。
本日初めての太陽です。
ここが二つある「マッターホルン」の分岐で
右が比較的難易度の低い大岩、
左が高難度の碧岩なのですが、
分岐とは気付かない内に左に曲がっていました。
しかし、コースタイムではここまで1時間20分となっているけど、
既に出発から1時間40分が経過しているな…
僕とITのペアでこれだけ遅れるって
一体どういう設定をしているのだろう…
レンタカーの返却時刻もあるし、
これは大岩抜きで碧岩だけになりそうだな。


遂に岩場が現れました。
何を隠そう、こんな超マイナーな山にやって来た目的は
P会でボルダリングに行って岩登りに興味を持ち、
本格的な岩場のある山を求めていたからです。
とは言っても、僕が好きなのはあくまで登山であって
ボルダリングではないのでちゃんとした登山道ですが。


岩を登ると視界が開けました。
おー、絶景。
ここ西上州でも紅葉が始まっていますね。


岩場はまだまだ続きます。
この碧岩は結構慣れた登山者でも諦める事があるほど
難度の高い岩場が連続するそうだけど、
そうは言ってもこの程度なのか。


と舐めていたらいきなり現れたこの岩壁。
えっ、これが正規ルートなの!?
これまでの山では岩場や鎖場と言っても
ロープや鎖は補助的に使う程度で、
何なら一切使わなくても行けるところばかりだったのですが、
これは格が違います。
左側はオーバーハングとはいかないまでも90°を超す傾斜で
傾斜80°程度の右側の僅かな凹凸を見付けて登らねばならないのですが…


その右側というのがこんな有様で、
どこまで落ちるのか分からないほど切れ落ちており、
滑落すれば確実に命はありません。


しかし、ここで引き返してしまっては
何の為に4時間以上も下道を走って
ここまでやって来たか分かりません。
意を決して登ります。
ゴツい登山靴だと中々足を動かし難いな…
うっ、次の足掛かりが見付からない!
ボルダリングだと失敗しても下にクッションがあるけど、
ここで失敗なんてしようものなら…
そんな考えが脳裏を過った瞬間、
これまで感じた事のない恐怖心が湧き上がってきて
脚が全く動かなくなってしまいました。
恐怖で足が竦むというのは本当だったのか…!
二進も三進もいかなくなり、
先に怖いもの知らずのITに登ってもらう事に。
ITが見事な身体捌きで登り切ったので
漸く成功するイメージが掴めて
何とかこの岩場を抜ける事が出来ました。


岩場の上から。
こんな恐怖を抱いたのは生まれて初めてだ…
登り切っても脚が震えています。
山は恐怖心との闘いだという言葉の意味が漸く分かった気がします。


もう一つ垂直な岩場を登って
遂に山頂らしき場所に出ました。


やったぞー!
碧岩登攀成功!
所要時間は大した事ありませんが、
達成感は断トツです。
確かに、これは南牧村が注意を促すのも分かる。


お隣の大岩も見えます。
こちらは巻き道もあるので碧岩よりは簡単です。
でも、初心者は絶対に止めた方が良いです。
そもそも登山道が分からなくなって
分岐に到達する前に遭難すると思います。


眼下には南牧村も見えます。
良くあんなところに住んでいるな…


碧岩頂上を満喫したら下山します。
家に帰るまでが登山です。
こういうのは下りの方がずっと危ないんだよな…
殆ど垂直降下のようになりながら降ります。


岩場は全く恐れていなかったITですが、
こういう斜面は怖いそうです。
あと、沢で足を滑らせて水に浸かり、萎えていました。


どうにか五体満足で駐車場に到着。
いやー、短いながら充実した山行だった。
これだけの山に登攀して直帰では味気無いので、
近くで打ち上げをしたいと思います。


南牧村勧能集落。
古民家というほどの古さではないのですが、
どの家も戦後間も昭和3、40年代の雰囲気で
まるでタイムスリップしたかのような気持ちになります。
ちなみにこの南牧村、
日本一高齢化率が高く、最も幼年人口率の低い、
即ち最も速く消滅に向かっている自治体だったりします。
あと、長野県にも南牧村という名の村がありますが、
そちらは「みなみまき」村です。
ややこしい。
無駄に立派な湯の沢トンネルを越え、お隣の上野村へ。
南牧村と上野村の間にこんなトンネルは要るのだろうか。


温泉に浸かって一休みしてから
道の駅うえのに移って名物イノブタを食します。
今スタンプラリーを開催中だとか。
ところで、この上野村という名前、
何処かで耳にした事はありませんか?
御巣鷹山、と言えば分かるでしょうか。
そう、ここ上野村はあの史上最悪の航空機事故で
日本航空123便が墜落した村なのです。
上野中学校の傍には慰霊の園という追悼施設もあります。
上野村は何も悪くないのに
不名誉な形で有名になってしまった訳です。


さあ、レンタカーの返却時刻までに帰ります。
帰りは下仁田ICから上信越自動車道に乗り、
藤岡JCTで関越自動車道に移り、
大泉JCTで東京外環自動車道に移り、
美女木JCTで首都高速5号池袋線に移り、
東池袋出入口で下道へ。
上信越自動車道と関越自動車道の3,000円はまあ妥当だけど、
首都高がたったあれだけの距離で
1,000円以上もふんだくるのは納得出来ない。
ETCカードを持っていれば良かったな…
池袋では立体交差に苦しめられて
何回か行ったり来たりしましたが、
無事返却期限の30分前に返却する事が出来ました。
めでたしめでたし。
色んな意味での怖さもあったけど
とっても充実した山行だった。
これで登山経験値がちょっと上がったかな?

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