(無題)

信越旅行第3日目。
今日はMTLを巡ります。

6:06、起床。
身体がまだ休暇モードに切り替わっていないので
目覚ましを掛けていないのに
このくらいの時間に起きてしまいます。
起きた時に目覚ましが鳴っていないと
寝過ごしたんじゃないかと焦る。
余裕を持って朝の支度を済ませます。


7:27発JR中央本線普通駒ヶ根行きに乗車。


皆さんは「我田引鉄」という言葉を御存知でしょうか?
我田引鉄とは、政治家が圧力を掛けて
自らの地元に鉄道を引っ張ってくる事を指し、
大船渡線なんかはその典型例として知られていますが、
実は中央本線にも有名な例があるのです。
それがここ岡谷-塩尻の「大八廻り」。
現在の中央本線のメインルートは
岡谷-みどり湖-塩尻と直接的ですが、
嘗ての中央本線は岡谷-辰野-塩尻というもので
地図を見るとM字に折れ曲がっています。
これは地元伊那出身の代議士伊藤大八が
塩尻峠をトンネルで貫く経路を却下して
無理矢理伊那谷の辰野を通らせたのだ、と
まことしやかに囁かれているのです。
当時の技術では塩尻峠を貫くトンネルなんか
掘れなかっただけじゃないかという話もありますが。
本当は昨日この大八廻りを乗る予定でしたが、
大雨の影響で今日になりました。


川岸駅。
何人か乗ってきました。


辰野駅で7:50発JR中央本線普通塩尻行きに乗り換え。
中央本線としては岡谷-辰野-塩尻という経路ですが、
運行形態は岡谷-辰野(-飯田)と
辰野-塩尻(-松本)に完璧に二分されており、
中央本線というよりはそれぞれ飯田線と
篠ノ井線みたいな扱いになっています。


塩尻へ向かって谷筋を進みます。
岡谷-辰野より辰野-塩尻の方が鄙びている印象です。


信濃川島駅。
恐らくは中央本線で最も秘境駅に近い駅。
中央本線と呼んで良いのか微妙ですが。


小野駅。
こちらはかなり利用者が居ました。


塩尻に向かって標高を下げていきます。
中々壮観です。


塩尻駅で8:18発JR中央本線普通飯田行きに乗り換え。
塩尻→岡谷→辰野→飯田という
珍しい経路を走る列車です。
ロングシートなのか…


塩嶺トンネルで塩尻峠を越えます。
この塩嶺トンネルの開通は昭和58年。
脆い地盤や異常出水、更には岡谷と塩尻の標高差など
難工事の連続だったと言います。


辰野駅から飯田線に入ります。
今回の旅行最後の目的はMTL、
即ち中央構造線に沿う秘境駅の聖地、飯田線です。
田本駅までは高校2年の時に訪れていますが、
それ以北はまだ乗った事がありません。
秘境の印象が強い飯田線ですが、
北部は割と普通の近郊路線です。


伊那松島駅で6人も乗務員さんが乗ってきました。
駅毎に外に出て何やらメモを取っていたし、研修中?


反対列車が遅れている為に宮田駅で長時間停車。
反対列車の遅延理由は鹿との衝突だそうです。
折角なので少し外に出てみました。
駅前には小さな公園が。
…まあ、それ以外には特に何も無いですね。
反対列車をやり過ごしたら発車します。


駒ヶ根駅近くにあった謎の塔。
一体何を目的としたものなのだろう…


駒ヶ根駅を出ると飯田線は急に蛇行し始めます。
まるで傾いた三和土に細く流した水のようです。


七久保駅でまたしても長時間停車。
飯田線は山間を走るイメージでしたが、
この辺りは高原路線という感じですね。


元善光寺駅を出ると殊更キツいカーブを描きます。
ここは通称「飯田オメガループ」と呼ばれ、
その名の通り、飯田駅を頂点として
Ω字形に路線が曲がっているのです。
これは我田引鉄というよりは、
飯田線が元々私鉄だったが故に町の人々の便宜を図って
町の中心部に駅を作った結果でしょう。


