夏休みですが、半田に帰省してから院試勉強ばかりです。
勿論、院試前だから当然ではあるんだけど、
やはり夏休みだから出掛けたいという欲求も捨て切れない…
という訳で、今日は母と祖母と愛犬と共に
中部地方の秘境へ出掛けてみました。
7:30、出発。
半田中央ICから知多半島道路に入り、
大府西ICで降りて大府ICから伊勢湾岸自動車道に入り、
豊田東JCTで東海環状自動車道に移り、
土岐JCTで中央自動車道に移り、
飯田ICで下道へ。
南アルプスに向かって走ります。
山奥に突如現れた巨大なループ橋。
三遠南信自動車道の喬木ICです。
この三遠南信自動車道は
新東名高速道路浜松いなさJCTから
中央自動車道飯田山本ICまでを
飯田線にほぼ並走する形で結ぼうという、
はっきり言って頭がおかしい壮大な計画です。
中央構造線特有の脆弱な地盤に阻まれて
着工から30年経っても全体の3割弱しか開通しておらず、
現在は無料開放されています。
この矢筈トンネルで伊那山地を越え、
赤石山脈に拓かれた林道を走ります。
ん?何か今看板があったぞ。
中央構造線程野露頭…
これは見るしかない!
という訳で、細い山道で転回して戻ってきました。
荒廃した遊歩道を歩きます。
やはり地盤が脆いからでしょうか。
これが中央構造線。
色の変わっている部分が
断層がずれる際に岩石が破壊された断層破砕帯です。
…多分。
構造地質学の授業が余り役立っていませんね。
露頭を見終えたら、細い林道をうねうねと登ります。
直線距離で3km程度のところを
15km以上掛けて走ります。
対向車が来る度に肝を冷やす思いです。
どうにかこうにかしらびそ峠に到着。
盛夏だというのに涼しいです。
しかし、ここはまだ道半ばです。
峠を越えて今度は下っていきます。
今度はクレーターの看板が。
この御池山クレーターは日本で初めて見付かった
(そして恐らく、現在見付かっているものとしては
日本で唯一の)クレーターです。
分かり難いですが、直径900mの窪地になっています。
2~3万年前に衝突したものだとか。
クレーターというと凄いもののように思いますが、
日本について言うなら
カルデラの方が遥かにスケールが大きいですね。
クレーターを過ぎて更に細くなった山道を下ります。
林道で規格が低いのか、
カーブミラーが殆ど無くて怖いです。
しかも、割と対向車がやって来るものだからもう…
こんなガードレールの無い
幅5mかそこらの場所で対向車が来た時も。
相手が後退してくれて何とかなりましたが。
そんな大変な思いをして辿り着いた場所は…
下栗の里です!
日本の秘境百選にも選ばれた信州の奥座敷
遠山郷の中でも最も山奥に位置する集落。
最寄りの飯田ICから自動車で山道を1時間以上、
公共交通機関を使うとなると、
飯田駅から1日3本(休日2本)の路線バスに70分乗って
降りた上町バス停からタクシーで15分、
さもなくば山道を徒歩7kmという絶望的なアクセスの悪さ。
その遠景から「日本のチロル」や「日本のマチュピチュ」、
「天空の里」とも呼ばれる事があります。
しかし、集落の中に居ると
中々その全貌が掴めないので、
徒歩20分で着くというビューポイントに向かいます。
愛犬が上り坂で異様にノロい…
人間様より山道での歩みが遅い柴犬ってどうなんだ。
ビューポイントに辿り着きました。
これが下栗の里遠景です!
最大傾斜38度(780‰)の急斜面に拓かれています。
何故よりによってこんな場所を開拓しようと思ったのか…
近くから縄文土器が出土しているそうなので
縄文時代から既に定住者が居たそうです。
山の幸とかが多いから
昔は平野部に比べても遜色無い生活が出来たのでしょうか。
ちなみに、このビューポイントは
下栗の住民が総出で整備したそうです。
ビューポイントの場所とか
どうやって見付けたのかな?
集落の中も歩いてみます。
最近本などでも取り上げられるようになって
割と有名になってきたので、
2軒ほど土産物屋もありました。
とは言っても、基本的には閑静な山里です。
夏はまだ良いけど、
冬とか雪が積もったらどうやって外に出るのかな…
なお、行きに通ってきた林道は冬季通行止めです。
帰りは通年通行可の道を通ってみます。
と言ってもこんな道ですが。
道端にあった一本木命水。
その昔、下栗集落に続く下栗街道を歩いた人達は
急坂の中にあるこの湧水で喉を潤したそうな。
そんなに昔の話ではないかも知れませんが。
昭和40年代くらいまでは続いていそう。
国道152号線まで出て来たら、
沿道にトロッコ客車が置かれていました。
嘗てこの辺り一帯には
遠山森林鉄道という森林鉄道が張り巡らされており、
遠山郷の木材をこの梨元貯木場まで運び出していました。
こんなところに鉄道を…と思うかもしれませんが、
森林鉄道や軽便鉄道はナローゲージ(レールの幅が狭い)の為、
車道よりもずっと建設し易く、
昔の日本には車道が通じておらず、
鉄道でしか辿り着けないという場所が数多くあったのです。
黒部は今もそんな感じですね。
ここ梨元貯木場跡は
「梨元ていしゃば」として
観光用に森林鉄道の一部を復活させようとしています。
…が、併設されていた食事処は休業してしまい、
森林鉄道復活計画もどうなるか不透明な状況です。
森林鉄道に頼っていた時代も今は昔、
現在では立派な国道が…
と言いたいところですが、
この先の青崩峠は脆弱な地盤に阻まれ、
今もなお国道152号線には未開通部分が残されています。
国道の未開通部分は林道で迂回します。
しかし、こんなところに高速道路を通そうって
正気の沙汰とは思えないな…
石勝線もそんな感じかも知れませんが。
数多のヘアピンカーブを抜け、
かなり標高が高くなってきました。
兵越峠を越えて静岡県に入りました。
武田信玄が西上作戦の際にここを越えた事から
この名が付いたのだとか。
静岡県に入った途端、道が良くなった気がします。
良くなったと言っても五十歩百歩ですが。
草木トンネルを抜けると
如何にも高速道路用っぽい舗装が。
元々三遠南信自動車道は青崩峠ではなく
兵越峠の下をトンネルで貫く予定で、
その続きとして先に草木トンネルが掘られて
ここは水窪北ICとして整備される予定だったのですが、
草木トンネルが開通した3年後に
あれ?兵越峠も脆過ぎてトンネル掘れなくね?
