長期帰省というのはどうしても暇になるものです。
そう言えば、先週土曜日のダイヤ改正で
あの路線が復旧したんだったっけ。
暇だし、乗りに行かない手は無い!
ついでに、前々から行きたいと思いつつも
行けず終いになっていた場所も行ってしまおう。
という訳で、春休み最後にして
初めての一人鉄道旅行に出掛ける事にしました。
5:15、起床。
朝食を済ませて半田駅に向かいます。
6:10発JR武豊線普通大府行きに乗車。
電車になってしまったんだよな…
眠いので寝ます。
大府駅で6:42発JR東海道本線区間快速岐阜行きに乗り換え。
眠いので寝ます。
名古屋駅で7:04発JR関西本線普通亀山行きに乗り換え。
ここのところ帰省の度に三重県に訪れていますね。
結構混んでいるな…
八田駅で席が空いたので座って寝ます。
亀山駅で8:23発JR紀勢本線普通伊勢市行きに乗り換え。
さっきから同じ型の列車ばかりに見えますが、
こいつは今までとは違い、電車では無く気動車です。
嘗てはJR武豊線を走っていたキハ25系。
相変わらず風情の無い車両だ…
9:23、松阪駅に到着。
既にお目当ての列車が入線していました。
伊勢奥津行き普通列車です!
そう、4年前にkuniと訪れたJR名松線。
平成21年の台風による被害で家城-伊勢奥津間は運休となり、
JR東海の中で最悪の営業係数を叩き出していた事もあって
家城-伊勢奥津間の廃止は不可避と思われていましたが、
JR東海がまさかの温情を見せて
4日前に全線復旧を果たしたのです。
リニア中央新幹線の工費5兆円を
全額自己負担するような会社だから、
名松線を復旧させるくらいどうって事無いのかな?
9:38発JR名松線普通伊勢奥津行きに乗車。
車内は満員です。
何と中国人観光客まで居ました。
マニアックだなー…
暫く紀勢本線と併走した後、
名松線は進路を西へ取ります。
相変わらず至って普通のローカル線。
盲腸線なので何処かに繋がっている訳でも無く、
沿線に観光名所がある訳でも無く、
地元住民の需要が多くある訳でも無く、
かと言ってこの路線目当てで来る程の秘境でも無く、
八方手詰まり感の否めない路線です。
しかし、前回来た時よりも遥かに乗客は増えています。
勿論、その殆どは全線復旧に惹かれた観光客ですが、
途中駅からも結構乗ってくるので
もしかすると地元の人も少しは乗っているのかも知れません。
家城駅に到着。
ここからが復旧区間です。
信号が青に変わりました。
いよいよです。
ほんの4日前に復旧したばかりとは思えぬくたびれよう。
バラストの量がやけに少ないように見えます。
何と無く日本に見えない…
そう言えば、前来た時は草茫々だったから
草取りしてすっきりしたのかな?
復旧工事をした区間だけはしっかりバラストがあるので
何処が被害を受けたのか分かり易いです。
踏切にはこんな幟が。
「2月16日から列車が通ります」
もう6年半も列車が走っていなかったから
車も歩行者も注意しなくなっていたんだろうな…
ちなみに、名松線は過去に二度も
ブレーキの掛け忘れで列車を無人走行させる事件があり、
時刻表上列車が無い時間帯であっても油断出来ません。
伊勢竹原駅。
孫を連れたお婆ちゃんが乗ってきました。
列車は雲出川に沿って走ります。
その所為か、名張と松阪を結ぶ計画だったから名松線なのに
明後日の方向に向かって延びています。
これでは仮に名張まで全通していたところで
近鉄大阪線には到底敵わないな…
関西本線でさえまるで太刀打ち出来ていないんだし。
裏の巨木が目を惹く伊勢鎌倉駅。
中々雰囲気が良さそう。
沿線にあったウォータースライダー。
名松線にもまして経営が心配だ…
街に入ってきました。
駅舎が立派な伊勢八知駅。
ここで降りる人も居ました。
しかし、乗る人の方が多く車内はもう満員です。
伊勢八知駅のすぐ傍にはスギの集積場が。
ここ美杉町はその名の通りスギが名産です。
段々山岳路線っぽくなってきました。
比津駅。
最後の途中駅です。
山の中を走ります。
40km/hにも満たないノロノロ運転です。
11:02、伊勢奥津駅に到着。
水害で長期不通からの一部廃線の危機と聞いて
只見線と似ている気がしましたが、
田舎度は比べ物になりませんでした。
伊勢奥津駅駅舎。
「おかえりなさい名松線」の暖簾が泣かせます。
相変わらず立派な駅舎です。
今日はその立派さに見合うだけの人が居ますね。
隣に出来ていた観光案内所。
お土産を売っているようなので覗いてみます。
おっ、弁当が売ってる。
これは…美味しそうな予感!