11:16、飯田駅に到着。
伊那谷の中心都市です。
リニア中央新幹線がこの辺りを通るという話。


ターミナル駅なので数多くのバス路線が通っています。
ヤバそうな行き先が沢山。
一体どんな田舎に通じているのか皆目見当も付きません。


11:32発JR飯田線普通天竜峡行きに乗り換え。
飯田駅もホームで風鈴が鳴っていますね。


しかし、良い天気だなー。
天気予報で大荒れだと言っていたのは何だったのか。
ただ、雨雲レーダーによると
晴れているのはこの付近一帯だけらしく、
この伊那谷を挟む赤石山脈と木曽山脈、
ついでに東京も豪雨になっているそうです。
今日も僕の周りだけ晴れているのか…
やはり気象神社に願掛けしたお陰でしょうか?


11:59、天竜峡駅に到着。


ここで51分の乗り換え待ちです。
昼食を食べるつもりでいましたが、
折角こんなにも天気が良いので
名勝天竜峡を巡れる遊歩道を歩いてみます。


市街地から徒歩3分でこんな道に。
市街地はそこまで秘境という感じでも無いからギャップが凄い。


龍角峯。
高さ70mもの巨岩が屹立しています。
昨日の大雨の影響か天竜川は濁っていますね。
高校生の頃に来た時も濁っていたし、
天竜川っていつも濁っているような気がする。


つつじ橋を渡ります。
もっと不安定な吊り橋の方が趣があった気がする。


龍角峯の上からの景色。
岡谷からずっと続いてきた伊那谷の街並みが
天竜峡駅の辺りでスパッと途切れているんですね。


浴鶴巌。
龍角峯などと合わせて天龍峡十勝と呼ばれており、
日下部鳴鶴が彫った字が残されています。
その時代にこんな遊歩道は無いだろうけど
一体どうやって字を彫ったのかな?


12:50発JR飯田線普通豊橋行きに乗り換え。
のんびり遊歩道を一周して丁度くらいでした。


さあ、ここからいよいよ飯田線は本気を出してきます。
岡谷から天竜峡までのトンネルは僅かに3つでしたが、
ここから先は実に135ものトンネルがあるのです。


天竜峡駅を出て僅か5分、
お目当ての駅が見えてきました。


12:55、金野駅に到着。


天竜峡駅から電車で5分、たったの2.6km。
それだけだったら歩いても来られたんじゃないの?
と言われそうですが、全くそんな事はありません。
飯田線の駅はそんなに甘いものではないのです。


ホームからは天竜川のせせらぎが聞こえます。
長閑だなぁ…


未舗装の駅前には駐輪場のようなものがあります。
ここまで自転車で来る人が居るのだろうか…?


金野駅に通じる唯一無二の道。
これまで訪れた飯田線の秘境駅、小和田駅と田本駅
どちらも最寄りの集落への到達に失敗しているので、
今度こそ到達してみせます。


細い橋で天竜川を渡ります。
小和田駅や田本駅とは違い、
一応自動車でも駅にアプローチ出来るようですね。
したくはありませんが。


細い山道を進みます。
ところどころガードレールは欠落し、
アスファルトはひび割れ、
苔生してつるつるになっています。
これが駅に通じる唯一の道なのか…
舗装路なだけ有り難いと思うべきか?


10分程歩いたところで不意に開けた場所に出ました。
あれ?もう集落に着いたの?


…いや、これは廃屋だな。
駅前一等地だというのに廃屋になってしまっている。
やはり集落はまだまだ先か…
…ん?何やらラジオの音がするな…
ニワトリも鳴いているという事は…
ここで養鶏を営んでいる人が居るという事か?


「泰阜村ジジ王国 山のレストラン」…
えっ、レストランがあるの!?
天竜峡駅で昼食を食べそびれて
昼食抜きを覚悟していたからこれは有り難い!
…でも、本当にあるんだよな。
「注文の多い料理店」みたいになったりして…


…これ?
どう見てもただの民家にしか見えないけど…
メニューも置かれていないし…
でも、中に人の気配はあるな。
試しに呼んでみたら中からおじさんが出て来ました。
残念ながらレストランは予約制との事。
代わりにホオズキを下さいました。
これで夕食まで乗り切ろう…
ちなみに、王国の「国民」になると
ここに宿泊する事も出来るのだそうです。


