ユーラシア旅行 第18日目

幻の湖へ。

6:45、起床。
この旅行では1日目に次いで早い朝です。
TKは早過ぎると文句を言っていましたが善は急げです。
支度を済ませて宿をチェックアウトし、
西バスターミナルへと向かいます。


朝の西バスターミナル。
タクシーもバスも行き先を連呼して
呼び込みをしているので賑わっています。
公営バスまで頑張って呼び込みをするのが中央アジア流。
日本人の耳にはЧолпон-Ата
(チョルポン・アタ)という行き先が
「ちょっと待った!ちょっと待った!」
と聞こえるので思わず足を止めてしまいそうになります。
TKは共感してくれませんでしたが。


時刻表。
こう書いてはありますが、
実際は乗客が集まり次第発車するので
全く当てになりません。
日に3本以下というレベルの路線だと
流石に時刻表通りの時間に発車するのかも知れませんが。


595番マルシュルートカに乗車。
今度は僕等が最初の乗客です。
結構待ちそうだな…
気長に待っていると少しずつ席が埋まっていき、
9:13、満員になってマルシュルートカは発車しました。
ちなみに、時刻表では8:00発の次は10:30発です。
時刻表とは一体。


高原を蛇行するЧуй川(チュイ川)の脇を東へ。
速度は勿論全速力。
アウトインアウトのライン取りでタイムを縮めます。
目的地までは245kmです。


1時間程走ると俄かに道が険しくなってきました。
Бишкек(ビシュケク)よりも
一段上の高原へと登るようです。


激流と化したЧуй川に沿って
くねくねと登っていきます。
しかし、この程度のカーブでは
運転手の飽くなきタイムへの追求は止められません。
見事なステアリング捌きで速度を維持します。
驚くべきはこの道と並行して
鉄道が走っているという事でしょうか。
乗りたかったのですが、7~8月のみらしいので断念。
院試さえ無ければ…


上り坂が一段落付いたところで
ドライブインに入ってトイレ休憩。
他にも東へ向かうマルシュルートカが
何台か束の間の休息を取っていました。


4ヶ国語表記のトイレ。
でも、英語は無い。
キルギス語、カザフ語、ウズベク語、ロシア語?


ここはまだまだ道半ば。
休むのも程々に再爆走します。


ソ連っぽいモニュメント。
この辺り一帯はソ連時代には政府要人や
宇宙飛行士の保養所が点在していました。
それ故に長らく外国人は立ち入り禁止で
「幻の湖」と呼ばれるようになった湖が存在するのです。
中近東などは年々旅行出来る場所が少なくなっていますが、
旧東側陣営諸国は年を追う毎に
旅行出来る場所が増えていて良いですね。


ガタガタの道をかっ飛ばします。
アンデス山脈を思い起こさせるような景色です。
顔はアジア、景色は南米、書いてあるのはキリル文字。
自分は一体何処に居るのか。


一人、また一人と乗客が降りていきます。
こんな場所に住んでいるのか…
キメ顔で自撮りしたりしていたけど。


13:49、Боконбаево(ボコンバエバ)に到着。
幻の湖、Озеро Иссык-Куль
(イシク・クル湖)の南岸にある町です。
そう、天山山脈の襞の中に隠された
このОзеро Иссык-Кульこそ
今回キルギスを訪れた最大の目的であり、
今旅行の中央アジアパートの目玉でもあります。
しかし、ここを自力で巡るのは事実上不可能。
Бишкекであったあの夫婦に拠れば
CBTというNGO団体が各種ツアーを
手配してくれるとの事だったので、
早速そのオフィスを探そう
…とする前に、CBTのスタッフがバス停に来て
「良ければお手伝いしましょうか?」
と声を掛けてきました。
NGOがこんな積極的に誘ってくるものなんだな…
まあ、公営バスさえ客引きする中央アジアなら当然か。
お言葉に甘えてオフィスに向かいます。