あまごめしを即購入。
すぐに売り切れていたので即決して正解でした。
名張行きバスの時刻表。
乗せる気ゼロです。
4年前は列車に接続していた気がするんだけど…
駅前を通る伊勢本街道。
奈良と伊勢を繋ぐ街道です。
ある意味、名松線の前身と言えるかも知れません。
6年半の時を経て復活した名松線。
これからもめげずに頑張って欲しいものです。
11:30発JR名松線普通松阪行きに乗車。
伊勢奥津の観光をする人も割と居り、
乗客は来た列車の半分くらいでした。
車内であまごめしを食します。
アマゴと椎茸の風味がマッチして美味しい!
菜っ葉も良いアクセントになっています。
九頭竜湖駅の舞茸弁当と良い勝負。
盲腸ローカル線の終着駅に併設された施設の弁当は
幹線の主要駅で売られる駅弁より却って美味しいですね。
福井駅のかにめしより九頭竜湖駅の舞茸弁当、
松阪駅の牛肉弁当より伊勢奥津駅のあまごめし。
ちなみに、もう一つ越美北線との共通点として
名松線もタブレット閉塞式である事が挙げられます。
家城駅でタブレット交換が見られるので
名松線を訪れた際は是非見てみて下さい。
松阪駅で13:03発JR紀勢本線普通鳥羽行きに乗り換え。
多気駅で13:16発JR紀勢本線普通新宮行きに乗り換え。
さあ、ここからも未乗区間です。
紀勢本線は話題の伊勢・志摩には目もくれず
志摩半島の根元を貫いて南を目指します。
紀勢本線は特急街道なのにその殆どが単線の為、
行き違いや通過待ちで頻繁に長時間停車します。
その度に車外に出て深呼吸とストレッチ。
実は今回断トツで乗車時間が長いのがこの列車。
JR東海にしては珍しく運行系統がぶつ切りになっておらず
亀山-新宮の全線を運行する4時間超えの普通列車もあります。
山深い志摩半島の根元を走ります。
そして、山を越えると…
熊野灘です!
ここから、紀勢本線は終点まで太平洋沿いを走ります。
この辺りは典型的なリアス式海岸で
川のように見えるのも全て湾です。
偶にこんな感じで海水浴場がありますが。
これは古里海水浴場。
何処から泳ぎに来るのかな?
地理的には津、岐阜、名古屋くらいだけど、
愛知県では全然聞かないし…
大きな街に入ってきました。
尾鷲です。
東海地方の天気予報でお馴染み。
東海三県(愛知、岐阜、三重)の天気予報では
大抵一県につき二つの地点の天気が出るのですが、
名古屋、豊橋、岐阜、津は似通った天気でも
ここ尾鷲と高山は全く違った天気になっている事が屡々。
尾鷲は全国でもトップクラスの降水量で有名です。
22分停車するそうなので、
駅から出てほんの少しだけ街を歩いてみる事に。
やけに歴史のある街並みです。
停車時間でギリギリ行けそうだった尾鷲神社。
巨大な御神木が目を惹きます。
駅から片道で徒歩15分という場所なので
列車に乗り遅れないよう帰りは全力疾走。
汗だくになりながら何とか間に合いました。
車窓から発電所が見えます。
尾鷲三田火力発電所。
洋上にパイプラインが延びていますね。
タンカーが着岸出来ないのかな?