と判明し、
って事はこのトンネルも使えなくね?
となってしまったので、
高速道路規格の自動車専用道だったものが、
わざわざ歩道を付け足して低規格化して
一般道(国道152号線)に格下げされたという
極めて数奇な運命を辿った道路なのです。
ちなみに、このトンネルの総工費は180億円也。
一瞬だけ超豪華になった国道152号線ですが、
その後はこんな道が延々続きます。
国道168号線以上だな…
大きな町に出て来ました。
水窪町の中心、奥領家集落です。
凄い大都会のように見えてしまう…
しかし、ここも豊橋駅からJR飯田線で2時間、
最寄りの浜松浜北ICから50kmというかなりの山奥です。
4日振りのJR飯田線に遭遇。
平行して酷似したルートを走っているものの、
伊那山地を挟んで10km程度の距離を保ちつつ
付かず離れずのJR飯田線と国道152号線が、
奥領家集落周辺の7kmちょっとの間だけは並走します。
そのくらい重要な集落だという事でしょうか。
この先は天竜川に沿って走ります。
ぐんと道が良くなりましたね。
さて、ここまで大変な思いをして車でやって来たのに
下栗集落だけで直帰してしまうのは何だか勿体無いな…
そう言えば、この辺りには
これまた公共交通機関では極めて訪れ難い神社があったっけ。
折角だし行ってみよう!
という事で、国道152号線から
朱色に塗られた鳥居のような鉄橋を渡り、
本日最もカーブが多くて勾配もキツい林道を
延々8km登って漸く辿り着いたのは…
秋葉山本宮秋葉神社です!
709年に初めて社殿が建立され、
秋葉原の地名の由来となった江戸の秋葉神社を始め、
全国の秋葉神社の総本山となっている由緒ある神社。
秋葉原の起源がこんな場所にあるという事を
一体どれだけの人が知っているでしょうか。
鳥居から階段を上ります。
神社らしからぬ門が。
それもその筈、ここ秋葉神社は
明治時代に神仏分離令が出されるまで
秋葉大権現として神仏混淆の社だったのです。
おー、眺めが良いですね。
下には皿投げ祈願の輪が見えます。
本殿に辿り着きました。
本殿前の鳥居から見た景色。
太平洋まではっきり見えます。
天空の社という感じですね。
標高たったの866mとは信じられません。
本殿。
何だか全体的に真新しいですが、
これは昭和18年に山火事が起きて社殿が消失し、
昭和61年になって漸く再建されたからです。
ちなみに、秋葉神社が祀っているのは「火防の神様」です。
戦時中とは言え、それはどうなんだ…
取り敢えず、院試の成功を祈願しておきました。
それでは、そろそろ帰ります。
国道152号線で南へ…
…ん?あれは!?
これは如何にも鉄道っぽい橋梁…
そうだ!ここには国鉄の未成線、
佐久間線が残っているんだった!
遠江二俣駅(現・天竜二俣駅)から中部天竜駅まで
国道152号線とほぼ同じ経路で結ぼうという、
三遠南信自動車道に勝るとも劣らない無謀さの計画でした。
当然の如く工事は凍結され、
この第二天竜川橋梁は
自転車歩行者専用道路として整備されました。
この辺りの公共事業は色々と闇を感じるな…
花火大会があるらしく込み始めた浜北市街を抜け、
浜松浜北ICから新東名高速道路に。
NEOPASA浜松(浜松SA)で夕食の為休憩。
YAMAHAの本社がある浜松らしく
ピアノをイメージした外観になっています。
中には楽器の展示スペースが。
おっ、ヤマハのグランドピアノが弾ける?
…ローランドの電子ピアノだけかよ!
ヤマハは上り線のSAに置いてあるそうです。
何故下り線はローランドなんだ…
ベーゼンドルファーにしてくれれば良かったのに。
この後は遠くに蒲郡や吉良の花火を眺めつつ、
新東名高速道路、伊勢湾岸自動車道、
そして知多半島道路で半田へと帰りました。
列車で行く秘境も中々のものだけど、
車で行くと更にレベルが上がるな…
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