山のレストランを過ぎても
まだ集落が現れる気配はありません。
森林組合が木を伐っているだけです。


こんな人気の無い道ですが、
街灯だけはやけにファンシーです。
街どころか民家の一軒も見当たらないのに
街灯と言って良いかは分かりませんが。


道はファンシーとは程遠いものですが。
道の脇は剥き出しの巨岩。
良くぞこんなところに道を通したものだ。
もう少し駅を集落の近くにする事は出来なかったのかな?
…地形的に不可能か。
寧ろ、良くこれで駅を造ってくれたものだな…


金野駅から歩く事約40分。
あれは…


着いたー!
金野集落だ!
細い山道を延々歩く事3kmちょっと。
遠かったです。


風通しの良い棚田に面した集落。
良いなぁ…
古い民家ばかりかと思いきや、
かなり真新しい家が多いです。
水害か何かがあって建て直しただけかも知れませんが。


集落が作れるだけあって
少しは開けた場所になっていますが、
それでもかなり坂は多いです。
そんな訳で玄関まで急坂になっている家も多く、
郵便屋さんへの気遣いなのか
郵便受けが玄関ではなく
坂の下に置かれている家も多いです。
一々ここまで手紙を取りに来るのは面倒臭そうだな…


何やら重要文化財の標識がありました。
こんなところに重要文化財?
金野操り人形の頭とな。


階段を上ってみましたが、
普通の神社でした。
左のお堂で操り人形の劇が上演されるのでしょうか。


集落の中を更に歩いて
漸く外界と繋がる大通り、
長野県道1号線に辿り着きました。
この県道も相当な山道ですが。
って、アパートがある!?
一体どういう需要があるのだろうか…?
ここから天竜峡市街地に通うのかな?
ちなみに、この長野県道1号線は
そのまま愛知県道1号線、静岡県道1号線に通じる、
全国的にも珍しい3県に跨る県道です。
県道1号線がこんな道だという事を
愛知県民、長野県民、静岡県民の何割が知っているだろうか。


向かいの山から暗雲が湧いてきて
雷鳴まで聞こえてきたので
大慌てで金野駅に戻ります。
こんなところで雨には降られたくないよー!


何とか雨が降り出す前に金野駅に到着。
助かった…
これも気象神社のお蔭かな?


15:17発JR飯田線普通豊橋行きに乗車。


高校2年の時に訪れた田本駅。
これで飯田線は全て乗り潰しました。


これでもう目的は全て達成しました。
あとはもう帰るだけ…


18:24、豊橋駅に到着。
あれ?何だかやけに混んでいるな…
豊橋ってこんなに人が多かったっけ?


名古屋地区の大雨で東海道本線と
名鉄名古屋本線が運転見合わせ!?
焦ってタイプミスしてるじゃないか!
この3日間毎日夕方に大雨が降っているな…
しかし、これまでは肝心なところはギリギリ動いていたけど、
今回はもろに帰路が断たれているな…
どうすべきか…


まずは腹拵えします。
愛知県民ながら全然食べた事の無いあんかけスパ。
愛知県のご当地グルメってどれもB級感が凄い。

さて、夕食の間に事態が好転しているかと思ったのですが、
運転見合わせから2時間以上経っても進展無し。
これはまずいな…
え?一つだけ動き出した路線がある?
これは青春18きっぷが使えないけど…
…ええい、東海道本線は動き出す気配が無いし、
別料金だけど乗ってしまおう!


東海道新幹線こだま699号新大阪行きに乗車。
東海道新幹線の復旧の早さは異常。
流石は新幹線命のJR東海です。
普通の在来線だと特急列車とか
速い列車ほど真っ先に運転を見合わせるものだけどな…


20:00、三河安城駅に到着。
名古屋駅は水没しているという話なのでここで下車。


祖父に自動車で迎えに来てもらって
半田へと帰りました。
ちょっと高く付いたけど、
東海道本線と名鉄名古屋本線は
結局22時過ぎまで運転を見合わせていたらしいから、
まあ賢明な判断だった…のかな?
そんな感じで、プレートテクトニクスに豪雨に、
日本の自然を満喫させられた旅行でした。

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