三木里駅。
ここから新鹿駅までの間は
紀勢本線の中でも特に工事が困難だった区間で、
全通したのは戦後の昭和34年。
紀勢本線は旧・国鉄の中の「○○本線」の中で
一番最後に全通した路線なのです。
その為、僕の祖父母などは
今でも全通前の「紀勢西線」「紀勢東線」の名で呼んでいます。
トンネルや高架橋で
小さな半島は全て根元を貫いています。
この辺りとか、つい最近まで海上交通が主流だった雰囲気満点。
元々、紀勢本線はここ二木島をすっ飛ばして
賀田駅から新鹿駅までトンネルを掘る予定だったそうですが、
地元住民の請願により立ち寄る事になったそうです。
ちなみに、紀勢本線が通らなかった須賀利などは
何と昭和57年まで船以外で訪れる事が不可能だったとか。
三陸海岸もそうですが、
リアス式海岸の住民が鉄道を切望する理由が分かりますね…
その分、開発が進んでいないので自然が綺麗です。
「日本一美しい海水浴場」と新鹿駅の観光案内板に書かれていた
新鹿海水浴場。
そして、甫本トンネルを抜けると…
16:26、波田須駅に到着。
三方を山、残る東側を海に囲まれた
紀勢本線随一の秘境駅。
波が岩に当たって砕ける音が微かに聞こえてきます。
ホームから階段が延びているので上ります。
天空の集落っぽい雰囲気。
この雰囲気とても好きです。
標高は30mにも満たないくらいなのですが。
山側も気になりますが、
まずは海の方に向かいます。
Google mapにも駅前の地図にも
海岸まで続く道は載っていないのですが、
紀勢本線の下を通る歩道があったので潜ります。
紀勢本線の東側には田んぼが広がっています。
その合間を農道が通っているから、
これを伝っていけば海岸に出られるのでは…
途中に何やら山の中に分け入る脇道がありました。
気になるので入ってみます。
これは昨日今日で出来た獣道では無いな…
ツタに埋もれてはいるけど相当立派な石垣があるし。
何かの城址か、はたまた熊野古道の一部なのか…
それは置いといて海を目指します。
この道も一部が石造りになっていますね。
海岸に辿り着きました。
1m級の岩がごろごろしています。
海水浴には適しません。
沖で釣りをしている漁船が居るのみです。
海岸から見た波田須の集落。
すぐ傍まで山が迫っています。
良くこんなところに辿り着いたな…
昔鉄道や道路が通じていなかった頃は
この岩海岸をひたすら歩いてきたのでしょうか。
…いや、海路か。
その岩の中の一つに
またしても山の中へ分け入っていく道が。
来た道を戻るのも芸が無いので
この道に入ってみます。
ここにも石段が…
波田須の道は小道でも
石で整備するものなのかな?
何処に続いているのだろう…
線路に通じていました。
しかし、踏切はありません。
田舎に良くある事実上の非公式踏切道も
向かいが柵で閉じられている為に通れません。
となると、鋭角に曲がったこの道だけど…
トンネルの上に出ました。
丁度上り列車がやって来て
運転手に見られてしまって気まずい。
更に上へと登っていくこの急坂…
でも、ミカン畑に入ってしまうな。
畑があるという事は集落にもつながっているのでしょうが、
畑に無断で立ち入る事は憚られます。
あとはこのトンネルの口部分を歩いて…?