昼食を挟んでツアーの相談。
乗馬体験やユルタ泊なども薦められましたが、
内モンゴルで十分過ぎるほど経験しているので、
今回は見所を回ってくれる車の手配と
トレッキングのガイドの手配だけをお願いしました。


昼食を終えたら早速観光開始。
更に悪くなった道を100km/h以上の速度で走ります。


案内看板がありました。
どうしても公共交通機関で行きたいのであれば
Кара-Кол(カラ・コル)行きの
マルシュルートカに乗って、
この看板の所で途中下車させてもらう事になりますが…


看板からダートをかなり進む事になる上、
帰りのマルシュルートカが非常に捕まえ難く、
運良く捕まえられたとしても確実に立ち席になるので
余りお薦めは出来ません。


そんなこんなでСказка(スカースカ)に到着。
メトネル好きならピンと来たのでは?
Сказкаとはロシア語で「おとぎ話」の意味。
英語では”Fairy Tale”と訳されています。
真っ赤な岩山が林立し、正におとぎ話
…というか異世界の様相を呈しています。


特に立ち入り禁止区域のようなものは無いので
谷筋に沿って登ってみます。


本当にただの谷筋なので、
暫く歩くと道ではなくなってしまいました。
道無き道を攀じ登っていきます。


Сказкаの別名は「キルギスのグランドキャニオン」。
中国のグランドキャニオンとか
日本キャニオンとかばかり行って
本家のグランドキャニオンには行った事がありませんが…
あと、ここもまたキャニオン(峡谷)ではありませんが…


最後の斜面を登れば…


稜線に出ました!
おお、絶景!
荒涼たるСказкаと満々と水を湛えたОзеро Иссык-Кульが
えも言われぬコントラストを生み出しています。


ちょっと記念撮影。
尾根に座ってここまでの旅路を思い返します。
随分遠くまで来たんだなぁ…


運転手を余り長く待たせても悪いので
そろそろ下ります。
道が不詳でちょっと悩みましたが、
結局滑り降りるようにして下りました。


下の方には万里の長城のような地形もあります。
丹霞地貌と違ってかなりトゲトゲした地形ですね。
こういう地形はどうやって出来るものなのかな…
見応えのある場所でした。

運転手の人に宿まで送ってもらい、暫し休憩。
夕方になったらОзеро Иссык-Кульに出てみます。
宿は湖から徒歩10分ほどなのです。


夕刻のОзеро Иссык-Куль。
水が澄んでいて美しいです。
折角なのでちょっと浸かってみました。
冷たい!
Иркутск(イルクーツク)ほどではないにしても
標高1,600mを超す高地なだけあって寒冷です。
それでも、不思議な事に氷点下20℃を下回る冬でも凍らず、
「熱い湖」を意味するИссык-Кульの名で呼ばれています。
湖底には謎の古代遺跡が沈んでいたり、
古い文献に幻の島の存在が書かれていたりと
とにかく謎に満ち溢れた湖なのです。


湖岸でお酒を飲んでいたお爺さんが話しかけてきました。
僕はロシア語が出来ないので
TKがずっと話していましたが。
長閑です。


Иссык-Кульに陽が沈む…


地元の人が集う食堂で夕食。
20軒くらいしか家が無いという
滅茶苦茶小さい集落だったので
食堂があるか不安でしたが、
Иссык-Куль周回道路沿いに2軒だけありました。
値段が安い割に量がかなり多かったです。
日本どころかロシアやカザフスタンの感覚で頼んでも
食べあぐねる量が出て来ます。


夕食を終えて宿へ。
暗っ!
とても集落があるとは思えぬ暗さです。
街灯の光量が全然足りていない…
そのままではまともに歩く事さえ難しいです。
外国でこんな暗い夜道を歩くなんて自殺行為ですが、
ここは悪人が居ないくらいの田舎なので大丈夫です。
やはり田舎は最高。
空には星が驚くほど沢山輝いていました。

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