(無題)

秋田旅行第2日目。


6:30、起床。
朝風呂を浴び、朝食を食べてから宿を出ます。


宿の人に駐車場まで送ってもらいます。
しかし、日中に見ても恐ろしい道だな…


霧に包まれた乳頭温泉郷を下り、
JR田沢湖線(秋田新幹線)に沿って南西へ。
この辺りにある田沢湖以外の景勝地と言えば…


そう、抱返渓谷ですね。
東北随一の紅葉の名勝として有名な渓谷。
まだ紅葉には早いですが…
普段は青く透き通った水で有名だそうですが、
昨日の大雨で濁流と化しています。


遊歩道にも滝が。
これ、普段は流れていないのかな?
足元に気を付けつつ歩いていると…


ここは完全に遊歩道が滝に飲み込まれているな…
プリトヴィッツェを思い出す。


これは廃線!?
確かに、この遊歩道の勾配やカーブの少なさは
如何にも鉄道っぽいけど…
調べてみたところ、ここには生保内森林軌道という
手押し式の森林鉄道があったとの事。
西沢渓谷と言い、渓谷の遊歩道は
森林鉄道跡を転用したものが結構あるんですね。


手掘りの隧道。
森林鉄道にしては広いような?
遊歩道化する時に広げたのかな?


鉄道っぽい橋梁。
ここを鉄道が走ったらな…
きっと素晴らしい光景になるだろうけど。


回顧の滝。
雨で水量が増して物凄い水飛沫です。
写真を撮るのも一苦労。
普段はこんなに迫力を売りとした滝なんだろうか…?
この先の遊歩道は通行止めになっているので
ここで引き返します。
帰りに中高年の団体客とすれ違いました。
朝早く来ておいて良かったな…


次にやって来たのは角館。
佐竹北家の城下町として栄えた街です。
今も尚多くの武家屋敷が残っており、
国の重要文化財にも指定されています。


醸造所で一服。
あまざけジェラートのアフォガート。
優しい味わいです。
甘酒自体も非常に飲み易かったです。


内町武家屋敷通り。
角館の象徴とも言える通りで、
道の両側に武家屋敷が立ち並んでいます。


武家屋敷には入って見学する事も可能。
ですが、時間が迫っていたので僕はここで駅へ。
レンタカーで来ていますが、
どうしても乗っておきたい鉄道があるのです。


角館駅。
ちなみに、新幹線停車駅です。
あれ?でも、お目当ての鉄道の乗り場が無いな…


あ、隣のこれか!


11:50発秋田内陸縦貫鉄道普通阿仁合行きに乗車。
秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線。
一部開業は昭和9年とかなり古いものの、
国鉄時代から既に廃止が議論されていた
阿仁合線と角館線を第三セクター化し、
更に当初の計画通り秋田内陸部を
南北に縦貫する鉄道として平成元年、
実に55年越しで全通に漕ぎ着けたという路線です。
長い年月を経てやっと全通した東北の鉄道というと
三陸海岸の路線ばかりが有名になっていますが、
こちらの執念も中々のものです。
東北の人々の鉄道に対する思いは
並々ならぬものが感じられます。


しかし、全通への意志は強かったものの
その情熱に見合うだけの需要は無いようで、
現在、秋田内陸縦貫鉄道は東北一
営業係数の悪い私鉄となってしまっているのです。
ちなみに、秋田県の大動脈であるJR奥羽本線も
JR線では日本一赤字額の大きい路線だったり。
秋田県民は鉄道を使わないのでしょうか…
当然、この列車もガラガラ…


かと思いきや、外国人観光客が大勢乗っています。
バイカル湖岸鉄道だけでは飽き足らず
秋田内陸縦貫鉄道まで乗りに来たのか…
食い入るように車窓を見ていますね。
というか、見入り過ぎじゃないか?


あ、田んぼアートがあったのか!
なるほど、確かにこれは秋田内陸線に乗らないと見えませんね。
でも、田んぼアートが見られる鉄道は
弘南鉄道の方が有名だし規模も大きいけど、
何故敢えて秋田内陸縦貫鉄道を…


そう思っていたら、観光客達は松葉駅で全員下車。
駅前に停まっていたバスに乗り換えていました。
田沢湖入口…
そうか、角館の武家屋敷→秋田内陸線の田んぼアート
→田沢湖というのが黄金ルートなのか!
合点が行きました。


ちなみに、運転手さんによると観光客は中国ではなく
台湾から来た人達だそうで、
松葉駅には繁体字の横断幕が掲げられていました。
台湾にも鉄オタは多いからな…
急行停車駅では日本語だけでなく
英語、中国語、韓国語でも車内放送が流れるので、
秋田内陸縦貫鉄道は秋田県民を諦めて
外国人観光客獲得を狙っているのかも知れません。