しかし、山肌が想像以上に脆く、
また生えている草がかなりトゲトゲしていたので却下。
結局、線路際を歩いて田んぼまで戻りました。
今度は集落の方に歩いてみます。
急勾配の細いコンクリート舗装の道が
家々の間を縫うように通っています。
この雰囲気…
離島そっくりです。
陸の孤島とは何とも言い当て妙。
離島を旅してみたいけど船はちょっと…という人は
この波田須を訪れると雰囲気を味わえるかも知れません。
下手な離島よりも来るのが大変ですが。
集落の中を歩いていたら
先程より数段立派な石畳の道が。
これは本当に熊野古道らしいです。
ほんの50mほどで県道に削られて途切れていますが。
その先は木を伐り払っただけの道が続いています。
その先にはお地蔵様が。
熊野古道の時代から
波田須を行き交う旅人を見守っているのでしょうか。
その裏は国道311号が通っていました。
この国道311号も紀勢本線と並ぶ波田須の生命線で
陸の孤島を外界と結んだ道であります。
国道311号から少し入ったところに
おたけ茶屋跡なるものがありました。
今も茶屋っぽい建物があるように見えますが
戸は固く閉ざされていました。
波田須唯一と思われる自動販売機はありますが。
駅に向かって歩いていたら、
「天女座CAFE」なる看板が。
こんなところに喫茶店!?
現代のおたけ茶屋か?
気になるので寄ってみます。
細い階段を上り、寺の裏を通り、
お墓を抜けるこの道で本当に合っているのかな…
もうとっくの昔に閉店しているなんて事は…
あ、あった!
…って休日しかやってないのかよ!
(今日は水曜日)
ピアノでハノンを弾いているのが中から聞こえてきます。
ピアノの生演奏も売りにしているらしき貼り紙がありますね。
あと、まさかのTrip Adviserのステッカーが。
英語対応しているのか…
熊野古道を歩く外国人観光客が利用したりするのかな?
高台にあるのでとても眺めの良さそうなお店です。
うーん、入ってみたかった。
店の前には人懐っこいネコが居ました。
…おっと、そろそろ駅に戻らないと。
それにしても良い雰囲気だな…
半田も近いし、老後はここに住もうかな?
波田須駅に戻って来ました。
トイレを済ませておこうかと思ったのですが、
駅併設の便所がまさかのボットンだったので止めました。
18:01発JR紀勢本線普通新宮行きに乗車。
僕の他にもう一人、
熊野古道を歩いているという人も乗車していました。
そういう需要もあるのか…
あと、波田須駅は何かのアニメの聖地でもあるそうです。
波田須駅の隣駅、大泊駅。
大泊と聞くとコルサコフしか思い浮かばない。
名所が何も無い可哀想な駅です。
熊野市駅で最後の長時間停車。
20分間の停車時間で三重県最南部を見ます。
とってもシンプルな路線図。
シュール。
紀勢本線は多気駅(JR参宮線との乗換駅)から
御坊駅(紀州鉄道との乗換駅)までの283.8kmもの間
他の路線と一切接続していないという
日本一孤独な路線なのです。
実質的にはJR釧網本線東釧路駅(JR根室本線との乗換駅)から
JR石北本線新旭川駅(JR宗谷本線との乗換駅)の400.2kmの方が
日本一長い無接続区間と言えるかも知れませんが。
熊野市駅から徒歩10分の七里御浜。
美しい砂浜が続いています。
日没直後の砂浜は感傷的な気分にさせますね。
…感傷的になっていないで駅に戻らないと!
薩南諸島旅行や南米旅行とは真逆の
この上無く慌ただしい旅行ですね。
後は終点に向かってひた走ります。
ん?阿田和駅で行き違いしたこの列車は…
ドクター東海(キヤ95系)!?
有名なドクターイエローの在来線版で、
JR東海を始めとした在来線の線路の点検を行います。
まさか、こんな場所で出会うとは…
そんなこんなで19:00、新宮駅に到着。
ここはもう和歌山県です。
11ヶ月前に人生で初めて訪れてから二度目の和歌山県。
気に入りました。
宿に荷物を置いてから夕食を食べに街へ。
街灯が殆ど無くて
民家やお店の灯りに頼っているからやけに暗い…
めはり寿司の店は定休日だったので
和歌山ラーメンを食べました。
長く充実した一日だった…
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