台湾人観光客が降りると車内は僕一人だけに。
まあ、想像していた秋田内陸線はこれだけど、
三連休の中日の昼間にこれはまずくないか…


上桧木内駅で行き違い。
反対列車には乗客が沢山乗っていました。
この列車だけ特別空いているのかな?
この駅でおじさんが一人乗ってきましたが。


上桧木内駅を過ぎると
列車は堆く積まれた盛り土の上を走って
ぐんぐん標高を上げていきます。


戸沢駅。
秋田県内で最高所に位置する駅だそうです。
標高315m。
意外とショボい。


戸沢駅を過ぎると全長5,697mの十二段トンネルに入ります。
この辺りの区間は例によって
鉄道建設公団が建設しただけあって真っ直ぐなので、
6㎞弱もあるトンネルながら入った時から出口が見えています。
そして、トンネルと抜けるとそこは…


…流石にまだ雪は降っていませんね。
北秋田市の旧・阿仁町域です。
これだけの長大トンネルなのに県境ではありません。
秋田県内陸部が如何に隔絶された地域かが分かります。


奥阿仁駅。
秋田内陸線で最も秘境駅に近いと言われる駅です。
と言っても、目の前を秋田県道308号が通っているので
そこまでの秘境感はありません。


僕は寧ろ二つ隣の岩野目駅の方が好きです。
民家はありますが、雰囲気が良いです。


岩野目駅裏手。
ススキが綺麗。


笑内駅。
「おかしない」と読みます。
おかしい。
日本屈指の珍駅名です。
秋田内陸縦貫鉄道ではこの笑内駅にちなんだ
笑内というチーズ饅頭を販売していたり。
チーズと白餡の相性が良くて美味しいです。


阿仁川を渡る大又川橋梁。
秋田内陸線随一の撮影スポットで、
列車は徐行運転していました。
これは乗り鉄に対するサービスなのか、
はたまた撮り鉄に対するサービスなのか。
このすぐ先にある萱草駅で、
雨が降りしきっているにも関わらず
列車に向かって夢中でカメラを構える
小さな女の子を連れたお母さんが居たのには驚きました。
列車に乗ってきたから、
車じゃなくて往復とも秋田内陸線を使ったのか…
しかも、台湾の人だったし。
日本でもこれほどの鉄オタは中々居ないぞ…


13:14、阿仁合駅に到着。
お腹が空いたので昼食にします。
でも、こんなド田舎の駅の傍に食べる場所はあるのか?


これがあるんですねー。
駅の傍というか、阿仁合駅構内に
東京の老舗レストランで料理長を務めた事もあるという
地元出身のシェフが切り盛りする
本格的な洋食屋があります。
とても秋田の山奥の駅とは思えぬ賑わいっ振りです。
ここにも台湾人観光客が居ました。
もしかして、田んぼアートとか関係無く
台湾では秋田内陸縦貫鉄道が人気なのか…?


看板メニューの馬肉シチュー黄金ライス添え。
柔らかく煮込まれた馬肉に
濃厚なデミグラスのシチューが堪らない!
想像以上に美味しかったです。


駅前には秋田内陸線の資料館がありました。
入ってみます。


秋田内陸線は阿仁地域の木材を搬出する森林鉄道や
産銅量日本一を誇った阿仁鉱山の鉱山鉄道を起こりとしており、
その歴史はかなり長いです。
勿論、今では森林鉄道も鉱山鉄道も無くなり、
秋田内陸線は独り残されてしまったのです。


近くの異人館・伝承館の前には
阿仁鉱山で使われていた機関車も展示されています。
何故かは分かりませんが、
横浜-新橋間で使用されていたという
日本最古のレールも置かれていました。


阿仁合駅で角館から来た親と合流したので
ここからは再度車で移動します。
秋田内陸線沿いに少し逆戻り。


ちょっと撮り鉄。


やって来たのは打当温泉マタギの湯。
マタギ資料館が併設されているので覗いてみます。
マタギというのは冬季に山へ入り、
集団でクマ等を狩る猟師の事です。


マタギ小屋。
冬の秋田の山奥でこんな小屋に寝泊まりして
凍死してしまわないのかな…


中はこんな感じ。
非常に狭いです。
避難小屋みたいなものなのかな?


マタギの家?
こんなに所狭しと毛皮を置くんだろうか。


この他、マタギが使っていた道具や
狩猟法などについての解説もあり、
小さいながらも結構面白い資料館でした。


次にやって来たのはこちらの小さな駅。
何の変哲も無い駅ですが…


前田南駅。
この駅はアニメ映画「君の名は。」に登場する駅の
モデルになった駅ではないかと噂になり、
観光客が押し寄せたので
秋田内陸縦貫鉄道は急遽急行列車を
臨時停車させる事にしたとか。
棚から牡丹餅ですね。
この話は阿仁マタギ駅の隣の建物に居た
お婆ちゃんから聞いて初めて知ったもので、
僕はこの映画を見た事はありません…


確かに雰囲気の良い駅ではあるけど、
こんな感じの駅は全国にあるような…
敢えて秋田内陸線の駅をモデルにしたところに
作者の優しさを感じる。


今日も写真を撮る人で賑わっていました。
秋田内陸線には乗らないんかいな!


さて、そろそろ暗くなってきたので宿に向かいます。
秋田県道309号で東へ。
森吉山ダムを過ぎると全く建物の無い無人地帯になります。
こんな場所に本当に宿があるんだろうか…?
不安になってきたところで宿が登場。
真っ暗になるギリギリのところでした。
結構賑わっているな…
この後は温泉に浸かり、夕食に舌鼓を打ってから寝ました。

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